今回は、「運営管理 ~R2-36 輸配送管理(9)輸送手段~」について説明します。
目次
運営管理 ~令和2年度一次試験問題一覧~
令和2年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
ユニットロード・パレチゼーション・複合一貫輸送・モーダルシフト・パレット・箱/容器 -リンク-
本ブログにて「ユニットロード」「パレチゼーション」「複合一貫輸送」「モーダルシフト」「パレット」「箱/容器」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- ユニットロード・パレチゼーション・複合一貫輸送・モーダルシフト・パレット・箱/容器のまとめ
- R4-32 輸配送管理(14)輸送手段の特徴
- R4-33 輸配送管理(15)ユニットロード
- R3-33 輸配送管理(11)輸送手段
- R3-36 輸配送管理(13)ユニットロード
- R2-37 輸配送管理(10)ユニットロード
- R1-34 輸配送管理(7)輸送手段の特徴
- H30-33 輸配送管理(2)ユニットロード
- H29-35 輸配送管理(3)輸送手段
- H29-36 輸配送管理(4)ユニットロード
- H28-35 輸配送管理(6)ユニットロード
トラック運送・船舶輸送・貨客混載 -リンク-
本ブログにて「トラック運送」「船舶輸送」「貨客混載」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- トラック運送・船舶輸送・貨客混載のまとめ
- R5-34 輸配送管理(17)中継輸送
- R4-32 輸配送管理(14)輸送手段の特徴
- R4-35 輸配送管理(16)トラックの積載率
- R3-33 輸配送管理(11)輸送手段
- R3-34 輸配送管理(12)共同輸送
- R2-38 物流センター管理(15)物流センター運営
- R1-34 輸配送管理(7)輸送手段の特徴
- R1-35 輸配送管理(8)輸送形態
- R1-37 物流センター管理(12)物流センター運営
- H30-32 輸配送管理(1)配送経路(セービング法)
モーダルシフト
「モーダルシフト」とは、トラックによる貨物輸送を「鉄道輸送」や「海上輸送」といった環境負荷の低い大量輸送機関に転換することをいい、「二酸化炭素の排出量を削減すること」を目的とした環境保護の取り組みの1つです。
貨物輸送において環境負荷を低減する取り組みには「モーダルシフト」「輸配送の共同化」「輸送網の集約」などがありますが、その中でも「モーダルシフト」は、特に環境負荷を低減する効果が大きい取り組みです。
トラック輸送による二酸化炭素排出量と比較すると、鉄道輸送では「11分の1」に、船舶輸送では「6分の1」に抑制できるため、二酸化炭素排出量の大幅な削減を期待されています。
「モーダルシフト」を推進するためには、一括輸送するために必要な貨物量を確保することや、輸送途中における荷物の積み替えを効率化することが課題とされていますが、複数荷主による混載便により必要な貨物量を確保したり、カーフェリーを利用してトラックそのものを海上輸送することで荷物の積み替えをなくすなどの方法も数多く利用されています。
トラック運送
トラック運送の生産性を表す評価指標
国土交通省が公表している「トラック運送における生産性向上方策に関する手引き」において、トラック運送の生産性を表す評価指標として示されている「実働率」「実車率(時間あたり)」「実車率(距離あたり)」「積載率」について説明します。
実働率
「実働率」とは、1日の中で実際にトラックが使用されている「稼働時間」の比率のことをいいます。(時間ではなく日数として考えることもできます)
「実働率」は、その数値が高いほど生産性が高いことを示しており、トラックが使用されていない時間(非稼働時間)が増加すると「実働率」が低下して生産性が悪化します。
宿泊を伴う長距離輸送では、ドライバーが宿泊している時間帯はトラックが使用されていない状態となり「実働率」が低下してしまうため、1人のドライバーで宿泊を伴うような長距離の輸送工程を担うのではなく、250~300km程度の日帰り圏の物流ネットワークを形成し、中継拠点でドライバーを交代したり貨物を積み替えるなどの方法により複数のドライバーでリレーして輸送する「中継輸送」を取り入れれば「実働率」を高めることができます。
実車率(時間あたり)
「実車率(時間あたり)」とは、トラックの「全稼働時間」に対する「走行時間」の比率のことをいいます。
「走行時間」とは、貨物の有無に関係なくドライバーがトラックを運転して走行する時間のことをいいます。
「実車率(時間あたり)」は、その数値が高いほど生産性が高いことを示しており、ドライバーがトラックを運転していない「休憩時間」「積卸作業時間」「積卸待ち時間」が増加すると「実車率(時間あたり)」が低下して生産性が悪化します。
ドライバーの「休憩時間」を短くすることはできませんが、「積卸作業時間」や「積卸待ち時間」を短くするために「積卸(荷役や検品・附帯業務)等の効率化」や「積卸待ち時間の削減」などの対策を講じれば「実車率(時間あたり)」を高めることができます。
