今回は、「運営管理 ~H30-34 物流センター管理(1)物流センター機能・設計~」について説明します。
目次
運営管理 ~平成30年度一次試験問題一覧~
平成30年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
物流センター機能・設計 -リンク-
本ブログにて「物流センター機能・設計」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- 物流センター機能・設計のまとめ
- R4-34 物流センター管理(18)物流センター機能・設計
- R3-35 物流センター管理(16)物流センター機能・設計
- R1-36 物流センター管理(11)物流センター機能・設計
- H29-37 物流センター管理(3)物流センター機能・設計
- H28-37 物流センター管理(5)物流センター機能・設計
- H27-38 物流センター管理(10)物流センター機能・設計
- H26-34 物流センター管理(13)物流センター機能・設計
物流センター
「物流センター」には、「ベンダー(サプライヤー)」から入荷した商品を在庫として保管して店舗からの出荷指示に基づき出荷するタイプの「在庫型物流センター(DC)」と、商品を在庫せずに「ベンダー(サプライヤー)」から入荷した商品を迅速に店舗に出荷するタイプの「通過型物流センター(TC)」があります。
さらに、「在庫型物流センター(DC)」には、単に在庫品を出荷するだけでなく、鮮魚や精肉の加工、部品の組立や設置といった高度な加工作業に対応できるよう準工場化された機能を有する「流通加工・在庫型物流センター(PDC)」があります。
在庫型物流センター(DC/Distribution Center)
「在庫型物流センター(DC)」とは、「ベンダー(サプライヤー)」から入荷した商品を在庫として保管しておき、店舗からの出荷指示に基づいて、在庫品から商品をピッキングして店舗に出荷するタイプの物流センターのことをいいます。
主に、卸売業者が採用していることが多く、物流センターの中で最も一般的なタイプです。
「在庫型物流センター(DC)」の一番の特徴は、商品の在庫を保有することです。
「在庫型物流センター(DC)」は在庫を保有しているため、店舗からの「緊急を要する出荷指示」に対応することができるというメリットがありますが、在庫を保管するための広いスペースが必要になるというデメリットもあります。
「在庫型物流センター(DC)」では、「過大在庫」や「品切れ」が発生しないように「在庫管理」することが非常に重要です。
メーカーとDC間における商品の入荷処理
「在庫型物流センター(DC)」は「過大在庫」や「品切れ」が発生しないように「在庫管理」を行い、商品の在庫数が減少すると、メーカーに商品を発注して商品を補充します。
店舗とDC間における商品の出荷処理
「在庫型物流センター(DC)」は、店舗から受注すると「在庫型物流センター(DC)」の在庫から商品をピッキング・仕分けして店舗に出荷します。
流通加工・在庫型物流センター(PDC/Process Distribution Center)
「流通加工・在庫型物流センター(PDC)」とは、単に在庫品を出荷するだけでなく、鮮魚や精肉の加工、部品の組立や設置といった高度な加工作業に対応できるよう準工場化された機能を有するタイプの物流センターのことをいいます。
加工処理を行うという付加価値を付けることができますが、労働力や設備投資が必要となります。
通過型物流センター(TC/Transfer Center)
「通過型物流センター(TC)」とは、商品を在庫せず、「ベンダー(サプライヤー)」から入荷した商品を迅速に店舗に出荷するタイプの物流センターのことをいいます。
「通過型物流センター(TC)」の一番の特徴は、商品の在庫を保有しないことです。
「通過型物流センター(TC)」は在庫を保有していないため、在庫を保管するためのスペースが不要であるというメリットがありますが、店舗からの「緊急を要する出荷指示」に対応することができないというデメリットもあります。
「通過型物流センター(TC)」は、鮮度が重視される商品を取り扱う店舗や、店舗面積が狭く商品を陳列するスペースが少ない店舗への商品配送で多く利用される「多頻度小口配送」に活用されます。「多頻度小口配送」では、商品を配送する回数は多くなりますが、1回の配送で納品する商品の量が少ないため、店舗で保有する平均在庫量を少なくすることができます。
「通過型物流センター(TC)」では、店舗からの注文情報に基づき「ベンダー(サプライヤー)」から入荷した商品を迅速に出荷する必要があるため、情報システム(WMS)などを導入してリアルタイムに最新の入荷・出荷情報を管理することが非常に重要です。
「通過型物流センター(TC)」には「ベンダー仕分け型」と「センター仕分け型」があります。
ベンダー仕分け型
「ベンダー仕分け型」とは、「ベンダー(サプライヤー)」が商品を店舗別に仕分けた状態で「通過型物流センター(TC)」に納品する方式のことをいいます。
