今回は、「運営管理 ~R3-39 POSシステム(9)RFM分析・FSP~」について説明します。
目次
運営管理 ~令和3年度一次試験問題一覧~
令和3年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
RFM分析・FSP・マーケットバスケット分析・PI値 -リンク-
本ブログにて「RFM分析」「FSP」「マーケットバスケット分析」「PI値」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- RFM分析・FSP・マーケットバスケット分析・PI値のまとめ
- R4-39 POSシステム(10)マーケットバスケット分析
- R2-44 POSシステム(8)RFM分析
- R1-39 POSシステム(5)RFM分析・FSP
- R1-40 POSシステム(6)PI値
- H30-39 POSシステム(1)マーケットバスケット分析
- H29-40 POSシステム(2)マーケットバスケット分析
- H28-39 POSシステム(3)マーケットバスケット分析
- H27-40 POSシステム(4)RFM分析
- H27-41 その他店舗・販売管理(15)ABC分析
- H26-27 POSシステム(7)PI値
価格政策・内的参照価格 -リンク-
本ブログにて「価格政策」「内的参照価格」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- 価格政策・内的参照価格のまとめ
- R4-30 価格設定(8)価格政策
- R2-33 商品計画(4)品揃えと価格政策
- R1-39 POSシステム(5)RFM分析・FSP
- H29-31 価格設定(2)価格政策
- H27-29 価格設定(5)価格決定手法
優良顧客の識別と効率的なプロモーション活動
店舗のPOSデータやECサイトの取引データなどの蓄積データ(トランザクション)から、「RFM分析」により優良顧客を識別して、「FSP」により優良顧客に対してプロモーション活動(販売促進)を展開するという流れは「既存顧客の囲い込み」に有効なプロモーション活動(販売促進)であり、二次試験の事例Ⅱの解答に使える便利なフレーズです。
RFM分析
「RFM分析」とは、店舗のPOSデータやECサイトの取引データなどの蓄積データ(トランザクション)を用いて顧客を分析する手法であり、「最新購買日(Recency)」「購買頻度(Frequency)」「購買金額(Monetary)」という3つの指標で顧客をランク付けして、「優良顧客」「非優良顧客」「新規顧客」「安定顧客」「離反顧客」などの顧客セグメントに分類することをいいます。
Recency(最新購買日)
「最新購買日(Recency)」とは、顧客が最後に商品を購入したりサービスを利用した日であり、「最新購買日(Recency)」が最近であるほど優良な顧客であることを示しています。
Frequency(購買頻度)
「購買頻度(Frequency)」とは、一定期間内に顧客が商品を購入したりサービスを利用する回数であり、「購買頻度(Frequency)」が高いほど優良な顧客であることを示しています。
「購買頻度(Frequency)」が高い顧客が少ない場合は、何らかの理由で顧客が商品やサービスに満足していないことを表しており、「購買頻度(Frequency)」が高い顧客の割合が多すぎる場合は、既存顧客の囲い込みには成功しているが新規顧客を獲得できていないことを表しています。
Monetary(購買金額)
「購買金額(Monetary)」とは、顧客が購入している商品や利用しているサービスの金額の合計であり、「購買金額(Monetary)」が高いほど優良な顧客であることを示しています。
デシル分析
「デシル」とはラテン語で「10分の1」という意味であり、「デシル分析」とは「購買金額(Monetary)」で顧客を10段階にランク分けして、各ランク(デシル1~デシル10)における購買比率や売上高構成比から、売上への貢献が高い優良顧客層を分析する手法のことをいいます。
FSP(Frequent Shoppers Program)
「FSP(Frequent Shoppers Program)」とは、長期的な視点で店舗やECサイトに対する顧客のロイヤルティ(愛顧)を高めることを目的として展開される、優良顧客に対するプロモーション活動(販売促進)のことをいいます。
全ての顧客に対して、同じプロモーション活動(販売促進)を展開するのではなく、RFP分析などにより分類された顧客セグメントごとに異なるプロモーション活動(販売促進)を展開することで、効率的に店舗やECサイトの売上を拡大することができます。
相関係数
「相関係数」とは2つのデータの相関関係を表す数値であり「ρ(ロー)」で表されます。
「相関係数」は「-1 ≦ ρ ≦ 1」の範囲で推移し、その数値は以下の意味を示しています。
相関係数 | 説明 |
ρ=1 | 2つのデータは、片方のデータが変動すると他方のデータもそれに応じて完全に同じ方向に変動する。 |
