運営管理 ~H29-31 価格設定(2)価格政策~

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今回は、「運営管理 ~H29-31 価格設定(2)価格政策~」について説明します。

 

目次

運営管理 ~平成29年度一次試験問題一覧~

平成29年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

価格政策・内的参照価格 -リンク-

本ブログにて「価格政策」「内的参照価格」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。

 

 

価格政策

小売業における「価格政策」とは、自店舗で販売する商品の価格決定を戦略的に行うことをいいます。

 

販売促進的価格政策

「販売促進的価格政策」とは、販売促進の視点から商品の価格を設定する方法のことをいいます。

 

ハイ・ロー・プライシング政策

「ハイ・ロー・プライシング政策」とは、来店客を増やすことを目的として、ある特定の商品を一定期間だけ利益が出ないほど低価格(ロープライス)で販売する政策のことをいいます。

「ハイ・ロー・プライシング政策」において、消費者に低価格をアピールするための特売品のことを「ロスリーダー」といい、来店客を増やすための「おとり」として利用されます。

「ハイ・ロー・プライシング政策」では、チラシなどによって来店客が増えて、特売品の販売数量が増えたとしても、特売品は利益率が低く店舗全体の利益率を高めることはできないため、特売品を目的に来店した顧客が他の商品も合わせて購入するよう誘導して店舗全体の利益率を高める必要があります。

「ハイ・ロー・プライシング」については、以下に示すデメリットもあります。

 

  • 特売品以外の商品を購入してもらえないと店舗全体の利益率が下がる。
    (※)特売品だけを買う顧客を「バーゲンハンター」「チェリーピッカー」といいます。
  • 特売の期間が終了して通常価格(ハイプライス)に戻した後、売上が減少する
  • 特売の前後において、チラシなどの広告を作るための費用が発生する。
  • 特売の前後において、商品の陳列方法を変更するための労力が発生する。
  • 商品の需要変動が大きく、在庫管理が複雑となる。
  • 価格変動により消費者が不信感を抱く可能性がある。

 

EDLP政策(Everyday Low Price)

「EDLP政策(Everyday Low Price)」とは、毎日いつでもすべての商品を低価格で販売することで、恒常的な低価格販売を実現することをいい、「恒常的低価格政策」とも呼ばれます。

消費者が、毎日いつでもすべての商品が安いことを認知すれば、他の店舗に行く動機をなくすことができるため、店舗への来店客数が増加して売上を拡大させることができます

基本的に、毎日いつでもすべての商品が安いため、チラシなどによる広告は行いません

「EDLP政策(Everyday Low Price)」により利益を上げるには、利益率が高く低価格で販売できる商品の開発、オペレーションコストや店舗設備の徹底的なコスト削減などが求められるため、実現が非常に難しい政策です。

 

心理的価格政策

「心理的価格政策」とは、消費者心理の視点から商品の価格を設定する方法のことをいいます。

 

端数価格

「端数価格」とは、商品の価格を「100円」「1,000円」「10,000円」といったキリのよい金額に設定するのではなく「98円」「980円」「9,800円」のような端数に設定することをいい、実際の価格差以上に、消費者に心理的に安いと感じさせる効果があります。

 

名声価格

「名声価格」は「威光価格」「プレミアム価格」とも呼ばれ、価格が高いものには価値があると考える消費者の心理に基づいて、強い独自性や高い希少性を有する商品に高い価格を設定することをいいます。

「名声価格」は、美術品・宝石・高級ブランド品などの贅沢品や、希少性の高い商品などに設定されますが、価格を高く設定すること自体が、その商品の魅力や価値を高めることにつながります。

 

段階価格

「段階価格」とは、同一カテゴリーの商品において「2,000円」「3,000円」「4,000円」のように段階的に価格を設定することをいい、このような価格設定をすると、消費者は心理的に真ん中の「3,000円」の商品を選択することが多いとされています。

「段階価格」は「松竹梅の法則」とも呼ばれており、価格別の売上比率は「3:5:2」になると言われています。

例えば、利益率の低い「2,000円」の商品と利益率の高い「3,000円」の商品を販売している店舗において利益率の低い「2,000円」の商品の方が売れている場合は、もう一つランクの高い「4,000円」の商品をラインナップに追加すれば利益率の高い「3,000円」の商品が売れるようになります。

 

慣習価格

「慣習価格」とは、消費者の意識に定着している伝統的または慣習的な価格のことをいい、代表的なものには自動販売機の缶ジュースやタバコがあります。

「慣習価格」が定着している商品では、その価格を下げても需要はそれほど増加しませんが、その価格を上げると消費者は価格の値上げに敏感に反応して需要が大きく減少するという特徴があるため、「慣習価格」が定着している商品を販売している企業は、その商品の生産コストが高騰した場合、価格を値上げするのではなく、価格は据え置きのままサイズや内容量を減らして販売することで、需要が減少することを抑制します。

 

