今回は、「運営管理 ~R5-34 輸配送管理(17)中継輸送~」について説明します。
目次
運営管理 ~令和5年度一次試験問題一覧~
令和5年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
- 運営管理 ~令和5年度一次試験問題一覧~
トラック運送・船舶輸送・貨客混載 -リンク-
本ブログにて「トラック運送」「船舶輸送」「貨客混載」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- トラック運送・船舶輸送・貨客混載のまとめ
- R4-32 輸配送管理(14)輸送手段の特徴
- R4-35 輸配送管理(16)トラックの積載率
- R3-33 輸配送管理(11)輸送手段
- R3-34 輸配送管理(12)共同輸送
- R2-36 輸配送管理(9)輸送手段
- R2-38 物流センター管理(15)物流センター運営
- R1-34 輸配送管理(7)輸送手段の特徴
- R1-35 輸配送管理(8)輸送形態
- R1-37 物流センター管理(12)物流センター運営
- H30-32 輸配送管理(1)配送経路(セービング法)
トラック運送
トラック運送の生産性を表す評価指標
国土交通省が公表している「トラック運送における生産性向上方策に関する手引き」において、トラック運送の生産性を表す評価指標として示されている「実働率」「実車率(時間あたり)」「実車率(距離あたり)」「積載率」について説明します。
実働率
「実働率」とは、1日の中で実際にトラックが使用されている「稼働時間」の比率のことをいいます。(時間ではなく日数として考えることもできます)
「実働率」は、その数値が高いほど生産性が高いことを示しており、トラックが使用されていない時間(非稼働時間)が増加すると「実働率」が低下して生産性が悪化します。
宿泊を伴う長距離輸送では、ドライバーが宿泊している時間帯はトラックが使用されていない状態となり「実働率」が低下してしまうため、1人のドライバーで宿泊を伴うような長距離の輸送工程を担うのではなく、250~300km程度の日帰り圏の物流ネットワークを形成し、中継拠点でドライバーを交代したり貨物を積み替えるなどの方法により複数のドライバーでリレーして輸送する「中継輸送」を取り入れれば「実働率」を高めることができます。
実車率(時間あたり)
「実車率(時間あたり)」とは、トラックの「全稼働時間」に対する「走行時間」の比率のことをいいます。
「走行時間」とは、貨物の有無に関係なくドライバーがトラックを運転して走行する時間のことをいいます。
「実車率(時間あたり)」は、その数値が高いほど生産性が高いことを示しており、ドライバーがトラックを運転していない「休憩時間」「積卸作業時間」「積卸待ち時間」が増加すると「実車率(時間あたり)」が低下して生産性が悪化します。
ドライバーの「休憩時間」を短くすることはできませんが、「積卸作業時間」や「積卸待ち時間」を短くするために「積卸(荷役や検品・附帯業務)等の効率化」や「積卸待ち時間の削減」などの対策を講じれば「実車率(時間あたり)」を高めることができます。
実車率(距離あたり)
「実車率(距離あたり)」とは、トラックの「全走行距離」に対する「実車距離」の比率のことをいいます。
「実車距離」とは、トラックに貨物を積載して走行する距離のことをいいます。
「実車率(距離あたり)」は、その数値が高いほど生産性が高いことを示しており、貨物を積載せずに走行した距離(空車距離)が増加すると「実車率(距離あたり)」が低下して生産性が悪化します。
貨物を届けた後の復路において貨物を積載しない状態(空車)になると「実車率(距離あたり)」が低下してしまうため、共同輸送により帰り荷を確保するなどの対策を講じれば「実車率(距離あたり)」を高めることができます。
積載率
「積載率」とは、トラックの「最大積載重量(容量)」に対する「積載重量(容量)」の比率のことをいいます。
「積載重量(容量)」とは、トラックに積載して輸送する貨物の重量(容量)のことをいいます。
「積載率」は、その数値が高いほど生産性が高いことを示しており、トラックにまだ積み込むことができる余裕(空き重量(容量))が増加すると「積載率」が低下して生産性が悪化します。
