運営管理 ~H27-29 価格設定(5)価格決定手法~

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今回は、「運営管理 ~H27-29 価格設定(5)価格決定手法~」について説明します。

 

目次

運営管理 ~平成27年度一次試験問題一覧~

平成27年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

価格政策・内的参照価格 -リンク-

本ブログにて「価格政策」「内的参照価格」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。

 

 

景品表示法 -リンク-

本ブログにて「景品表示法」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。

 

 

価格政策

小売業における「価格政策」とは、自店舗で販売する商品の価格決定を戦略的に行うことをいいます。

 

心理的価格政策

「心理的価格政策」とは、消費者心理の視点から商品の価格を設定する方法のことをいいます。

 

端数価格

「端数価格」とは、商品の価格を「100円」「1,000円」「10,000円」といったキリのよい金額に設定するのではなく「98円」「980円」「9,800円」のような端数に設定することをいい、実際の価格差以上に、消費者に心理的に安いと感じさせる効果があります。

 

名声価格

「名声価格」は「威光価格」「プレミアム価格」とも呼ばれ、価格が高いものには価値があると考える消費者の心理に基づいて、強い独自性や高い希少性を有する商品に高い価格を設定することをいいます。

「名声価格」は、美術品・宝石・高級ブランド品などの贅沢品や、希少性の高い商品などに設定されますが、価格を高く設定すること自体が、その商品の魅力や価値を高めることにつながります。

 

段階価格

「段階価格」とは、同一カテゴリーの商品において「2,000円」「3,000円」「4,000円」のように段階的に価格を設定することをいい、このような価格設定をすると、消費者は心理的に真ん中の「3,000円」の商品を選択することが多いとされています。

「段階価格」は「松竹梅の法則」とも呼ばれており、価格別の売上比率は「3:5:2」になると言われています。

例えば、利益率の低い「2,000円」の商品と利益率の高い「3,000円」の商品を販売している店舗において利益率の低い「2,000円」の商品の方が売れている場合は、もう一つランクの高い「4,000円」の商品をラインナップに追加すれば利益率の高い「3,000円」の商品が売れるようになります。

 

慣習価格

「慣習価格」とは、消費者の意識に定着している伝統的または慣習的な価格のことをいい、代表的なものには自動販売機の缶ジュースやタバコがあります。

「慣習価格」が定着している商品では、その価格を下げても需要はそれほど増加しませんが、その価格を上げると消費者は価格の値上げに敏感に反応して需要が大きく減少するという特徴があるため、「慣習価格」が定着している商品を販売している企業は、その商品の生産コストが高騰した場合、価格を値上げするのではなく、価格は据え置きのままサイズや内容量を減らして販売することで、需要が減少することを抑制します。

 

均一価格

「均一価格」とは、商品の価格を一律に同額に設定することをいい、代表的な例に100円ショップがあります。

「均一価格」は、商品を何個買えば合計金額がいくらになるかが分かりやすいため、顧客にとって合計金額を想定しながら購入することが可能であるという特徴があります。

「均一価格」で販売されている商品においては、その内容量が金額に合わせて調整されていますが、安価で「均一価格」で販売されていると、顧客は安いと感じて、購入を予定していなかった商品まで購入してしまうという心理的な効果もあります。

 

抱き合わせ価格

「抱き合わせ価格」とは、メインで販売する商品に別の商品を抱き合わせてセット販売することをいい、セット販売の価格をそれぞれの商品を単品で購入するよりも安く設定することにより、消費者にセットで購入した方が得をすると感じさせる価格設定です。

例えば、利益率の低い商品Aと利益率の高い商品Bを販売している店舗において利益率の低い商品Aの方が売れている場合は、商品Aと商品Bをセット販売にすることにより、商品Bの販売数や利益を増やすことができます。

 

プライスライン政策(プライスライニング)

「プライスライン政策」は「値頃政策」「価格段階政策」とも呼ばれ、商品ごとに細かく価格を設定するのではなく、同一カテゴリーの商品を「よく売れる値頃」の価格帯で段階的に価格設定することをいいます。

例えば、お歳暮コーナーなどのように、「2,000円」「3,000円」「5,000円」「7,000円」のコーナーに分けて商品を販売するようなイメージです。

いくつかあるプライスラインのうち、最も売上・販売数量の多いプライスラインを「プライスポイント」といい、プライスラインの上限と下限の幅のことをプライスゾーン(価格帯)といいます。