実車率(距離あたり)
「実車率(距離あたり)」とは、トラックの「全走行距離」に対する「実車距離」の比率のことをいいます。
「実車距離」とは、トラックに貨物を積載して走行する距離のことをいいます。
「実車率(距離あたり)」は、その数値が高いほど生産性が高いことを示しており、貨物を積載せずに走行した距離(空車距離)が増加すると「実車率(距離あたり)」が低下して生産性が悪化します。
貨物を届けた後の復路において貨物を積載しない状態(空車)になると「実車率(距離あたり)」が低下してしまうため、共同輸送により帰り荷を確保するなどの対策を講じれば「実車率(距離あたり)」を高めることができます。
積載率
「積載率」とは、トラックの「最大積載重量(容量)」に対する「積載重量(容量)」の比率のことをいいます。
「積載重量(容量)」とは、トラックに積載して輸送する貨物の重量(容量)のことをいいます。
「積載率」は、その数値が高いほど生産性が高いことを示しており、トラックにまだ積み込むことができる余裕(空き重量(容量))が増加すると「積載率」が低下して生産性が悪化します。
トラックにできるだけ多くの貨物を積載できるように、荷主間や荷主とトラック事業者の協力による共同配送、幹線輸送の共同化、物流拠点の共同化などの対策を講じれば「積載率」を高めることができます。
トラック運送における生産性向上方策の取り組みイメージ
「トラック運送における生産性向上方策に関する手引き」で紹介されているトラック運送における生産性向上方策とその取り組みイメージは以下の通りです。
中継輸送
「中継輸送」とは、長距離輸送において出発地から到着地までの工程を1人のドライバーで輸送するのではなく、250~300km程度の日帰り圏の物流ネットワークを形成し、中継拠点でドライバーを交代したり貨物を積み替えるなどの方法により複数のドライバーでリレーして輸送する方式のことをいいます。
「中継輸送」には、1つのトラック事業者において複数のドライバーが輸送する方式と、異なるトラック事業者間で輸送する方式があります。
異なるトラック事業者間で輸送する場合の代表的な方式を以下に示します。
ドライバー交替方式
「ドライバー交替方式」とは、中継拠点でドライバーがトラックを乗り替える方式のことをいいます。
貨物を積み替える必要がないため、中継拠点における作業は短時間で終えることができますが、ドライバーは、復路において他の事業者のトラックを運転することになります。
ドライバー交替方式
トレーラー・トラクター方式
「トレーラー・トラクター方式」とは、中継拠点でトレーラーのヘッドを交換する方式のことをいいます。
中継拠点におけるヘッド交換作業は短時間で終えることができますが、ドライバーは牽引免許が必要(ただし、スワップボディの場合は不要)となります。
「トレーラー・トラクター方式」を採用するためには、ヘッドとシャーシが連結できるか、中継拠点においてヘッドを交換するための作業スペースを確保できるかなどについて、事前に確認する必要があります。
トレーラー・トラクター方式
貨物積み替え方式
「貨物積み替え方式」とは、中継拠点で貨物を積み替える方式のことをいいます。
貨物の積み替えを実施するため、中継拠点における作業時間は長くなってしまいます。
「貨物積み替え方式」を採用するためには、貨物を積み替えるための荷役作業員や設備を確保すること、積み替え時間を短縮する方策を検討すること、積み替え作業中に貨物が破損した場合の対応を取り決めておくことなどについて、事前に確認する必要があります。
貨物積み替え方式
船舶輸送
船舶輸送には、貨物を積載した車両ごと船内に積み込んで運搬できる「RORO(roll-on roll-off)船」による輸送と、クレーンやリフトでコンテナを吊り上げて貨物の積み下ろしを行う「LOLO船(lift-on lift-off)」による輸送があります。
RORO(roll-on roll-off)船
「RORO(roll-on roll-off)船」とは、船と陸地を橋渡しして車両を自走させるランプウェイを有しており、トラックやトレーラーから貨物を積み下ろすことなく、貨物を積載した車両ごと船内に積み込んで運搬する貨物船のことをいいます。
旅客を輸送しない「カーフェリー」といった方がイメージが湧きやすいと思います。
「RORO(roll-on roll-off)船」は、トラックやトレーラーから貨物を積み下ろすことなく、貨物を積載した車両ごと船内に積み込んで運搬する貨物船であるため、「LOLO船(lift-on lift-off)」よりも、素早く貨物を積み下ろしすることができますが、車両ごと船内に積み込むため貨物の積載効率は劣っています。
LOLO(lift-on lift-off)船
「LOLO(lift-on lift-off)船」とは、船上や陸地に設置しているクレーンやリフトで「コンテナ」を吊り上げて、貨物の積み下ろしを行う貨物船のことをいいます。
「コンテナ船」といった方がイメージが湧きやすいと思います。
