今回は、「財務・会計 ~H28-17-1 貨幣の時間価値(1)~」について説明します。
平成28年度 第17問について説明しようと思っているのですが、「貨幣の時間価値」「投資の意思決定(NPV/IRR)」と順を追って理解する方が二次試験で役に立つと思います。
目次
財務・会計 ~平成28年度一次試験問題一覧~
平成28年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
時間価値 -リンク-
一次試験に向けて「時間価値」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
貨幣の時間価値
社債の時間価値
割引現在価値
例えば、100万円の現金を10%の利息が付く銀行に預けると1年後には110万円になります。
つまり、10%の利息が付くことを前提に考えれば、1年後の110万円は、現時点の100万円と同じ価値であると考えることができます。
この場合、現時点での貨幣の価値(100万円)を「現在価値」、1年後の貨幣の価値(110万円)を「将来価値」といい、利息(10%)を「割引率」といいます。
ちなみに、100万円の現金を10%の利息が付く銀行に5年間預けると以下のようになります。
逆に、「将来価値」から「現在価値」を求める場合は以下のようになります。
上記のように、「将来価値」を「割引率」で割り引いて求めた「現在価値」のことを「割引現在価値」といいます。
[例題1]
割引率が10%とした場合、5年後に手に入る「1,610,510円」の割引現在価値を求めよ。
[解答]
割引現在価値 = 1,610,510円÷1.1÷1.1÷1.1÷1.1÷1.1 = 1,000,000円
複利現価係数
「複利現価係数」とは「将来価値」から「現在価値」を求めるための係数です。
「複利現価係数」は、以下の計算式により算出することができます。
「割引率」が「10%」の場合の「複利現価係数」は以下の通りです。
- 1年:1÷1.1 = 0.9090…
- 2年:1÷1.1² = 0.8264…
- 3年:1÷1.1³ = 0.7513…
- 4年:1÷1.1⁴ = 0.6830…
- 5年:1÷1.1⁵ = 0.6209…
[例題2]
割引率が10%とした場合、複利現価係数を用いて5年後に手に入る「1,610,510円」の割引現在価値を求めよ。
1年後 | 2年後 | 3年後 | 4年後 | 5年後 | |
複利現価係数 | 0.9091 | 0.8264 | 0.7513 | 0.6830 | 0.6209 |
[解答]
割引現在価値 = 1,610,510円 × 0.6209 ≒ 999,966円(四捨五入)
(※)[例題1]と同じ金額を使った問題ですが、複利現価係数の小数点以下第5位以下が切り捨てられているので100万円にはなりません。
年金現価係数
「年金現価係数」とは、今後継続して一定の収入(支出)がある場合の収入総額(支出総額)の割引現在価値を求める係数です。
「割引率」が「10%」の場合の「年金現価係数」は以下の通りです。
- 1年:(1÷1.1) = 0.9090…
- 2年:(1÷1.1)+(1÷1.1²)= 1.7355…
- 3年:(1÷1.1)+(1÷1.1²)+(1÷1.1³)= 2.4868…
- 4年:(1÷1.1)+(1÷1.1²)+(1÷1.1³)+(1÷1.1⁴)= 3.1698…
- 5年:(1÷1.1)+(1÷1.1²)+(1÷1.1³)+(1÷1.1⁴)+(1÷1.1⁵)= 3.7907…
[例題3]
割引率が10%とした場合、今後5年間継続して「1,000,000円」を入手した場合の総収入額の割引現在価値を求めよ。
1年後 | 2年後 | 3年後 | 4年後 | 5年後 | |
年金現価係数 | 0.9091 | 1.7355 | 2.4868 | 3.1698 | 3.7907 |
[解答]
割引現在価値 = 1,000,000円 × 3.7907 = 3,790,700円
複利現価係数と年金現価係数を用いた割引現在価値の計算
[例題4]
1年後から3年後まで、毎年100万円ずつ収入が入る予定である。
割引率を3%とした場合、複利現価係数と年金現価係数を用いて総収入額の割引現在価値を求めよ。
【今後の収入予定】
1年後 | 2年後 | 3年後 | |
収入 | ¥1,000,000 | ¥1,000,000 | ¥1,000,000 |
【割引率を3%とした場合の複利現価係数と年金現価係数】
1年後 | 2年後 | 3年後 | |
複利現価係数 | 0.9709 | 0.9426 | 0.9151 |
年金現価係数 | 0.9709 | 1.9135 | 2.8286 |
[解答]
- 複利現価係数を利用した場合の算出方法
1,000,000円 × 0.9709 + 1,000,000円 × 0.9426 + 1,000,000円 × 0.9151 = 2,828,600円 - 年金現価係数を利用した場合の算出方法
1,000,000円 × 2.8286 = 2,828,600円
年金現価係数を用いた割引現在価値の計算
たまにパズルのような問題が出題されることもあります。
[例題5]
割引率が10%とした場合、年金現価係数を用いて5年後に手に入る「1,610,510円」の割引現在価値を求めよ。
1年後 | 2年後 | 3年後 | 4年後 | 5年後 | |
年金現価係数 | 0.9091 | 1.7355 | 2.4868 | 3.1698 | 3.7907 |
[解答]
割引現在価値 = 1,610,510円 × 3.7907 - 1,610,510円 × 3.1698 ≒ 999,966円
「貨幣の時間価値」は「設備投資の経済性計算」を解くにあたって、基本中の基本です。
「複利現価係数」と「年金現価係数」が与えられた場合は、その数値を用いて「割引現在価値」を計算しますが、「複利現価係数」と「年金現価係数」が与えられなかった場合は、電卓で「\1,000,000 ÷ 1.1 ÷ 1.1・・・」と計算していかなければなりません。
次回は、割引現在価値の考え方を活用する「設備投資の経済性計算(2)」について説明します。
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