今回は、「運営管理 ~R1-21 生産の合理化・改善(6)動作経済の原則~」について説明します。
目次
運営管理 ~令和元年度一次試験問題一覧~
令和元年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
トヨタ生産方式(ジャストインタイム・かんばん方式・自働化)のまとめ -リンク-
本ブログにて「ジャストインタイム」「かんばん方式」「自働化」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- トヨタ生産方式(ジャストインタイム・かんばん方式・自働化)のまとめ
- R3-6 生産管理方式(9)ジャスト・イン・タイム
- H30-11 生産管理方式(6)トヨタ生産方式
- H29-9 生産管理方式(5)かんばん方式
- H29-20 生産の合理化・改善(5)生産現場の改善
- H28-21 ライン生産(2)ライン生産
- H26-8 生産管理方式(1)生産管理方式
動作経済の原則
「動作経済の原則」とは、作業者が行う作業から「ムダ・ムラ・ムリ」を排除して、最も合理的に作業を行うための経験則のことをいい、4つの基本原則に基づき「身体の使用に関する原則」「作業場の配置に関する原則」「設備・工具の設計に関する原則」に分類されています。
4つの基本原則
「動作経済の原則」は、疲労軽減と時間短縮を実現する「4つの基本原則」の考え方に基づき「身体の使用に関する原則」「作業場の配置に関する原則」「設備・工具の設計に関する原則」が定められています。
- 動作の数を減らす。
- 両手を同時に使う。
- 動作の距離を短くする。
- 動作を楽にする。
身体の使用に関する原則
- 両手は、同時に動作を始め、あるいは同時に終わる。
- 両手は、休憩時間以外は同時に休めてはならない。
- 腕の運動は、左右対称的に、また同時に行う。
- 手に物を保持したままにしてはならない。
- 身体の運動部分をなるべく指や手などによる小さい動きで行う。
- 作業は、落とす、転がす、弾むなどの重力、慣性などの自然な力を利用して容易に行う。
- 動作は自然な姿勢を保ちリズムよく行う。
- 他の身体部位でできる作業は、手や指や目を使わないようにする。
- 運動の方向を急に変更せずに、連続した曲線状の運動とする。
作業場の配置に関する原則
- 工具や材料は、作業者の手の届く定位置に配置する。
- 工具や材料は、作業位置の周辺で、できるだけ作業者の前面に配置する。
- 工具や材料は、最良の順序で作業がしやすいように配置する。
- 作業台や椅子は、作業者の体格に合わせて正しい姿勢がとれるような高さと形にする。
- 物の供給や搬出は、慣性や重力を利用して行う。
- 作業の性質に適した痛風、温度、湿度、採光および照明を与える。
設備・工具の設計に関する原則
- 機械類の操作は足を有効に使って、手の負担が軽くなるように設計する。
- 2つ以上の工具はできるだけ1つに組み合わせる。
- 治具、万力などを活用して、人間による保持を削減する。
- ハンドルなどの握り部分は、手のひらに当たり握りやすい形状にする。
- できるだけ専用の工具を使用する。
自働化
「自働化」は「ニンベンのついた自動化」と呼ばれ、設備や品質の異常を検知した際に、ラインが自動的に停止することにより、不良品を作り続けることを自動的に防止するための仕組みのことをいいます。
「ジャスト・イン・タイム」を実現するためには、生産されるすべての部品が良品であることが前提となるため、「自働化」が非常に重要な役割を果たしています。
「自働化」において、設備や品質の異常を検知した際に、管理者や他工程の作業者に伝えるための仕組みが「あんどん(異常表示盤)」です。
あんどん(異常表示盤)
「あんどん(異常表示盤)」とは、管理者や他工程の作業者に生産ラインの異常を伝えることを目的とした「ラインストップ表示板(ランプ)」のことをいいます。
「あんどん(異常表示盤)」を導入することによって「目で見る管理」や「自働化」を実現します。
目で見る管理
作業者又は管理者が、進捗状況又は正常か異常かどうかといった生産の状況を一目で見て分かり、管理しやすくした工夫。(JISZ8141-4303)
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【令和元年度 第21問】
動作経済の原則に基づいて実施した改善に関する記述として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。
a 機械が停止したことを知らせる回転灯を設置した。
b 径の異なる2つのナットを2種類のレンチで締めていたが、2種類の径に対応できるように工具を改良した。
c 2つの部品を同時に挿入できるように保持具を導入した。
d プレス機の動作中に手が挟まれないようにセンサを取り付けた。
[解答群]
ア aとb
イ aとd
ウ bとc
エ bとd
オ cとd
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
動作経済の原則に関する知識を問う問題です。
(a) 不適切です。
機械が停止したことを知らせるために設置する回転灯のことを「あんどん(異常表示盤)」といいます。
「あんどん(異常表示盤)」とは、管理者や他工程の作業者に生産ラインの異常を伝えることを目的とした装置であり、「あんどん(異常表示盤)」を導入することによって「目で見る管理」や「自働化」を実現することができます。
したがって、「機械が停止したことを知らせる回転灯を設置した」という改善策は、動作経済の原則に基づいて実施した改善には該当しないため、選択肢の内容は不適切です。
(b) 適切です。
選択肢に記述されている「径の異なる2つのナットを2種類のレンチで締めていたが、2種類の径に対応できるように工具を改良した」という改善策は、「設備・工具の設計に関する原則」の「2つ以上の工具はできるだけ1つに組み合わせる。」に基づいて実施した改善に該当するため、選択肢の内容は適切です。
(c) 適切です。
選択肢に記述されている「2つの部品を同時に挿入できるように保持具を導入した。」という改善策は、「設備・工具の設計に関する原則」の「2つ以上の工具はできるだけ1つに組み合わせる。」に基づいて実施した改善に該当するため、選択肢の内容は適切です。
(d) 不適切です。
生産過程における設備や品質の問題は、設備や作業者を原因として発生します。
設備を原因として発生する問題は設備の工夫や改良によって防止することができますが、作業者を原因として発生する問題は100%防止することができず「人間は間違える」という前提のもと、問題に対する対策が必要となります。
作業者を原因として発生する問題を防止するには、問題が発生する前に未然に防止するという考え方に基づく「フールプルーフ」と、問題が発生してから被害の拡大を抑制するという考え方に基づく「フェイルセーフ」の対策を講じます。
「プレス機の動作中に手が挟まれないようにセンサを取り付けた」という改善策は「フールプルーフ」に関する説明であり、動作経済の原則に基づいて実施した改善には該当しないため、選択肢の内容は不適切です。
ちなみに、「プレス機の動作中に手が挟まれたらプレス機を自動停止するよう装置を改良した」というような改善策だった場合は「フェイルセーフ」に関する説明ということになります。
答えは(ウ)です。
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