今回は、「運営管理 ~H28-21 ライン生産(2)ライン生産~」について説明します。
目次
運営管理 ~平成28年度一次試験問題一覧~
平成28年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
ライン生産 -リンク-
本ブログにて「ライン生産」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
トヨタ生産方式(ジャストインタイム・かんばん方式・自働化)のまとめ -リンク-
本ブログにて「ジャストインタイム」「かんばん方式」「自働化」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- トヨタ生産方式(ジャストインタイム・かんばん方式・自働化)のまとめ
- R3-6 生産管理方式(9)ジャスト・イン・タイム
- R1-21 生産の合理化・改善(6)動作経済の原則
- H30-11 生産管理方式(6)トヨタ生産方式
- H29-9 生産管理方式(5)かんばん方式
- H29-20 生産の合理化・改善(5)生産現場の改善
- H26-8 生産管理方式(1)生産管理方式
ライン生産
「ライン生産」とは、作業工程や作業員の配置を一連化(ライン化)することにより単一の製品を効率的に大量に製造する生産方式のことをいい、「少品種多量生産」の製品を生産するときに採用される「製品別レイアウト」の中でも代表的な生産方式です。
「ライン生産」は、投入した資材が、ベルトコンベアなどのライン上を流れ、「各工程(作業ステーション)」の作業者がそれぞれに割り付けられた作業(部品の取り付け・加工など)を実施することで、ラインの最後に到達したときには製品が完成しているというものです。
ライン生産方式
生産ライン上の各作業ステーションに作業を割り付けておき、品物がラインを移動するにつれて加工が進んでいく方式。
備考 1. 流れ作業ともいう。
2. すべての品物の移動と加工が同期して繰り返されるライン生産方式をタクト生産方式という。(JISZ8141-3404)
作業ステーション
生産ラインを構成する作業場所であり、作業要素の割付け対象。(JISZ8141-3407)
ラインバランシング
「ラインバランシング」とは、「各工程(作業ステーション)」に割り付ける作業量を均等化することによって、「各工程(作業ステーション)」の作業時間の差をなくし、生産ライン全体の生産性を向上させることをいいます。
生産ライン(例)
以下に示す生産ラインを例に、「ラインバランシング」に必要な知識である「ピッチダイヤグラム」「ピッチタイム(サイクルタイム/サイクル時間)」「編成効率」について説明していきます。
ラインバランシング
生産ラインの各作業ステーションに割り付ける作業量を均等化する方法。
備考 代表的なラインバランシングとして、単一品種組立ラインのバランシング(single model assembly line balancing)と混合品種組立ラインのバランシング(mixed-model sembly line balancing)がある。(JISZ8141-3403)
ピッチダイヤグラム
「ピッチダイヤグラム」とは、横軸に「工程(作業ステーション)」を、縦軸に「要素作業時間」を取り、生産ラインの編成状態を示したグラフのことをいいます。
「生産ライン(例)」に基づき作成した「ピッチダイヤグラム」は以下の通りです。
要素作業
単位作業を構成する要素で、目的別に区分される一連の動作又は作業。(JISZ8141-5110)
ピッチタイム(サイクルタイム/サイクル時間)
「ピッチタイム(サイクルタイム/サイクル時間)」は、生産ラインに資材を投入する時間間隔のことであり、通常は製品が産出される時間間隔でもあります。
生産ラインに資材を投入する時間間隔
「生産ラインに資材を投入する時間間隔」と言われると難しく感じますが、生産ラインの中で一番時間のかかる工程の作業時間が「ピッチタイム(サイクルタイム/サイクル時間)」です。
「生産ライン(例)」における「ピッチタイム(サイクルタイム/サイクル時間)」は、作業時間が一番長い「工程3」の「作業時間:8分」です。
「一番時間のかかる工程の作業時間 = 生産ラインに資材を投入する時間間隔」については、一番時間のかかる「工程3」の「作業時間:8分」よりも短い時間間隔で資材を投入してしまうと「工程3」の処理が間に合わず、「工程2」と「工程3」の間に仕掛品が滞留してしまうため、一番時間のかかる工程の作業時間の間隔をあけて、生産ラインに資材を投入する必要がある。という風に考えていただければ理解しやすいと思います。
製品が産出される時間間隔
「製品が産出される時間間隔」についても「一番時間のかかる工程の作業時間 = 製品が産出される時間間隔」という考え方が当てはまります。
「ピッチタイム(サイクルタイム/サイクル時間)」が「製品が産出される時間間隔」であるという定義に基づくと、「ピッチタイム(サイクルタイム/サイクル時間)」は、以下の公式により算出することができます。
サイクル時間
生産ラインに資材を投入する時間間隔。
備考 通常、製品が産出される時間間隔に等しい。ピッチタイム又はサイクルタイムともいう。(JISZ8141-3409)
編成効率
「編成効率」とは、ライン編成の効率性を示す指標であり、その数値が高いほどライン編成が効率化されており生産性が高いことを示しています。
