経済学・経済政策 ~R1-9 主要経済理論(6)自然失業率仮説~

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今回は、「経済学・経済政策 ~R1-9 主要経済理論(6)自然失業率仮説~」について説明します。

 

目次

経済学・経済政策 ~令和元年度一次試験問題一覧~

令和元年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

雇用・失業 -リンク-

本ブログにて「雇用」「失業」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。

 

 

フィリップス曲線

「フィリップス曲線」とは、1958年にフィリップスが過去のデータに基づき発表した「賃金上昇率」と「失業率」の関係を表す曲線のことをいいます。

「フィリップス曲線」は、縦軸に「賃金上昇率(⊿W÷W)」を、横軸に「失業率(U)」を取ったグラフにおいて「右下がりの曲線」として表され、「賃金上昇率」と「失業率」に負の相関関係(トレード・オフの関係)があることを表しています。

 

フィリップス曲線

 

自然失業率仮説

「自然失業率仮説」とは、1968年にフリードマンにより提唱された「物価上昇率」と「失業率」に関する仮説のことをいいます。

「自然失業率仮説」では、短期的には物価が上昇すると「失業率」は低減するが、長期的には物価が上昇しても「失業率」は低減せずに「自然失業率(UN)」で一定になるとしています。

つまり、「自然失業率仮説」では、物価を上昇させる政策は、短期的に「失業率」を低減させる効果はあるが、長期的に「失業率」を低減させる効果はないということを説明しています。

「フィリップス曲線」では、縦軸に「賃金上昇率」を取っていましたが、「自然失業率仮説」では「賃金上昇率」と「物価上昇率」に正の相関関係があることに着眼し、縦軸に「物価上昇率(⊿P÷P)」を、横軸に「失業率(U)」を取った「物価版フィリップス曲線」を用いて「物価上昇率」と「失業率」の関係を説明しています。

 

自然失業率(UN)

「自然失業率(UN)」とは、労働市場の需要と供給が均衡している「完全雇用状態」において発生する「失業率」のことをいいます。

「完全雇用状態」とは、現行の賃金率で働く意思がある全ての人が職に就くことができている状態のことをいうため、「完全雇用状態」においては「非自発的失業」は発生していません

なお、「完全雇用状態」においても「自発的失業」や「摩擦的失業」は発生しています

 

  • 自発的失業
    現行の賃金率で働く意思がなく自発的に失業している状態
  • 非自発的失業
    働く意思と能力があるにも関わらず、景気が悪いため失業している状態
  • 摩擦的失業
    景気とは関係なく、転職などにより一時的に失業している状態

 

物価版フィリップス曲線(短期)

「自然失業率仮説」では、短期においては物価と「失業率」に負の相関関係(トレード・オフの関係)があり物価が上昇すると「失業率」が低減するとしており、短期において物価が上昇すると「失業率」が低減するのは、雇い主である「企業(労働需要者)」と「労働者(労働供給者)」において情報の非対称性が存在しているためとしています。

「企業(労働需要者)」は「物価(P)」が上昇していることを認識した上で「名目賃金(W)」の引き上げを行いますが、「労働者(労働供給者)」は「物価(P)」が上昇していることに気が付かず「名目賃金(W)」の上昇を「実質賃金(W÷P)」の上昇と錯覚(貨幣錯覚)してしまうため、賃金が高くなるのであれば働こうと考え「労働供給量」を増加させて「失業率」が低減します。

そのため、短期における「物価版フィリップス曲線」は右下がりの曲線となります。

 

物価版フィリップス曲線(短期)

 

物価版フィリップス曲線(長期)

「自然失業率仮説」では、長期においては物価と「失業率」に相関関係はなく、物価に関わらず「失業率」は「自然失業率(UN)」で均衡するとしています。

また、長期において物価に関わらず「失業率」が「自然失業率(UN)」で均衡するのは、雇い主である「企業(労働需要者)」と「労働者(労働供給者)」に存在していた情報の非対称性がなくなるためとしています。

「労働者(労働供給者)」は「名目賃金(W)」と同時に「物価(P)」も上昇していて「実質賃金(W÷P)」が上昇していないという事実に気付き「労働供給量」を減少させるため、低減していた「失業率」は元に戻り「自然失業率(UN)」で均衡します。

そのため、長期における「物価版フィリップス曲線」は垂直な曲線となります。

 

物価版フィリップス曲線(長期)

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【令和元年度 第9問】

自然失業率仮説に関する記述として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。

 

a インフレと失業の間には、短期的にも長期的にも、トレード・オフの関係が成立する。
b 自然失業率とは、非自発的失業率と自発的失業率の合計である。
c 循環的失業の拡大は、実際のインフレ率を抑制する。
d 政府による総需要拡大策は、長期的にはインフレを加速させる。

