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経済学・経済政策 ~H28-11-1 IS-LM曲線(7)IS曲線とLM曲線の傾き~

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今回は、「経済学・経済政策 ~H28-11-1 IS-LM曲線(7)IS曲線とLM曲線の傾き~」について説明します。

 

目次

経済学・経済政策 ~平成28年度一次試験問題一覧~

平成28年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

IS-LM曲線(一次試験) -リンク-

一次試験に向けた「IS-LM曲線」について説明しているページを以下に示しますので、アクセスしてみてください。

 

 

IS曲線とは

「IS曲線」とは、縦軸に「利子率(r)」を、横軸に「GDP(Y)」を取ったグラフにおいて「財市場」が均衡する点の組み合わせを表す曲線のことをいいます。

「財市場」において「利子率(r)」が低下すると「投資(I)」が増加して「均衡GDP(YE」が増加するため「IS曲線」は右下がりの曲線として表されます。

なお、「IS曲線」の「I」は「Investment(投資)」を、「S」は「Savings(貯蓄)」を表しています。

 

IS曲線

 

IS曲線の描写

「IS曲線」は、縦軸に「利子率(r)」を、横軸に「投資(I)」を取った「投資曲線」と、縦軸に「総供給(YS)、総需要(YD)」を、横軸に「GDP(Y)」を取った「45度線図」を用いて、「利子率(r)」が変化したときに「GDP(Y)」がどのように変化するのかを確認することで描写することができます。

結論として、「利子率(r)」が低下すると「均衡GDP(YE」が増加するため「IS曲線」は右下がりの曲線として表されます。

「利子率(r)」が低下した場合に「均衡GDP(YE)」が変化していく流れを以下に示します。

 

  1. 「利子率(r)」が「ra」から「rb」に低下する
  2. 「利子率(r)」が低下したため「投資(I)」が「Ia」から「Ib」に増加する
  3. 「投資(I)」が増加したため「 Y=C+I 」で表される「総需要(YD)」が「Ya」から「Yb」に増加する
  4. 「総需要(YD)」が増加したため、企業が増産して「総供給(YS)」も「Ya」から「Yb」に増加して「財市場」が均衡する。

 

IS曲線の描写

 

投資の利子弾力性によるIS曲線の変化

「投資の利子弾力性」とは「利子率(r)」が増減したときに「投資(I)」がどれだけ反応するかを表しています

「投資の利子弾力性」が大きい場合は「利子率(r)」が少し低下するだけで「投資(I)」が大きく増加します。逆に「投資の利子弾力性」が小さい場合は「利子率(r)」が大きく低下しても「投資(I)」は少ししか増加しません

 

「IS曲線」は「投資の利子弾力性」により、その傾きが変化します。

「投資の利子弾力性」が大きい場合は、その傾きが緩やかな曲線となり「投資の利子弾力性」が小さい場合は、その傾きが急な曲線となります

特に、「投資の利子弾力性」がゼロの場合(投資が利子非弾力性な場合)は「利子率(r)」が低下しても「投資(I)」は一切増加しないため「総需要(YDが変化せず「均衡GDP(YE)」も変化しません。その結果、「IS曲線」は、垂直の曲線として表されます。

 

投資の利子弾力性が大きい場合

「投資の利子弾力性」が大きい場合は「利子率(r)」が少し低下するだけで「投資(I)」が大きく増加するため「総需要(YD)」が大きく増加して「均衡GDP(YE)」も大きく増加します

その結果、「IS曲線」は、その傾きが緩やかな曲線として表されます。

 

投資の利子弾力性が大きい場合

 

投資の利子弾力性がゼロの場合(投資が利子非弾力性な場合)

「投資の利子弾力性」がゼロの場合は「利子率(r)」が低下しても「投資(I)」は一切増加しないため「総需要(YD)」が変化せず「均衡GDP(YE)」も変化しません

その結果、「IS曲線」は、垂直の曲線として表されます。

 

投資の利子弾力性がゼロの場合

 

IS曲線の傾きとY軸の切片

「IS曲線」の「傾き」と「Y軸の切片」を具体的な関数にして考えていきます

「IS曲線」は、縦軸に「利子率(r)」を、横軸に「GDP(Y)」を取ったグラフであるため、以下の関数で表すことができます。

なお、「IS曲線」は右下がりの曲線であるため「傾き」はマイナスとなります。

 

