「経済学・経済政策」について説明を始めました。
図が多すぎて書き上げるのにかなり苦労しています。

経済学・経済政策 ~R2-6-2 IS-LM曲線(2)財政政策と金融政策の効果~

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今回は、「経済学・経済政策 ~R2-6-2 IS-LM曲線(2)財政政策と金融政策の効果~」について説明します。

 

経済学・経済政策 ~令和2年度一次試験問題一覧~

令和2年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

IS-LM曲線とは

「IS-LM曲線」とは、縦軸に「利子率(r)」を、横軸に「GDP(Y)」を取ったグラフにおいて「財市場」が均衡する点の組み合わせを表す「IS曲線」と「資本市場(貨幣市場)」が均衡する点の組み合わせを表す「LM曲線」を同時に表現して、「財政政策」や「金融政策」による「財市場」への効果と「資本市場(貨幣市場)」への効果を同時に分析するグラフのことをいいます。

 

IS-LM曲線

 

財政拡張政策→IS曲線のシフト

「財政拡張政策」を行うと「財市場」の均衡を表す「IS曲線」は右方にシフトします。
「財政拡張政策」を行っても「資本市場(貨幣市場)」の均衡を表す「LM曲線」はシフトしません。

 

財政拡張政策による財市場の変化

「財政拡張政策」を行った場合に「財市場」が変化していく流れを以下に示します。

 

  1. 「財政拡張政策」により「総需要(YD)」が増加する
  2. 「財市場」が超過需要となるため、企業が増産して「総供給(YS)」が増加する
  3. 超過需要が解消されるところ(YS=YD)まで「総供給(YS)」が増加して「財市場」が均衡する

 

財政拡張政策によるIS曲線の右方シフト

したがって「財政拡張政策」を行った場合「利子率(r)」は変化せずに「GDP(Y)」が増加するため「IS曲線」は右方にシフトします

 

 

金融緩和政策→LM曲線のシフト

「金融緩和政策」を行うと「資本市場(貨幣市場)」の均衡を表す「LM曲線」は下方にシフトします。
「金融緩和政策」を行っても「財市場」の均衡を表す「IS曲線」はシフトしません。

 

「金融緩和政策」により「LM曲線」は下方にシフトしますが、グラフ上では右方にシフトしているように見えるため、一般的には「金融緩和政策」を行った場合「LM曲線」は右方にシフトすると表現されます。

 

金融緩和政策による資本市場(貨幣市場)の変化

「金融緩和政策」を行った場合に「資本市場(貨幣市場)」が変化していく流れを以下に示します。

 

  1. 「金融緩和政策」により「貨幣供給(M)」が増加する
  2. 「資本市場(貨幣市場)」が超過供給となり「利子率(r)」が低下する
  3. 「利子率(r)」が低下すると「債券価格」が上昇する
  4. 「債券価格」が上昇すると「債券需要」が減少して「貨幣の資産需要(L2)」が増加する
  5. 超過供給が解消されるところ( L=M÷P )まで「貨幣の資産需要(L2)」が増加して「資本市場(貨幣市場)」が均衡する

 

金融緩和政策によるLM曲線の下方(右方)シフト

したがって「金融緩和政策」を行った場合「GDP(Y)」は変化せずに「利子率(r)」が低下するため「LM曲線」は下方(見た目は右方)にシフトします

 

 

財政拡張政策と金融緩和政策→IS-LM曲線

「財政拡張政策」と「金融緩和政策」による効果を「IS-LM曲線」で確認していきます。

 

種類 一般的な状態 投資による利子弾力性がゼロ(投資が利子非弾力性)の場合 流動性のわなの状況下にある場合
財政拡張政策 有効
(クラウディング・アウトが発生)
極めて有効 極めて有効
金融緩和政策 有効 無効 無効

 

財政拡張政策→IS-LM曲線

「財政拡張政策」を行った場合「IS曲線」が右方にシフトして「IS曲線」と「LM曲線」の交点は右上にシフトします。

「IS曲線」と「LM曲線」の交点が右上にシフトするということは「財政拡張政策」には「GDP(Y)」を増加させる効果があることを表しています。(「利子率(r)」も上昇しているところにポイントがあります。

 

 

クラウディング・アウト

「IS曲線」において「財政拡張政策」による効果を確認したときは「利子率(r)」は変化していませんでしたが、「IS-LM曲線」において「財政拡張政策」による効果を確認すると「利子率(r)」が上昇していることが分かります

この「利子率(r)」の上昇により「投資(I)」が抑制されてしまい「GDP(Y)」を増加させる効果が少なくなってしまうことを「クラウディング・アウト」といいます。

 

 

投資による利子弾力性がゼロ(投資が利子非弾力性)の場合

「投資の利子弾力性がゼロ(投資が利子非弾力性)」の場合「IS曲線」は垂直の曲線として表されます。

「財政拡張政策」を行った場合「IS曲線」が右方にシフトして「IS曲線」と「LM曲線」の交点が右上にシフトします。

このとき「利子率(r)」が上昇しますが「投資の利子弾力性がゼロ(投資が利子非弾力性)」であるため「投資(I)」は減少せず「総需要(YD)」も変わらないため「クラウディング・アウト」は発生しません

これは「投資の利子弾力性がゼロ(投資が利子非弾力性)」の場合「財政拡張政策」が景気対策として極めて有効であることを表しています。

 

 

