経済学・経済政策 ~H27-6 IS-LM曲線(9)財政政策の効果~

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今回は、「経済学・経済政策 ~H27-6 IS-LM曲線(9)財政政策の効果~」について説明します。

 

目次

経済学・経済政策 ~平成27年度一次試験問題一覧~

平成27年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

IS-LM曲線 -リンク-

本ブログにて「IS-LM曲線」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。

 

 

IS-LM曲線とは

「IS-LM曲線」とは、縦軸に「利子率(r)」を、横軸に「GDP(Y)」を取ったグラフにおいて「財市場」が均衡する点の組み合わせを表す「IS曲線」と「資本市場(貨幣市場)」が均衡する点の組み合わせを表す「LM曲線」を同時に表現して、「財政政策」や「金融政策」による「財市場」への効果と「資本市場(貨幣市場)」への効果を同時に分析するグラフのことをいいます。

 

IS-LM曲線

 

財政拡張政策→IS曲線のシフト

「財政拡張政策」を行うと「財市場」の均衡を表す「IS曲線」は右方にシフトします。
「財政拡張政策」を行っても「資本市場(貨幣市場)」の均衡を表す「LM曲線」はシフトしません。

 

財政拡張政策による財市場の変化

「財政拡張政策」を行った場合に「財市場」が変化していく流れを以下に示します。

 

  1. 「財政拡張政策」により「総需要(YD)」が増加する
  2. 「財市場」が超過需要となるため、企業が増産して「総供給(YS)」が増加する
  3. 超過需要が解消されるところ(YS=YD)まで「総供給(YS)」が増加して「財市場」が均衡する

 

したがって「財政拡張政策」を行った場合「利子率(r)」は変化せずに「GDP(Y)」が増加するため「IS曲線」は右方にシフトします

 

 

金融緩和政策→LM曲線のシフト

「金融緩和政策」を行うと「資本市場(貨幣市場)」の均衡を表す「LM曲線」は下方にシフトします。
「金融緩和政策」を行っても「財市場」の均衡を表す「IS曲線」はシフトしません。

 

「金融緩和政策」により「LM曲線」は下方にシフトしますが、グラフ上では右方にシフトしているように見えるため、一般的には「金融緩和政策」を行った場合「LM曲線」は右方にシフトすると表現されます。

 

金融緩和政策による資本市場(貨幣市場)の変化

「金融緩和政策」を行った場合に「資本市場(貨幣市場)」が変化していく流れを以下に示します。

 

  1. 「金融緩和政策」により「貨幣供給(M)」が増加する
  2. 「資本市場(貨幣市場)」が超過供給となり「利子率(r)」が低下する
  3. 「利子率(r)」が低下すると「債券価格」が上昇する
  4. 「債券価格」が上昇すると「債券需要」が減少して「貨幣の資産需要(L2)」が増加する
  5. 超過供給が解消されるところ( L=M÷P )まで「貨幣の資産需要(L2)」が増加して「資本市場(貨幣市場)」が均衡する

 

したがって「金融緩和政策」を行った場合「GDP(Y)」は変化せずに「利子率(r)」が低下するため「LM曲線」は下方(見た目は右方)にシフトします

 

 

財政拡張政策と金融緩和政策→IS-LM曲線

「財政拡張政策」と「金融緩和政策」による効果を「IS-LM曲線」で確認していきます。

 

種類 一般的な状態 投資の利子弾力性がゼロの場合(投資が利子非弾力性な場合) 貨幣の利子弾力性が無限大の場合(流動性のわな)
財政拡張政策 有効
(クラウディング・アウトが発生)
極めて有効 極めて有効
金融緩和政策 有効 無効 無効

 

財政拡張政策→IS-LM曲線

「財政拡張政策」を行った場合「IS曲線」が右方にシフトして「IS曲線」と「LM曲線」の交点は右上にシフトします。

「IS曲線」と「LM曲線」の交点が右上にシフトするということは「財政拡張政策」には「GDP(Y)」を増加させる効果があることを表しています。(「利子率(r)」も上昇しているところにポイントがあります。

 

財政拡張政策によるIS-LM曲線の変化

 

クラウディング・アウト

「IS曲線」において「財政拡張政策」による効果を確認したときは「利子率(r)」は変化していませんでしたが、「IS-LM曲線」において「財政拡張政策」による効果を確認すると「利子率(r)」が上昇していることが分かります

この「利子率(r)」の上昇により「投資(I)」が抑制されてしまい「GDP(Y)」を増加させる効果が少なくなってしまうことを「クラウディング・アウト」といいます。

 

「財政拡張政策」を行った場合に「財市場/IS曲線」と「資本市場(貨幣市場)/LM曲線」が変化していく流れを以下に示します。

 