  • r = -●Y + ■(傾き:●、Y軸の切片:■)

 

例として「閉鎖経済/開放経済」と「税金を考慮しない場合/税金(定額税)を考慮した場合」を組み合わせた4パターンについて「IS曲線」を表す関数を求め、その「傾き」と「Y軸の切片」の関係を確認していきます。

なお、試験問題において「総需要曲線」「消費(C)」「投資(I)」などの関数が与えられた場合は、以下に示す内容を暗記するのではなく、試験問題で与えられた関数から「IS曲線」を表す関数を求め、その「傾き」と「Y軸の切片」の関係を確認することをお薦めします

 

閉鎖経済(税金を考慮しない場合)

「閉鎖経済」において「総需要曲線(YD)」と「総供給曲線(YS)」を表す関数は以下の通りです。(C:消費、I:投資、G:政府支出、Y:GDP)

 

  • YD = C + I + G
  • YS = Y

 

「IS曲線」は「財市場」が均衡する点の組み合わせを表しているため「YD = YS」の関係が成立します。

 

  • Y = C + I + G

 

「消費(C)」「投資(I)」「政府支出(G)」が以下の関数で与えられている場合

 

  • C = a + bY(a:基礎消費、b:限界消費性向、Y:GDP)
  • I = I0 - I1r(I0:独立投資、I1:投資の利子弾力性、r:利子率)
  • G = G0(G0:政府支出)

 

縦軸に「利子率(r)」を、横軸に「GDP(Y)」を取ったグラフである「IS曲線」を表す関数は以下の通りとなります。

 

  • Y = a + bY + I0 - I1r + G0
  • I1r = -( 1 - b )Y +( a + I0 + G0
  • r = -( 1 - b )÷ I1 × Y +( a + I0 + G0 )÷ I1

 

 

「IS曲線」を表す関数から、財市場の変動要素による「傾き」と「Y軸の切片」の変化を整理すると以下の通りとなります。

 

IS曲線の傾き
  • 「限界消費性向(b)」の値が大きくなると傾きが緩やかになる
  • 「投資の利子弾力性(I1)」の値が大きくなると傾きが緩やかになる

 

IS曲線のY軸の切片
  • 「基礎消費(a)」の値が大きくなるとY軸の切片が大きくなる
  • 「独立投資(I0)」の値が大きくなるとY軸の切片が大きくなる
  • 「政府支出(G0)」の値が大きくなるとY軸の切片が大きくなる
  • 「投資の利子弾力性(I1)」の値が大きくなるとY軸の切片が小さくなる
閉鎖経済(税金(定額税)を考慮する場合)

「閉鎖経済」において「総需要曲線(YD)」と「総供給曲線(YS)」を表す関数は以下の通りです。(C:消費、I:投資、G:政府支出、Y:GDP)

 

  • YD = C + I + G
  • YS = Y

 

「IS曲線」は「財市場」が均衡する点の組み合わせを表しているため「YD = YS」の関係が成立します。

 

  • Y = C + I + G

 

「消費(C)」「投資(I)」「政府支出(G)」が以下の関数で与えられている場合

 

  • C = a + b( Y - T0 )(a:基礎消費、b:限界消費性向、Y:GDP、T0:定額税)
  • I = I0 - I1r(I0:独立投資、I1:投資の利子弾力性、r:利子率)
  • G = G0(G0:政府支出)

 

縦軸に「利子率(r)」を、横軸に「GDP(Y)」を取ったグラフである「IS曲線」を表す関数は以下の通りとなります。

 

  • Y = a + b( Y - T0 )+ I0 - I1r + G0
  • I1r = -( 1 - b )Y +( a - bT0 + I0 + G0 )
  • r = -( 1 - b )÷ I1 × Y +( a - bT0 + I0 + G0 )÷ I1

 

 

「IS曲線」を表す関数から、財市場の変動要素による「傾き」と「Y軸の切片」の変化を整理すると以下の通りとなります。

 

IS曲線の傾き
  • 「限界消費性向(b)」の値が大きくなると傾きが緩やかになる
  • 「投資の利子弾力性(I1)」の値が大きくなると傾きが緩やかになる

 

