今回は、「運営管理 ~R3-35 物流センター管理(16)物流センター機能・設計~」について説明します。
目次
運営管理 ~令和3年度一次試験問題一覧~
令和3年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
物流センター機能・設計 -リンク-
本ブログにて「物流センター機能・設計」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- 物流センター機能・設計のまとめ
- R4-34 物流センター管理(18)物流センター機能・設計
- R1-36 物流センター管理(11)物流センター機能・設計
- H30-34 物流センター管理(1)物流センター機能・設計
- H29-37 物流センター管理(3)物流センター機能・設計
- H28-37 物流センター管理(5)物流センター機能・設計
- H27-38 物流センター管理(10)物流センター機能・設計
- H26-34 物流センター管理(13)物流センター機能・設計
物流センター
「物流センター」には、「ベンダー(サプライヤー)」から入荷した商品を在庫として保管して店舗からの出荷指示に基づき出荷するタイプの「在庫型物流センター(DC)」と、商品を在庫せずに「ベンダー(サプライヤー)」から入荷した商品を迅速に店舗に出荷するタイプの「通過型物流センター(TC)」があります。
さらに、「在庫型物流センター(DC)」には、単に在庫品を出荷するだけでなく、鮮魚や精肉の加工、部品の組立や設置といった高度な加工作業に対応できるよう準工場化された機能を有する「流通加工・在庫型物流センター(PDC)」があります。
在庫型物流センター(DC/Distribution Center)
「在庫型物流センター(DC)」とは、「ベンダー(サプライヤー)」から入荷した商品を在庫として保管しておき、店舗からの出荷指示に基づいて、在庫品から商品をピッキングして店舗に出荷するタイプの物流センターのことをいいます。
主に、卸売業者が採用していることが多く、物流センターの中で最も一般的なタイプです。
「在庫型物流センター(DC)」の一番の特徴は、商品の在庫を保有することです。
「在庫型物流センター(DC)」は在庫を保有しているため、店舗からの「緊急を要する出荷指示」に対応することができるというメリットがありますが、在庫を保管するための広いスペースが必要になるというデメリットもあります。
「在庫型物流センター(DC)」では、「過大在庫」や「品切れ」が発生しないように「在庫管理」することが非常に重要です。
メーカーとDC間における商品の入荷処理
「在庫型物流センター(DC)」は「過大在庫」や「品切れ」が発生しないように「在庫管理」を行い、商品の在庫数が減少すると、メーカーに商品を発注して商品を補充します。
店舗とDC間における商品の出荷処理
「在庫型物流センター(DC)」は、店舗から受注すると「在庫型物流センター(DC)」の在庫から商品をピッキング・仕分けして店舗に出荷します。
流通加工・在庫型物流センター(PDC/Process Distribution Center)
「流通加工・在庫型物流センター(PDC)」とは、単に在庫品を出荷するだけでなく、鮮魚や精肉の加工、部品の組立や設置といった高度な加工作業に対応できるよう準工場化された機能を有するタイプの物流センターのことをいいます。
加工処理を行うという付加価値を付けることができますが、労働力や設備投資が必要となります。
通過型物流センター(TC/Transfer Center)
「通過型物流センター(TC)」とは、商品を在庫せず、「ベンダー(サプライヤー)」から入荷した商品を迅速に店舗に出荷するタイプの物流センターのことをいいます。
「通過型物流センター(TC)」の一番の特徴は、商品の在庫を保有しないことです。
「通過型物流センター(TC)」は在庫を保有していないため、在庫を保管するためのスペースが不要であるというメリットがありますが、店舗からの「緊急を要する出荷指示」に対応することができないというデメリットもあります。
「通過型物流センター(TC)」は、鮮度が重視される商品を取り扱う店舗や、店舗面積が狭く商品を陳列するスペースが少ない店舗への商品配送で多く利用される「多頻度小口配送」に活用されます。「多頻度小口配送」では、商品を配送する回数は多くなりますが、1回の配送で納品する商品の量が少ないため、店舗で保有する平均在庫量を少なくすることができます。
「通過型物流センター(TC)」では、店舗からの注文情報に基づき「ベンダー(サプライヤー)」から入荷した商品を迅速に出荷する必要があるため、情報システム(WMS)などを導入してリアルタイムに最新の入荷・出荷情報を管理することが非常に重要です。
「通過型物流センター(TC)」には「ベンダー仕分け型」と「センター仕分け型」があります。
ベンダー仕分け型
「ベンダー仕分け型」とは、「ベンダー(サプライヤー)」が商品を店舗別に仕分けた状態で「通過型物流センター(TC)」に納品する方式のことをいいます。
「ベンダー仕分け型」の場合、「通過型物流センター(TC)」は「荷合わせ作業」を実施してから店舗に出荷します。
センター仕分け型
「センター仕分け型」とは、「ベンダー(サプライヤー)」が商品の注文総量に基づき、商品別に「通過型物流センター(TC)」に納品する方式のことをいいます。
「センター仕分け型」の場合、「通過型物流センター(TC)」は納品された商品に対してピッキング・仕分け作業を実施してから店舗に出荷します。
クロスドッキング
「クロスドッキング」とは、ベンダーから入荷した貨物(商品)を、物流センターで開梱することなく、パレットやケース単位で仕分けてトラックの積み替えのみを行って出荷する仕組みのことをいいます。
「クロスドッキング」の語源は、物流センターの「荷受場(ドック)」から「出荷場(ドック)」に貨物(商品)を通過(クロス)させるという意味に由来していると言われています。