流動性のわなの状況下にある場合

「流動性のわな」の状況下にある場合「LM曲線」は水平の曲線として表されます。

「財政拡張政策」を行った場合「IS曲線」が右方にシフトして「IS曲線」と「LM曲線」の交点が右方にシフトします。

このとき「利子率(r)」は上昇しないため「クラウディング・アウト」は発生しません

これは「流動性のわな」の状況下にある場合「財政拡張政策」が景気対策として極めて有効であることを表しています。

 

 

金融緩和政策→IS-LM曲線

「金融緩和政策」を行った場合「LM曲線」が下方(見た目は右方)にシフトして「IS曲線」と「LM曲線」の交点は右下にシフトします。

「IS曲線」と「LM曲線」の交点が右下にシフトするということは「金融緩和政策」には「GDP(Y)」を増加させる効果があることを表しています。(「利子率(r)」が低下していますが、クラウディング・アウトのような悪い副作用は発生しません。

 

 

投資による利子弾力性がゼロ(投資が利子非弾力性)の場合

「投資の利子弾力性がゼロ(投資が利子非弾力性)」の場合「IS曲線」は垂直の曲線として表されます。

「金融緩和政策」を行った場合「LM曲線」が下方(見た目は右方)にシフトして「IS曲線」と「LM曲線」の交点が真下にシフトします。

このとき、「利子率(r)」が低下しますが「投資の利子弾力性がゼロ(投資が利子非弾力性)」であるため「投資(I)」は増加せず「総需要(YD)」も変わらないため「GDP(Y)」が増加しません

これは「投資の利子弾力性がゼロ(投資が利子非弾力性)」の場合「金融緩和政策」が景気対策として無効であることを表しています。

 

 

流動性のわなの状況下にある場合

「流動性のわな」の状況下にある場合「LM曲線」は水平の曲線として表されます。

「金融緩和政策」を行った場合「LM曲線」が下方(見た目は右方)にシフトしますが「IS曲線」と「LM曲線」の交点はシフトしません

これは「流動性のわな」の状況下にある場合「金融緩和政策」が景気対策として無効であることを表しています。

 

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【令和2年度 第6問】

下図は、IS曲線とLM曲線を描いたものである。この図に基づいて、下記の設問に答えよ。

 

 

(設問2)

IS曲線が垂直であるときの財政政策と金融政策の効果に関する記述として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。

 

a 金融緩和政策は、LM曲線を右方にシフトさせる。これによって利子率が低下するが、投資が増加しないため、GDPは増加しない。
b 金融緩和政策は、LM曲線を右方にシフトさせる。これによって利子率が低下し、投資が増加するため、GDPは増加する。
c 政府支出の増加は、IS曲線を右方にシフトさせる。このとき、利子率は上昇するが、クラウディング・アウトは発生せず、GDPは増加する。
d 政府支出の増加は、IS曲線を右方にシフトさせる。このとき、利子率が上昇し、投資が減少するが、GDPは増加する。

 

[解答群]

ア aとc
イ aとd
ウ bとc
エ bとd

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答(設問2)

「IS曲線」が垂直であるときの「財政政策」と「金融政策」の効果に関する知識を問う問題です。

 

なお、「IS曲線」が垂直であるときは「投資による利子弾力性がゼロ(投資が利子非弾力性)」であることを表しています。(経済学・経済政策 ~R2-6-1 IS-LM曲線(1)垂直のIS曲線~

 

財政拡張政策による効果(投資による利子弾力性がゼロの場合)

「投資の利子弾力性がゼロ(投資が利子非弾力性)」の場合「IS曲線」は垂直の曲線として表されます。

「財政拡張政策」を行った場合「IS曲線」が右方にシフトして「IS曲線」と「LM曲線」の交点が右上にシフトします。

このとき「利子率(r)」が上昇しますが「投資の利子弾力性がゼロ(投資が利子非弾力性)」であるため「投資(I)」は減少せず「総需要(YD)」も変わらないため「クラウディング・アウト」は発生しません

これは「投資の利子弾力性がゼロ(投資が利子非弾力性)」の場合「財政拡張政策」が景気対策として極めて有効であることを表しています。

 

 

したがって、IS曲線が垂直である(投資の利子弾力性がゼロ)場合、政府支出の増加(財政拡張政策)により利子率が上昇しますが、クラウディング・アウトは発生しないため、選択肢(c)の内容が適切であり、選択肢(d)の内容は不適切です

 

金融緩和政策による効果(投資による利子弾力性がゼロの場合)

「投資の利子弾力性がゼロ(投資が利子非弾力性)」の場合「IS曲線」は垂直の曲線として表されます。

「金融緩和政策」を行った場合「LM曲線」が下方(見た目は右方)にシフトして「IS曲線」と「LM曲線」の交点が真下にシフトします。

このとき、「利子率(r)」が低下しますが「投資の利子弾力性がゼロ(投資が利子非弾力性)」であるため「投資(I)」は増加せず「総需要(YD)」も変わらないため「GDP(Y)」が増加しません

これは「投資の利子弾力性がゼロ(投資が利子非弾力性)」の場合「金融緩和政策」が景気対策として無効であることを表しています。

 

 

したがって、投資による利子弾力性がゼロの場合、金融緩和政策により利子率が低下しますが、投資が増加せず、GDPも増加しないため、選択肢(a)の内容が適切であり、選択肢(b)の内容は不適切です

 

(a)と(c)に記述されている内容が適切であるため、答えは(ア)です。


 

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