財務・会計 ~H27-15 貨幣の時間価値(2)~

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今回は、「財務・会計 ~H27-15 貨幣の時間価値(2)~」について説明します。

 

二次試験の事例Ⅳで直接出題される論点ではありませんが、「時間価値(現在価値)」は当然に必要な知識として理解しておく必要があるため、一次試験の段階からしっかりと勉強しておきましょう。

 

目次

財務・会計 ~平成27年度一次試験問題一覧~

平成27年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

時間価値 -リンク-

一次試験に向けて「時間価値」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。

 

貨幣の時間価値

 

社債の時間価値

 

割引現在価値

例えば、100万円の現金を10%の利息が付く銀行に預けると1年後には110万円になります。

つまり、10%の利息が付くことを前提に考えれば、1年後の110万円は、現時点の100万円と同じ価値であると考えることができます。

この場合、現時点での貨幣の価値(100万円)を「現在価値」、1年後の貨幣の価値(110万円)を「将来価値」といい、利息(10%)を「割引率」といいます。

 

ちなみに、100万円の現金を10%の利息が付く銀行に5年間預けると以下のようになります。

 

逆に、「将来価値」から「現在価値」を求める場合は以下のようになります。

上記のように、「将来価値」を「割引率」で割り引いて求めた「現在価値」のことを「割引現在価値」といいます。

 

[例題1]

割引率が10%とした場合、5年後に手に入る「1,610,510円」の割引現在価値を求めよ。

[解答]

割引現在価値 = 1,610,510円÷1.1÷1.1÷1.1÷1.1÷1.1 = 1,000,000円

 

複利現価係数

「複利現価係数」とは「将来価値」から「現在価値」を求めるための係数です。

「複利現価係数」は、以下の計算式により算出することができます。

「割引率」が「10%」の場合の「複利現価係数」は以下の通りです。

  • 1年:1÷1.1 = 0.9090…
  • 2年:1÷1.1² = 0.8264…
  • 3年:1÷1.1³ = 0.7513…
  • 4年:1÷1.1⁴ = 0.6830…
  • 5年:1÷1.1⁵ = 0.6209…

 

[例題2]

割引率が10%とした場合、複利現価係数を用いて5年後に手に入る「1,610,510円」の割引現在価値を求めよ。

1年後 2年後 3年後 4年後 5年後
複利現価係数 0.9091 0.8264 0.7513 0.6830 0.6209

 

[解答]

割引現在価値 = 1,610,510円 × 0.6209 ≒ 999,966円(四捨五入)

(※)[例題1]と同じ金額を使った問題ですが、複利現価係数の小数点以下第5位以下が切り捨てられているので100万円にはなりません。

 

年金現価係数

「年金現価係数」とは、今後継続して一定の収入(支出)がある場合の収入総額(支出総額)の割引現在価値を求める係数です。

「割引率」が「10%」の場合の「年金現価係数」は以下の通りです。

  • 1年:(1÷1.1) = 0.9090…
  • 2年:(1÷1.1)+(1÷1.1²)= 1.7355…
  • 3年:(1÷1.1)+(1÷1.1²)+(1÷1.1³)= 2.4868…
  • 4年:(1÷1.1)+(1÷1.1²)+(1÷1.1³)+(1÷1.1⁴)= 3.1698…
  • 5年:(1÷1.1)+(1÷1.1²)+(1÷1.1³)+(1÷1.1⁴)+(1÷1.1⁵)= 3.7907…

 

[例題3]

割引率が10%とした場合、今後5年間継続して「1,000,000円」を入手した場合の総収入額の割引現在価値を求めよ。

1年後 2年後 3年後 4年後 5年後
年金現価係数 0.9091 1.7355 2.4868 3.1698 3.7907

 

[解答]

割引現在価値 = 1,000,000円 × 3.7907 = 3,790,700円

 

複利現価係数と年金現価係数を用いた割引現在価値の計算

[例題4]

1年後から3年後まで、毎年100万円ずつ収入が入る予定である。

割引率を3%とした場合、複利現価係数と年金現価係数を用いて総収入額の割引現在価値を求めよ。

 

【今後の収入予定】

1年後 2年後 3年後
収入 ¥1,000,000 ¥1,000,000 ¥1,000,000

【割引率を3%とした場合の複利現価係数と年金現価係数】

1年後 2年後 3年後
複利現価係数 0.9709 0.9426 0.9151
年金現価係数 0.9709 1.9135 2.8286

 

[解答]

