今回は、「経済学・経済政策 ~H29-9-1 IS-LM曲線(5)超過需要と超過供給~」について説明します。
目次
経済学・経済政策 ~平成29年度一次試験問題一覧~
平成29年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
IS-LM曲線 -リンク-
本ブログにて「IS-LM曲線」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- IS-LM曲線のまとめ
- R5-8-1 IS-LM曲線(14)IS曲線
- R3-6-1 IS-LM曲線(12)垂直のLM曲線
- R3-6-2 IS-LM曲線(13)財政政策と金融政策の効果
- R2-6-1 IS-LM曲線(1)垂直のIS曲線
- R2-6-2 IS-LM曲線(2)財政政策と金融政策の効果
- R1-8-1 IS-LM曲線(3)水平なLM曲線
- R1-8-2 IS-LM曲線(4)財政政策と金融政策の効果
- H29-9-2 IS-LM曲線(6)公債の資産効果
- H28-11-1 IS-LM曲線(7)IS曲線とLM曲線の傾き
- H28-11-2 IS-LM曲線(8)財政政策の効果
- H27-6 IS-LM曲線(9)財政政策の効果
- H26-5 IS-LM曲線(10)財政政策の効果
- H24-9 IS-LM曲線(11)IS曲線とLM曲線の形状とシフト
IS曲線とは
「IS曲線」とは、縦軸に「利子率(r)」を、横軸に「GDP(Y)」を取ったグラフにおいて「財市場」が均衡する点の組み合わせを表す曲線のことをいいます。
「財市場」において「利子率(r)」が低下すると「投資(I)」が増加して「均衡GDP(YE)」が増加するため「IS曲線」は右下がりの曲線として表されます。
なお、「IS曲線」の「I」は「Investment(投資)」を、「S」は「Savings(貯蓄)」を表しています。
IS曲線
IS曲線の右上と左下の領域
「IS曲線」とは、縦軸に「利子率(r)」を、横軸に「GDP(Y)」を取ったグラフにおいて「財市場」が均衡する点の組み合わせを表す曲線のことをいいますが、「IS曲線」の右上の領域では「財市場」において「超過供給の状態(YD < YS)」が発生しており、「IS曲線」の左下の領域では「財市場」において「超過需要の状態(YD > YS)」が発生しています。
IS曲線(超過供給/超過需要)
LM曲線とは
「LM曲線」とは、縦軸に「利子率(r)」を、横軸に「GDP(Y)」を取ったグラフにおいて「資本市場(貨幣市場)」が均衡する点の組み合わせを表す曲線のことをいいます。
「資本市場(貨幣市場)」において「GDP(Y)」が増加すると「利子率(r)」が上昇するため「LM曲線」は右上がりの曲線として表されます。
なお、「LM曲線」の「L」は「Liquidity Preference(流動性選好)」を、「M」は「Money Supply(貨幣供給)」を表しています。
LM曲線
LM曲線の右下と左上の領域
「LM曲線」とは、縦軸に「利子率(r)」を、横軸に「GDP(Y)」を取ったグラフにおいて「資本市場(貨幣市場)」が均衡する点の組み合わせを表す曲線のことをいいますが、「LM曲線」の右下の領域では「資本市場(貨幣市場)」において「超過需要の状態( M÷P < L )」が発生しており、「LM曲線」の左上の領域では「資本市場(貨幣市場)」において「超過供給の状態( M÷P > L )」が発生しています。
LM曲線(超過供給/超過需要)
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成29年度 第9問】
下図は、IS曲線とLM曲線を描いている。この図に基づいて、下記の設問に答えよ。
(設問1)
IS曲線、LM曲線は、それぞれ生産物市場と貨幣市場を均衡させるGDPと利子率の関係を表している。下記の記述のうち、最も適切なものはどれか。
ア Ⅰの領域では、生産物市場が超過需要であり、貨幣市場が超過供給である。
イ Ⅱの領域では、生産物市場と貨幣市場がともに超過供給である。
ウ Ⅲの領域では、生産物市場と貨幣市場がともに超過需要である。
エ Ⅳの領域では、生産物市場が超過供給であり、貨幣市場が超過需要である。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答(設問1)
「IS曲線」と「LM曲線」の超過需要と超過供給に関する知識を問う問題です。
IS曲線の右上と左下の領域
「IS曲線」とは、縦軸に「利子率(r)」を、横軸に「GDP(Y)」を取ったグラフにおいて「財市場」が均衡する点の組み合わせを表す曲線のことをいいますが、「IS曲線」の右上の領域では「財市場」において「超過供給の状態(YD < YS)」が発生しており、「IS曲線」の左下の領域では「財市場」において「超過需要の状態(YD > YS)」が発生しています。
IS曲線(超過供給/超過需要)
LM曲線の右下と左上の領域
「LM曲線」とは、縦軸に「利子率(r)」を、横軸に「GDP(Y)」を取ったグラフにおいて「資本市場(貨幣市場)」が均衡する点の組み合わせを表す曲線のことをいいますが、「LM曲線」の右下の領域では「資本市場(貨幣市場)」において「超過需要の状態( M÷P < L )」が発生しており、「LM曲線」の左上の領域では「資本市場(貨幣市場)」において「超過供給の状態( M÷P > L )」が発生しています。
LM曲線(超過供給/超過需要)
(ア) 不適切です。
Ⅰの領域においては「生産物市場(財市場)」が超過供給であり「貨幣市場(資本市場)」が超過需要となっています。
したがって、Ⅰの領域では、生産物市場は「超過需要」ではなく「超過供給」であり、貨幣市場は「超過供給」ではなく「超過需要」であるため、選択肢の内容は不適切です。
(イ) 適切です。
Ⅱの領域においては「生産物市場(財市場)」と「貨幣市場(資本市場)」がともに超過供給となっています。
したがって、Ⅱの領域では、生産物市場と貨幣市場がともに「超過供給」であるため、選択肢の内容は適切です。
(ウ) 不適切です。
Ⅲの領域においては「生産物市場(財市場)」が超過需要であり「貨幣市場(資本市場)」が超過供給となっています。
したがって、Ⅲの領域では、生産物市場は「超過需要」であるが、貨幣市場は「超過需要」ではなく「超過供給」であるため、選択肢の内容は不適切です。
(エ) 不適切です。
Ⅳの領域においては「生産物市場(財市場)」と「貨幣市場(資本市場)」がともに超過需要となっています。
したがって、Ⅳの領域では、生産物市場は「超過供給」ではなく「超過需要」であり、貨幣市場は「超過需要」であるため、選択肢の内容は不適切です。
答えは(イ)です。
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