財務・会計 ~R4-14 貨幣の時間価値(5)~

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今回は、「財務・会計 ~R4-14 貨幣の時間価値(5)~」について説明します。

 

二次試験の事例Ⅳで直接出題される論点ではありませんが、「時間価値(現在価値)」は当然に必要な知識として理解しておく必要があるため、一次試験の段階からしっかりと勉強しておきましょう。

 

目次

時間価値 -リンク-

一次試験に向けて「時間価値」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。

 

貨幣の時間価値

 

社債の時間価値

 

割引現在価値

例えば、100万円の現金を10%の利息が付く銀行に預けると1年後には110万円になります。

つまり、10%の利息が付くことを前提に考えれば、1年後の110万円は、現時点の100万円と同じ価値であると考えることができます。

この場合、現時点での貨幣の価値(100万円)を「現在価値」、1年後の貨幣の価値(110万円)を「将来価値」といい、利息(10%)を「割引率」といいます。

 

ちなみに、100万円の現金を10%の利息が付く銀行に5年間預けると以下のようになります。

 

 

逆に、「将来価値」から「現在価値」を求める場合は以下のようになります。

 

 

上記のように、「将来価値」を「割引率」で割り引いて求めた「現在価値」のことを「割引現在価値」といいます。

 

[例題1]

割引率が10%とした場合、5年後に手に入る「1,610,510円」の割引現在価値を求めよ。

[解答]

割引現在価値 = 1,610,510円÷1.1÷1.1÷1.1÷1.1÷1.1 = 1,000,000円

 

複利現価係数

「複利現価係数」とは「将来価値」から「現在価値」を求めるための係数です。

 

 

「複利現価係数」は、以下の計算式により算出することができます。

 

 

「割引率」が「10%」の場合の「複利現価係数」は以下の通りです。

  • 1年:1÷1.1 = 0.9090…
  • 2年:1÷1.1² = 0.8264…
  • 3年:1÷1.1³ = 0.7513…
  • 4年:1÷1.1⁴ = 0.6830…
  • 5年:1÷1.1⁵ = 0.6209…

 

[例題2]

割引率が10%とした場合、複利現価係数を用いて5年後に手に入る「1,610,510円」の割引現在価値を求めよ。

1年後 2年後 3年後 4年後 5年後
複利現価係数 0.9091 0.8264 0.7513 0.6830 0.6209

 

[解答]

割引現在価値 = 1,610,510円 × 0.6209 ≒ 999,966円(四捨五入)

(※)[例題1]と同じ金額を使った問題ですが、複利現価係数の小数点以下第5位以下が切り捨てられているので100万円にはなりません。

 

年金現価係数

「年金現価係数」とは、今後継続して一定の収入(支出)がある場合の収入総額(支出総額)の割引現在価値を求める係数です。

 

 

「割引率」が「10%」の場合の「年金現価係数」は以下の通りです。

  • 1年:(1÷1.1) = 0.9090…
  • 2年:(1÷1.1)+(1÷1.1²)= 1.7355…
  • 3年:(1÷1.1)+(1÷1.1²)+(1÷1.1³)= 2.4868…
  • 4年:(1÷1.1)+(1÷1.1²)+(1÷1.1³)+(1÷1.1⁴)= 3.1698…
  • 5年:(1÷1.1)+(1÷1.1²)+(1÷1.1³)+(1÷1.1⁴)+(1÷1.1⁵)= 3.7907…

 

[例題3]

割引率が10%とした場合、今後5年間継続して「1,000,000円」を入手した場合の総収入額の割引現在価値を求めよ。

1年後 2年後 3年後 4年後 5年後
年金現価係数 0.9091 1.7355 2.4868 3.1698 3.7907

 

[解答]

割引現在価値 = 1,000,000円 × 3.7907 = 3,790,700円

 

複利現価係数と年金現価係数を用いた割引現在価値の計算

[例題4]

1年後から3年後まで、毎年100万円ずつ収入が入る予定である。

割引率を3%とした場合、複利現価係数と年金現価係数を用いて総収入額の割引現在価値を求めよ。

 

【今後の収入予定】

1年後 2年後 3年後
収入 ¥1,000,000 ¥1,000,000 ¥1,000,000

【割引率を3%とした場合の複利現価係数と年金現価係数】

1年後 2年後 3年後
複利現価係数 0.9709 0.9426 0.9151
年金現価係数 0.9709 1.9135 2.8286

 

[解答]

  • 複利現価係数を利用した場合の算出方法
    1,000,000円 × 0.9709 + 1,000,000円 × 0.9426 + 1,000,000円 × 0.9151 = 2,828,600円
  • 年金現価係数を利用した場合の算出方法
    1,000,000円 × 2.8286 = 2,828,600円

