今回は、「経済学・経済政策 ~R2-7 主要経済理論(2)トービンのq~」について説明します。
目次
経済学・経済政策 ~令和2年度一次試験問題一覧~
令和2年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
トービンのq理論 -リンク-
本ブログにて「トービンのq理論」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
トービンのq理論
「トービンのq理論」とはジェームズ・トービンが提唱した投資理論のことをいいます。
「トービンのq」は「企業の市場価値(株式時価総額+負債総額)」を「資本の再取得価格」で除した値のことをいい、結論としては、「トービンのq」が1よりも大きければ企業は投資を行い、「トービンのq」が1よりも小さければ企業は投資を行いません。
企業の市場価値
「企業の市場価値」とは「株式時価総額」と「負債総額」の合計のことをいいます。
「株式時価総額」は、市場において企業の将来の利益を考慮して評価された金額であり、企業の収益力を示しています。
資本の再取得価格
「資本の再取得価格」とは、既存の資本を全て買い換えるために必要となる費用の総額のことをいいます。
少し言い方を変えると、「資本の再取得価格」とは、企業が保有する資本を市場で売却したときの売買価格です。
トービンのq > 1の場合
「トービンのq」が1より大きい場合、将来の利益を考慮した「企業の市場価値」が、企業が保有する設備を金額に換算した「資本ストックの価値」よりも大きいことを示しています。
つまり、既存設備の価値よりも収益力の方が大きいため、追加の投資を行えば、投資費用より投資により得られる収益の方が大きくなり、利益が増加していくことが期待できます。
したがって、「トービンのq」が1より大きい場合、企業としては追加の投資を実行すべきであると判断します。
トービンのq < 1の場合
「トービンのq」が1より小さい場合、将来の利益を考慮した「企業の市場価値」が、企業が保有する設備を金額に換算した「資本ストックの価値」よりも小さいことを示しています。
つまり、既存設備の価値よりも収益力の方が小さいため、追加の投資を行っても、投資により得られる収益より投資費用の方が大きくなり、利益が減少してしまうことが懸念されます。
したがって、「トービンのq」が1より小さい場合、企業としては追加の投資を控えるべきであり、場合によっては既存設備の縮小が必要であると判断します。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【令和2年度 第7問】
トービンのqに関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 企業の株価総額と現存の資本の買い替え費用の総額が等しいとき、企業は新規の投資を増やす。
イ 企業の市場価値が資本の再取得価格を下回るとき、企業は新規の投資を実行する。
ウ 企業の市場価値と投資費用が等しいとき、企業は新規の投資を増やす。
エ 資本投資の予想収益が投資費用よりも大きいとき、企業は新規の投資を実行する。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
トービンのqに関する知識を問う問題です。
「トービンのq」は「企業の市場価値(株式時価総額+負債総額)」を「資本の再取得価格」で除した値のことをいい、結論としては、「トービンのq」が1よりも大きければ企業は投資を行い、「トービンのq」が1よりも小さければ企業は投資を行いません。
(ア) 不適切です。
企業の株価総額ではなく企業の市場価値と現存の資本の買い替え費用の総額が等しいとき、企業は新規の投資を増やすのではなく、企業は新規の投資を増やさないため、選択肢の内容は不適切です。
(※)ちょっとややこしい文章となっていてすみません。
(イ) 不適切です。
企業の市場価値が資本の再取得価格を下回るとき、企業は新規の投資を実行するのではなく、企業は新規の投資を実行しないため、選択肢の内容は不適切です。
(ウ) 不適切です。
企業の市場価値と投資費用が等しいとき、企業は新規の投資を増やすのではなく、企業は新規の投資を増やさないため、選択肢の内容は不適切です。
(エ) 適切です。
資本投資の予想収益が投資費用よりも大きいとき、企業は新規の投資を実行するため、選択肢の内容は適切です。
答えは(エ)です。
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