IS曲線のY軸の切片
  • 「基礎消費(a)」の値が大きくなるとY軸の切片が大きくなる
  • 「限界消費性向(b)」の値が大きくなるとY軸の切片が小さくなる
  • 「定額税(T0)」の値が大きくなるとY軸の切片が小さくなる
  • 「独立投資(I0)」の値が大きくなるとY軸の切片が大きくなる
  • 「政府支出(G0)」の値が大きくなるとY軸の切片が大きくなる
  • 「投資の利子弾力性(I1)」の値が大きくなるとY軸の切片が小さくなる

 

開放経済(税金を考慮しない場合)

「開放経済」において「総需要曲線(YD)」と「総供給曲線(YS)」を表す関数は以下の通りです。(C:消費、I:投資、G:政府支出、EX:輸出、IM:輸入、Y:GDP)

 

  • YD = C + I + G + EX - IM
  • YS = Y

 

「IS曲線」は「財市場」が均衡する点の組み合わせを表しているため「YD = YS」の関係が成立します。

 

  • Y = C + I + G + EX - IM

 

「消費(C)」「投資(I)」「政府支出(G)」「輸出(EX)」「輸入(IM)」が以下の関数で与えられている場合

 

  • C = a + bY(a:基礎消費、b:限界消費性向、Y:GDP)
  • I = I0 - I1r(I0:独立投資、I1:投資の利子弾力性、r:利子率)
  • G = G0(G0:政府支出)
  • EX = EX0(EX0:輸出)
  • IM = mY(m:限界輸入性向、Y:GDP)

 

縦軸に「利子率(r)」を、横軸に「GDP(Y)」を取ったグラフである「IS曲線」を表す関数は以下の通りとなります。

 

  • Y = a + bY + I0 - I1r + G0 + EX0 - mY
  • I1r = -( 1 - b + m )Y +( a + I0 + G0 + EX0
  • r = -( 1 - b + m )÷ I1 × Y +( a + I0 + G0 + EX0 )÷ I1

 

 

「IS曲線」を表す関数から、財市場の変動要素による「傾き」と「Y軸の切片」の変化を整理すると以下の通りとなります。

 

IS曲線の傾き
  • 「限界消費性向(b)」の値が大きくなると傾きが緩やかになる
  • 「投資の利子弾力性(I1)」の値が大きくなると傾きが緩やかになる
  • 「限界輸入性向(m)」の値が大きくなると傾きが急になる

 

IS曲線のY軸の切片
  • 「基礎消費(a)」の値が大きくなるとY軸の切片が大きくなる
  • 「独立投資(I0)」の値が大きくなるとY軸の切片が大きくなる
  • 「政府支出(G0)」の値が大きくなるとY軸の切片が大きくなる
  • 「輸出(EX0)」の値が大きくなるとY軸の切片が大きくなる
  • 「投資の利子弾力性(I1)」の値が大きくなるとY軸の切片が小さくなる

 

開放経済(税金(定額税)を考慮する場合)

「開放経済」において「総需要曲線(YD)」と「総供給曲線(YS)」を表す関数は以下の通りです。(C:消費、I:投資、G:政府支出、EX:輸出、IM:輸入、Y:GDP)

 

  • YD = C + I + G + EX - IM
  • YS = Y

 

「IS曲線」は「財市場」が均衡する点の組み合わせを表しているため「YD = YS」の関係が成立します。

 

  • Y = C + I + G + EX - IM

 

「消費(C)」「投資(I)」「政府支出(G)」「輸出(EX)」「輸入(IM)」が以下の関数で与えられている場合

 

  • C = a + b( Y - T0 )(a:基礎消費、b:限界消費性向、Y:GDP、T0:定額税)
  • I = I0 - I1r(I0:独立投資、I1:投資の利子弾力性、r:利子率)
  • G = G0(G0:政府支出)
  • EX = EX0(EX0:輸出)
  • IM = mY(m:限界輸入性向、Y:GDP)

 

縦軸に「利子率(r)」を、横軸に「GDP(Y)」を取ったグラフである「IS曲線」を表す関数は以下の通りとなります。

 

  • Y = a + b( Y - T0 )+ I0 - I1r + G0 + EX0 - mY
  • I1r = -( 1 - b + m )Y +( a - bT0 + I0 + G0 + EX0
  • r = -( 1 - b + m )÷ I1 × Y +( a - bT0 + I0 + G0 + EX0 )÷ I1

