今回は、「運営管理 ~R2-33 商品計画(4)商品構成と品揃え~」について説明します。
目次
運営管理 ~令和2年度一次試験問題一覧~
令和2年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
商品計画・商品構成・品揃え -リンク-
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価格政策・内的参照価格 -リンク-
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- 価格政策・内的参照価格のまとめ
- R4-30 価格設定(8)価格政策
- R3-39 POSシステム(9)RFM分析・FSP
- R1-39 POSシステム(5)RFM分析・FSP
- H29-31 価格設定(2)価格政策
- H27-29 価格設定(5)価格決定手法
商品計画
「商品計画」とは、小売店舗において、多様化する顧客ニーズを満足させて、利益を得ることをできる「商品構成(商品ミックス)」を計画することをいいます。
中小企業の小売店舗が、大型店舗に対抗するためには、他店との違いや独自性といったストアコンセプトを明確に打ち出して「差別化」を図る「商品構成(商品ミックス)」とする必要があります。
「差別化」を図るためには、「ターゲットとする顧客」を選定して「その対応ニーズ」を把握してから「商品構成(商品ミックス)」を計画していきます。
商品構成(商品ミックス)
「商品構成(商品ミックス)」には階層があり、大まかな商品構成のことを「商品カテゴリー(商品ライン)」といい、さらに細かな商品構成を「品目(商品アイテム)」といいます。
商品カテゴリー(商品ライン)
「商品カテゴリー(商品ライン)」とは、相互に関連性がある一連の商品群のことをいいます。「商品カテゴリー(商品ライン)の数」のことを「品揃えの幅」といい「狭い」「広い」で表されます。
品目(商品アイテム)
「品目(商品アイテム)」とは、同一の「商品カテゴリー(商品ライン)」における商品の種類のことをいいます。「品目(商品アイテム)の数」のことを「品揃えの奥行き」といい「浅い」「深い」で表されます。
品揃え戦略
「品揃え戦略」には「品揃えの総合化(フルライン政策)」「品揃えの専門化(限定ライン政策)」といった方法があります。
品揃えの総合化(フルライン政策)
「品揃えの総合化」とは、販売する「商品カテゴリーの数」を増やすことによって「品揃えの幅を広げること」をいいます。
品揃えの専門化(限定ライン政策)
「品揃えの専門化」とは、販売する「商品カテゴリーの数」を絞り込み、「品目(商品アイテム)の数」を増やし、「品揃えの奥行きを深くすること」をいいます。
中小企業の小売店舗における品揃え戦略
中小企業の小売店舗が、豊富な品揃えを武器とする大型店舗に対抗するためには、他店との違いや独自性といったストアコンセプトを明確に打ち出して「差別化」を図る必要があります。
また、中小企業の小売店舗では、大量の商品を陳列するスペースを確保することも難しいため、商品を絞り込んで効率性を高めていく必要があります。
これらの状況を組み合わせると、中小企業の小売店舗が採用する「品揃え戦略」は、品揃えの幅を狭く奥行きを深くする「品揃えの専門化(限定ライン政策)」に限定されてきます。
ラインロビング
「ラインロビング」とは、販売する「商品カテゴリーの数」を増やすことにより、他店から顧客や売上を奪うことをいいます。
価格政策
小売業における「価格政策」とは、自店舗で販売する商品の価格決定を戦略的に行うことをいいます。
販売促進的価格政策
「販売促進的価格政策」とは、販売促進の視点から商品の価格を設定する方法のことをいいます。
ハイ・ロー・プライシング政策
「ハイ・ロー・プライシング政策」とは、来店客を増やすことを目的として、ある特定の商品を一定期間だけ利益が出ないほど低価格(ロープライス)で販売する政策のことをいいます。
「ハイ・ロー・プライシング政策」において、消費者に低価格をアピールするための特売品のことを「ロスリーダー」といい、来店客を増やすための「おとり」として利用されます。
「ハイ・ロー・プライシング政策」では、チラシなどによって来店客が増えて、特売品の販売数量が増えたとしても、特売品は利益率が低く店舗全体の利益率を高めることはできないため、特売品を目的に来店した顧客が他の商品も合わせて購入するよう誘導して店舗全体の利益率を高める必要があります。
「ハイ・ロー・プライシング」については、以下に示すデメリットもあります。
- 特売品以外の商品を購入してもらえないと店舗全体の利益率が下がる。
(※)特売品だけを買う顧客を「バーゲンハンター」「チェリーピッカー」といいます。 - 特売の期間が終了して通常価格(ハイプライス)に戻した後、売上が減少する
