今回は、「経済学・経済政策 ~R3-16 代替効果と所得効果(8)代替効果と所得効果~」について説明します。
目次
経済学・経済政策 ~令和3年度一次試験問題一覧~
令和3年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
予算制約線・最適消費点 -リンク-
本ブログにて「予算制約線」「最適消費点」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- 無差別曲線・予算制約線・最適消費点・代替効果と所得効果のまとめ
- R2-13 予算制約と消費者の選択行動(1)予算制約線
- H28-15 予算制約と消費者の選択行動(3)予算制約線と無差別曲線
- H27-14 予算制約と消費者の選択行動(4)効用最大化
- H26-15 予算制約と消費者の選択行動(5)最適消費点
- H25-19 予算制約と消費者の選択行動(6)予算制約線
代替効果と所得効果 -リンク-
本ブログにて「代替効果と所得効果」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- 無差別曲線・予算制約線・最適消費点・代替効果と所得効果のまとめ
- R2-15 代替効果と所得効果(1)代替効果と所得効果
- H29-16 代替効果と所得効果(2)代替効果と所得効果
- H28-16 代替効果と所得効果(3)代替効果と所得効果
- H27-13 代替効果と所得効果(4)代替効果と所得効果
- H26-16 代替効果と所得効果(5)代替効果と所得効果
- H25-14 代替効果と所得効果(6)代替効果と所得効果
- H24-17 代替効果と所得効果(7)代替効果と所得効果
効用
消費者は、財を消費することによって「効用」を得ることができます。
「効用」とは「財の消費によって消費者が得られる満足度」のことをいいます。
無差別曲線
「無差別曲線」とは、社会に2つの財しか存在しないという仮定の「2財モデル」において、縦軸に「Y財の消費量」を、横軸に「X財の消費量」を取ったグラフで表される「ある消費者が等しい効用水準を得られる2財の消費の組み合わせを結んだ曲線」のことをいいます。
消費が増加すると効用が高まる一般的な2つの財の「無差別曲線」は以下の図のようになります。
「無差別曲線」では、「同一の無差別曲線上においてはどの点を取っても効用水準は等しい」という特徴を理解しておくことが重要です。
また、もう一つ、「無差別曲線」は以下の図のように「3本」しかないわけではなく無数に存在するという特徴も理解しておくことが重要です。
予算制約線
「予算制約線」とは、社会に2つの財しか存在しないという仮定の「2財モデル」において、「X財の消費量X」と「Y財の消費量Y」のグラフで表される「予算を全て使い切った2財の消費の組み合わせを結んだ曲線」のことをいいます。
予算制約線の求め方
「予算制約線」の求め方について説明します。
X財の価格が「PX」であり、Y財の価格が「PY」である場合、X財とY財を消費するときの「総支出」は以下の式により求めることができます。
「予算制約線」とは「予算を全て使い切った2財の消費の組み合わせを結んだ曲線」であるため「予算(M)= 総支出」となる以下の条件式が成立します。
上記の式を「Y=」という形に変形した以下の式が「予算制約線」です。
したがって「予算制約線」は以下のように表すことができます。
「予算制約線」において、X財とY財を消費するときの「総支出」が予算内に収まっていることを表している「予算制約線」より左下の範囲を「入手可能領域」といいます。なお、「予算制約線」より右上の範囲は「予算オーバー」であることを示しています。
予算制約線のシフト
「予算制約線」は「X財の価格(PX)」「Y財の価格(PY)」「予算(M)」などの条件が変化するとシフトします。
X財の価格が変動する場合
X財の価格が下落する場合
「X財の価格(PX)」が下落する場合の「予算制約線」のシフトについて確認します。
「X財の消費量がゼロである場合のY財の消費量(Y軸の切片)( M ÷ PY )」は変わりませんが「Y財の消費量がゼロである場合のX財の消費量( M ÷ PX )」が大きくなり「予算制約線の傾きの絶対値( PX ÷ PY )」が小さくなるため、「予算制約線」は以下の通り右方にシフトします。
X財の価格が上昇する場合
「X財の価格(PX)」が上昇する場合の「予算制約線」のシフトについて確認します。
