今回は、「運営管理 ~H29-9 生産管理方式(5)かんばん方式~」について説明します。
目次
運営管理 ~平成29年度一次試験問題一覧~
平成29年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
トヨタ生産方式(ジャストインタイム・かんばん方式・自働化)のまとめ -リンク-
本ブログにて「ジャストインタイム」「かんばん方式」「自働化」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- トヨタ生産方式(ジャストインタイム・かんばん方式・自働化)のまとめ
- R3-6 生産管理方式(9)ジャスト・イン・タイム
- R1-21 生産の合理化・改善(6)動作経済の原則
- H30-11 生産管理方式(6)トヨタ生産方式
- H29-20 生産の合理化・改善(5)生産現場の改善
- H28-21 ライン生産(2)ライン生産
- H26-8 生産管理方式(1)生産管理方式
かんばん方式
「かんばん方式」とは、トヨタ自動車が開発した生産管理方式であり、「ジャスト・イン・タイム(必要なものを必要な時に必要なだけ生産する)」の考え方に基づき、不要な在庫をできるだけ持たない仕組みのことをいいます。
「かんばん方式」では「かんばん」と呼ばれる「作業指示票」を使って、後工程が前工程に対して必要な部品の品番や数量を伝え、前工程は後工程から指示を受けた数量だけ部品を生産します。
プルシステム・後工程引取方式・引張方式
「かんばん方式」は、もともと米国のスーパーマーケットをヒントに考えられた方式なので、実際のスーパーマーケットをイメージしてみると分かりやすいと思います。スーパーマーケットでは「お客様(後工程)は、必要な品物を必要なときに必要な量だけ購入」して、「お店(前工程)は、お客様(後工程)から引き取られた数量だけ品物を補充」します。
これを生産現場に導入した生産方式が「かんばん方式」であり、「後工程」から引き取られた量を補充するために「前工程」が生産することから「プルシステム」「後工程引取方式」「引張方式」といいます。
作業指示票(かんばん)
「かんばん」と呼ばれる「作業指示票」には、前工程に対して生産を指示するための「仕掛けかんばん」と、運搬指示をするための「引取りかんばん」の2種類があります。
この2種類の「かんばん」を使って、以下の手順に従い、連続する工程間で生産活動を繰り返します。
- 仕掛けかんばん
前工程の担当者は、取り外された「仕掛けかんばん」に記載された生産指示に基づき、該当の部品を指示された数量だけ生産した後、「仕掛けかんばん」を取り付けて完成品置き場に置きます。 - 引取りかんばん
部品の運搬担当者は、取り外された「引取りかんばん」に記載されている運搬指示に基づき、前工程の完成品置き場に部品を取りに行き、「仕掛けかんばん」を取り外して「引取りかんばん」を取り付けた後、部品の運搬を行います。
後工程の担当者は、「引取りかんばん」を取り外してから部品を使用します。
かんばん方式の概念図(トヨタ自動車ホームページより)
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成29年度 第9問】
かんばん方式に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
ア かんばんは、あらかじめ定められた工程間、職場間で循環的に用いられる。
イ かんばん方式を導入することにより、平準化生産が達成される。
ウ 仕掛けかんばんには、品名、品番、工程名、生産指示量、完成品置場名などが記載される。
エ 引取かんばんのかんばん枚数によって、工程間における部材の総保有数を調整することができる。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
「かんばん方式」に関する知識を問う問題です。
(ア) 適切です。
選択肢に記載の通り、「かんばん」はあらかじめ定められた工程間、職場間で循環的に用いられるため、選択肢の内容は適切です。
(イ) 不適切です。
「平準化」が実現されている工程間において「かんばん方式」を導入することによって仕掛品在庫の観点から効率化は実現できますが、「かんばん方式」を導入することによって工程間の「平準化」を実現できるわけではないため、選択肢の内容は不適切です。
平準化
作業負荷を平均化させ、かつ、前工程から引き取る部品の種類と量が平均化されるように生産する行為。(JISZ8141-1213)
(ウ) 適切です。
「仕掛けかんばん」には、後工程が前工程に対して生産を指示するための「作業指示書」であり、「品名、品番、工程名、生産指示量、完成品置場名」といった情報が記載されているため、選択肢の内容は適切です。
(エ) 適切です。
「かんばん方式」では、「仕掛けかんばん」が取り外されていなければ、前工程は新たな部品の生産には着手しません。
したがって、「引取りかんばん」の枚数を減らせば、部品の運搬担当者が前工程に部品を引き取りに行く回数が減り、「仕掛けかんばん」を取り外す回数が減少するため、前工程において生産する部品の数量が減少すると同時に、工程間における部品の運搬量が減少します。
逆に、「引取りかんばん」の枚数を増やせば、前工程において生産する部品の数量が増加すると同時に、工程間における部品の運搬量が増加します。
このように、「引取りかんばん」の枚数によって、工程間における部材の総保有数を調整することができるため、選択肢の内容は適切です。
答えは(イ)です。
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