  • 複利現価係数を利用した場合の算出方法
    1,000,000円 × 0.9709 + 1,000,000円 × 0.9426 + 1,000,000円 × 0.9151 = 2,828,600円
  • 年金現価係数を利用した場合の算出方法
    1,000,000円 × 2.8286 = 2,828,600円

 

年金現価係数を用いた割引現在価値の計算

たまにパズルのような問題が出題されることもあります。

[例題5]

割引率が10%とした場合、年金現価係数を用いて5年後に手に入る「1,610,510円」の割引現在価値を求めよ。

1年後 2年後 3年後 4年後 5年後
年金現価係数 0.9091 1.7355 2.4868 3.1698 3.7907

 

[解答]

割引現在価値 = 1,610,510円 × 3.7907 - 1,610,510円 × 3.1698 ≒ 999,966円

 

「貨幣の時間価値」は「設備投資の経済性計算」を解くにあたって、基本中の基本です。
「複利現価係数」と「年金現価係数」が与えられた場合は、その数値を用いて「割引現在価値」を計算しますが、「複利現価係数」と「年金現価係数」が与えられなかった場合は、電卓で「\1,000,000 ÷ 1.1 ÷ 1.1・・・」と計算していかなければなりません。

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【平成27年度 第15問】

C社は、取引先に対して貸付けを行っている。当該貸付金は、以下のようなキャッシュフローをもたらす予定である。現在価値の計算について、下記の設問に答えよ。なお、現行の会計基準との整合性を考慮する必要はない。

 

① 元本は100万円、貸付日は20X1年4月1日、貸付期間は4年である。
② 利息として、20X2年から20X5年までの毎年3月31 日に6万円が支払われる。
③ 満期日の20X5年3月31 日には元本の100 万円が返済される。

 

(設問1)

この貸付金の、貸付日時点の現在価値として最も適切なものはどれか。なお、割引率は6%とする。

 

ア 792,000円
イ 982,200円
ウ 1,000,000円
エ 1,240,000円

 

(設問2)

貸付けを行っている取引先の財政状態が悪化し、元本の一部が回収不能となる可能性が高まっていることが確認された。このとき、現在価値の計算は(設問1)と比べてどのように変化するか、最も適切なものを選べ。

 

ア 割引率が高くなるため、現在価値は大きくなる。
イ 割引率が高くなるため、現在価値は小さくなる。
ウ 割引率が低くなるため、現在価値は大きくなる。
エ 割引率が低くなるため、現在価値は小さくなる。

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答(設問1)

貸付金の現在価値に関する問題ですが、実際には計算することなく求めることができます。

現在価値を算出するための割引率が「6%」であり、貸付金に対する利息が年利「6%」で設定されているため、貸付金の現在価値は貸付金額と変わらず「100万円」となります。

 

仮に、貸付期間を1年間とした場合の「貸付金の現在価値」を以下に示します。

分子の利息(6%)と分母の割引率(6%)がお互いを相殺して、貸付金の現在価値は100万円となることが分かります。

これは、貸付期間を1年間とした場合の計算式ですが、期間が複数年になろうと結果は同じく、貸付金の現在価値は100万円になります。

 

 

念のため貸付期間を4年間とした場合の「貸付金の現在価値」を計算してみます。
現在価値の算出方法については「貨幣の時間価値(1)」を参照してください。

  1. 返済金額の現在価値
    4年後に100万円のキャッシュインがあります。
    100万円÷1.06÷1.06÷1.06÷1.06 ≒ 792,094
  2. 受取利息の現在価値
    返済までの4年間、毎期末に6万円のキャッシュインがあります。
    (6万円÷1.06)+(6万円÷1.06÷1.06)+(6万円÷1.06÷1.06÷1.06)+(6万円÷1.06÷1.06÷1.06÷1.06)≒ 207,906
  3. 貸付金の現在価値
    返済金額の現在価値と受取利息の現在価値を合計します。
    792,094 + 207,906 = 1,000,000

 

答えは(ウ)です。

 

考え方と解答(設問2)

取引先の財政状態が悪化し、貸付金の元本の一部が回収不能となる可能性が高まっている状況です。

貸付を行っているC社にとっては、債券の回収できなくなるリスクが高くなっている状況であり、C社としては取引先に求める要求リターンも高くなります。取引先に求める要求リターンが高くなるということは、つまり割引率が高くなるという形になります。

ちなみに、割引率が高くなると、貸付金の現在価値は小さくなります。

 

答えは(イ)です。


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