今回は、「運営管理 ~H28-37 物流センター管理(5)物流センター機能・設計~」について説明します。
目次
運営管理 ~平成28年度一次試験問題一覧~
平成28年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
物流センター機能・設計 -リンク-
本ブログにて「物流センター機能・設計」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- 物流センター機能・設計のまとめ
- R4-34 物流センター管理(18)物流センター機能・設計
- R3-35 物流センター管理(16)物流センター機能・設計
- R1-36 物流センター管理(11)物流センター機能・設計
- H30-34 物流センター管理(1)物流センター機能・設計
- H29-37 物流センター管理(3)物流センター機能・設計
- H27-38 物流センター管理(10)物流センター機能・設計
- H26-34 物流センター管理(13)物流センター機能・設計
物流センター運営 -リンク-
本ブログにて「物流センター運営」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- 物流センター運営のまとめ
- R4-36 物流センター管理(19)物流センター運営
- R3-37 物流センター管理(17)物流センター運営
- R2-38 物流センター管理(15)物流センター運営
- R1-37 物流センター管理(12)物流センター運営
- H30-35 物流センター管理(2)物流センター運営
- H29-38 物流センター管理(4)物流センター運営
- H28-38 物流センター管理(6)物流センター運営
- H27-34 物流センター管理(7)物流センター運営
- H27-37 物流センター管理(9)物流センター運営
- H27-38 物流センター管理(10)物流センター機能・設計
- H26-34 物流センター管理(13)物流センター機能・設計
- H26-35 物流センター管理(14)物流センター運営
物流センター
「物流センター」には、「ベンダー(サプライヤー)」から入荷した商品を在庫として保管して店舗からの出荷指示に基づき出荷するタイプの「在庫型物流センター(DC)」と、商品を在庫せずに「ベンダー(サプライヤー)」から入荷した商品を迅速に店舗に出荷するタイプの「通過型物流センター(TC)」があります。
さらに、「在庫型物流センター(DC)」には、単に在庫品を出荷するだけでなく、鮮魚や精肉の加工、部品の組立や設置といった高度な加工作業に対応できるよう準工場化された機能を有する「流通加工・在庫型物流センター(PDC)」があります。
在庫型物流センター(DC/Distribution Center)
「在庫型物流センター(DC)」とは、「ベンダー(サプライヤー)」から入荷した商品を在庫として保管しておき、店舗からの出荷指示に基づいて、在庫品から商品をピッキングして店舗に出荷するタイプの物流センターのことをいいます。
主に、卸売業者が採用していることが多く、物流センターの中で最も一般的なタイプです。
「在庫型物流センター(DC)」の一番の特徴は、商品の在庫を保有することです。
「在庫型物流センター(DC)」は在庫を保有しているため、店舗からの「緊急を要する出荷指示」に対応することができるというメリットがありますが、在庫を保管するための広いスペースが必要になるというデメリットもあります。
「在庫型物流センター(DC)」では、「過大在庫」や「品切れ」が発生しないように「在庫管理」することが非常に重要です。
メーカーとDC間における商品の入荷処理
「在庫型物流センター(DC)」は「過大在庫」や「品切れ」が発生しないように「在庫管理」を行い、商品の在庫数が減少すると、メーカーに商品を発注して商品を補充します。
店舗とDC間における商品の出荷処理
「在庫型物流センター(DC)」は、店舗から受注すると「在庫型物流センター(DC)」の在庫から商品をピッキング・仕分けして店舗に出荷します。
流通加工・在庫型物流センター(PDC/Process Distribution Center)
「流通加工・在庫型物流センター(PDC)」とは、単に在庫品を出荷するだけでなく、鮮魚や精肉の加工、部品の組立や設置といった高度な加工作業に対応できるよう準工場化された機能を有するタイプの物流センターのことをいいます。
加工処理を行うという付加価値を付けることができますが、労働力や設備投資が必要となります。
通過型物流センター(TC/Transfer Center)