  1. 「財政拡張政策」により「GDP(Y)」が「YE」から「YF」に増加する
  2. 「GDP(Y)」が増加したため「貨幣の取引需要(L1)」が増加する
  3. 「貨幣の取引需要(L1)」が増加したため「 L=L1+L2 」で表される「貨幣需要量(L)」が増加する
  4. 「貨幣需要量(L)」が増加したため「利子率(r)」が「re」から「re’」に上昇する
  5. 「利子率(r)」が「re」から「re’」に上昇したため「投資(I)」が減少する
  6. 「投資(I)」が減少したため「GDP(Y)」が「YF」から「YE’」に減少する(クラウディング・アウト
  7. 「GDP(YE’)」と「利子率(re’)」で「財市場」と「資本市場(貨幣市場)」が均衡する

 

財政拡張政策によるIS-LM曲線の変化
【クラウディング・アウト】

 

投資の利子弾力性がゼロの場合(投資が利子非弾力性な場合)

「投資の利子弾力性がゼロ(投資が利子非弾力性)」の場合「IS曲線」は垂直の曲線として表されます。

「財政拡張政策」を行った場合「IS曲線」が右方にシフトして「IS曲線」と「LM曲線」の交点が右上にシフトします。

このとき「利子率(r)」が上昇しますが「投資の利子弾力性がゼロ(投資が利子非弾力性)」であるため「投資(I)」は減少せず「総需要(YD)」も変わらないため「クラウディング・アウト」は発生しません

これは「投資の利子弾力性がゼロ(投資が利子非弾力性)」の場合「財政拡張政策」が景気対策として極めて有効であることを表しています。

 

財政拡張政策によるIS-LM曲線の変化
【投資の利子弾力性がゼロ(投資が利子非弾力性)】

 

貨幣の利子弾力性が無限大の場合(流動性のわな)

「流動性のわな」の状況下にある場合「LM曲線」は水平の曲線として表されます。

「財政拡張政策」を行った場合「IS曲線」が右方にシフトして「IS曲線」と「LM曲線」の交点が右方にシフトします。

このとき「利子率(r)」は上昇しないため「クラウディング・アウト」は発生しません

これは「流動性のわな」の状況下にある場合「財政拡張政策」が景気対策として極めて有効であることを表しています。

 

財政拡張政策によるIS-LM曲線の変化
【貨幣の利子弾力性が無限大(流動性のわな)】

 

貨幣の利子弾力性がゼロ(貨幣が利子非弾力性な場合)の場合

「貨幣の利子弾力性がゼロ(貨幣が利子非弾力性)」の場合「LS曲線」は垂直の曲線として表されます。

「財政拡張政策」を行った場合「IS曲線」が右方にシフトしますが、「LM曲線」が垂直であるため、「IS曲線」と「LM曲線」の交点は上方にシフトします。

このとき「利子率(r)」の上昇により「クラウディング・アウト」が発生して「政府支出(G)」の増加分が「投資(I)」の減少分により相殺されてしまい「GDP(Y)」は変化しません

これは「貨幣の利子弾力性がゼロ(貨幣が利子非弾力性)」の場合「財政拡張政策」が景気対策として無効であることを表しています。

 

財政拡張政策によるIS-LM曲線の変化
【貨幣の利子弾力性がゼロ(貨幣が利子非弾力性)】

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【平成27年度 第6問】

拡張的な財政政策、たとえば政府支出の拡大は、下図のIS曲線をISからIS’へとシフトさせる。ただし、YはGDP、rは利子率である。下図に関する説明として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。

 

 

a 政府支出拡大の結果、利子率の上昇によって投資が減少するため、GDPはY1となる。
b E2では、貨幣市場において、貨幣の超過供給が発生している。
c 「r1-r0」で表される利子率の上昇は、政府支出拡大による、貨幣の取引需要増加の結果生じた。
d 「Y1-Y0」が政府支出の拡大分に相当する。

 

[解答群]

ア aとc
イ aとd
ウ bとc
エ bとd

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答

拡張的な財政政策(政府支出の拡大)によるIS-LM曲線の変化(クラウディング・アウト)に関する知識を問う問題です。

 

財政拡張政策→IS-LM曲線

「財政拡張政策」を行った場合「IS曲線」が右方にシフトして「IS曲線」と「LM曲線」の交点は右上にシフトします。

「IS曲線」と「LM曲線」の交点が右上にシフトするということは「財政拡張政策」には「GDP(Y)」を増加させる効果があることを表しています。(「利子率(r)」も上昇しているところにポイントがあります。

 

財政拡張政策によるIS-LM曲線の変化

 