 

年金現価係数を用いた割引現在価値の計算

たまにパズルのような問題が出題されることもあります。

[例題5]

割引率が10%とした場合、年金現価係数を用いて5年後に手に入る「1,610,510円」の割引現在価値を求めよ。

1年後 2年後 3年後 4年後 5年後
年金現価係数 0.9091 1.7355 2.4868 3.1698 3.7907

 

[解答]

割引現在価値 = 1,610,510円 × 3.7907 - 1,610,510円 × 3.1698 ≒ 999,966円

 

「貨幣の時間価値」は「設備投資の経済性計算」を解くにあたって、基本中の基本です。
「複利現価係数」と「年金現価係数」が与えられた場合は、その数値を用いて「割引現在価値」を計算しますが、「複利現価係数」と「年金現価係数」が与えられなかった場合は、電卓で「\1,000,000 ÷ 1.1 ÷ 1.1・・・」と計算していかなければなりません。

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【令和4年度 第14問】

B社は以下のような条件で、取引先に貸し付けを行った。割引率を4%としたとき、貸付日における現在価値として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

 

  1. 貸付日は2020年7月1日、貸付期間は5年であり、満期日の2025年6月30日に元本200万円が返済されることになっている。
  2. 2021~2025年の毎年6月30日に、利息として元本の5%である10万円が支払われる。
  3. 期間5年のときの複利現価係数と年金現価係数は以下のとおりである。

 

複利現価係数 年金現価係数
4% 0.822 4.452
5% 0.784 4.329

 

[解答群]

ア 200.1万円
イ 201.3万円
ウ 207.7万円
エ 208.9万円

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答

「貨幣の時間価値」に関する知識を問う問題です。

 

B社が取引先に貸した貸付金の貸付日における価格(割引現在価値)を求めていきます。

B社は、2020年7月1日に取引先に貸付金(200万円)を貸したことにより、2021~2025年の6月30日に利息として貸付金の5%(10万円)を受け取り、5年後の2025年6月30日に元本(200万円)を全額受け取ります。

感覚的には、200万円を貸したことで受け取った利息分の50万円(10万円×5年分)を儲けたと感じますが、貨幣には時間価値という考え方があるため、1年後に受け取った利息(10万円)と5年後に受け取った利息(10万円)の貸付日における価値(金額)は異なります

つまり、貸付金の貸付日における現在価値は、毎年6月30日に受け取る利息(10万円 × 5年 = 50万円)と5年後に返済される元本(200万円)を合計した金額(250万円)ではなく、毎年6月30日に受け取る利息(10万円)の割引現在価値と5年後に返済される元本(200万円)の割引現在価値を合計して算出します。

 

  • 毎年6月30日に受け取る利息(10万円)の割引現在価値
  • 5年後に返済される元本(200万円)の割引現在価値

 

割引率

将来の貨幣価値を、現時点の貨幣価値に換算するときに使用するものを割引率といい、今回の問題では「4%」と与えられてます。

 

問題で与えられた割引率が5%のときの複利現価係数と年金現価係数は、ダミーデータであり問題を解く上で使用しません。

 

毎年6月30日に受け取る利息(10万円)の割引現在価値

毎年6月30日(貸付日から1年経過する度)に受け取る利息(10万円)の貸付日における割引現在価値を求めていきます。

継続的に一定額の利息を受け取るため「年金現価係数」を用いて割引現在価値を算出します

毎年6月30日に受け取る利息(10万円)に、割引率(4%)の年金現価係数(5年/4.452)を乗じて、毎年受け取る利息の割引現在価値を算出します。

 

  • 毎年受け取る利息 × 年金現価係数 = 10万円 × 4.452 = 44.52万円

 

 

5年後に返済される元本(200万円)の割引現在価値

貸付日である2020年7月1日から5年後の2025年6月30日に返済される元本(200万円)の貸付日における割引現在価値を求めていきます。

将来のある時期に1度だけ元本を受け取るため「複利現価係数」を用いて割引現在価値を算出します

5年後に返済される元本(200万円)に、割引率(4%)の複利現価係数(5年/0.822)を乗じて、5年後に返済される元本の割引現在価値を算出します。

 

  • 5年後に返済される元本 × 複利現価係数 = 200万円 × 0.822 = 164.4万円

 

 

貸付金の貸付日における割引現在価値

貸付金の貸付日における現在価値は、毎年6月30日に受け取る利息(10万円)の割引現在価値と5年後に返済される元本(200万円)の割引現在価値を合計して算出します。

 

  • 44.52万円 + 164.4万円 = 208.92万円 ≒ 208.9万円

 

答えは(エ)です。


 

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