「通過型物流センター(TC)」は、ベンダーから入荷した貨物(商品)を開梱した後、検品や仕分けを行いますが、「クロスドッキング」では、貨物(商品)を開梱しないという違いがあります。
カテゴリー納品
「カテゴリー納品」とは、店舗に商品を出荷する際、店舗の売り場ゾーンの構成に合わせて、同一種類(カテゴリー)の商品を取りまとめて納品する形態のことをいいます。
店舗としては、同一種類(カテゴリー)の商品を取りまとめて納品されるため、商品を売場に補充する作業の時間を短縮することができます。
店舗への納品頻度は、店舗の販売状況に左右され、売れ筋の商品で構成されたカテゴリーの納品頻度は多くなり、あまり売れない商品で構成されたカテゴリーの納品頻度は少なくなります。
「カテゴリー納品」は、店舗からの要望に応じて、ケース単位、ボール単位、ピース単位など細かく設定することはできますが、「カテゴリー納品」の設定を細かくすると、物流センターなどにおける仕分けの作業コストが上昇し、各店舗に出荷する商品の総量は変わらなくても出荷する貨物の数量が増えるなど積載効率が低下します。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【令和3年度 第35問】
チェーン小売業の物流センターの機能に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 仕入先から物流センターへの納品頻度は、在庫型物流センターよりも通過型物流センターを利用する方が少なくしやすい。
イ 通過型物流センターには、各仕入先からの納品に対する店舗での荷受作業を集約する機能はない。
ウ 店舗での発注から納品までのリードタイムは、通過型物流センターよりも在庫型物流センターを利用する方が短くしやすい。
エ 物流センターから店舗へ多頻度小口配送を推進すると、店舗の平均在庫量は増加する。
オ 物流センターから店舗へのカテゴリー納品を行うと、店舗への納品回数は多くなる。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
「物流センターの機能」に関する知識を問う問題です。
(ア) 不適切です。
「在庫型物流センター(DC)」では、顧客(店舗)からの需要を予測して、ベンダー(サプライヤー)からまとめて調達した商品を在庫として確保しているのに対して、「通過型物流センター(TC)」では、顧客(店舗)から注文を受ける度に、ベンダー(サプライヤー)に発注して商品を調達するため、ベンダー(サプライヤー)から物流センターへの納品頻度は「通過型物流センター(TC)」の方が「在庫型物流センター(DC)」よりも多くなる(少なくしにくい)と考えられます。
したがって、仕入先から物流センターへの納品頻度は、在庫型物流センターよりも通過型物流センターを利用する方が少なくしやすいのではなく少なくしにくいため、選択肢の内容は不適切です。
(イ) 不適切です。
「在庫型物流センター(DC)」では、店舗からの出荷指示にしたがって、在庫からピッキングした商品を店舗別に仕分けしてから出荷します。
「通過型物流センター(TC)」には「ベンダー仕分け型」と「センター仕分け型」があり、商品を店舗別に仕分けするタイミングは異なりますが、「通過型物流センター(TC)」から商品が出荷される時点では、店舗別に仕分けされています。
このように、物流センターを利用すると、商品が店舗別に仕分けされた状態で出荷されるようになるため、仕入先からの納品に対する店舗の荷受作業を集約することができます。
したがって、通過型物流センターには、各仕入先からの納品に対する店舗での荷受作業を集約する機能はないのではなくあるため、選択肢の内容は不適切です。
(ウ) 適切です。
「在庫型物流センター(DC)」では、顧客(店舗)からの注文に基づいて、在庫から商品をピッキングして出荷しますが、「通過型物流センター(TC)」では、顧客(店舗)から注文を受けてから、ベンダー(サプライヤー)に発注して商品を調達するため、顧客(店舗)から注文を受けてから納品するまでのリードタイムは「在庫型物流センター(DC)」の方が「通過型物流センター(TC)」よりも短縮できると考えられます。
したがって、店舗での発注から納品までのリードタイムは、通過型物流センターよりも在庫型物流センターを利用する方が短くしやすいため、選択肢の内容は適切です。
(エ) 不適切です。
「多頻度小口配送」とは、1回の配送で納品する商品の量が少なく、配送する回数が多い配送方法のことをいいます。
鮮度が重視される商品を取り扱う店舗や、店舗面積が狭く商品を陳列するスペースが少ない店舗への商品配送で多く利用されています。一番イメージしやすいのは「コンビニエンスストア」です。
「多頻度小口配送」は、1回の配送で納品する商品の量を少なくするため、店舗の平均在庫量は減少します。
したがって、物流センターから店舗へ多頻度小口配送を推進すると、店舗の平均在庫量は増加するのではなく減少するため、選択肢の内容は不適切です。
(オ) 不適切です。
「カテゴリー納品」とは、店舗に商品を出荷する際、店舗の売り場ゾーンの構成に合わせて、同一種類(カテゴリー)の商品を取りまとめて納品する形態のことをいいます。
店舗としては、同一種類(カテゴリー)の商品を取りまとめて納品されるため、商品を売場に補充する作業の時間を短縮することができます。
しかし、店舗への納品頻度は、同一種類(カテゴリー)の商品の販売状況に左右されます。
例えば、売れ筋の商品で構成されたカテゴリーについては納品頻度は多くなり、あまり売れない商品で構成されたカテゴリーについては納品頻度は少なくなります。
したがって、物流センターから店舗へのカテゴリー納品を行うと、店舗への納品回数は多くなるのではなく必ずしも多くなるとは限らないため、選択肢の内容は不適切です。
答えは(ウ)です。
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