「ベンダー仕分け型」の場合、「通過型物流センター(TC)」は「荷合わせ作業」を実施してから店舗に出荷します。
センター仕分け型
「センター仕分け型」とは、「ベンダー(サプライヤー)」が商品の注文総量に基づき、商品別に「通過型物流センター(TC)」に納品する方式のことをいいます。
「センター仕分け型」の場合、「通過型物流センター(TC)」は納品された商品に対してピッキング・仕分け作業を実施してから店舗に出荷します。
クロスドッキング
「クロスドッキング」とは、ベンダーから入荷した貨物(商品)を、物流センターで開梱することなく、パレットやケース単位で仕分けてトラックの積み替えのみを行って出荷する仕組みのことをいいます。
「クロスドッキング」の語源は、物流センターの「荷受場(ドック)」から「出荷場(ドック)」に貨物(商品)を通過(クロス)させるという意味に由来していると言われています。
「通過型物流センター(TC)」は、ベンダーから入荷した貨物(商品)を開梱した後、検品や仕分けを行いますが、「クロスドッキング」では、貨物(商品)を開梱しないという違いがあります。
カテゴリー納品
「カテゴリー納品」とは、店舗に商品を出荷する際、店舗の売り場ゾーンの構成に合わせて、同一種類(カテゴリー)の商品を取りまとめて納品する形態のことをいいます。
店舗としては、同一種類(カテゴリー)の商品を取りまとめて納品されるため、商品を売場に補充する作業の時間を短縮することができます。
店舗への納品頻度は、店舗の販売状況に左右され、売れ筋の商品で構成されたカテゴリーの納品頻度は多くなり、あまり売れない商品で構成されたカテゴリーの納品頻度は少なくなります。
「カテゴリー納品」は、店舗からの要望に応じて、ケース単位、ボール単位、ピース単位など細かく設定することはできますが、「カテゴリー納品」の設定を細かくすると、物流センターなどにおける仕分けの作業コストが上昇し、各店舗に出荷する商品の総量は変わらなくても出荷する貨物の数量が増えるなど積載効率が低下します。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成30年度 第34問】
チェーン小売業の物流センターの機能に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 在庫型物流センターを利用した取引における物流センターの在庫の所有権は、小売業の仕入条件が店頭渡しの場合でも小売業が持つことが一般的である。
イ 物流センターから店舗に対するカテゴリー納品は、ケース単位の商品で行われ、ケース単位未満のボール単位やピース単位では行われない。
ウ 物流センターに対して商品を店舗別に仕分けて納入することは、取引に利用する物流センターの種類が在庫型か通過型かにかかわらず行われない。
エ 物流センターを利用した取引では、商品の所有権の移転経路が「製造業→卸売業→小売業」である場合でも、物流経路は卸売業を経由させないことが可能である。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
「物流センターの機能」に関する知識を問う問題です。
(ア) 不適切です。
「物流センターの在庫の所有権」と記述されているため、この選択肢は「在庫」を保有する「在庫型物流センター(DC)」に関する記述内容です。
商品の「所有権」は「在庫型物流センター(DC)」から店舗に納品されたタイミングで、「在庫型物流センター(DC)」から「店舗」に移ります。
「店頭渡し」とは、商品の仕入れ価格に輸送費用を含んで提供する引き渡し方法のことをいいますが、「店頭渡し」だとしても、商品が店舗に納品されるまでの所有権は卸売業(在庫型物流センター(DC))が保有することが一般的なため、選択肢の内容は不適切です。
(イ) 不適切です。
「カテゴリー納品」とは、店舗に商品を出荷する際、店舗の売り場ゾーンの構成に合わせて、同一種類(カテゴリー)の商品を取りまとめて納品する形態のことをいいます。
「カテゴリー納品」は、ケース単位、ボール単位、ピース単位といったいずれの単位でも、取りまとめが行われるため、選択肢の内容は不適切です。
「ケース単位」「ボール単位」「ピース単位」とは以下を示しています。
- ケース:外装(多くはダンボール)の単位
- ボール:外装の中に、入っている小箱の単位
- ピース:商品一つ一つの単位
(ウ) 不適切です。
ベンダー仕分け型の「通過型物流センター(TC)」では、「ベンダー(サプライヤー)」が店舗別に仕分けてから、物流センターに商品を入荷するため、選択肢の内容は不適切です。
(エ) 適切です。
商品の所有権が「製造業→卸売業→小売業」と遷移する場合でも、物流経路としては、「メーカ」や「ベンダー(サプライヤ)」から店舗に直接納品することができるため、選択肢の内容は適切です。
答えは(エ)です。
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