「通過型物流センター(TC)」とは、商品を在庫せず、「ベンダー(サプライヤー)」から入荷した商品を迅速に店舗に出荷するタイプの物流センターのことをいいます。
「通過型物流センター(TC)」の一番の特徴は、商品の在庫を保有しないことです。
「通過型物流センター(TC)」は在庫を保有していないため、在庫を保管するためのスペースが不要であるというメリットがありますが、店舗からの「緊急を要する出荷指示」に対応することができないというデメリットもあります。
「通過型物流センター(TC)」は、鮮度が重視される商品を取り扱う店舗や、店舗面積が狭く商品を陳列するスペースが少ない店舗への商品配送で多く利用される「多頻度小口配送」に活用されます。「多頻度小口配送」では、商品を配送する回数は多くなりますが、1回の配送で納品する商品の量が少ないため、店舗で保有する平均在庫量を少なくすることができます。
「通過型物流センター(TC)」では、店舗からの注文情報に基づき「ベンダー(サプライヤー)」から入荷した商品を迅速に出荷する必要があるため、情報システム(WMS)などを導入してリアルタイムに最新の入荷・出荷情報を管理することが非常に重要です。
「通過型物流センター(TC)」には「ベンダー仕分け型」と「センター仕分け型」があります。
ベンダー仕分け型
「ベンダー仕分け型」とは、「ベンダー(サプライヤー)」が商品を店舗別に仕分けた状態で「通過型物流センター(TC)」に納品する方式のことをいいます。
「ベンダー仕分け型」の場合、「通過型物流センター(TC)」は「荷合わせ作業」を実施してから店舗に出荷します。
センター仕分け型
「センター仕分け型」とは、「ベンダー(サプライヤー)」が商品の注文総量に基づき、商品別に「通過型物流センター(TC)」に納品する方式のことをいいます。
「センター仕分け型」の場合、「通過型物流センター(TC)」は納品された商品に対してピッキング・仕分け作業を実施してから店舗に出荷します。
クロスドッキング
「クロスドッキング」とは、ベンダーから入荷した貨物(商品)を、物流センターで開梱することなく、パレットやケース単位で仕分けてトラックの積み替えのみを行って出荷する仕組みのことをいいます。
「クロスドッキング」の語源は、物流センターの「荷受場(ドック)」から「出荷場(ドック)」に貨物(商品)を通過(クロス)させるという意味に由来していると言われています。
「通過型物流センター(TC)」は、ベンダーから入荷した貨物(商品)を開梱した後、検品や仕分けを行いますが、「クロスドッキング」では、貨物(商品)を開梱しないという違いがあります。
包装
「包装」とは、物品の輸送、保管などにあたって価値及び状態を保護するために適切な材料、容器などを物品に施す技術および施した状態のことをいいます。
英米では、包装を施す行為や技法のことを「Packaging」、包装された物・製品のことを「Package」と明確に区別していますが、日本ではこれらを区別せずに「包装」と呼んでいます。
包装の分類(形態による分類)
「包装」は、その形態により「個装」「内装」「外装」に分類されます。
包装の分類 | 定義 |
個装 | 物品個々の包装で、物品の商品価値を高めるためもしくは物品個々を保護するための適切な材料、容器、それらを物品に施す技術または施した状態。商品として表示などの情報伝達の媒体にすることもできる。(JISZ0108-1003) |
内装 | 包装貨物の内部の包装で、物品に対する水、湿気、光、熱、衝撃などを考慮した適切な材料、容器、それらを物品に施す技術または施した状態。(JISZ0108-1004) |
外装 | 包装貨物の外部の包装で、物品もしくは放送物品を箱、袋、たる、缶などの容器に入れまたは無容器のまま結束し、記号、荷印などを施した材料、容器、または施した状態。(JISZ0108-1005) |
包装の分類(形態による分類以外も含む)
「包装」は、形態以外にも様々な観点に基づき分類されます。
分類 | 説明 |
形態による分類 | 個装、内装、外装 |
用途による分類 | 消費者包装(商業包装)、工業包装(輸送包装) |
仕向け地別による分類 | 国内包装、輸出包装、特殊包装(美術品包装、軍需品包装等) |
輸送手段別の分類 | トラック用、貨車用、船舶用、航空機用 |
使用される包装材料別の分類 | 木箱、樽詰、紙袋、段ボール、紙器、ガラスびん、軟包装、プラスチック容器、金属缶など |
包装方法別の分類 | 防湿・防水包装、ガス遮断包装、真空・ガス置換包装、無菌・クリーン包装、耐熱・耐寒包装、鮮度保持包装、防錆包装、輸出貨物包装、危険物包装(放射性物質・工業薬品・爆発物引火性)など |