0<ρ<1 | 2つのデータは、片方のデータが変動すると他方のデータもそれに応じて同じ方向に変動する。「1」に近いほど「正」の相関関係が強い。 |
ρ=0 | 2つのデータの変動には、全く関連性がない。 |
-1<ρ<0 | 2つのデータは、片方のデータが変動すると他方のデータもそれに応じて逆の方向に変動する。「-1」に近いほど「負」の相関関係が強い。 |
ρ=-1 | 2つのデータは、片方のデータが変動すると他方のデータもそれに応じて完全に逆の方向に変動する。 |
価格政策
小売業における「価格政策」とは、自店舗で販売する商品の価格決定を戦略的に行うことをいいます。
販売促進的価格政策
「販売促進的価格政策」とは、販売促進の視点から商品の価格を設定する方法のことをいいます。
ハイ・ロー・プライシング政策
「ハイ・ロー・プライシング政策」とは、来店客を増やすことを目的として、ある特定の商品を一定期間だけ利益が出ないほど低価格(ロープライス)で販売する政策のことをいいます。
「ハイ・ロー・プライシング政策」において、消費者に低価格をアピールするための特売品のことを「ロスリーダー」といい、来店客を増やすための「おとり」として利用されます。
「ハイ・ロー・プライシング政策」では、チラシなどによって来店客が増えて、特売品の販売数量が増えたとしても、特売品は利益率が低く店舗全体の利益率を高めることはできないため、特売品を目的に来店した顧客が他の商品も合わせて購入するよう誘導して店舗全体の利益率を高める必要があります。
「ハイ・ロー・プライシング」については、以下に示すデメリットもあります。
- 特売品以外の商品を購入してもらえないと店舗全体の利益率が下がる。
(※)特売品だけを買う顧客を「バーゲンハンター」「チェリーピッカー」といいます。 - 特売の期間が終了して通常価格(ハイプライス)に戻した後、売上が減少する
- 特売の前後において、チラシなどの広告を作るための費用が発生する。
- 特売の前後において、商品の陳列方法を変更するための労力が発生する。
- 商品の需要変動が大きく、在庫管理が複雑となる。
- 価格変動により消費者が不信感を抱く可能性がある。
EDLP政策(Everyday Low Price)
「EDLP政策(Everyday Low Price)」とは、毎日いつでもすべての商品を低価格で販売することで、恒常的な低価格販売を実現することをいい、「恒常的低価格政策」とも呼ばれます。
消費者が、毎日いつでもすべての商品が安いことを認知すれば、他の店舗に行く動機をなくすことができるため、店舗への来店客数が増加して売上を拡大させることができます。
基本的に、毎日いつでもすべての商品が安いため、チラシなどによる広告は行いません。
「EDLP政策(Everyday Low Price)」により利益を上げるには、利益率が高く低価格で販売できる商品の開発、オペレーションコストや店舗設備の徹底的なコスト削減などが求められるため、実現が非常に難しい政策です。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【令和3年度 第39問】
小売業におけるCRMと、それに関連する分析方法や手法に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア CRMにおいて、RFM分析などを利用して、優良顧客層のような着目すべき顧客層を識別することは重要である。
イ FSPは、EDLPにとっては有効な手法の1つであるが、CRMには関係がない。
ウ RFM分析のFの評価値は、顧客の購買額の分散値が大きな値であることによって、高い評価値と判断することができる。
エ 顧客の購買機会ごとの購買額と購買商品数の相関係数が大きければ、RFM分析におけるRの評価値も高いと考えられる。
オ 優良顧客層を特定するために、顧客の年齢や性別などの属性データを説明変数としてクラスター分析を行うことは、CRMにとって重要である。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
CRMに関連する分析方法に関する知識を問う問題です。
(ア) 適切です。
店舗のPOSデータやECサイトの取引データなどの蓄積データ(トランザクション)から、「RFM分析」により優良顧客を識別して、「FSP」により優良顧客に対してプロモーション活動(販売促進)を展開するという流れは「既存顧客の囲い込み」に有効なプロモーション活動(販売促進)です。
したがって、CRMにおいて、RFM分析などを利用して、優良顧客層のような着目すべき顧客層を識別することは重要であるため、選択肢の内容は適切です。
(イ) 不適切です。
「FSP(Frequent Shoppers Program)」とは、長期的な視点で店舗やECサイトに対する顧客のロイヤルティ(愛顧)を高めることを目的として展開される、優良顧客に対するプロモーション活動(販売促進)のことをいいます。
全ての顧客に対して、同じプロモーション活動(販売促進)を展開するのではなく、RFP分析などにより分類された顧客セグメントごとに異なるプロモーション活動(販売促進)を展開することで、効率的に店舗やECサイトの売上を拡大することができます。