「X財の消費量がゼロである場合のY財の消費量(Y軸の切片)( M ÷ PY )」は変わりませんが「Y財の消費量がゼロである場合のX財の消費量( M ÷ PX )」が小さくなり「予算制約線の傾きの絶対値( PX ÷ PY )」が大きくなるため「予算制約線」は以下の通り左方にシフトします。
Y財の価格が変動する場合
Y財の価格が下落する場合
「Y財の価格(PY)」が下落する場合の「予算制約線」のシフトについて確認します。
「Y財の消費量がゼロである場合のX財の消費量( M ÷ PX )」は変わりませんが「予算制約線の傾きの絶対値( PX ÷ PY )」と「X財の消費量がゼロである場合のY財の消費量(Y軸の切片)( M ÷ PY )」が大きくなるため、「予算制約線」は以下の通り上方にシフトします。
Y財の価格が上昇する場合
「Y財の価格(PY)」が上昇する場合の「予算制約線」のシフトについて確認します。
「Y財の消費量がゼロである場合のX財の消費量( M ÷ PX )」は変わりませんが「予算制約線の傾きの絶対値( PX ÷ PY )」と「X財の消費量がゼロである場合のY財の消費量(Y軸の切片)( M ÷ PY )」が小さくなるため、「予算制約線」は以下の通り下方にシフトします。
予算が変動する場合
予算が増加する場合
「予算(M)」が増加する場合の「予算制約線」のシフトについて確認します。
「予算制約線の傾きの絶対値( PX ÷ PY )」は変わりませんが「Y財の消費量がゼロである場合のX財の消費量( M ÷ PX )」と「X財の消費量がゼロである場合のY財の消費量(Y軸の切片)( M ÷ PY )」が大きくなるため、「予算制約線」は以下の通り平行に右上方にシフトします。
予算が減少する場合
「予算(M)」が減少する場合の「予算制約線」のシフトについて確認します。
「予算制約線の傾きの絶対値( PX ÷ PY )」は変わりませんが「Y財の消費量がゼロである場合のX財の消費量( M ÷ PX )」と「X財の消費量がゼロである場合のY財の消費量(Y軸の切片)( M ÷ PY )」が小さくなるため、「予算制約線」は以下の通り平行に左下方にシフトします。
最適消費点
「最適消費点」とは、社会に2つの財しか存在しないという仮定の「2財モデル」において、「X財の消費量X」と「Y財の消費量Y」の2軸のグラフで表される「限られた予算の中で、ある消費者の効用を最大化する2財の消費の組み合わせを示す点」のことをいいます。
ある消費者が等しい効用を得られる2財の消費の組み合わせを表す「無差別曲線」と、予算を全て使い切った2財の消費の組み合わせを表す「予算制約線」の接点が「最適消費点」となります。
予約制約線の変化による最適消費点のシフト
予約制約線の変化によって「最適消費点」がどのようにシフトするのかについて確認するため「X財の価格が下落した場合」を例として以下に説明します。
- X財の価格が下落すると「X財の消費量がゼロである場合のY財の消費量(Y軸の切片)」は変わらずに「Y財の消費量がゼロである場合のX財の消費量」が大きくなるため「予算制約線」が右方に拡大します。
- 拡大した「予算制約線」は、X財の価格が下落する前の「予約制約線」と接していた「無差別曲線」よりも効用が高い「無差別曲線」と接することとなるため、この新たな「無差別曲線」との接点が、X財の価格が下落した場合の「最適消費点」となります。(無差別曲線がシフトするわけではありません。もともと無差別曲線は無数に存在しています。)
価格効果(全部効果)
社会に2つの財しか存在しないという仮定の「2財モデル」において、財の価格変動が「最適消費点」に与える効果のことを「価格効果(全部効果)」といいます。
「価格効果(全部効果)」は、効用水準が一定という条件の下で2財の相対価格比の変化が「最適消費点」に与える効果である「代替効果」と、2財の相対価格比が一定という条件の下で実質取得の変化が「最適消費点」に与える効果である「所得効果」を掛け合わせた効果として表されます。
代替効果 | 効用水準が一定という条件の下で、2財の相対価格比の変化が最適消費点に与える効果 |
所得効果 | 2財の相対価格比が一定という条件の下で、実質取得の変化が最適消費点に与える効果 |
代替効果
「代替効果」とは、効用水準が一定という条件の下で、2財の相対価格比の変化が「最適消費点」に与える効果のことをいいます。