「LOLO船(lift-on lift-off)」は、船上や陸地に設置しているクレーンやリフトで「コンテナ」を吊り上げて、貨物の積み下ろしを行う貨物船であるため、「RORO(roll-on roll-off)船」よりも、貨物の積み下ろしに時間がかかりますが、貨物の積載効率は優れています。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【令和2年度 第36問】
輸送手段等に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア RORO(roll-on roll-off)船は、フェリーと同様に、トラックと運転者を一緒に輸送することができる船舶であり、いわゆる旅客船のことである。
イ 中継輸送とは、長距離あるいは長時間に及ぶトラック輸送のときに、1人の運転者が輸送途中で休憩しながら発地から着地まで一貫して輸送することをいう。
ウ 鉄道輸送には、トラック輸送に比べて、荷主が出発時間を自由に指定することができるという長所がある一方で、輸送トンキロ当たりの二酸化炭素排出量が多いという短所もある。
エ トラックの時間当たりの実車率を高める方策の1つは、納品先での納品待機時間など手待ち時間を削減することである。
オ トラック輸送では、1台のトラックに荷主1社の荷物だけを積載する貸切運送しか認められていない。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
「輸送手段」に関する知識を問う問題です。
(ア) 不適切です。
「RORO(roll-on roll-off)船」とは、船と陸地を橋渡しして車両を自走させるランプウェイを有しており、トラックやトレーラーから貨物を積み下ろすことなく、貨物を積載した車両ごと船内に積み込んで運搬する貨物船のことをいいます。
旅客を輸送しない「カーフェリー」といった方がイメージが湧きやすいと思います。
したがって、RORO(roll-on roll-off)船は、フェリーと同様に、トラックと運転者を一緒に輸送することができる船舶ではなく、トラックのみを輸送することができる船舶であるため、選択肢の内容は不適切です。
(イ) 不適切です。
「中継輸送」とは、長距離輸送において出発地から到着地までの工程を1人のドライバーで輸送するのではなく、250~300km程度の日帰り圏の物流ネットワークを形成し、中継拠点でドライバーを交代したり貨物を積み替えるなどの方法により複数のドライバーでリレーして輸送する方式のことをいいます。
したがって、中継輸送とは、長距離あるいは長時間に及ぶトラック輸送のときに、1人の運転者が輸送途中で休憩しながら発地から着地まで一貫して輸送することではないため、選択肢の内容は不適切です。
(ウ) 不適切です。
「モーダルシフト」とは、トラックによる貨物輸送を「鉄道輸送」や「海上輸送」といった環境負荷の低い大量輸送機関に転換することをいい、「二酸化炭素の排出量を削減すること」を目的とした環境保護の取り組みの1つです。
貨物輸送において環境負荷を低減する取り組みには「モーダルシフト」「輸配送の共同化」「輸送網の集約」などがありますが、その中でも「モーダルシフト」は、特に環境負荷を低減する効果が大きい取り組みです。
トラック輸送による二酸化炭素排出量と比較すると、鉄道輸送では「11分の1」に、船舶輸送では「6分の1」に抑制できるため、二酸化炭素排出量の大幅な削減を期待されています。
したがって、荷主が出発時間を自由に指定することができるという長所がある一方で、輸送トンキロ当たりの二酸化炭素排出量が多いという短所もあるのは、「鉄道輸送」ではなく「トラック輸送」であるため、選択肢の内容は不適切です。
(エ) 適切です。
「実車率(時間あたり)」とは、トラックの「全稼働時間」に対する「走行時間」の比率のことをいいます。
「走行時間」とは、貨物の有無に関係なくドライバーがトラックを運転して走行する時間のことをいいます。
「実車率(時間あたり)」は、その数値が高いほど生産性が高いことを示しており、ドライバーがトラックを運転していない「休憩時間」「積卸作業時間」「積卸待ち時間」が増加すると「実車率(時間あたり)」が低下して生産性が悪化します。
ドライバーの「休憩時間」を短くすることはできませんが、「積卸作業時間」や「積卸待ち時間」を短くするために「積卸(荷役や検品・附帯業務)等の効率化」や「積卸待ち時間の削減」などの対策を講じれば「実車率(時間あたり)」を高めることができます。
したがって、トラックの時間当たりの実車率を高める方策の1つは、納品先での納品待機時間など手待ち時間を削減することであるため、選択肢の内容は適切です。
(オ) 不適切です。
トラック輸送では、1台のトラックに荷主1社の荷物だけを積載する貸切運送だけでなく、1台のトラックに複数の荷主の荷物を積載する共同輸送も認められているため、選択肢の内容は不適切です。
答えは(エ)です。
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