「プライスライン政策」では、仕入れた商品をプライスラインに分けるのではなく、プライスラインに合った品揃えを行っていきます。

 

内的参照価格

「内的参照価格」とは、消費者が価格の妥当性や魅力度を判断する基準となる過去の購買経験によって作られた消費者の記憶による価格のことをいい、消費者の期待や願望を反映させたものと、消費者が過去に購入した経験によって刷り込まれたものに大別されます。

消費者は、販売されている商品の「実売価格」と自分の記憶にある「内的参照価格」を比較して、販売されている商品が割高なのか割安なのかを見極めて、購入すべきか判断します。

消費者の記憶にある「内的参照価格」は、低下しやすく上昇しにくいという特徴をもっているため、商品を販売する企業としては、消費者の「内的参照価格」を低下させないように価格の表示方法を工夫しなければなりません

例えば、ある商品の特売を長期にわたってまたは頻繁に実施していると「特売価格」でその商品を何度か購入した消費者には「特売価格」がその商品の価値(価格)だと刷り込まれてしまうため、特売が終了した後にその商品を「通常価格」で販売しても値段が高すぎると感じて購入しなくなります。

 

二重価格表示

「二重価格表示」とは、商品に「比較対照価格(値引き前価格)」と「販売価格(値引き後価格)」を表示することにより、商品の割安感を演出して、消費者の購買意欲を刺激する販売方法のことをいいます。

「比較対照価格(値引き前価格)」には「過去の販売価格」「他店の販売価格」「メーカー希望小売価格」などを表示することができますが、「過去の販売価格」を表示する場合は「最近相当期間にわたって販売されていた価格」でなければ、消費者に対して販売価格に関する情報が適切に伝わらないため「景品表示法」において「有利誤認表示」とみなされます

「比較対照価格」が「最近相当期間にわたって販売されていた価格」と認められるか否かは、当該価格で販売されていた時期及び期間、対象商品の一般的価格変動の状況、当該店舗における販売形態等を考慮しつつ、個別に検討されることになります。

一般的に、「最近相当期間にわたって販売していた価格」と認められるための条件は、①二重価格表示を行う時点からさかのぼった8週間において、当該価格で販売されていた期間が、当該商品が販売されていた期間の過半を占めていること、②当該価格での販売期間が通算で2週間以上であること、③当該価格で販売された最後の日から2週間経過していないこと、とされています。

 

顧客生涯価値(Lifetime Value/LTV)

「顧客生涯価値」とは、ある1人の消費者が生涯を通じて企業にもたらす価値の合計額のことをいいます。

「顧客生涯価値」は、「購入金額」「購入頻度」「購入期間」を掛け合わせたものであるため、以下の式のように表現することができます。

つまり、「購入金額」「購入頻度」「購入期間」を高めれば「顧客生涯価値」を高めていくことができます

 

 

なお、説明を簡略化するため、商品の「売上金額=価値」として説明していますが、厳密には、ある1人の消費者に商品を継続して購入してもらうために発生する費用を差し引いた利益で考えます

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【平成27年度 第29問】

小売業の販売方法に関する記述として、最も不適切なものはどれか

 

ア 慣習価格を崩さずに商品の容量を減らすことは、顧客生涯価値を高めるのに役立つ。

イ クーポンを発行して、レジで商品の価格を割り引いて販売することは、単なる値引きと比べて消費者の内的参照価格の低下を防ぐのに役立つ。

ウ シーズン性のある商品をそのシーズンの終わりに価格を割り引いて販売することは、商品在庫の削減に役立つ。

エ 商品の価格を変更せずに容量を増やして販売することは、割安感を演出するのに役立つ。

オ 値引き後の販売価格と値引き前の通常販売価格を二重価格表示することは、割安感を演出するのに役立つ。

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答

小売業の販売方法として「価格決定手法」に関する知識を問う問題です。

適切な記述がされている選択肢を直感的に選ぶことができるため正解できるとは思いますが、「顧客生涯価値」を正確に理解していないと、選択肢(ア)が不適切な理由を的確に説明することは難しい問題です。

 