 

 

「IS曲線」を表す関数から、財市場の変動要素による「傾き」と「Y軸の切片」の変化を整理すると以下の通りとなります。

 

IS曲線の傾き
  • 「限界消費性向(b)」の値が大きくなると傾きが緩やかになる
  • 「投資の利子弾力性(I1)」の値が大きくなると傾きが緩やかになる
  • 「限界輸入性向(m)」の値が大きくなると傾きが急になる

 

IS曲線のY軸の切片
  • 「基礎消費(a)」の値が大きくなるとY軸の切片が大きくなる
  • 「限界消費性向(b)」の値が大きくなるとY軸の切片が小さくなる
  • 「定額税(T0)」の値が大きくなるとY軸の切片が小さくなる
  • 「独立投資(I0)」の値が大きくなるとY軸の切片が大きくなる
  • 「政府支出(G0)」の値が大きくなるとY軸の切片が大きくなる
  • 「輸出(EX0)」の値が大きくなるとY軸の切片が大きくなる
  • 「投資の利子弾力性(I1)」の値が大きくなるとY軸の切片が小さくなる

 

IS曲線の描写(簡便法)

「投資曲線」と「45度線図」を用いて「IS曲線」を描写していく方法ではなく、縦軸に「利子率(r)」を、横軸に「GDP(Y)」を取ったグラフにおいて「IS曲線」を簡易に描写する方法について説明します。

「IS曲線」を簡易に描写する方法と言いながらも、「財政政策」などにより「IS曲線」がどのように変化するかを考える場合は、こちらの考え方を理解しておかないと付いていけなくなるため、非常に重要です

 

利子率が低下する場合

縦軸に「利子率(r)」を、横軸に「GDP(Y)」を取ったグラフにおいて「利子率(r)」が低下すると「均衡GDP(YE)」がどのように変化していくかを考えていきます

 

  1. 「利子率(r)」が「ra」から「rb」に低下するため「ポイント(●)」はグラフの下側に移動する
  2. 「利子率(r)」の低下により「投資(I)」が増加するため「総需要(YD)」が増加して「財市場」が超過需要の状態(YD > YSとなる
  3. 「財市場」が超過需要の状態(YD > YS)になると企業が増産して「総供給(YS)」を増やすため「GDP(Y)」が高くなり「ポイント(●)」はグラフの右側に移動する
  4. 需要と供給が一致するところ(YD=YS)まで「GDP(Y)」が増加して「財市場」が均衡する

 

したがって、「利子率(r)」の低下により「ポイント(●)」はグラフの右下に移動するため「IS曲線」は右下がりの曲線として表されます。

 

利子率が低下する場合

 

利子率が上昇する場合

縦軸に「利子率(r)」を、横軸に「GDP(Y)」を取ったグラフにおいて「利子率(r)」が上昇すると「均衡GDP(YE)」がどのように変化していくかを考えていきます

 

  1. 「利子率(r)」が「rb」から「ra」に上昇するため「ポイント(●)」はグラフの上側に移動する
  2. 「利子率(r)」の上昇により「投資(I)」が減少するため「総需要(YD)」が減少して「財市場」が超過供給の状態(YD < YSとなる
  3. 「財市場」が超過供給の状態(YD < YS)になると企業が減産して「総供給(YS)」を減らすため「GDP(Y)」が低くなり「ポイント(●)」はグラフの左側に移動する
  4. 需要と供給が一致するところ(YD=YS)まで「GDP(Y)」が減少して「財市場」が均衡する

 

したがって、「利子率(r)」の上昇により「ポイント(●)」はグラフの左上に移動するため「IS曲線」は左上がり(右下がり)の曲線として表されます。

 

利子率が上昇する場合

 

IS曲線の右上と左下の領域

「IS曲線」とは、縦軸に「利子率(r)」を、横軸に「GDP(Y)」を取ったグラフにおいて「財市場」が均衡する点の組み合わせを表す曲線のことをいいますが、「IS曲線」の右上の領域では「財市場」において「超過供給の状態(YD < YS)」が発生しており、「IS曲線」の左下の領域では「財市場」において「超過需要の状態(YD > YS)」が発生しています。

 

IS曲線(超過供給/超過需要)

 

