経済学・経済政策 ~H29-16 代替効果と所得効果(2)代替効果と所得効果~

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今回は、「経済学・経済政策 ~H29-16 代替効果と所得効果(2)代替効果と所得効果~」について説明します。

 

目次

経済学・経済政策 ~平成29年度一次試験問題一覧~

平成29年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

代替効果と所得効果 -リンク-

本ブログにて「代替効果と所得効果」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。

 

 

効用

消費者は、財を消費することによって「効用」を得ることができます。
「効用」とは「財の消費によって消費者が得られる満足度」のことをいいます。

 

無差別曲線

「無差別曲線」とは、社会に2つの財しか存在しないという仮定の「2財モデル」において、縦軸に「Y財の消費量」を、横軸に「X財の消費量」を取ったグラフで表されるある消費者が等しい効用水準を得られる2財の消費の組み合わせを結んだ曲線」のことをいいます。

消費が増加すると効用が高まる一般的な2つの財の「無差別曲線」は以下の図のようになります。

「無差別曲線」では、「同一の無差別曲線上においてはどの点を取っても効用水準は等しい」という特徴を理解しておくことが重要です。

 

 

また、もう一つ、「無差別曲線」は以下の図のように「3本」しかないわけではなく無数に存在するという特徴も理解しておくことが重要です。

 

 

予算制約線

「予算制約線」とは、社会に2つの財しか存在しないという仮定の「2財モデル」において、「X財の消費量X」と「Y財の消費量Y」のグラフで表される「予算を全て使い切った2財の消費の組み合わせを結んだ曲線」のことをいいます。

 

 

最適消費点

「最適消費点」とは、社会に2つの財しか存在しないという仮定の「2財モデル」において、「X財の消費量X」と「Y財の消費量Y」の2軸のグラフで表される限られた予算の中で、ある消費者の効用を最大化する2財の消費の組み合わせを示す点」のことをいいます。

ある消費者が等しい効用を得られる2財の消費の組み合わせを表す「無差別曲線」と、予算を全て使い切った2財の消費の組み合わせを表す「予算制約線」の接点が「最適消費点」となります。

 

 

予約制約線の変化による最適消費点のシフト

予約制約線の変化によって「最適消費点」がどのようにシフトするのかについて確認するため「X財の価格が下落した場合」を例として以下に説明します。

 

  1. X財の価格が下落すると「X財の消費量がゼロである場合のY財の消費量(Y軸の切片)」は変わらずに「Y財の消費量がゼロである場合のX財の消費量」が大きくなるため「予算制約線」が右方に拡大します。
  2. 拡大した「予算制約線」は、X財の価格が下落する前の「予約制約線」と接していた「無差別曲線」よりも効用が高い「無差別曲線」と接することとなるため、この新たな「無差別曲線」との接点が、X財の価格が下落した場合の「最適消費点」となります。(無差別曲線がシフトするわけではありません。もともと無差別曲線は無数に存在しています。)

 

 

価格効果(全部効果)

社会に2つの財しか存在しないという仮定の「2財モデル」において、財の価格変動が「最適消費点」に与える効果のことを「価格効果(全部効果)」といいます。

「価格効果(全部効果)」は、効用水準が一定という条件の下で2財の相対価格比の変化が「最適消費点」に与える効果である「代替効果」と、2財の相対価格比が一定という条件の下で実質取得の変化が「最適消費点」に与える効果である「所得効果」を掛け合わせた効果として表されます。

 

代替効果 効用水準が一定という条件の下で、2財の相対価格比の変化が最適消費点に与える効果
所得効果 2財の相対価格比が一定という条件の下で、実質取得の変化が最適消費点に与える効果

 

代替効果

「代替効果」とは、効用水準が一定という条件の下で、2財の相対価格比の変化が「最適消費点」に与える効果のことをいいます。

言葉の定義が難しいですが、X財の価格が下落すると、X財の方がY財より相対的に価格が安くなるため、Y財よりX財を購入するようになるという感覚だと理解すれば大丈夫だと思います。