(ア) 不適切です。

「慣習価格」とは、消費者の意識に定着している伝統的または慣習的な価格のことをいい、代表的なものには自動販売機の缶ジュースやタバコがあります。

「慣習価格」が定着している商品では、その価格を下げても需要はそれほど増加しませんが、その価格を上げると消費者は価格の値上げに敏感に反応して需要が大きく減少するという特徴があるため、「慣習価格」が定着している商品を販売している企業は、その商品の生産コストが高騰した場合、価格を値上げするのではなく、価格は据え置きのままサイズや内容量を減らして販売することで、需要が減少することを抑制します。

 

また、「顧客生涯価値」とは、ある1人の消費者が生涯を通じて企業にもたらす価値の合計額のことをいいます。

「顧客生涯価値」は、「購入金額」「購入頻度」「購入期間」を掛け合わせたものであるため、以下の式のように表現することができます。

つまり、「購入金額」「購入頻度」「購入期間」を高めれば「顧客生涯価値」を高めていくことができます

 

 

選択肢では、「慣習価格を崩さずに商品の容量を減らすことは、顧客生涯価値を高めるのに役立つ」と記述されていますが、慣習価格を崩さずに商品の容量を減らして販売したとしても、「購入金額」「購入頻度」「購入期間」を高める効果はなく「顧客生涯価値」を高めることにはつながらないため、選択肢の内容は不適切です

 

(イ) 適切です。

「内的参照価格」とは、消費者が価格の妥当性や魅力度を判断する基準となる過去の購買経験によって作られた消費者の記憶による価格のことをいい、消費者の期待や願望を反映させたものと、消費者が過去に購入した経験によって刷り込まれたものに大別されます。

消費者は、販売されている商品の「実売価格」と自分の記憶にある「内的参照価格」を比較して、販売されている商品が割高なのか割安なのかを見極めて、購入すべきか判断します。

消費者の記憶にある「内的参照価格」は、低下しやすく上昇しにくいという特徴をもっているため、商品を販売する企業としては、消費者の「内的参照価格」を低下させないように価格の表示方法を工夫しなければなりません

例えば、ある商品の特売を長期にわたってまたは頻繁に実施していると「特売価格」でその商品を何度か購入した消費者には「特売価格」がその商品の価値(価格)だと刷り込まれてしまうため、特売が終了した後にその商品を「通常価格」で販売しても値段が高すぎると感じて購入しなくなります。

 

クーポンを発行して、レジで商品の価格を割り引くと、消費者が直接目にする商品の販売価格は変わらないため、消費者の「内的参照価格」を低下させるのを防ぐことに役立ちます。したがって、選択肢の内容は適切です

 

(ウ) 適切です。

売れ残ったシーズン性のある商品を販売するためには、来年のシーズンが到来するまで待たなければならないため、シーズン性のある商品が売れ残った場合は、それまでの間、倉庫に商品在庫として保管しなければなりません。

言うまでもなく、選択肢に記述されている通り、シーズンの終わりに価格を割り引いて販売することは、商品在庫の削減に役立つため、選択肢の内容は適切です

仮に、売れ残ったシーズン性のある商品を在庫保管しても、来年のシーズンが到来する頃には商品の品質が劣化したり陳腐化してしまい、売り物にはならなくなるため、商品を廃棄するケースの方が多いと考えられます。

 

(エ) 適切です。

選択肢に記述されている通り、商品の価格を変更せずに容量を増やして販売することは、割安感を演出するのに役立つため、選択肢の内容は適切です

 

(オ) 適切です。

「二重価格表示」とは、商品に「比較対照価格(値引き前価格)」と「販売価格(値引き後価格)」を表示することにより、商品の割安感を演出して、消費者の購買意欲を刺激する販売方法のことをいいます。

「比較対照価格(値引き前価格)」には「過去の販売価格」「他店の販売価格」「メーカー希望小売価格」などを表示することができますが、「過去の販売価格」を表示する場合は「最近相当期間にわたって販売されていた価格」でなければ、消費者に対して販売価格に関する情報が適切に伝わらないため「景品表示法」において「有利誤認表示」とみなされます

 

したがって、値引き後の販売価格と値引き前の通常販売価格を二重価格表示することは、割安感を演出するのに役立つため、選択肢の内容は適切です

 

答えは(ア)です。


 

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