LM曲線とは

「LM曲線」とは、縦軸に「利子率(r)」を、横軸に「GDP(Y)」を取ったグラフにおいて「資本市場(貨幣市場)」が均衡する点の組み合わせを表す曲線のことをいいます。

「資本市場(貨幣市場)」において「GDP(Y)」が増加すると「利子率(r)」が上昇するため「LM曲線」は右上がりの曲線として表されます。

なお、「LM曲線」の「L」は「Liquidity Preference(流動性選好)」を、「M」は「Money Supply(貨幣供給)」を表しています。

 

LM曲線

 

LM曲線の描写

「LM曲線」は、縦軸に「利子率(r)」を、横軸に「実質貨幣供給量( M÷P )、貨幣需要量(L)」を取った「貨幣供給曲線/貨幣需要曲線」と、縦軸に「貨幣の取引需要(L1)」を、横軸に「GDP(Y)」を取った「貨幣の取引需要曲線」を用いて、「GDP(Y)」が変化したときに「利子率(r)」がどのように変化するかを確認していくことで描写することができます。

結論として、「GDP(Y)」が増加すると「利子率(r)」が上昇するため「LM曲線」は右上がりの曲線として表されます。

「GDP(Y)」が増加した場合に「利子率(r)」が変化していく流れを以下に示します。

 

  1. 「GDP(Y)」が「Ya」から「Yb」に増加する
  2. 「GDP(Y)」が増加したため「貨幣の取引需要(L1)」が「L1a」から「L1b」に増加する
  3. 「貨幣の取引需要(L1)」が増加したため「 L=L1+L2 」で表される「貨幣需要量(L)」が「La」から「Lb」に増加する
  4. 「貨幣需要量(L)」が増加したため「利子率(r)」が「ra」から「rb」に上昇する
  5. 「利子率(r)」が「ra」から「rb」に上昇したため「貨幣の資産需要(L2)」が減少して「資本市場(貨幣市場)」が均衡する

 

LM曲線の描写

 

貨幣の利子弾力性によるLM曲線の変化

「貨幣の利子弾力性」とは「利子率(r)」が増減したときに「貨幣需要(L)」がどれだけ反応するかを表しています

「貨幣需要(L)」は「貨幣の取引需要(L1)」と「貨幣の資産需要(L2)」の合計として求められますが、「利子率(r)」が増減したときに変化するのは「貨幣の資産需要(L2)」です。(「貨幣の取引需要(L1)」は「GDP(Y)」が増減したときに変化して「利子率(r)」を変化させます。)

 

例として「利子率(r)」が上昇したときに「貨幣の資産需要(L2)」が減少する流れを以下に示します。

 

  1. 「利子率(r)」が上昇すると「債券価格(PB)」が下落する
  2. 「債券価格(PB)」が下落すると「債券需要(DB)」が増加して「貨幣の資産需要(L2)」が減少する

 

「貨幣の利子弾力性」が大きい場合は「利子率(r)」が少し下落(上昇)するだけで「貨幣の資産需要(L2)」が大きく増加(減少)するため「貨幣需要(L)」も大きく増加(減少)します

 

貨幣の利子弾力性が大きい場合

 

逆に、「貨幣の利子弾力性」が小さい場合は「利子率(r)」が大きく下落(上昇)しても「貨幣の資産需要(L2)」は少ししか増加(減少)しないため「貨幣需要(L)」も少ししか増加(減少)しません

 

貨幣の利子弾力性が小さい場合

 

「LM曲線」は「貨幣の利子弾力性」により、その傾きが変化します。

「貨幣の利子弾力性」が大きい場合は、その傾きが緩やかな曲線となり、「貨幣の利子弾力性」が小さい場合は、その傾きが急な曲線となります

特に、「利子率(r)」が「最低水準(r0)」まで低下している状況のことを「流動性のわな」といい、このとき「貨幣の利子弾力性」は無限大になります。「流動性のわな」の状況下においては「LM曲線」は「最低利子率(r0)」で水平となります。

 

貨幣の利子弾力性が大きい場合

「LM曲線」では、「GDP(Y)」が増加すると「貨幣の取引需要(L1)」が増加して「資本市場(貨幣市場)」が均衡するまで「利子率(r)」が上昇します。

「LM曲線」では、「資本市場(貨幣市場)」の「貨幣供給量(M÷P)」は一定であるとの仮定があるため、「貨幣の取引需要(L1)」が増加した分だけ「貨幣の資産需要(L2)」が減少することで「資本市場(貨幣市場)」は均衡します。