 

[解答群]

ア aとb
イ aとd
ウ bとc
エ cとd

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答

自然失業率仮説に関する知識を問う問題です。

 

「自然失業率仮説」とは、1968年にフリードマンにより提唱された「物価上昇率」と「失業率」に関する仮説のことをいいます。

「自然失業率仮説」では、短期的には物価が上昇すると「失業率」は低減するが、長期的には物価が上昇しても「失業率」は低減せずに「自然失業率(UN)」で一定になるとしています。

つまり、「自然失業率仮説」では、物価を上昇させる政策は、短期的に「失業率」を低減させる効果はあるが、長期的に「失業率」を低減させる効果はないということを説明しています。

 

(a) 不適切です。

「自然失業率仮説」では、短期においては物価と「失業率」に負の相関関係(トレード・オフの関係)があり物価が上昇すると「失業率」が低減するが、長期においては物価と「失業率」に相関関係はなく、物価に関わらず「失業率」は「自然失業率(UN)」で均衡するとしています。

 

したがって、インフレと失業の間には、短期的にはトレード・オフの関係が成立するが、長期的には成立しないため、選択肢の内容は不適切です

 

(b) 不適切です。

「自然失業率(UN)」とは、労働市場の需要と供給が均衡している「完全雇用状態」において発生する「失業率」のことをいいます。

「完全雇用状態」とは、現行の賃金率で働く意思がある全ての人が職に就くことができている状態のことをいうため、「完全雇用状態」においては「非自発的失業」は発生していません

なお、「完全雇用状態」においても「自発的失業」や「摩擦的失業」は発生しています

 

  • 自発的失業
    現行の賃金率で働く意思がなく自発的に失業している状態
  • 非自発的失業
    働く意思と能力があるにも関わらず、景気が悪いため失業している状態
  • 摩擦的失業
    景気とは関係なく、転職などにより一時的に失業している状態

 

したがって、自然失業率には、非自発的失業を含んでいないため、選択肢の内容は不適切です

 

(c) 適切です。

「自然失業率仮説」では、長期においては物価と「失業率」に相関関係はなく、物価に関わらず「失業率」は「自然失業率(UN)」で均衡するとしています。

 

  • 「自然失業率(UN)」とは、労働市場の需要と供給が均衡している「完全雇用状態」において発生する「失業率」のことをいいます。
  • 「完全雇用状態」とは、現行の賃金率で働く意思がある全ての人が職に就くことができている状態のことをいいます。

 

つまり、「完全雇用状態」の「自然失業率(UN)」で均衡することを前提としている「長期」においては、現行の賃金率で働く意思がある全ての人が職に就くことができているため、そもそも景気の悪化に伴う労働需要の減少によって生じる失業である「循環的失業(需要不足失業)」は発生していません

そのため、選択肢に記述されている内容は「短期」について説明した内容であり、その正誤を問われているということになります。

 

「自然失業率仮説」では、短期においては物価と「失業率」に負の相関関係(トレード・オフの関係)があり物価が上昇すると「失業率」が低減するとしています。

つまり、「循環的失業(需要不足失業)」が拡大して「失業率」が増加すると、負の相関関係(トレード・オフの関係)にある「物価上昇率(インフレ率)」の上昇は抑制されることになります。

 

物価版フィリップス曲線(短期)

 

したがって、循環的失業の拡大は、実際のインフレ率を抑制するため、選択肢の内容は適切です

 

循環的失業(需要不足失業)

「循環的失業(需要不足失業)」とは、景気の悪化に伴う労働需要の減少によって生じる失業のことをいいます。

景気が悪くなりモノやサービスが売れなくなると、企業は生産量を減少させるため、必要な労働力も少なくなります。その結果、企業は新規雇用を抑制したり、解雇や早期退職といった形で雇用を減少させていきます。

このように、「循環的失業(需要不足失業)」とは、不況期に企業の労働需要が減少することにより、求職者が就職できなかったり、労働者が雇用調整などにより失職する場合などが該当します。

 

(d) 適切です。

「自然失業率仮説」とは、少し違う感じがしますが。。。

政府が総需要拡大策を講じると物価が上昇して「失業率」が低減しますが、しばらく経過すると「失業率」は元に戻って「自然失業率(UN)」で均衡します。

「失業率」は元に戻って「自然失業率(UN)」で均衡しますが、物価は上昇したまま戻りません

つまり、政府による総需要拡大策は、何も政策を講じない場合と比較すると物価の上昇(インフレ)を加速させることになります。

 

したがって、政府による総需要拡大策は、長期的にはインフレを加速させるため、選択肢の内容は適切です

 

(c)と(d)に記述されている内容が適切であるため、答えは(エ)です。


 

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