トラックにできるだけ多くの貨物を積載できるように、荷主間や荷主とトラック事業者の協力による共同配送、幹線輸送の共同化、物流拠点の共同化などの対策を講じれば「積載率」を高めることができます。
トラック運送における生産性向上方策の取り組みイメージ
「トラック運送における生産性向上方策に関する手引き」で紹介されているトラック運送における生産性向上方策とその取り組みイメージは以下の通りです。
中継輸送
「中継輸送」とは、長距離輸送において出発地から到着地までの工程を1人のドライバーで輸送するのではなく、250~300km程度の日帰り圏の物流ネットワークを形成し、中継拠点でドライバーを交代したり貨物を積み替えるなどの方法により複数のドライバーでリレーして輸送する方式のことをいいます。
「中継輸送」には、1つのトラック事業者において複数のドライバーが輸送する方式と、異なるトラック事業者間で輸送する方式があります。
異なるトラック事業者間で輸送する場合の代表的な方式を以下に示します。
ドライバー交替方式
「ドライバー交替方式」とは、中継拠点でドライバーがトラックを乗り替える方式のことをいいます。
貨物を積み替える必要がないため、中継拠点における作業は短時間で終えることができますが、ドライバーは、復路において他の事業者のトラックを運転することになります。
ドライバー交替方式
トレーラー・トラクター方式
「トレーラー・トラクター方式」とは、中継拠点でトレーラーのヘッドを交換する方式のことをいいます。
中継拠点におけるヘッド交換作業は短時間で終えることができますが、ドライバーは牽引免許が必要(ただし、スワップボディの場合は不要)となります。
「トレーラー・トラクター方式」を採用するためには、ヘッドとシャーシが連結できるか、中継拠点においてヘッドを交換するための作業スペースを確保できるかなどについて、事前に確認する必要があります。
トレーラー・トラクター方式
貨物積み替え方式
「貨物積み替え方式」とは、中継拠点で貨物を積み替える方式のことをいいます。
貨物の積み替えを実施するため、中継拠点における作業時間は長くなってしまいます。
「貨物積み替え方式」を採用するためには、貨物を積み替えるための荷役作業員や設備を確保すること、積み替え時間を短縮する方策を検討すること、積み替え作業中に貨物が破損した場合の対応を取り決めておくことなどについて、事前に確認する必要があります。
貨物積み替え方式
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【令和5年度 第34問】
A社とB社は、それぞれX県とY県の間でトラックの長距離輸送を行っており、このたび中継輸送の取組を行った。この取組前と取組後の比較に関する記述として、最も適切なものを次ページの解答群から選べ。
なお、次ページの条件のみを踏まえて解答すること。
【中継輸送の取組前】
A社のトラックは、X県の倉庫AxからY県の倉庫Ayへ貨物を積載して走行(実車走行)した後に、倉庫Ayから倉庫Axへ貨物を積載せずに走行(空車走行)していた。
B社のトラックは、Y県の倉庫ByからX県の倉庫Bxへ実車走行した後に、倉庫Bxから倉庫Byへ空車走行していた。
【中継輸送の取組後】
A社のトラックは倉庫Axから中継拠点へ、B社のトラックは倉庫Byから中継拠点へそれぞれ実車走行した。それから中継拠点で互いの貨物を積み替えた後に、A社のトラックは倉庫BxへB社の貨物を積載して走行し、B社のトラックは倉庫AyへA社の貨物を積載して走行した(下図参照)。
—改ページ—
【解答に当たっての条件】
- トラックの最大積載量と台数は、取組前と取組後のA社とB社においてすべて同じである。
- トラックの実車率と積載率は、A社とB社を合わせた全体でそれぞれ計算する。
- 同一県内のA社とB社の倉庫は隣接しており、その間の距離は0とする。
- トラックの積載率は、空車を含めずに計算する。
[解答群]
ア トラックの実車率と積載率は変わらなかった。
イ トラックの実車率は変わらなかったが、積載率は上昇した。
ウ トラックの実車率は上昇し、積載率も上昇した。