「編成効率」は、以下の公式により算出することができます。
「ピッチダイヤグラム」に当てはめると、「赤枠線内の面積(ピッチタイム×工程数))」に占める「黄色網掛けの面積(作業時間の総和)」の割合を示していることが分かります。
つまり、「編成効率」の数値が高ければ、工程間における作業量の不均等により発生する「ロスタイム」が少なくなり、ライン編成が効率化されているということを示しています。
ちなみに、「生産ライン(例)」における「編成効率」は、以下の通りです。
- 編成効率
( 4分+6分+8分+4分+4分 )÷ 8分 ÷ 5工程 = 65%
バランスロス
「バランスロス」は「編成効率」と対を成す指標であり、以下の公式により算出することができます。
「ピッチダイヤグラム」に当てはめると、「赤枠線内の面積(ピッチタイム×工程数))」に占める「グレー網掛けの面積(ロスタイムの総和)」の割合を示していることが分かります。
つまり、「バランスロス」の数値が低ければ、工程間における作業量の不均等により発生する「ロスタイム」が少なくなり、ライン編成が効率化されているということを示しています。
ちなみに、「生産ライン(例)」における「バランスロス」は、以下の通りです。
- バランスロス
100% - 65% = 35%
編成効率
作業編成の効率性を示す尺度。
備考 1. 編成効率は、次式で表される。編成効率=作業時間の総和/(作業ステーション数 × サイクル時間)
2. 作業編成の非効率性を示す尺度として、バランスロス(バランスロス=1-編成効率)が用いられる。(JISZ8141-3410)
ラインバランシングの実施
「生産ライン(例)」に対して「ラインバランシング」を実施します。
具体的には、一番時間のかかっている「工程3」で実施している作業(2分)を「工程4」に移管すると、「ピッチダイヤグラム」は以下の通り変化します。
「ラインバランシング」では、それぞれの作業自体を改善しているわけではないため、「作業時間の総和(編成効率の分子)」は減少しません。
一番時間のかかっている工程の作業を別工程に移管して「ピッチタイム(サイクルタイム/サイクル時間)」を短くすれば「編成効率」が改善してライン編成も効率化されます。
「ラインバランシング」を実施した後の「編成効率」と「バランスロス」を算出すると、ライン編成が効率化されていることが分かります。
- 編成効率
( 4分+6分+6分+6分+4分 )÷ 6分 ÷ 5工程 ≒ 87% - バランスロス
100% - 87% ≒ 13%
ちなみに、「各工程」に割り付ける作業量を均等化するという観点で考えると、以下のように各工程に作業を割り付ける案も考えられますが、「ピッチタイム(サイクルタイム/サイクル時間)」を短縮することができないため、「編成効率」と「バランスロス」は、上記と変わらず「87%」と「13%」です。
かんばん方式
「かんばん方式」とは、トヨタ自動車が開発した生産管理方式であり、「ジャスト・イン・タイム(必要なものを必要な時に必要なだけ生産する)」の考え方に基づき、不要な在庫をできるだけ持たない仕組みのことをいいます。
「かんばん方式」では「かんばん」と呼ばれる「作業指示票」を使って、後工程が前工程に対して必要な部品の品番や数量を伝え、前工程は後工程から指示を受けた数量だけ部品を生産します。
プルシステム・後工程引取方式・引張方式
「かんばん方式」は、もともと米国のスーパーマーケットをヒントに考えられた方式なので、実際のスーパーマーケットをイメージしてみると分かりやすいと思います。スーパーマーケットでは「お客様(後工程)は、必要な品物を必要なときに必要な量だけ購入」して、「お店(前工程)は、お客様(後工程)から引き取られた数量だけ品物を補充」します。
これを生産現場に導入した生産方式が「かんばん方式」であり、「後工程」から引き取られた量を補充するために「前工程」が生産することから「プルシステム」「後工程引取方式」「引張方式」といいます。
作業指示票(かんばん)
「かんばん」と呼ばれる「作業指示票」には、前工程に対して生産を指示するための「仕掛けかんばん」と、運搬指示をするための「引取りかんばん」の2種類があります。
この2種類の「かんばん」を使って、以下の手順に従い、連続する工程間で生産活動を繰り返します。
- 仕掛けかんばん
前工程の担当者は、取り外された「仕掛けかんばん」に記載された生産指示に基づき、該当の部品を指示された数量だけ生産した後、「仕掛けかんばん」を取り付けて完成品置き場に置きます。 - 引取りかんばん
部品の運搬担当者は、取り外された「引取りかんばん」に記載されている運搬指示に基づき、前工程の完成品置き場に部品を取りに行き、「仕掛けかんばん」を取り外して「引取りかんばん」を取り付けた後、部品の運搬を行います。
後工程の担当者は、「引取りかんばん」を取り外してから部品を使用します。
かんばん方式の概念図(トヨタ自動車ホームページより)
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成28年度 第21問】
2段階の直列工程で毎日80個の単一製品を製造する生産ラインを考える。製品1個当たりの前工程での処理時間は4分、後工程での処理時間は5分であり、処理時間のバラツキは両工程ともに十分に小さい。また、前工程から後工程への中間製品の運搬ロットサイズは10個としている。80個の製品の総生産時間を短縮するための方策に関する記述として、最も不適切なものはどれか。
