今回は、「運営管理 ~H30-11 生産管理方式(6)トヨタ生産方式~」について説明します。
目次
運営管理 ~平成30年度一次試験問題一覧~
平成30年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
トヨタ生産方式(ジャストインタイム・かんばん方式・自働化)のまとめ -リンク-
本ブログにて「ジャストインタイム」「かんばん方式」「自働化」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- トヨタ生産方式(ジャストインタイム・かんばん方式・自働化)のまとめ
- R3-6 生産管理方式(9)ジャスト・イン・タイム
- R1-21 生産の合理化・改善(6)動作経済の原則
- H29-9 生産管理方式(5)かんばん方式
- H29-20 生産の合理化・改善(5)生産現場の改善
- H28-21 ライン生産(2)ライン生産
- H26-8 生産管理方式(1)生産管理方式
MRP -リンク-
本ブログにて「MRP」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- R3-9 需給計画(3)資材所要量計画(MRP)
- R1-7 需給計画(2)資材所要量計画(MRP)
- H30-2 工場レイアウト(1)設備配置
- H30-13 資材調達(1)資材調達
- H28-9 需給計画(1)資材所要量計画(MRP)
トヨタ生産方式
「トヨタ生産方式」は、 トヨタ自動車が改善を積み重ねて確立した生産管理方式であり、「リーン生産方式」「JIT(ジャスト・イン・タイム)方式」とも呼ばれています。
トヨタ生産方式の基本構想
「トヨタ生産方式」は、「ジャスト・イン・タイム」と「自働化」という基本構想に基づき構成されており、トヨタ自動車はこれらの基本構想を実現することによって「確かな品質」で「タイムリー」に自動車を生産して顧客に提供しています。
- ジャスト・イン・タイム
必要なものを必要な時に必要なだけ生産する - 自働化
異常が発生したら機械がただちに停止して、不良品を造らない
ジャスト・イン・タイム
「ジャスト・イン・タイム」とは「必要なものを必要な時に必要なだけ生産する」という考え方に基づく生産管理方式であり、生産現場の「ムダ・ムラ・ムリ」を徹底的になくすことによって、生産性を向上します。
「ジャスト・イン・タイム」を実現するために、トヨタ自動車が実践している内容は以下の通りです。
- 顧客からの注文を、迅速に生産ラインに指示します。
- 組立工程では、すべての種類の部品を最低限必要な数量だけ確保します。
- 組立工程で使用した部品を使用した数量だけを前工程(当該の部品を加工する工程)に引き取りに行きます。
- 前工程(部品加工工程)では、すべての種類の部品を最低限必要な数量だけ確保しておき、後工程(組立工程)に引き渡した分だけ生産します。
トヨタ自動車では、これらの対応を実践するために、「かんばん方式」という生産管理方式を導入しています。
かんばん方式
「かんばん方式」とは、トヨタ自動車が開発した生産管理方式であり、「ジャスト・イン・タイム(必要なものを必要な時に必要なだけ生産する)」の考え方に基づき、不要な在庫をできるだけ持たない仕組みのことをいいます。
「かんばん方式」では「かんばん」と呼ばれる「作業指示票」を使って、後工程が前工程に対して必要な部品の品番や数量を伝え、前工程は後工程から指示を受けた数量だけ部品を生産します。
プルシステム・後工程引取方式・引張方式
「かんばん方式」は、もともと米国のスーパーマーケットをヒントに考えられた方式なので、実際のスーパーマーケットをイメージしてみると分かりやすいと思います。スーパーマーケットでは「お客様(後工程)は、必要な品物を必要なときに必要な量だけ購入」して、「お店(前工程)は、お客様(後工程)から引き取られた数量だけ品物を補充」します。
これを生産現場に導入した生産方式が「かんばん方式」であり、「後工程」から引き取られた量を補充するために「前工程」が生産することから「プルシステム」「後工程引取方式」「引張方式」といいます。