 

「代替効果」は、同一の「無差別曲線」に接する(効用水準が一定)ように「予算制約線」の傾きを変えながらシフトさせた(2財の相対価格比の変化)場合の「最適消費点」のシフトとして表されます。

 

「代替効果」のイメージ

 

所得効果

「所得効果」とは、2財の相対価格比が一定という条件の下で、実質取得の変化が最適消費点に与える効果のことをいいます。

言葉の定義が難しいですが、X財の価格の下落により「実質所得」が増加する(財を消費できる量が増加する)ため、2財を消費する量を増やすという感覚だと理解すれば大丈夫だと思います。

 

「所得効果」は、財の価格が変動した後の「予算制約線」を、傾きを変えず(2財の相対価格比が一定)に平行シフトさせた(実質取得の変化)場合の「最適消費点」のシフトとして表されます。

 

「所得効果」のイメージ

 

スルツキー分解

「価格効果(全部効果)」を「代替効果」と「所得効果」に分解することを「スルツキー分解」といいます。

 

X財の価格が下落すると「予算制約線」がシフトして「最適消費点」もシフトします。
この「最適消費点のシフト(赤→青)」は、財の価格変動が「最適消費点」に与える効果である「価格効果(全部効果)」を表しています。

 

 

財の価格が変動した後の「予算制約線」を、傾きを変えず(2財の相対価格比が一定)に、X財の価格が下落する前の「予算制約線」が接していた「無差別曲線」と接する点(緑)まで平行シフト(実質取得の変化)します。

 

 

財の価格変動が「最適消費点」に与える効果である「価格効果(全部効果)」を、同一の「無差別曲線」に接する(効用水準が一定)ように「予算制約線」の傾きを変えながらシフトさせた(2財の相対価格比の変化)場合の「最適消費点」のシフトとして表される「代替効果(赤→緑)」と、財の価格が変動した後の「予算制約線」を、傾きを変えず(2財の相対価格比が一定)に平行シフトさせた(実質取得の変化)場合の「最適消費点」のシフトとして表される「所得効果(緑→青)」に分解することができました。

 

 

実際の問題では「スルツキー分解」が終わった後の図が示され、どれが「代替効果」と「所得効果」を表しているかという形で出題されます。

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【平成29年度 第16問】

近年、保育や介護の現場における人手不足が社会問題となっている。この問題に対処するための方策として、これらに関わる職種の賃金の引き上げが検討されることがある。そこで、賃金の引き上げと労働供給の関係を考察することにした。

下図を参考にしながら、次の文中の空欄A〜Dに当てはまる語句として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。

 

 

人手不足を解消するためには、現在働いていない人に新規に就労してもらうか、あるいは現在パート勤務などの短時間労働の人に今までよりも長い時間働いてもらうことが必要である。

すでに働いている人が賃金の上昇によってもっと働くようになるかどうかは、代替効果と所得効果によって決まる。賃金の上昇は、[ A ]効果によって労働供給を増やし、[ B ]効果によって労働供給を減らす。両者の関係は、通常、低い賃金水準では[ C ]効果の方が大きく、高い賃金水準では[ D ]効果の方が大きい。したがって、現在の賃金が低い水準であるならば、賃上げは、労働時間を増やして人手不足の解消に寄与する。逆に、もし現在の賃金が高い水準にあるとすれば、賃上げは労働時間を減らすことになる。

 

[解答群]

ア A:所得 B:代替 C:所得 D:代替
イ A:所得 B:代替 C:代替 D:所得
ウ A:代替 B:所得 C:所得 D:代替
エ A:代替 B:所得 C:代替 D:所得

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答

代替効果と所得効果に関する知識を問う問題です。

 

