今回は、「運営管理 ~H29-38 物流センター管理(4)物流センター運営~」について説明します。
目次
運営管理 ~平成29年度一次試験問題一覧~
平成29年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
物流センター運営 -リンク-
本ブログにて「物流センター運営」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- 物流センター運営のまとめ
- R4-36 物流センター管理(19)物流センター運営
- R3-37 物流センター管理(17)物流センター運営
- R2-38 物流センター管理(15)物流センター運営
- R1-37 物流センター管理(12)物流センター運営
- H30-35 物流センター管理(2)物流センター運営
- H28-37 物流センター管理(5)物流センター機能・設計
- H28-38 物流センター管理(6)物流センター運営
- H27-34 物流センター管理(7)物流センター運営
- H27-37 物流センター管理(9)物流センター運営
- H27-38 物流センター管理(10)物流センター機能・設計
- H26-34 物流センター管理(13)物流センター機能・設計
- H26-35 物流センター管理(14)物流センター運営
ABC分析
「ABC分析」では、横軸に在庫の品目を金額または量の多い順番に並べて、縦軸に在庫の金額または量を描いた「ABC曲線」により、在庫の品目をグルーピングして、A品目、B品目、C品目に該当するグループごとに在庫管理方法を決定していきます。
ABC分析のイメージ
「ABC分析」は「パレート分析」と同様のグラフを使います。
横軸に品目を取る場合は「ABC分析」といい、横軸に問題や課題を取る場合は「パレート分析」といいます。
在庫管理方式の適用例
「ABC分析」によってグルーピングされた在庫の品目ごとに「在庫管理方式」を採用して在庫管理を行います。あくまで一例ですが、「A品目」に分類されたものについては、重点的に在庫を管理する必要があるため「定期発注方式」を採用して、在庫管理を行います。
- A品目:定期発注方式
- B品目:定量発注方式
- C品目:ダブルビン方式
ABC分析
多くの在庫品目を取り扱うときそれを品目の取り扱い金額又は量の大きい順に並べて、A、B、Cの3種類に区分し、管理の重点を決めるのに用いる分析。(JISZ8141-7302)
ロケーション管理
「ロケーション管理」とは、物流センター内における商品の保管場所(ロケーション)に関する運用方法のことをいい、商品を保管する場所(ロケーション)をあらかじめ決めておく「固定ロケーション」と、商品を入荷する都度、最適な場所(ロケーション)を選んで保管する「フリーロケーション」の2種類の方法があります。
「ロケーション管理」では、物流センター内におけるスペースの保管効率や、商品の入出庫状況・在庫状況を管理することが重要です。
固定ロケーション
「固定ロケーション」とは、商品を保管する場所(ロケーション)をあらかじめ決めておく運用方法です。
「ABC分析」を行い、出荷頻度の高い商品を作業開始位置や出荷口付近に配置するなど、定期的に商品の保管場所を見直すことにより、作業効率と保管効率を向上することができます。
- メリット
商品の保管場所を固定するため、ピッキングで商品を探す時間が短縮され、作業効率が高くなる。 - デメリット
保管する商品がなくても場所をキープしておかなければならないためスペース効率が低い。
商品の入替が頻繁に発生する場合は、保管場所を変更するオペレーションが頻繁に発生する
フリーロケーション
「フリーロケーション」とは、商品を保管する場所をあらかじめ決めておくのではなく、商品を入荷する都度、最適な場所(ロケーション)を選んで保管する運用方法です。
「フリーロケーション」では、空いているスペースに入荷した商品を保管していくため、商品の保管場所が決まっておらず、作業員がピッキングするには商品がどこにあるかを探す手間がかかります。そのため、「自動倉庫システム」を導入するなどの手段によって管理を自動化することが前提とされています。
- メリット
空いているスペースに入荷した商品を保管していくことができ、保管スペースを効率的に活用することができる - デメリット
商品の保管場所が決まっておらず、商品がどこにあるかを探す手間がかかるため、人によるピッキング作業の効率が悪くなる
ダブルトランザクション
「ダブルトランザクション」とは、「固定ロケーション」と「フリーロケーション」を組み合わせたロケーション管理方法のことをいいます。
「ダブルトランザクション」では、商品の保管場所を「ピッキングエリア」と「ストックエリア」に区分して、ピッキングエリアは「固定ロケーション」で、ストックエリアは「フリーロケーション」で運用します。
「ピッキングエリア」では「固定ロケーション」のメリットであるピッキングの作業効率の高さを享受して、「ストックエリア」では「フリーロケーション」のメリットであるスペースの保管効率の高さを享受することができますが、デメリットとして定期的に「ストックエリア」から「ピッキングエリア」に商品を補充する作業が発生します。
ピッキング
「ピッキング」とは、作業者(ピッカー)が、伝票や指示書にしたがって、保管場所から必要な商品を取り出す作業のことをいいます。
ピッキングの種類
「ピッキング」は、「トータルピッキング(種まき方式)」と「シングルピッキング(摘み取り方式)」の2種類の方法に分類されます。
トータルピッキング(種まき方式)
「トータルピッキング」とは、複数の出荷先からの出荷オーダーの商品をまとめてピッキング(取り出す)した後、個別の出荷オーダーごとに商品を仕分ける作業方法のことであり、「種まき方式」とも呼ばれています。