作業指示票(かんばん)
「かんばん」と呼ばれる「作業指示票」には、前工程に対して生産を指示するための「仕掛けかんばん」と、運搬指示をするための「引取りかんばん」の2種類があります。
この2種類の「かんばん」を使って、以下の手順に従い、連続する工程間で生産活動を繰り返します。
- 仕掛けかんばん
前工程の担当者は、取り外された「仕掛けかんばん」に記載された生産指示に基づき、該当の部品を指示された数量だけ生産した後、「仕掛けかんばん」を取り付けて完成品置き場に置きます。 - 引取りかんばん
部品の運搬担当者は、取り外された「引取りかんばん」に記載されている運搬指示に基づき、前工程の完成品置き場に部品を取りに行き、「仕掛けかんばん」を取り外して「引取りかんばん」を取り付けた後、部品の運搬を行います。
後工程の担当者は、「引取りかんばん」を取り外してから部品を使用します。
かんばん方式の概念図(トヨタ自動車ホームページより)
自働化
「自働化」は「ニンベンのついた自動化」と呼ばれ、設備や品質の異常を検知した際に、ラインが自動的に停止することにより、不良品を作り続けることを自動的に防止するための仕組みのことをいいます。
「ジャスト・イン・タイム」を実現するためには、生産されるすべての部品が良品であることが前提となるため、「自働化」が非常に重要な役割を果たしています。
「自働化」において、設備や品質の異常を検知した際に、管理者や他工程の作業者に伝えるための仕組みが「あんどん(異常表示盤)」です。
あんどん(異常表示盤)
「あんどん(異常表示盤)」とは、管理者や他工程の作業者に生産ラインの異常を伝えることを目的とした「ラインストップ表示板(ランプ)」のことをいいます。
「あんどん(異常表示盤)」を導入することによって「目で見る管理」や「自働化」を実現します。
目で見る管理
作業者又は管理者が、進捗状況又は正常か異常かどうかといった生産の状況を一目で見て分かり、管理しやすくした工夫。(JISZ8141-4303)
MRP(Material Requirements Planning)
「MRP」には、狭義の捉え方と広義の捉え方がありますので、それぞれについて以下に示します。
狭義のMRP
「MRP(狭義)」とは、製品の生産計画である「基準生産計画(MPS)」に基づき、製品の生産に必要な部品や資材の数量を表す「部品構成表」と部品や資材の「在庫情報」「発注残情報」「調達リードタイム」から、発注すべき部品や資材の数量と時期を表す「資材所要量計画(MRP)」を作成する仕組みこのことをいいます。
なお、「MRP(狭義)」には、生産能力の不足や調達リードタイムの長期化や在庫情報と実在庫のズレなどといった問題が発生したときに補正する機能はありません。
また、「MRP(狭義)」に「基準生産計画(MPS)」を修正する機能はないため、需要の動向にあわせて頻繁に生産計画を変更するような製品の生産には適していません。
広義のMRP
「MRP(広義)」とは、「資材所要量計画」だけではなく、管理部門が「生産計画」を策定して全工程に作業指示を行い「生産統制」まで行う仕組みのことをいいます。
「MRP(広義)」は、計画主導型の生産管理方式(プッシュ型管理方式)であり、試験においては、真逆の発想である後工程引取型の生産管理方式(プル型管理方式)である「トヨタ生産方式」「ジャスト・イン・タイム」と比較されて出題されます。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成30年度 第11問】
トヨタ生産方式の特徴を表す用語として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。
a MRP
b かんばん方式
c セル生産方式
d 製番管理方式
e あんどん方式
[解答群]
ア aとc
イ aとd
ウ bとc
エ bとe
オ dとe
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