- 特売の前後において、チラシなどの広告を作るための費用が発生する。
- 特売の前後において、商品の陳列方法を変更するための労力が発生する。
- 商品の需要変動が大きく、在庫管理が複雑となる。
- 価格変動により消費者が不信感を抱く可能性がある。
EDLP政策(Everyday Low Price)
「EDLP政策(Everyday Low Price)」とは、毎日いつでもすべての商品を低価格で販売することで、恒常的な低価格販売を実現することをいい、「恒常的低価格政策」とも呼ばれます。
消費者が、毎日いつでもすべての商品が安いことを認知すれば、他の店舗に行く動機をなくすことができるため、店舗への来店客数が増加して売上を拡大させることができます。
基本的に、毎日いつでもすべての商品が安いため、チラシなどによる広告は行いません。
「EDLP政策(Everyday Low Price)」により利益を上げるには、利益率が高く低価格で販売できる商品の開発、オペレーションコストや店舗設備の徹底的なコスト削減などが求められるため、実現が非常に難しい政策です。
心理的価格政策
「心理的価格政策」とは、消費者心理の視点から商品の価格を設定する方法のことをいいます。
端数価格
「端数価格」とは、商品の価格を「100円」「1,000円」「10,000円」といったキリのよい金額に設定するのではなく「98円」「980円」「9,800円」のような端数に設定することをいい、実際の価格差以上に、消費者に心理的に安いと感じさせる効果があります。
名声価格
「名声価格」は「威光価格」「プレミアム価格」とも呼ばれ、価格が高いものには価値があると考える消費者の心理に基づいて、強い独自性や高い希少性を有する商品に高い価格を設定することをいいます。
「名声価格」は、美術品・宝石・高級ブランド品などの贅沢品や、希少性の高い商品などに設定されますが、価格を高く設定すること自体が、その商品の魅力や価値を高めることにつながります。
段階価格
「段階価格」とは、同一カテゴリーの商品において「2,000円」「3,000円」「4,000円」のように段階的に価格を設定することをいい、このような価格設定をすると、消費者は心理的に真ん中の「3,000円」の商品を選択することが多いとされています。
「段階価格」は「松竹梅の法則」とも呼ばれており、価格別の売上比率は「3:5:2」になると言われています。
例えば、利益率の低い「2,000円」の商品と利益率の高い「3,000円」の商品を販売している店舗において利益率の低い「2,000円」の商品の方が売れている場合は、もう一つランクの高い「4,000円」の商品をラインナップに追加すれば利益率の高い「3,000円」の商品が売れるようになります。
慣習価格
「慣習価格」とは、消費者の意識に定着している伝統的または慣習的な価格のことをいい、代表的なものには自動販売機の缶ジュースやタバコがあります。
「慣習価格」が定着している商品では、その価格を下げても需要はそれほど増加しませんが、その価格を上げると消費者は価格の値上げに敏感に反応して需要が大きく減少するという特徴があるため、「慣習価格」が定着している商品を販売している企業は、その商品の生産コストが高騰した場合、価格を値上げするのではなく、価格は据え置きのままサイズや内容量を減らして販売することで、需要が減少することを抑制します。
均一価格
「均一価格」とは、商品の価格を一律に同額に設定することをいい、代表的な例に100円ショップがあります。
「均一価格」は、商品を何個買えば合計金額がいくらになるかが分かりやすいため、顧客にとって合計金額を想定しながら購入することが可能であるという特徴があります。
「均一価格」で販売されている商品においては、その内容量が金額に合わせて調整されていますが、安価で「均一価格」で販売されていると、顧客は安いと感じて、購入を予定していなかった商品まで購入してしまうという心理的な効果もあります。
抱き合わせ価格
「抱き合わせ価格」とは、メインで販売する商品に別の商品を抱き合わせてセット販売することをいい、セット販売の価格をそれぞれの商品を単品で購入するよりも安く設定することにより、消費者にセットで購入した方が得をすると感じさせる価格設定です。
例えば、利益率の低い商品Aと利益率の高い商品Bを販売している店舗において利益率の低い商品Aの方が売れている場合は、商品Aと商品Bをセット販売にすることにより、商品Bの販売数や利益を増やすことができます。
プライスライン政策(プライスライニング)
「プライスライン政策」は「値頃政策」「価格段階政策」とも呼ばれ、商品ごとに細かく価格を設定するのではなく、同一カテゴリーの商品を「よく売れる値頃」の価格帯で段階的に価格設定することをいいます。