「貨幣の利子弾力性」が大きい場合、「貨幣の資産需要(L2)」が減少したときに上昇する「利子率(r)」が小さいため、「GDP(Y)」の増加に伴う「利子率(r)」の上昇は、「貨幣の利子弾力性」が小さい場合に比べて抑えられます。

その結果、「LM曲線」は、「貨幣の利子弾力性」が小さい場合と比べて、その傾きが緩やかな曲線として表されます。

 

貨幣の利子弾力性が大きい場合

 

流動性のわな(貨幣の利子弾力性が無限大の場合)

「流動性のわな」とは「利子率(r)」が「最低水準(r0)」まで低下している状況のことをいい、このとき「貨幣の利子弾力性」は無限大になります。

具体的には、「利子率(r)」が「最低水準(r0)」まで低下すると、債券の価値が一気に高まり「債券価格(PB)」が最高水準になると同時に「債券需要(DB)」が一気に減少するため、結果として「貨幣の資産需要(L2)」が一気に増加するという状況が発生します

 

貨幣の資産需要曲線

 

通常は、「GDP(Y)」が減少すると「貨幣の取引需要(L1)」が減少するため「利子率(r)」が低下しますが、「流動性のわな」の状況下においては「利子率(r)」が「最低水準(r0)」まで低下しているため「GDP(Y)」が減少して「貨幣の取引需要(L1)」が減少しても「利子率(r)」は低下しません

その結果、「流動性のわな」の状況下においては「LM曲線」は「最低利子率(r0)」で水平となります。

 

LM曲線(流動性のわな)

 

LM曲線の描写(簡便法)

「貨幣供給曲線/貨幣需要曲線」と「貨幣の取引需要曲線」を用いて「LM曲線」を描写していく方法ではなく、縦軸に「利子率(r)」を、横軸に「GDP(Y)」を取ったグラフにおいて「LM曲線」を簡易に描写する方法について説明します。

「LM曲線」を簡易に描写する方法と言いながらも、「金融政策」などにより「LM曲線」がどのように変化するかを考える場合は、こちらの考え方を理解しておかないと付いていけなくなるため、非常に重要です

 

GDPが増加する場合

縦軸に「利子率(r)」を、横軸に「GDP(Y)」を取ったグラフにおいて「GDP(Y)」が増加すると「利子率(r)」がどのように変化していくかを考えていきます

 

  1. 「GDP(Y)」が「Ya」から「Yb」に増加するため「ポイント(●)」はグラフの右側に移動する
  2. 「GDP(Y)」の増加により「資本市場(貨幣市場)」において「貨幣の取引需要(L1)」が増加するため「貨幣需要量( L = L1 + L2 )」が増加して「資本市場(貨幣市場)」が超過需要の状態( M÷P < L )となる
  3. 「資本市場(貨幣市場)」が超過需要の状態( M÷P < L )になると「利子率(r)」が「ra」から「rb」に上昇するため「ポイント(●)」はグラフの上側に移動する
  4. 「利子率(r)」が「ra」から「rb」に上昇すると「債券価格(PB)」が下降する
  5. 「債券価格(PB)」が下降すると「債券需要(DB)」が増加する
  6. 「債券需要(DB)」が増加すると「貨幣の資産需要(L2)」が減少する
  7. 需要と供給が一致するところ( M÷P = L )まで「貨幣の資産需要(L2)」が減少して「資本市場(貨幣市場)」が均衡する

 

したがって、「GDP(Y)」の増加により「ポイント(●)」はグラフの右上に移動するため「LM曲線」は右上がりの曲線として表されます。

 

GDPが増加する場合

 

GDPが減少する場合

縦軸に「利子率(r)」を、横軸に「GDP(Y)」を取ったグラフにおいて「GDP(Y)」が減少すると「利子率(r)」がどのように変化していくかを考えていきます

 