エ トラックの実車率は上昇したが、積載率は変わらなかった。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
中継輸送によるトラック運送の生産性を表す評価指標の変化に関する知識を問う問題です。
中継輸送
「中継輸送」とは、長距離輸送において出発地から到着地までの工程を1人のドライバーで輸送するのではなく、250~300km程度の日帰り圏の物流ネットワークを形成し、中継拠点でドライバーを交代したり貨物を積み替えるなどの方法により複数のドライバーでリレーして輸送する方式のことをいいます。
貨物積み替え方式
「貨物積み替え方式」とは、中継拠点で貨物を積み替える方式のことをいいます。
貨物の積み替えを実施するため、中継拠点における作業時間は長くなってしまいます。
「貨物積み替え方式」を採用するためには、貨物を積み替えるための荷役作業員や設備を確保すること、積み替え時間を短縮する方策を検討すること、積み替え作業中に貨物が破損した場合の対応を取り決めておくことなどについて、事前に確認する必要があります。
貨物積み替え方式
トラック運送の生産性を表す評価指標
国土交通省が公表している「トラック運送における生産性向上方策に関する手引き」では、トラック運送の生産性を表す評価指標として「実働率」「実車率(時間あたり)」「実車率(距離あたり)」「積載率」が示されています。
今回の問題では、トラック運送の生産性を表す評価指標のうち「実車率」と「積載率」について問われています。
「実車率」には「実車率(時間あたり)」「実車率(距離あたり)」の2種類がありますが、トラック運送の時間に関する情報は記述されていないため「実車率(距離あたり)」について確認していきます。
実車率(距離あたり)
「実車率(距離あたり)」とは、トラックの「全走行距離」に対する「実車距離」の比率のことをいいます。
「実車距離」とは、トラックに貨物を積載して走行する距離のことをいいます。
「実車率(距離あたり)」は、その数値が高いほど生産性が高いことを示しており、貨物を積載せずに走行した距離(空車距離)が増加すると「実車率(距離あたり)」が低下して生産性が悪化します。
貨物を届けた後の復路において貨物を積載しない状態(空車)になると「実車率(距離あたり)」が低下してしまうため、共同輸送により帰り荷を確保するなどの対策を講じれば「実車率(距離あたり)」を高めることができます。
積載率
「積載率」とは、トラックの「最大積載重量(容量)」に対する「積載重量(容量)」の比率のことをいいます。
「積載重量(容量)」とは、トラックに積載して輸送する貨物の重量(容量)のことをいいます。
「積載率」は、その数値が高いほど生産性が高いことを示しており、トラックにまだ積み込むことができる余裕(空き重量(容量))が増加すると「積載率」が低下して生産性が悪化します。
トラックにできるだけ多くの貨物を積載できるように、荷主間や荷主とトラック事業者の協力による共同配送、幹線輸送の共同化、物流拠点の共同化などの対策を講じれば「積載率」を高めることができます。
中継輸送の取組前後における実車率と積載率
「A社」が貨物を積載して走行(実車走行)する場合の「積載率」を「80%」、および「B社」が貨物を積載して走行(実車走行)する場合の「積載率」を「60%」と仮定して、中継輸送の取組前後における「実車率(距離当たり)」と「積載率」を確認します。
中継輸送の取組前
中継輸送の取組後
「A社」が貨物を積載して走行(実車走行)する場合の「積載率」を「80%」、および「B社」が貨物を積載して走行(実車走行)する場合の「積載率」を「60%」と仮定した場合の中継輸送の取組前後における「A社」と「B社」を合わせた全体の「実車率(時間当たり)」と「積載率」の比較結果を以下に示します。
評価指標 | 取組前 | 取組後 | 取組前後の変化 |
実車率(距離当たり) | 50% | 100% | 上昇 |
積載率 | 70% | 70% | 変化なし |
中継輸送の取組により、トラックの実車率(距離当たり)は上昇しますが、積載率は変化しません。
答えは(エ)です。
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