「トヨタ生産方式」に関する知識を問う問題です。
トヨタ生産方式
「トヨタ生産方式」は、「ジャスト・イン・タイム」と「自働化」という基本構想に基づき構成されており、トヨタ自動車はこれらの基本構想を実現することによって「確かな品質」で「タイムリー」に自動車を生産して顧客に提供しています。
ジャスト・イン・タイム
「ジャスト・イン・タイム」とは「必要なものを必要な時に必要なだけ生産する」という考え方に基づく生産管理方式であり、生産現場の「ムダ・ムラ・ムリ」を徹底的になくすことによって、生産性を向上します。
トヨタ自動車では、「ジャスト・イン・タイム」を実践するために、「かんばん方式」という生産管理方式を導入しています。
自働化
「自働化」は「ニンベンのついた自動化」と呼ばれ、設備や品質の異常を検知した際に、ラインが自動的に停止することにより、不良品を作り続けることを自動的に防止するための仕組みのことをいいます。
「自働化」において、設備や品質の異常を検知した際に、管理者や他工程の作業者に伝えるための仕組みが「あんどん(異常表示盤)」です。
上記の内容から、トヨタ生産方式の特徴を表す用語として「(b)かんばん方式」と「(e)あんどん方式」を選択することができるため、答えは(エ)となりますが、それ以外の選択肢についても確認していきます。
(a) 不適切です。
「MRP」には、狭義の捉え方と広義の捉え方がありますが、今回の問題のように「トヨタ生産方式」「ジャスト・イン・タイム」と比較されて出題される場合は「MRP(広義)」のことを指しています。
生産管理方式と生産形態の組み合わせ
- 製番管理方式:受注生産
- 広義のMRP:見込生産
- トヨタ生産方式:自動車製造業
「MRP(広義)」とは、「資材所要量計画」だけではなく、管理部門が「生産計画」を策定して全工程に作業指示を行い「生産統制」まで行う仕組みのことをいいます。
「MRP(広義)」は、計画主導型の生産管理方式(プッシュ型管理方式)であり、試験においては、真逆の発想である後工程引取型の生産管理方式(プル型管理方式)である「トヨタ生産方式」「ジャスト・イン・タイム」と比較されて出題されます。
(b) 適切です。
「かんばん方式」とは、トヨタ自動車が開発した生産管理方式であり、「ジャスト・イン・タイム(必要なものを必要な時に必要なだけ生産する)」の考え方に基づき、不要な在庫をできるだけ持たない仕組みのことをいいます。
「かんばん方式」では「かんばん」と呼ばれる「作業指示票」を使って、後工程が前工程に対して必要な部品の品番や数量を伝え、前工程は後工程から指示を受けた数量だけ部品を生産します。
(c) 不適切です。
「セル生産方式」は「生産管理方式」ではなく「生産方式」を表す言葉です。
「セル生産方式」は、異なる複数の機械をまとめて機械グループ(セル)で工程を編成する生産方式のことをいいます。
このようにグループ化して生産を行うことで部品を運搬する手間や間接作業を減少することができるため、時間短縮と仕掛品の削減を実現することができます。
(d) 不適切です。
「製番管理方式」は、昔から多くの企業で採用されている代表的な生産管理方式です。
生産管理方式と生産形態の組み合わせ
- 製番管理方式:受注生産
- 広義のMRP:見込生産
- トヨタ生産方式:自動車製造業
「製番管理方式」とは、受注生産を行う製品の生産活動において適用される生産管理方式です。
製品の生産ロットごとに「製番」を割り当て、「製番」ごとに「計画・発注・出庫・作業指示」を行うため、「製番」ごとに「進捗管理」「製造原価」を容易に把握することができます。
(e) 適切です。
「あんどん(異常表示盤)」とは、管理者や他工程の作業者に生産ラインの異常を伝えることを目的とした「ラインストップ表示板(ランプ)」のことをいいます。
「あんどん(異常表示盤)」を導入することによって「目で見る管理」や「自働化」を実現します。
(b)と(e)に記述されている内容が適切であるため、答えは(エ)です。
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