今回は、「運営管理 ~H28-38 物流センター管理(6)物流センター運営~」について説明します。
目次
運営管理 ~平成28年度一次試験問題一覧~
平成28年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
物流センター運営 -リンク-
本ブログにて「物流センター運営」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- 物流センター運営のまとめ
- R4-36 物流センター管理(19)物流センター運営
- R3-37 物流センター管理(17)物流センター運営
- R2-38 物流センター管理(15)物流センター運営
- R1-37 物流センター管理(12)物流センター運営
- H30-35 物流センター管理(2)物流センター運営
- H29-38 物流センター管理(4)物流センター運営
- H28-37 物流センター管理(5)物流センター機能・設計
- H27-34 物流センター管理(7)物流センター運営
- H27-37 物流センター管理(9)物流センター運営
- H27-38 物流センター管理(10)物流センター機能・設計
- H26-34 物流センター管理(13)物流センター機能・設計
- H26-35 物流センター管理(14)物流センター運営
ピッキング
「ピッキング」とは、作業者(ピッカー)が、伝票や指示書にしたがって、保管場所から必要な商品を取り出す作業のことをいいます。
ピッキングの種類
「ピッキング」は、「トータルピッキング(種まき方式)」と「シングルピッキング(摘み取り方式)」の2種類の方法に分類されます。
トータルピッキング(種まき方式)
「トータルピッキング」とは、複数の出荷先からの出荷オーダーの商品をまとめてピッキング(取り出す)した後、個別の出荷オーダーごとに商品を仕分ける作業方法のことであり、「種まき方式」とも呼ばれています。
同一商品を何度もピッキングする無駄を省くことができるため作業員の移動距離を短くすることができるというメリットがありますが、商品の仕分け作業に熟練度を要するというデメリットもあります。
仕分け
「仕分け」とは、物品を品種別、送り先方面別、顧客別などに分ける作業のことをいいます。
シングルピッキング(摘み取り方式)
「シングルピッキング」とは、1つの出荷オーダーごとに保管場所から商品をピッキング(取り出す)する最も基本的な作業方法のことであり、「摘み取り方式」「オーダーピッキング」とも呼ばれています。
作業内容がシンプルのため作業精度を高く維持できるというメリットがありますが、同一商品を何度もピッキングするため作業員の移動距離が長くなるというデメリットもあります。
デジタルピッキング
「デジタルピッキング」とは、保管棚に取り付けたデジタル表示器の指示にしたがって、作業者が商品をピッキングする仕組みのことをいいます。
作業者はライトの付いた保管棚に行って、デジタル表示器に表示された数量をピッキングするため、商品知識が無くても正確に仕分け作業を実施することができます。
ピッキングカートシステム
「ピッキングカートシステム」とは、台車(カート)に表示された指示にしたがって、作業者が保管棚から商品をピッキングする仕組みのことをいいます。
棚卸
「棚卸」とは、一定時点における商品・製品・原材料などの資産の保有総量(在庫有高)を確認することをいいます。
棚卸の目的
企業会計において、商品・製品・原材料などの資産のことを「棚卸資産」といいます。
「棚卸資産」は、日々の業務においてその数量が増減するため、受入や払出の状況を帳簿に記録して管理しますが、実際には帳簿への記録ミスなどの理由により、実在する在庫量とズレが発生するため、「棚卸」を実施して、一定時点における帳簿上の在庫量と実在する在庫量を一致させる必要があります。
棚卸の手順
「棚卸」の手順としては、実在する在庫量(実在庫)を確認(実地棚卸)して、その結果が帳簿上の在庫量(理論在庫)と一致していない場合は、実在する在庫量に合わせて帳簿を修正(帳簿棚卸)します。
なお、「棚卸」に際しては、「棚卸資産」の数量だけを確認するのではなく、「品質低下」や「陳腐化」などの理由により利用価値を失っている資産についても確認を行います。利用価値を失っている資産は廃棄などの対処を行うこととなり、企業の売上には貢献できないため、「棚卸資産」の在庫から控除する必要があります。
実地棚卸と帳簿棚卸
「棚卸」には、実在する在庫量を確認する「実地棚卸」と、実在する在庫量に合わせて帳簿を修正する「帳簿棚卸」があります。
実地棚卸