  1. 「GDP(Y)」が「Yb」から「Ya」に減少するため「ポイント(●)」はグラフの左側に移動する
  2. 「GDP(Y)」の減少により「資本市場(貨幣市場)」において「貨幣の取引需要(L1)」が減少するため「貨幣需要量( L=L1+L2 )」が減少して「資本市場(貨幣市場)」が超過供給の状態( M÷P > L )となる
  3. 「資本市場(貨幣市場)」が超過供給の状態( M÷P > L )になると「利子率(r)」が「rb」から「ra」に下降するため「ポイント(●)」はグラフの下側に移動する
  4. 「利子率(r)」が「rb」から「ra」に下降すると「債券価格(PB)」が上昇する
  5. 「債券価格(PB)」が上昇すると「債券需要(DB)」が減少する
  6. 「債券需要(DB)」が減少すると「貨幣の資産需要(L2)」が増加する
  7. 需要と供給が一致するところ( M÷P = L )まで「貨幣の資産需要(L2)」が増加して「資本市場(貨幣市場)」が均衡する

 

したがって、「GDP(Y)」の減少により「ポイント(●)」はグラフの左下に移動するため「LM曲線」は左下がりの曲線(右上がりの曲線)として表されます。

 

GDPが減少する場合

 

LM曲線の右下と左上の領域

「LM曲線」とは、縦軸に「利子率(r)」を、横軸に「GDP(Y)」を取ったグラフにおいて「資本市場(貨幣市場)」が均衡する点の組み合わせを表す曲線のことをいいますが、「LM曲線」の右下の領域では「資本市場(貨幣市場)」において「超過需要の状態( M÷P < L )」が発生しており、「LM曲線」の左上の領域では「資本市場(貨幣市場)」において「超過供給の状態( M÷P > L )」が発生しています。

 

LM曲線(超過供給/超過需要)

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【平成28年度 第11問】

財政・金融政策の効果を理解するためには、IS-LM分析が便利である。IS曲線とLM曲線が下図のように描かれている。下記の設問に答えよ。

 

 

(設問1)

IS曲線とLM曲線の傾きに関する説明として、最も適切なものはどれか。

 

ア IS曲線は、限界消費性向が大きいほど、より緩やかに描かれる。
イ LM曲線は、貨幣の利子弾力性が小さいほど、より緩やかに描かれる。
ウ 利子率が高くなるほど貨幣需要が拡大すると考えており、したがってLM曲線は右上がりとなる。
エ 利子率が高くなるほど投資需要が拡大すると考えており、したがってIS曲線は右下がりとなる。

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答(設問1)

IS曲線とLM曲線の傾きに関する知識を問う問題です。

 

(ア) 適切です。

試験問題において「総需要曲線」「消費(C)」「投資(I)」を表す関数が与えられていません。

「限界消費性向(b)」の変動により「IS曲線」の「傾き」がどのように変化するかを求められているため、最も簡単な「YD = C + I」から「IS曲線」を表す関数を求めていきます。

 

  • YD = C + I(C:消費、I:投資)
  • YS = Y(Y:GDP)

 

「IS曲線」は「財市場」が均衡する点の組み合わせを表しているため「YD = YS」の関係が成立します。

 

  • Y = C + I

 

「消費(C)」「投資(I)」を表す関数を以下のようにした場合

 

  • C = a + bY(a:基礎消費、b:限界消費性向、Y:GDP)
  • I = I0 - I1r(I0:独立投資、I1:投資の利子弾力性、r:利子率)

 

縦軸に「利子率(r)」を、横軸に「GDP(Y)」を取ったグラフである「IS曲線」を表す関数は以下の通りとなります。

 

  • Y = a + bY + I0 - I1r
  • I1r = -( 1 - b )Y +( a + I0 )
  • r = -( 1 - b )÷ I1 × Y +( a + I0 )÷ I1

 

 

「IS曲線」を表す関数から、財市場の変動要素による「傾き」と「Y軸の切片」の変化を整理すると以下の通りとなります。

 

IS曲線の傾き
  • 「限界消費性向(b)」の値が大きくなると傾きが緩やかになる
  • 「投資の利子弾力性(I1)」の値が大きくなると傾きが緩やかになる

 

IS曲線のY軸の切片
  • 「基礎消費(a)」の値が大きくなるとY軸の切片が大きくなる
  • 「独立投資(I0)」の値が大きくなるとY軸の切片が大きくなる
  • 「投資の利子弾力性(I1)」の値が大きくなるとY軸の切片が小さくなる

 

したがって、IS曲線は、限界消費性向が大きいほど、より緩やかに描かれるため、選択肢の内容は適切です

 