例えば、お歳暮コーナーなどのように、「2,000円」「3,000円」「5,000円」「7,000円」のコーナーに分けて商品を販売するようなイメージです。
いくつかあるプライスラインのうち、最も売上・販売数量の多いプライスラインを「プライスポイント」といい、プライスラインの上限と下限の幅のことをプライスゾーン(価格帯)といいます。
「プライスライン政策」では、仕入れた商品をプライスラインに分けるのではなく、プライスラインに合った品揃えを行っていきます。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【令和2年度 第33問】
下表は、同じ地域に立地するX商店、Y商店、Z商店の品ぞろえである。表中の〇は販売中、×は取り扱いをしていないことを示したものである。
各商店の品ぞろえに関する記述として、最も適切なものはどれか。
なお、価格帯は、「低」が千円以上3千円以下、「中」が6千円以上8千円以下、「高」が1万円以上1万2千円以下の売価の商品を対象とする。
商品カテゴリー 対象性別 対象世代 価格帯 X商店 Y商店 Z商店 婦人服A 女性 ヤング 低 〇 〇 〇 婦人服B 女性 ヤング 中 × × 〇 婦人服C 女性 ヤング 高 × 〇 × 婦人服D 女性 シニア 低 〇 〇 × 婦人服E 女性 シニア 中 × 〇 × 紳士服A 男性 ヤング 低 〇 × 〇 紳士服B 男性 ヤング 中 × × 〇 紳士服C 男性 シニア 低・中 〇 × × 服飾雑貨A 女性 ヤング 低・中 × 〇 × 服飾雑貨B 女性 ヤング 高 × 〇 × 服飾雑貨C 男性 ヤング 低・中 〇 × ×
[解答群]
ア 3店舗の中で、最も総合的な品ぞろえをしているのはY商店である。
イ 3店舗の中で、プライスゾーンが最も広いと考えられるのはZ商店である。
ウ X商店が品ぞろえを変えずにEDLP政策をとった場合、プライスラインは1つとなる。
エ Y商店が婦人服Bを追加して取り扱うことは専門性を高めることになる。
オ Z商店で紳士服Cを追加して取り扱うと、関連購買による来店客の買上点数増加が期待できる。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
「品揃え」と「価格設定」に関する知識を問う問題です。
(ア) 不適切です。
「最も総合的な品ぞろえ」の定義が分かりにくいところですが、「価格帯」の幅は「品揃え」には含まず、「対象性別」「対象世代」を基準として、幅広い顧客層を対象とした商品のラインナップを「品揃え」と解釈した場合の「商品カテゴリー」と「商店」の関係を整理します。
商品カテゴリー | 対象性別 | 対象世代 | X商店 | Y商店 | Z商店 |
婦人服A~C | 女性 | ヤング | 〇 | 〇 | 〇 |
婦人服D~E | 女性 | シニア | 〇 | 〇 | × |
紳士服A~B | 男性 | ヤング | 〇 | × | 〇 |
紳士服C | 男性 | シニア | 〇 | × | × |
服飾雑貨A~B | 女性 | ヤング | × | 〇 | × |
服飾雑貨C | 男性 | ヤング | 〇 | × | × |
上表の結果、「最も総合的な品ぞろえ」を実現しているのは「○」が一番多い「X商店」であることが分かります。
したがって、3店舗の中で、最も総合的な品ぞろえをしているのは「Y商店」ではなく「X商店」であるため、選択肢の内容は不適切です。
(イ) 不適切です。
3店舗のプライスゾーンについて確認するため「価格帯」と「商店名」の関係を整理します。
価格帯 | X商店 | Y商店 | Z商店 |
低 | 〇 | 〇 | 〇 |
低・中 | 〇 | 〇 | × |
中 | × | 〇 | 〇 |
高 | × | 〇 | × |
上表の結果、プライスゾーンが最も広いのは、「価格帯」の低い商品から高い商品まで取り扱っている「Y商店」であることが分かります。
したがって、3店舗の中で、プライスゾーンが最も広いと考えられるのは「Z商店」ではなく「Y商店」であるため、選択肢の内容は不適切です。
(ウ) 不適切です。
「EDLP政策(Everyday Low Price)」とは、毎日いつでもすべての商品を低価格で販売することで、恒常的な低価格販売を実現することをいい、「恒常的低価格政策」とも呼ばれます。
消費者が、毎日いつでもすべての商品が安いことを認知すれば、他の店舗に行く動機をなくすことができるため、店舗への来店客数が増加して売上を拡大させることができます。
「X商店」にて取り扱っている商品の「価格帯」は以下の通りです。
価格帯 | X商店 |
低 | 〇 |
低・中 | 〇 |
中 | × |
高 | × |