商品別の分類 | 食品包装、医薬・医療品包装、化粧品包装、日用雑貨包装、家電包装、電子機器包装、精密機械包装、照明機器包装など |
「形態による分類」と「用途による分類」の関係
「個装」は「消費者包装(商業包装)」であり、「内装」「外装」は「工業包装(輸送包装)」です。「形態による分類」と「用途による分類」の関係は以下の通りです。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成28年度 第37問】
物流センターの機能に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア クロスドッキングとは、物流センターの荷受場で、入荷品を事前出荷通知に基づき保管するか出荷するかを識別して、出荷品を出荷場に通過させることである。
イ 店舗に対して一括物流を行うには、物流センターで在庫を持つ必要がある。
ウ 店舗の発注から店舗への納品までの期間は、一般的に、在庫を持たない物流センターを経由して納品する方が、在庫を持つ物流センターを経由して納品するよりも短い。
エ 包装は、内装と外装に大別され、前者を商業包装、後者を工業包装ともいう。
オ 保管機能とは、商品を一定の場所で、品質、数量の保持など適正に管理し、空間的懸隔と時間的懸隔を克服するものである。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
「物流センターの機能」に関する知識を問う問題です。
(ア)適切です。
「クロスドッキング」とは、ベンダーから入荷した貨物(商品)を、物流センターで開梱することなく、パレットやケース単位で仕分けてトラックの積み替えのみを行って出荷する仕組みのことをいいます。
「クロスドッキング」の語源は、物流センターの「荷受場(ドック)」から「出荷場(ドック)」に貨物(商品)を通過(クロス)させるという意味に由来していると言われています。
「通過型物流センター(TC)」では、ベンダーから入荷した貨物(商品)を開梱した後、検品や仕分けを行いますが、「クロスドッキング」では、貨物(商品)を開梱しないという違いがあります。
したがって、クロスドッキングとは、物流センターの荷受場で、入荷品を事前出荷通知に基づき保管するか出荷するかを識別して、出荷品を出荷場に通過させることであるため、選択肢の内容は適切です。
(イ) 不適切です。
物流センターで在庫を持つ「在庫型物流センター(DC)」でも、物流センターで在庫を持たない「通過型物流センター(TC)」でも、店舗に対して一括物流を行うことができるため、選択肢の内容は不適切です。
(ウ) 不適切です。
「在庫型物流センター(DC)」は、商品を在庫しているため、店舗からの発注を受けたら、在庫から商品をピッキングして出荷するタイプの物流センターであり、顧客からの「緊急を要する出荷指示」に対応することができる物流センターです。
一方で、「通過型物流センター(TC)」は、商品を在庫していないため、店舗からの発注を受けてから、ベンダーに商品の発注を行って、商品を入荷したら迅速に仕分けて出荷するタイプの物流センターです。
したがって、店舗の発注から店舗への納品までの期間は、一般的に、在庫を持つ物流センターを経由して納品する方が、在庫を持たない物流センターを経由して納品するよりも短いため、選択肢の内容は不適切です。
(エ) 不適切です。
「包装」は、その形態によって「個装、内装、外装」に分類され、またその用途によって「消費者包装(商業包装)、工業包装(輸送包装)」に分類されます。
「形態による分類」と「用途による分類」の関係は以下の通りです。
上図を文章にすると、包装は「個装」と「内装」と「外装」に大別され、「個装」を「消費者包装(商業包装)」といい、「内装」と「外装」を「工業包装(輸送包装)」というため、選択肢の内容は不適切です。
(オ) 不適切です。
「物流」は「空間的懸隔」と「時間的懸隔」を克服する機能を担っています。
「物流」の機能は「輸送機能」と「保管機能」に大別され、商品を製造拠点から店舗に移転する「輸送機能」により「空間的懸隔」を克服して、一定の場所で商品の品質や数量を適正に管理して、商品の価値を維持する「保管機能」により「時間的懸隔」を克服します。
したがって、「保管機能」とは、商品を一定の場所で、品質、数量の保持など適正に管理し、「時間的懸隔」を克服するものであり、「空間的懸隔」と「時間的懸隔」の両方を克服するものではないため、選択肢の内容は不適切です。
答えは(ア)です。
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