クラウディング・アウト

「IS曲線」において「財政拡張政策」による効果を確認したときは「利子率(r)」は変化していませんでしたが、「IS-LM曲線」において「財政拡張政策」による効果を確認すると「利子率(r)」が上昇していることが分かります

この「利子率(r)」の上昇により「投資(I)」が抑制されてしまい「GDP(Y)」を増加させる効果が少なくなってしまうことを「クラウディング・アウト」といいます。

 

「財政拡張政策」を行った場合に「財市場/IS曲線」と「資本市場(貨幣市場)/LM曲線」が変化していく流れを以下に示します。

 

  1. 「財政拡張政策」により「GDP(Y)」が「YE」から「YF」に増加する
  2. 「GDP(Y)」が増加したため「貨幣の取引需要(L1)」が増加する
  3. 「貨幣の取引需要(L1)」が増加したため「 L=L1+L2 」で表される「貨幣需要量(L)」が増加する
  4. 「貨幣需要量(L)」が増加したため「利子率(r)」が「re」から「re’」に上昇する
  5. 「利子率(r)」が「re」から「re’」に上昇したため「投資(I)」が減少する
  6. 「投資(I)」が減少したため「GDP(Y)」が「YF」から「YE’」に減少する(クラウディング・アウト
  7. 「GDP(YE’)」と「利子率(re’)」で「財市場」と「資本市場(貨幣市場)」が均衡する

 

財政拡張政策によるIS-LM曲線の変化
【クラウディング・アウト】

 

(a) 適切です。

「財政拡張政策」を行った場合に「財市場/IS曲線」と「資本市場(貨幣市場)/LM曲線」が変化していく流れを以下に示します。

 

  1. 「財政拡張政策」により「GDP(Y)」が「Y0」から「Y2」に増加する
  2. 「GDP(Y)」が増加したため「貨幣の取引需要(L1)」が増加する
  3. 「貨幣の取引需要(L1)」が増加したため「 L=L1+L2 」で表される「貨幣需要量(L)」が増加する
  4. 「貨幣需要量(L)」が増加したため「利子率(r)」が「r0」から「r1」に上昇する
  5. 「利子率(r)」が「r0」から「r1」に上昇したため「投資(I)」が減少する
  6. 「投資(I)」が減少したため「GDP(Y)」が「Y2」から「Y0」に減少する(クラウディング・アウト
  7. 「GDP(Y1)」と「利子率(r1)」で「財市場」と「資本市場(貨幣市場)」が均衡する

 

したがって、政府支出拡大の結果、利子率の上昇によって投資が減少して、GDPはY1となるため、選択肢の内容は適切です

 

(b) 不適切です。

「財政拡張政策」を行った場合に「財市場/IS曲線」と「資本市場(貨幣市場)/LM曲線」が変化していく流れ(途中まで)を以下に示します。

 

  1. 「財政拡張政策」により「GDP(Y)」が「Y0」から「Y2」に増加する
  2. 「GDP(Y)」が増加したため「貨幣の取引需要(L1)」が増加する
  3. 「貨幣の取引需要(L1)」が増加したため「 L=L1+L2 」で表される「貨幣需要量(L)」が増加する

 

したがって、E2では、貨幣市場において、貨幣の超過供給ではなく超過需要が発生しているため、選択肢の内容は不適切です

 

(c) 適切です。

「財政拡張政策」を行った場合に「財市場/IS曲線」と「資本市場(貨幣市場)/LM曲線」が変化していく流れ(途中まで)を以下に示します。

 

  1. 「財政拡張政策」により「GDP(Y)」が「Y0」から「Y2」に増加する
  2. 「GDP(Y)」が増加したため「貨幣の取引需要(L1)」が増加する
  3. 「貨幣の取引需要(L1)」が増加したため「 L=L1+L2 」で表される「貨幣需要量(L)」が増加する
  4. 「貨幣需要量(L)」が増加したため「利子率(r)」が「r0」から「r1」に上昇する

 

したがって、「r1-r0」で表される利子率の上昇は、政府支出拡大による、貨幣の取引需要増加の結果生じたため、選択肢の内容は適切です

 

(d) 不適切です。

「財政拡張政策」を行った場合に「財市場/IS曲線」と「資本市場(貨幣市場)/LM曲線」が変化していく流れ(途中まで)を以下に示します。

 

  1. 「財政拡張政策」により「GDP(Y)」が「Y0」から「Y2」に増加する

 

したがって、「Y1-Y0」ではなく「Y2-Y0」が政府支出の拡大分に相当するため、選択肢の内容は不適切です

 

(a)と(c)に記述されている内容が適切であるため、答えは(ア)です。


 

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