「プライスライン政策」は「値頃政策」「価格段階政策」とも呼ばれ、商品ごとに細かく価格を設定するのではなく、同一カテゴリーの商品を「よく売れる値頃」の価格帯で段階的に価格設定することをいいます。
「X商店」では価格帯が「低」と「低・中」の商品を取り扱っており、「EDLP政策」を取ったとしても品揃えを変更しないのであれば、取り扱う商品の価格帯は「低」と「低・中」のまま変わることはないため、「プライスライン」も1つとはなりません。
例えば、価格帯が「低」の商品は「低」商品に適用される「プライスライン」に設定され、価格帯が「低・中」の商品は「低・中」商品に適用される「プライスライン」に設定されることとなります。
したがって、X商店が品ぞろえを変えずにEDLP政策をとっても、プライスラインは1つとはならないため、選択肢の内容は不適切です。
(エ) 適切です。
取り扱っている商品カテゴリーを見る限り、「Y商店」では「紳士服」や「服飾雑貨(男性向け)」などの「男性」を対象とした商品は取り扱っていないため、「Y商店」は「女性」をターゲットとした専門店であると考えることができます。
「Y商店」における女性を対象とした商品の一覧は以下の通りです。
商品カテゴリー | 対象性別 | 対象世代 | 価格帯 | Y商店 |
婦人服A | 女性 | ヤング | 低 | 〇 |
婦人服B | 女性 | ヤング | 中 | × |
婦人服C | 女性 | ヤング | 高 | 〇 |
婦人服D | 女性 | シニア | 低 | 〇 |
婦人服E | 女性 | シニア | 中 | 〇 |
服飾雑貨A | 女性 | ヤング | 低・中 | 〇 |
服飾雑貨B | 女性 | ヤング | 高 | 〇 |
「Y商店」では、女性を対象とした商品の中で「婦人服B」を除く全ての「婦人服」と「服飾雑貨」を取り扱っていることが分かります。
「Y商店」が「婦人服B」を追加して取り扱えば、女性を対象とした商品の品揃えがより充実するため、女性向け服飾店としての専門性を高めることができます。
したがって、Y商店が婦人服Bを追加して取り扱うことは専門性を高めることになるため、選択肢の内容は適切です。
(オ)不適切です。
「関連購買」とは、買物客がある商品を購入するときに、他の商品との関連性から必要性を認識して購入することをいいます。
今回の商品一覧を見る限りでは、「紳士服」または「婦人服」を購入する買物客が、関連性から必要性を認識して「服飾雑貨」も一緒に購入することが「関連購買」に該当します。
「Z商店」において取り扱っている商品の一覧は以下の通りです。
商品カテゴリー | 対象性別 | 対象世代 | 価格帯 | Z商店 |
婦人服A | 女性 | ヤング | 低 | 〇 |
婦人服B | 女性 | ヤング | 中 | 〇 |
婦人服C | 女性 | ヤング | 高 | × |
婦人服D | 女性 | シニア | 低 | × |
婦人服E | 女性 | シニア | 中 | × |
紳士服A | 男性 | ヤング | 低 | 〇 |
紳士服B | 男性 | ヤング | 中 | 〇 |
紳士服C | 男性 | シニア | 低・中 | × |
服飾雑貨A | 女性 | ヤング | 低・中 | × |
服飾雑貨B | 女性 | ヤング | 高 | × |
服飾雑貨C | 男性 | ヤング | 低・中 | × |
「Z商店」が「シニアの男性」を対象とした「紳士服C」を追加して取り扱ったとしても「シニアの男性」を対象とした「服飾雑貨」を取り扱っていないため「関連購買」による買上点数の増加は期待できません。
ちなみに、「Z商店」では「服飾雑貨A」や「服飾雑貨C」を追加して取り扱えば、「婦人服A~B」や「紳士服A~B」 を購入する買物客の関連購買を想起して買上点数の増加を期待できます。
また、「価格帯」の高い「婦人服C」を取り扱っていない「Z商店」において、「価格帯」の高い「服飾雑貨B」を取り扱ったとしても、関連購買は期待できません。
したがって、Z商店で紳士服Cを追加して取り扱っても、関連購買による来店客の買上点数増加は期待できないため、選択肢の内容は不適切です。
関連購買
「関連購買」とは、買物客がある商品を購入するときに、他の商品との関連性から必要性を認識して購入することをいいます。
「関連購買」に効果的な販売促進方法は「クロスマーチャンダイジング」です。
「クロスマーチャンダイジング」とは、商品を単一のカテゴリー毎に陳列するのではなく、カテゴリーに関係なく、買物客の目線で生活などのシチュエーションを想像したときに関連性のある商品を一つの売り場やコーナーにまとめて陳列・演出することにより、売上の拡大を図る販売促進方法です。
答えは(エ)です。
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