見慣れない図を問題で与えられると拒否反応を起こしてしまいそうですが、気を取り直して問題で与えられた図を分析すると、賃金水準が低い状態では「賃金(時間当たり)」が高くなると労働者は「労働時間」を増加させていくが、賃金水準がある一定の水準よりも高い状態では「賃金(時間当たり)」が高くなると労働者は「労働時間」を減少させていくことを表しています。

労働者にとって最適な「賃金(時間当たり)」と「労働時間」の組み合わせを、見慣れたグラフに変換してみます。

「労働時間」が増加すると「余暇時間」が減少するという関係を利用して「労働時間」ではなく「余暇時間」を用いて、縦軸に「賃金(時間当たり)」を、横軸に「余暇時間」を取ったグラフで、労働者にとって最適な「賃金(時間当たり)」と「余暇時間」の組み合わせを表すと以下のようになります。

 

 

横軸に「労働時間」ではなく、わざわざ「余暇時間」を取っている理由について考えてみます。

消費するほど効用が高まる2つの財の「無差別曲線」は、以下の図のように「右上がりの曲線」となります。

 

 

したがって、縦軸に「賃金(時間当たり)」を、横軸に「余暇時間」を取ったグラフの「無差別曲線」も同様に「右上がりの曲線」となります。

 

一方、「労働時間」は増加するほど労働者の効用を減少させるため、縦軸に「賃金(時間当たり)」を、横軸に「労働時間」を取ったグラフで「無差別曲線」を表すと、以下のように「右上がりの曲線」となります。

 

 

縦軸に「賃金(時間当たり)」を、横軸に「労働時間」を取ったグラフを用いて問題を解くことも可能ですが、やり慣れていないこともあり、非常に難しく感じるはずです

 

縦軸に「労働所得」を、横軸に「余暇時間」を取ったグラフによる労働者にとって最適な労働所得と余暇時間の組み合わせを題材とした試験問題のリンクを以下に示します。

 

 

 

労働者にとって最適な「賃金(時間当たり)」と「余暇時間」の組み合わせを表すグラフを「スルツキー分解」により「代替効果」と「所得効果」に分解して、賃金水準が低い状態と賃金水準がある一定の水準よりも高い状態の違いについて考えていきます。

 

賃金水準が低い状態

労働者は「賃金(時間当たり)」が高くなると「代替効果」により「余暇時間」を減らし「労働時間」を増やしますが「所得効果」により「余暇時間」を増やし「労働時間」を減らします。

賃金水準が低い状態においては「代替効果」の方が「所得効果」よりも大きいため、労働者は賃金が高くなる前の状態と比べて「余暇時間」を減らし「労働時間」を増やします

 

 

賃金水準がある一定の水準よりも高い状態

労働者は「賃金(時間当たり)」が高くなると「代替効果」により「余暇時間」を減らし「労働時間」を増やしますが「所得効果」により「余暇時間」を増やし「労働時間」を減らします。(ここまでは「賃金水準が低い状態」と同じです。)

賃金水準がある一定の水準よりも高い状態においては「所得効果」の方が「代替効果」よりも大きいため、労働者は賃金が高くなる前の状態と比べて「余暇時間」を増やし「労働時間」を減らします

 

 

穴埋め文章

上述の内容に基づき、問題文を穴埋めすると以下の文章となります。

 

すでに働いている人が賃金の上昇によってもっと働くようになるかどうかは、代替効果と所得効果によって決まる。賃金の上昇は、代替効果によって労働供給を増やし、所得効果によって労働供給を減らす。両者の関係は、通常、低い賃金水準で代替効果の方が大きく、高い賃金水準では所得効果の方が大きい。したがって、現在の賃金が低い水準であるならば、賃上げは、労働時間を増やして人手不足の解消に寄与する。逆に、もし現在の賃金が高い水準にあるとすれば、賃上げは労働時間を減らすことになる。

 

答えは(エ)です。


 

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