同一商品を何度もピッキングする無駄を省くことができるため作業員の移動距離を短くすることができるというメリットがありますが、商品の仕分け作業に熟練度を要するというデメリットもあります。
仕分け
「仕分け」とは、物品を品種別、送り先方面別、顧客別などに分ける作業のことをいいます。
シングルピッキング(摘み取り方式)
「シングルピッキング」とは、1つの出荷オーダーごとに保管場所から商品をピッキング(取り出す)する最も基本的な作業方法のことであり、「摘み取り方式」「オーダーピッキング」とも呼ばれています。
作業内容がシンプルのため作業精度を高く維持できるというメリットがありますが、同一商品を何度もピッキングするため作業員の移動距離が長くなるというデメリットもあります。
デジタルピッキング
「デジタルピッキング」とは、保管棚に取り付けたデジタル表示器の指示にしたがって、作業者が商品をピッキングする仕組みのことをいいます。
作業者はライトの付いた保管棚に行って、デジタル表示器に表示された数量をピッキングするため、商品知識が無くても正確に仕分け作業を実施することができます。
ピッキングカートシステム
「ピッキングカートシステム」とは、台車(カート)に表示された指示にしたがって、作業者が保管棚から商品をピッキングする仕組みのことをいいます。
3PL(Third Party Logistics)
「3PL(サードパーティーロジスティクス:Third Party Logistics)」とは、荷主企業の視点に立って第三者である企業が物流戦略の企画立案や物流システムの構築について提案を行い、包括的に受託して実行することをいいます。
「3PL(Third Party Logistics)」は「アセット型(アセットベース型)」と「ノンアセット型(ナレッジベース型)」に分類することができます。
「アセット型(アセットベース型)」では、倉庫や車両などの施設や設備を所有している業者が物流戦略の企画立案から物流業務まで実行します。一方、「ノンアセット型(ナレッジベース型)」では、倉庫や車両などの施設や設備を所有しない業者が物流戦略の企画立案や物流システムの構築を行い、実際の物流業務は別の業者が実行します。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成29年度 第38問】
物流センターの運営に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 3PL(Third Party Logistics)とは、荷主の物流業務を代行するサービスのことであり、発荷主と着荷主との関係で第三者に当たることからこのように呼ばれる。
イ ABC 分析は、多くの在庫品目を取り扱うとき、在庫品目をその取扱数量の多い順や単価の高い順に並べて区分し、在庫管理の重点を決めるのに用いる。
ウ シングルピッキングは、注文伝票ごとにピッキングすることであり、一般的に種まき方法で行われる。
エ 有効在庫とは、現時点で利用可能な手持在庫のことである。
オ ロケーション管理とは、どの商品が、どの保管場所にあるかを管理する保管方式のことであり、保管場所を特定の場所に決めておく方式と入庫の都度自由に決定する方式がある。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
「物流センター運営」に関する知識を問う問題です。
(ア) 不適切です。
選択肢には「荷主の物流業務を代行するサービス」との記述がありますが、「3PL(Third Party Logistics)」は、単なる「物流業務の代行」ではなく、荷主企業の視点に立って第三者である企業が物流戦略の企画立案や物流システムの構築について提案を行い、包括的に受託して実行することであるため、選択肢の内容は不適切です。
(イ) 不適切です。
「ABC 分析」は、多くの在庫品目を取り扱うとき、在庫品目をその取扱数量の多い順や総額の高い順に並べて区分して、在庫管理の重点を決めていきます。
非常に細かいですが、「単価」ではなく「総額」で並べるため、選択肢の内容は不適切です。
(ウ) 不適切です。
「シングルピッキング」は、1つの出荷オーダーごとに保管場所から商品を取りだす作業方法であり、「摘み取り方式」「オーダーピッキング」と呼ばれているため、選択肢の内容は不適切です。
(エ) 不適切です。
「有効在庫」とは、現物が手元にある在庫(手持在庫)から注文又は出庫要求に対して在庫台帳の在庫残高から割り当て引き落とした量(引当量)を差し引いて、そこに発注済みであるがまだ手元にない在庫(発注残)を加えた在庫のことをいいます。
- 有効在庫 = 手持在庫 - 引当量 + 発注残
現時点で利用可能な手持在庫のことは、そのまま「手持在庫」というため、選択肢の内容は不適切です。
有効在庫
手持在庫に加えて発注残及び引当済みの量(引当量)を考慮した、実質的に利用可能な在庫量。
備考 有効在庫量は、次の式で表される。
有効在庫 = 手持在庫 - 引当量 + 発注残(JISZ8141-7307)
発注残
発注済みであるがまだ手元にない在庫量。(JISZ8141-7308)
手持在庫
現物が手元にある在庫量。
備考 実在庫又は現品在庫ともいう。(JISZ8141-7309)
在庫引当
注文又は出庫要求に対して在庫台帳の在庫残高からその量を割り当て引き落とす行為。(JISZ8141-7310)
(オ) 適切です。
「ロケーション管理」とは、物流センター内における商品の保管場所(ロケーション)に関する運用方法のことをいい、商品を保管する場所(ロケーション)をあらかじめ決めておく「固定ロケーション」と、商品を入荷する都度、最適な場所(ロケーション)を選んで保管する「フリーロケーション」の2種類の方式があるため、選択肢の内容は適切です。
答えは(オ)です。
コメント