今回は、「経済学・経済政策 ~R2-8-1 主要経済指標(2)労働力調査~」について説明します。
記事が長くなってしまったため「令和2年度 第8問」を2回に分けて解説していきます。
今回は、総務省統計局が実施している「労働力調査」について説明して、次回は「失業の分類(発生要因)」について説明していきます。
目次
経済学・経済政策 ~令和2年度一次試験問題一覧~
令和2年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
労働力調査
日本における就業及び不就業の状態を毎月把握し、雇用・失業状況の詳細を明らかにすることを目的として、総務省統計局が「労働力調査」に関する統計情報を公表しています。
労働力調査の区分
本ページに記載している内容は「総務省統計局ホームページ」に記載されている内容に基づき、加工して作成しています。「総務省統計局ホームページ」をご覧になりたい場合は、以下のリンクにアクセスしてください。
就業状態の定義
労働力人口/非労働力人口
「15歳以上人口」のうち「就業者」と「失業者」を合わせたものを「労働力人口」といい、「労働力人口」以外を「非労働力人口」といいます。
就業者
「就業者」は「従業者」と「休業者」を合わせた人のことをいいます。
従業者
「従業者」とは、調査対象期間である「月末1週間(12月は20~26日)」に、少しでも(1時間以上)仕事をした人のことをいいます。
労働の対価として収入が発生する仕事であれば、その仕事の内容は問わないため、学生がアルバイトをした場合や、主婦がパートタイムの仕事や内職をした場合なども「従業者」に区分されます。
また、個人経営の商店や農家で家業を手伝っている家族は「無給の家族従業者」と呼ばれており、無給であったとしても、仕事をしたとみなされ「従業者」に区分されます。
休業者
「休業者」は、調査対象期間である「月末1週間(12月は20~26日)」に仕事をしなかった人のうち、以下の要件を満たす人のことをいいます。
- 雇用者(会社などに雇われてる人)で、仕事を休んでいても給料・賃金の支払を受けている場合、または受けることになっている場合
- 自営業主が、自分の経営する事業を持ったままで、その仕事を休み始めてから30日にならない場合
雇用者については、職場の就業規則などで定められている育児(介護)休業期間中の人も、職場から給料・賃金をもらうことになっている場合は「休業者」に区分されます。
また、雇用保険法に基づく育児休業基本給付金や介護休業給付金をもらうことになっている場合も、こうした給付は、給料・賃金の代替と考えるのがより適切と考えられるので、給料・賃金をもらっているものとみなし「休業者」に区分されます。
ただし、個人経営の商店や農家で家業を手伝っている「家族従業者」については、自分で仕事を持っているとみなされないため「休業者」には区分されません。
また、日雇い労務者などについても、仕事を休んでいても「休業者」には区分されません。
なお、不規則に仕事をする人や、1年の中で一時期のみ仕事をする人などは、月末1週間の状態を毎月調べて就業状態を時系列的に明らかにするという労働力調査の趣旨からすれば「休業者」に含めることは適当ではないとされています。
追加就労希望就業者
「追加就労希望就業者」は、「就業者」に区分された人のうち、以下の要件を満たす人のことをいいます。
- 就業者である
- 週35時間未満の就業時間である
- 就業時間の追加を希望している
- 就業時間の追加ができる
「追加就労希望就業者」とは、就業時間が週35時間未満の就業者のうち、もっと長い時間働きたい人や、今の仕事に加えて新たに別の仕事を増やしたい人のように、今よりも多くの時間を働きたい人のことをいいます。
具体的には、パートなどで働いている女性などでフルタイム勤務を希望している人や、生産調整などの会社都合で短時間勤務となっている人などが該当します。
失業者
完全失業者
「完全失業者」とは、以下の要件を満たす人のことをいいます。
- 調査対象期間である「月末1週間(12月は20~26日)」に少しも仕事をしなかった
- 仕事があればすぐ就くことができる
- 調査対象期間である「月末1週間(12月は20~26日)」に求職活動をしていた
(過去の求職活動の結果を待っている場合を含む)
「完全失業者」は、何らかの具体的な「求職活動」を行っている人が対象とされています。
例えば、公共職業安定所(ハローワーク)に申し込んだり、求人広告・求人情報誌や、インターネットの求人サイトなどを見て応募したり、学校・知人などにあっせん・紹介を依頼したり、事業所の求人に直接応募したり、登録型派遣に登録するといった活動をしている必要があります。また、自営の仕事を始めようとしている人は、賃金・資材の調達など事業を始める準備をしていれば「求職活動」をしていたと判断されます。
したがって、新規学卒者や新たに収入を得る必要が生じた者のような新しく仕事を始めようとする人(労働市場への新規参入者)、結婚・育児などで一時離職したが再び仕事を始めようとする人(労働市場への再参入者)なども、すぐに就業可能で求職活動をしていれば「完全失業者」となり、よりよい仕事を求めて転職を繰り返す者は、転職の都度、一時的に「完全失業者」となる可能性があります。
一方、会社が倒産して仕事を失ったとしても、「求職活動」をしていなければ「労働市場への参入者」とはならないため「完全失業者」として扱われません。
潜在労働力人口
「潜在労働力人口」とは、就業者でも失業者でもない人のうち、仕事を探しているが、すぐには働くことができない者や、働きたいが仕事を探していない者といった、潜在的に就業することが可能な人のことをいいます。
具体的には、家事や学業のため、すぐに仕事に就くことはできないが、2週間以内に仕事に就くことが可能となるため、この1か月以内に求職活動を行った人や、就業を希望していて、すぐに仕事に就くこともできるが、自分に合う仕事がないなどの理由から求職を諦めた人(求職意欲喪失者)などが挙げられます。
「潜在労働力人口」は「就業者」でも「失業者」でもない人のうち、次のいずれかに該当する人のことをいいます。
【拡張求職者】
- 1か月以内に求職活動を行っている
- すぐではないが、2週間以内に就業できる
【就業可能非求職者】
- 1か月以内に求職活動を行っていない
- 就業を希望している
- すぐに就業できる
就業状態に関する各種比率
「就業状態」を示す指標である「労働力人口比率」「就業率」「完全失業率」について説明します。
労働力人口比率
「労働力人口比率」とは「15歳以上人口」に占める「労働力人口」の割合を示す指標であり、以下の式で定義されています。
就業率
「就業率」とは「15歳以上人口」に占める「就業者」の割合を示す指標であり、以下の式で定義されています。
「就業者数」は、仕事をしている「従業者」と、仕事を持っていながら病気などのため休んでいる「休業者」を合わせた人数です。
完全失業率
「完全失業率」とは「労働力人口」に占める「完全失業者」の割合を示す指標であり、以下の式で定義されています。
次回は、「経済学・経済政策 ~R2-8-2 主要経済理論(3)失業の分類(発生要因)~」として「令和2年度 第8問」について引き続き説明していきます。
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