また、「EDLP政策(Everyday Low Price)」とは、毎日いつでもすべての商品を低価格で販売することで、恒常的な低価格販売を実現することをいい、「恒常的低価格政策」とも呼ばれます。
消費者が、毎日いつでもすべての商品が安いことを認知すれば、他の店舗に行く動機をなくすことができるため、店舗への来店客数が増加して売上を拡大させることができます。
基本的に、毎日いつでもすべての商品が安いため、チラシなどによる広告は行いません。
つまり、「EDLP政策」は、顧客セグメントを識別して、顧客セグメントごとに異なるプロモーション(販売促進)を展開するのではなく、すべての顧客に対して毎日いつでもすべての商品を低価格で販売することにより消費者が他の店舗に行く動機をなくす「価格政策」です。
したがって、FSPは、EDLPにとっては有効な手法の1つではないため、選択肢の内容は不適切です。
(ウ) 不適切です。
「RFM分析」とは、店舗のPOSデータやECサイトの取引データなどの蓄積データ(トランザクション)を用いて顧客を分析する手法であり、「最新購買日(Recency)」「購買頻度(Frequency)」「購買金額(Monetary)」という3つの指標で顧客をランク付けして、「優良顧客」「非優良顧客」「新規顧客」「安定顧客」「離反顧客」などの顧客セグメントに分類することをいいます。
「購買頻度(Frequency)」とは、一定期間内に顧客が商品を購入したりサービスを利用する回数であり、「購買頻度(Frequency)」が高いほど優良な顧客であることを示しています。
「購買頻度(Frequency)」が高い顧客が少ない場合は、何らかの理由で顧客が商品やサービスに満足していないことを表しており、「購買頻度(Frequency)」が高い顧客の割合が多すぎる場合は、既存顧客の囲い込みには成功しているが新規顧客を獲得できていないことを表しています。
また、「購買金額(Monetary)」とは、顧客が購入している商品や利用しているサービスの金額の合計であり、「購買金額(Monetary)」が高いほど優良な顧客であることを示しています。
RFM分析のFの評価値は、顧客の購買額の分散値ではなく顧客の購買頻度が適度に大きな値であることによって、高い評価値と判断することができるため、選択肢の内容は不適切です。なお、顧客の購買額の分散値は、RFM分析のMの評価値です。
(エ) 不適切です。
「RFM分析」とは、店舗のPOSデータやECサイトの取引データなどの蓄積データ(トランザクション)を用いて顧客を分析する手法であり、「最新購買日(Recency)」「購買頻度(Frequency)」「購買金額(Monetary)」という3つの指標で顧客をランク付けして、「優良顧客」「非優良顧客」「新規顧客」「安定顧客」「離反顧客」などの顧客セグメントに分類することをいいます。
「最新購買日(Recency)」とは、顧客が最後に商品を購入したりサービスを利用した日であり、「最新購買日(Recency)」が最近であるほど優良な顧客であることを示しています。
また、「購買金額(Monetary)」とは、顧客が購入している商品や利用しているサービスの金額の合計であり、「購買金額(Monetary)」が高いほど優良な顧客であることを示しています。
なお、「相関関係」とは、2つのデータが存在する場合において、片方のデータが変動すると、それに応じて他方のデータも変動する関係のことをいい、パターンに応じて「正の相関」「負の相関」と呼ばれます。
2つのデータの「相関関係」は「相関係数」を用いて表されます。
「相関係数」は2つのデータの「相関関係」を表す数値であり「ρ(ロー)」で表されます。
「相関係数」は「-1 ≦ ρ ≦ 1」の範囲で推移し、その数値は以下の意味を示しています。
「相関係数」の「絶対値」は、2つの商品の売上金額に関する「相関関係」の強さを表しています。
2つの商品の売上金額に「相関関係」がない場合は「相関係数」の値は「0」であり、2つの商品の売上金額の増減に関する「相関関係」が強くなるにつれて「相関係数」の「絶対値」は徐々に大きくなっていきます。(最大値は「1」です。)
したがって、顧客の購買機会ごとの購買額と購買商品数の相関係数が大きければ、RFM分析におけるRの評価値ではなくMの評価値も高いと考えられるため、選択肢の内容は不適切です。
(オ) 不適切です。
統計学において、複数の独立変数の関連性を分析する手法のことを「多変量解析」といい、「重回帰分析」「主成分分析」「因子分析」「クラスター分析」などの様々な手法があります。
「クラスター分析」とは、大きな集団を似たもの同士で構成されるグループ(クラスター)に分類する分析方法のことをいいます。
したがって、優良顧客層を特定するために、顧客の年齢や性別などの属性データだけではなく購買履歴などのデータも加えて説明変数としてクラスター分析を行うことは、CRMにとって重要であるため、選択肢の内容は不適切です。
答えは(ア)です。
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