「実地棚卸」とは、実在する在庫量を確認することをいい、「一斉棚卸」と「循環棚卸」に区分されます。
一斉棚卸
「一斉棚卸」とは、決算期末などの定期的に設定した時点において、全ての「棚卸資産」を対象に在庫量を確認することをいいます。
循環棚卸
「循環棚卸」は、「サイクルカウンティング」とも呼ばれ、「棚卸資産」をグループに分類して、グループごとに日時を変えて在庫量を順次確認していくことをいいます。
「循環棚卸」には、保管場所や属性などで「棚卸資産」を分類して順番に棚卸を実施していく方法や、ABC分析により「棚卸資産」を「A品目」「B品目」「C品目」に分類して、重点的に在庫管理をすべき「A品目」は数日に一度の周期で棚卸を実施して、在庫管理の必要性が低い「C品目」は「循環棚卸」は実施せずに「一斉棚卸」においてのみ棚卸を実施するといったように、在庫管理の重要性に基づき棚卸を実施していく方法があります。
帳簿棚卸
「帳簿棚卸」とは、実在する在庫量に合わせて帳簿を修正することをいいます。
「帳簿棚卸」については「財務・会計」において説明しているページがありますので、詳細について確認したい方は、以下のコンテンツを参照してください。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成28年度 第38問】
物流センターの運営に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 仕分けとは、物品を品種別、送り先方面別、顧客別などに分ける作業のことであり、シングルピッキングの後に行われ、トータルピッキングの後には行われない。
イ 棚卸方法の一つである循環棚卸は、実在庫量と理論在庫量の差異を補正するために行われる。
ウ 荷主は、物流センターの運営を物流事業者に委託するとき、委託先の物流事業者が所有する物流センターを利用しなければならない。
エ ピッキングとは、保管場所から必要な物品を取り出す作業のことであり、ピッカーが保管場所まで移動しなければならない。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
物流センターの運営に関する知識を問う問題です。
(ア) 不適切です。
「シングルピッキング」とは、1つの出荷オーダーごとに保管場所から商品をピッキング(取り出す)する最も基本的な作業方法のことであり、「摘み取り方式」「オーダーピッキング」とも呼ばれています。
一方、「トータルピッキング」とは、複数の出荷先からの出荷オーダーの商品をまとめてピッキング(取り出す)した後、個別の出荷オーダーごとに商品を仕分ける作業方法のことであり、「種まき方式」とも呼ばれています。
「トータルピッキング」では、商品をまとめてピッキング(取り出す)した後、仕分けを実施しますが、「シングルピッキング」では、出荷オーダーごとに商品をピッキング(取り出す)するため、ピッキングした後、仕分けを実施する必要はありません。
したがって、仕分けとは、物品を品種別、送り先方面別、顧客別などに分ける作業のことであり、「トータルピッキングの後」には行われますが、「シングルピッキング」の後には行われないため、選択肢の内容は不適切です。
(イ) 適切です。
「棚卸」とは、実在する在庫量(実在庫)を確認(実地棚卸)して、その結果が帳簿上の在庫量(理論在庫)と一致していない場合は、実在する在庫量に合わせて帳簿を修正(帳簿棚卸)することをいいます。
選択肢の文中にある「循環棚卸」とは、実在する在庫量を確認する「実地棚卸」の1つであり、実在庫量と理論在庫量の差異を補正するために行われるため、選択肢の内容は適切です。
(ウ) 不適切です。
荷主が物流センターの運営を物流事業者に委託するとき、委託先の物流事業者が所有する物流センターを利用するのではなく、荷主が所有する物流センターで物流業務のみを委託することもできるため、選択肢の内容は不適切です。
(エ) 不適切です。
「ピッキング」とは、保管場所から必要な物品を取り出す作業のことをいいますが、「自動倉庫システム」等を導入すれば、ピッカーが保管場所まで移動しなくても、自動で物品を入出庫することができるため、選択肢の内容は不適切です。
自動倉庫システム
材料、部品、中間仕掛品、製品などを必要に応じて自動で入出庫・格納するとともに、品目の種類又は在庫量の情報を収集・管理する機能(自動入出庫管理システム)」をもつ倉庫システム。(JISZ8141-2305)
答えは(イ)です。
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