言葉の定義が難しいですが、X財の価格が下落すると、X財の方がY財より相対的に価格が安くなるため、Y財よりX財を購入するようになるという感覚だと理解すれば大丈夫だと思います。
「代替効果」は、同一の「無差別曲線」に接する(効用水準が一定)ように「予算制約線」の傾きを変えながらシフトさせた(2財の相対価格比の変化)場合の「最適消費点」のシフトとして表されます。
「代替効果」のイメージ
所得効果
「所得効果」とは、2財の相対価格比が一定という条件の下で、実質取得の変化が最適消費点に与える効果のことをいいます。
言葉の定義が難しいですが、X財の価格の下落により「実質所得」が増加する(財を消費できる量が増加する)ため、2財を消費する量を増やすという感覚だと理解すれば大丈夫だと思います。
「所得効果」は、財の価格が変動した後の「予算制約線」を、傾きを変えず(2財の相対価格比が一定)に平行シフトさせた(実質取得の変化)場合の「最適消費点」のシフトとして表されます。
「所得効果」のイメージ
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【令和3年度 第16問】
限られた所得を有する個人がおり、X財とY財を購入することができるとする。下図には、この限られた所得に基づいて予算制約線Aと予算制約線Bが描かれており、また、予算制約線Aと点Eで接する無差別曲線と、予算制約線Bと点Fで接する無差別曲線が描かれている。下図に関する記述として、最も適切な組み合わせを下記の解答群から選べ。
a 予算制約線Aから予算制約線Bへの変化は、X財の価格の上昇によるものである。
b 予算制約線Aから予算制約線Bへの変化は、Y財の価格の上昇によるものである。
c 点Eから点Fへの変化は、代替効果と呼ばれている。
d 点Eから点Gへの変化は、代替効果と呼ばれている。
[解答群]
ア aとc
イ aとd
ウ bとc
エ bとd
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
予算制約線と代替効果に関する知識を問う問題です。
予算制約線のシフト
「予算制約線」は「X財の価格(PX)」「Y財の価格(PY)」「予算(M)」などの条件が変化するとシフトします。
Y財の価格が上昇する場合
「Y財の価格(PY)」が上昇する場合の「予算制約線」のシフトについて確認します。
「Y財の消費量がゼロである場合のX財の消費量( M ÷ PX )」は変わりませんが「予算制約線の傾きの絶対値( PX ÷ PY )」と「X財の消費量がゼロである場合のY財の消費量(Y軸の切片)( M ÷ PY )」が小さくなるため、「予算制約線」は以下の通り下方にシフトします。
したがって、予算制約線Aから予算制約線Bへの変化は、Y財の価格の上昇によるものであるため、選択肢(b)に記述されている内容が適切です。
価格効果(全部効果)
社会に2つの財しか存在しないという仮定の「2財モデル」において、財の価格変動が「最適消費点」に与える効果のことを「価格効果(全部効果)」といいます。
「価格効果(全部効果)」は、効用水準が一定という条件の下で2財の相対価格比の変化が「最適消費点」に与える効果である「代替効果」と、2財の相対価格比が一定という条件の下で実質取得の変化が「最適消費点」に与える効果である「所得効果」を掛け合わせた効果として表されます。
代替効果 | 効用水準が一定という条件の下で、2財の相対価格比の変化が最適消費点に与える効果 |
所得効果 | 2財の相対価格比が一定という条件の下で、実質取得の変化が最適消費点に与える効果 |
代替効果
「代替効果」とは、効用水準が一定という条件の下で、2財の相対価格比の変化が「最適消費点」に与える効果のことをいいます。
言葉の定義が難しいですが、X財の価格が下落すると、X財の方がY財より相対的に価格が安くなるため、Y財よりX財を購入するようになるという感覚だと理解すれば大丈夫だと思います。
「代替効果」は、同一の「無差別曲線」に接する(効用水準が一定)ように「予算制約線」の傾きを変えながらシフトさせた(2財の相対価格比の変化)場合の「最適消費点」のシフトとして表されます。
「代替効果」のイメージ
したがって、同一の「無差別曲線」にある点Eから点Gへの変化が「代替効果」を表しているため、選択肢(d)に記述されている内容が適切です。
(b)と(d)に記述されている内容が適切であるため、答えは(エ)です。
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