ア 作業改善によって後工程での処理時間を短縮する。
イ 前工程と後工程での担当作業を見直し、生産ラインの編成効率を高める。
ウ 前工程と後工程の間の運搬ロットサイズを小さくする。
エ 前工程の入口と後工程の出口とを「かんばん」で結ぶ。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
「ライン生産」の総生産時間を短縮するための手段に関する知識を問う問題です。
最初に、問題文において与えられている情報に基づき、「前工程」への着手から「80個」の製品を生産完了するまでの「総生産時間」を算出します。
問題文において与えられている情報
- 生産ライン形態:2段階の直列工程
- 前工程の処理時間:4分
- 後工程の処理時間:5分
- 運搬ロットサイズ:10個
- 総生産数量:80個
(ア) 適切です。
作業改善によって後工程における処理時間を短縮した場合に「総生産時間」がどの程度短縮することができるのかについて確認します。
仮に、後工程における製品1個当たりの処理時間を「5分」から「4分」に短縮した場合、後工程における「運搬ロットサイズ単位(10個)」の処理時間は「40分」となり、「総生産時間」を「440分」から「360分」に短縮することができます。選択肢の内容は適切です。
(イ) 適切です。
前工程と後工程での担当作業を見直し生産ラインの編成効率を高めた場合に「総生産時間」がどの程度短縮することができるのかについて確認します。
まずは、「生産ラインの編成効率を高める」という点について考えていきます。
「編成効率」とは、ライン編成の効率性を示す尺度であり、その数値が高いほどライン編成が効率化されており生産性が高いことを示しています。
担当作業見直し前後のピッチダイヤグラム
製品1個当たりの前工程における処理時間は「4分」、後工程における処理時間は「5分」となっていますが、仮に、担当作業を見直し、前工程と後工程における製品1個当たりの処理時間を「4.5分」に均等化した場合「ピッチダイヤグラム」がどのように変化するか確認します。
「ピッチダイヤグラム」において、「ロスタイム(グレー網掛け)」がなくなっており「ライン編成」が効率化されたことが分かります。
担当作業見直し前後の編成効率
実際に「編成効率」を算出しても、その数値が改善されていることを確認できます。
- 見直し前:( 4分+5分 )÷ 5分 ÷ 2工程 = 90%
- 見直し後:( 4.5分+4.5分 )÷ 4.5分 ÷ 2工程 = 100%
つまり、担当作業を見直し、前工程と後工程における製品1個当たりの処理時間を「4.5分」に均等化すれば「生産ラインの編成効率を高める」ことができます。
続いて、「担当作業を見直し生産ラインの編成効率を高めた場合 = 前工程と後工程における製品1個当たりの処理時間を「4.5分」に均等化した場合」に、「総生産時間」がどのように変化するか確認します。
前工程と後工程における「運搬ロットサイズ単位(10個)」の処理時間は「45分」となり、「総生産時間」を「440分」から「405分」に短縮することができます。選択肢の内容は適切です。
(ウ) 適切です。
前工程と後工程の間の運搬ロットサイズを小さくした場合に「総生産時間」がどの程度短縮することができるのかについて確認します。
仮に、運搬ロットサイズを「10個」から「5個」に小さくした場合、前工程における「運搬ロットサイズ単位(5個)」の処理時間は「20分」に、後工程における「運搬ロットサイズ単位(5個)」の処理時間は「25分」となり、「総生産時間」を「440分」から「420分」に短縮することができます。選択肢の内容は適切です。
(エ) 不適切です。
「かんばん」とは、後工程が前工程に対して必要な部品の数量を伝える「作業指示票」であり、前工程は後工程から受け取った「かんばん(作業指示票)」に記載された数量だけ部品を生産していきます。
「かんばん」を使った生産管理方式は「かんばん方式」と呼ばれ、トヨタ自動車が開発した「ジャスト・イン・タイム(必要なものを必要な時に必要なだけ生産する)」の考え方に基づいた不要な在庫をできるだけ持たない仕組みです。
「かんばん方式」では「前工程の入口/出口」と「後工程の入口」を「かんばん」で結びます。
選択肢の文章は「後工程の出口」となっているため、そもそも間違っている気がしますが、それを無視して、仮に「前工程」と「後工程」を「かんばん」で結んだ場合に「総生産時間」がどの程度短縮することができるのかについて確認します。
- 後工程は、前工程の完成品置き場から部品を引き取り「かんばん」を取り外します。
- 前工程は、取り外された「かんばん」に記載された生産指示に基づき部品を生産した後「かんばん」を取り付けて完成品置き場に置きます。
- 後工程は、前工程から引き取った部品を使い切ったら、前工程の完成品置き場から部品を引き取り「かんばん」を取り外します。
「かんばん方式」では、上記の手順を繰り返しますが、「かんばん方式」を採用しても「総生産時間」を短縮することはできないため、選択肢の内容は不適切です。
答えは(エ)です。
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