均一価格

「均一価格」とは、商品の価格を一律に同額に設定することをいい、代表的な例に100円ショップがあります。

「均一価格」は、商品を何個買えば合計金額がいくらになるかが分かりやすいため、顧客にとって合計金額を想定しながら購入することが可能であるという特徴があります。

「均一価格」で販売されている商品においては、その内容量が金額に合わせて調整されていますが、安価で「均一価格」で販売されていると、顧客は安いと感じて、購入を予定していなかった商品まで購入してしまうという心理的な効果もあります。

 

抱き合わせ価格

「抱き合わせ価格」とは、メインで販売する商品に別の商品を抱き合わせてセット販売することをいい、セット販売の価格をそれぞれの商品を単品で購入するよりも安く設定することにより、消費者にセットで購入した方が得をすると感じさせる価格設定です。

例えば、利益率の低い商品Aと利益率の高い商品Bを販売している店舗において利益率の低い商品Aの方が売れている場合は、商品Aと商品Bをセット販売にすることにより、商品Bの販売数や利益を増やすことができます。

 

プライスライン政策(プライスライニング)

「プライスライン政策」は「値頃政策」「価格段階政策」とも呼ばれ、商品ごとに細かく価格を設定するのではなく、同一カテゴリーの商品を「よく売れる値頃」の価格帯で段階的に価格設定することをいいます。

例えば、お歳暮コーナーなどのように、「2,000円」「3,000円」「5,000円」「7,000円」のコーナーに分けて商品を販売するようなイメージです。

いくつかあるプライスラインのうち、最も売上・販売数量の多いプライスラインを「プライスポイント」といい、プライスラインの上限と下限の幅のことをプライスゾーン(価格帯)といいます。

「プライスライン政策」では、仕入れた商品をプライスラインに分けるのではなく、プライスラインに合った品揃えを行っていきます。

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【平成29年度 第31問】

小売業の商品政策・価格政策に関する記述として、最も適切なものはどれか。

 

ア EDLP政策では、CRMを強化するなど店舗のサービス水準を高めることが必要である。

イ 小売業が自ら企画し、外部に生産を委託したプライベート・ブランド商品を中心とした品揃えは、他店との差別化に有効であるが粗利益率を低下させる。

ウ 小規模な店舗で狭い商圏の顧客を囲い込むためには、特定の商品カテゴリーで奥行きの深い品揃えを追求する。

エ ハイ・ロープライシング政策で、来店促進のために利益が出ないほど安く販売する目玉商品をロスリーダーという。

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答

小売業の商品政策・価格政策に関する知識を問う問題です。

 

(ア) 不適切です。

「EDLP政策(Everyday Low Price)」とは、毎日いつでもすべての商品を低価格で販売することで、恒常的な低価格販売を実現することをいい、「恒常的低価格政策」とも呼ばれます。

消費者が、毎日いつでもすべての商品が安いことを認知すれば、他の店舗に行く動機をなくすことができるため、店舗への来店客数が増加して売上を拡大させることができます

基本的に、毎日いつでもすべての商品が安いため、チラシなどによる広告は行いません

「EDLP政策(Everyday Low Price)」により利益を上げるには、利益率が高く低価格で販売できる商品の開発、オペレーションコストや店舗設備の徹底的なコスト削減などが求められるため、実現が非常に難しい政策です。

 

したがって、選択肢には「EDLP政策では、CRMを強化するなど店舗のサービス水準を高めることが必要である」と記述されていますが、EDLP政策では、消費者が毎日いつでもすべての商品が安いことを認知すれば、他の店舗に行く動機をなくすことができるため、CRMを強化する必要はなく、また店舗のサービス水準を高めることよりも恒常的な低価格販売を実現するために徹底的にコストを削減することが求められるため、選択肢の内容は不適切です

 

(イ) 不適切です。

小売業において消費者のニーズを分析して自ら企画した「プライベート・ブランド商品(PB商品)」は、同業他社にはない付加価値を持った商品であり差別化を図ることができます

付加価値が高く、同業他社との差別化を図ることができる商品であれば、高い価格で販売して粗利益率を向上させることができるため、選択肢の内容は不適切です

 

(ウ) 不適切です。

小規模な店舗で狭い商圏の場合は、特定の商品カテゴリーで奥行きの深い品揃えではなく、幅広い品揃えにより定番商品を販売することを重視していくため、選択肢の内容は不適切です

 

(エ) 適切です。

「ハイ・ロー・プライシング政策」とは、来店客を増やすことを目的として、ある特定の商品を一定期間だけ利益が出ないほど低価格(ロープライス)で販売する政策のことをいいます。

「ハイ・ロー・プライシング政策」において、消費者に低価格をアピールするための特売品のことを「ロスリーダー」といい、来店客を増やすための「おとり」として利用されます。

 

したがって、ハイ・ロープライシング政策で、来店促進のために利益が出ないほど安く販売する目玉商品をロスリーダーというため、選択肢の内容は適切です

 

答えは(エ)です。


 

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