(イ) 不適切です。

「貨幣の利子弾力性」とは「利子率(r)」が増減したときに「貨幣需要(L)」がどれだけ反応するかを表しています

「LM曲線」は「貨幣の利子弾力性」により、その傾きが変化します。

「貨幣の利子弾力性」が大きい場合は、その傾きが緩やかな曲線となり、「貨幣の利子弾力性」が小さい場合は、その傾きが急な曲線となります

 

貨幣の利子弾力性が大きい場合

「LM曲線」では、「GDP(Y)」が増加すると「貨幣の取引需要(L1)」が増加して「資本市場(貨幣市場)」が均衡するまで「利子率(r)」が上昇します。

「LM曲線」では、「資本市場(貨幣市場)」の「貨幣供給量(M÷P)」は一定であるとの仮定があるため、「貨幣の取引需要(L1)」が増加した分だけ「貨幣の資産需要(L2)」が減少することで「資本市場(貨幣市場)」は均衡します。

「貨幣の利子弾力性」が大きい場合、「貨幣の資産需要(L2)」が減少したときに上昇する「利子率(r)」が小さいため、「GDP(Y)」の増加に伴う「利子率(r)」の上昇は、「貨幣の利子弾力性」が小さい場合に比べて抑えられます。

その結果、「LM曲線」は、「貨幣の利子弾力性」が小さい場合と比べて、その傾きが緩やかな曲線として表されます。

 

したがって、LM曲線は、貨幣の利子弾力性が小さいほどではなく、貨幣の利子弾力性が大きいほど、より緩やかに描かれるため、選択肢の内容は不適切です。

 

(ウ) 不適切です。

「LM曲線」は「GDP(Y)」の増加により「貨幣需要量(L)」が増加して「利子率(r)」が上昇するため「右上がりの曲線」として表されます

 

  1. 「GDP(Y)」が「Ya」から「Yb」に増加するため「ポイント(●)」はグラフの右側に移動する
  2. 「GDP(Y)」の増加により「資本市場(貨幣市場)」において「貨幣の取引需要(L1)」が増加するため「貨幣需要量( L = L1 + L2 )」が増加して「資本市場(貨幣市場)」が超過需要の状態( M÷P < L )となる
  3. 「資本市場(貨幣市場)」が超過需要の状態( M÷P < L )になると「利子率(r)」が「ra」から「rb」に上昇するため「ポイント(●)」はグラフの上側に移動する
  4. 「利子率(r)」が「ra」から「rb」に上昇すると「債券価格(PB)」が下降する
  5. 「債券価格(PB)」が下降すると「債券需要(DB)」が増加する
  6. 「債券需要(DB)」が増加すると「貨幣の資産需要(L2)」が減少する
  7. 需要と供給が一致するところ( M÷P = L )まで「貨幣の資産需要(L2)」が減少して「資本市場(貨幣市場)」が均衡する

 

したがって、「GDP(Y)」の増加により「ポイント(●)」はグラフの右上に移動するため「LM曲線」は右上がりの曲線として表されます。

 

GDPが増加する場合

 

利子率が高くなるほど貨幣需要が拡大するのではなく、GDPが高くなるほど貨幣需要が拡大して利子率が高くなると考えており、したがってLM曲線は右上がりとなるため、選択肢の内容は不適切です

 

(エ) 不適切です。

「IS曲線」は「利子率(r)」の低下により「投資(I)」が増加して「GDP(Y)」が増加するため「右下がりの曲線」として表されます

 

  1. 「利子率(r)」が「ra」から「rb」に低下するため「ポイント(●)」はグラフの下側に移動する
  2. 「利子率(r)」の低下により「投資(I)」が増加するため「総需要(YD)」が増加して「財市場」が超過需要の状態(YD > YSとなる
  3. 「財市場」が超過需要の状態(YD > YS)になると企業が増産して「総供給(YS)」を増やすため「GDP(Y)」が高くなり「ポイント(●)」はグラフの右側に移動する
  4. 需要と供給が一致するところ(YD=YS)まで「GDP(Y)」が増加して「財市場」が均衡する

 

利子率が低下する場合

 

利子率が高くなるほどではなく、利子率が低くなるほど投資需要が拡大すると考えており、したがってIS曲線は右下がりとなるため、選択肢の内容は不適切です

 

答えは(ア)です。


 

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