今回は、「運営管理 ~R3-2 生産管理の基礎(3)生産管理の基礎用語~」について説明します。
目次
運営管理 ~令和3年度一次試験問題一覧~
令和3年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
生産管理の基礎用語 -リンク-
本ブログにて「3S」「5S」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- 3S
- 5S
生産形態(受注生産・見込生産) -リンク-
本ブログにて「受注生産」「見込生産」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
生産形態(多品種少量生産・少品種多量生産) -リンク-
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- 生産形態(多品種少量生産・少品種多量生産)のまとめ
- R1-2 工場レイアウト(6)設備配置
- H28-2 生産形態(1)多品種少量生産・少品種多量生産
- H28-5 生産形態(2)多品種少量生産・少品種多量生産
- H27-5 工場レイアウト(5)SLP
生産形態(受注生産/見込生産)
「生産形態」は、顧客からの注文に基づき、顧客から指定された仕様に従って製品を生産する「受注生産」と、製品の需要予測に基づき、企業が定めた仕様の製品を大量に生産する「見込生産」に分類されます。
「生産形態」の種類によって、最適な設備のレイアウトや種類が異なるほか、生産活動において重点的に管理すべき項目も異なってきます。
受注生産
「受注生産」とは、顧客からの注文に基づき、顧客から指定された仕様に従って製品を生産する形態のことをいいます。
「受注生産」では、顧客ごとに異なる仕様の製品を生産する必要があるため、加工処理の順序が異なる製品の生産に最適な「機能別レイアウト」で「汎用機械」を用いて生産します。
機能別レイアウト(工程別レイアウト/ジョブショップ型)
「受注生産」は、加工処理の順序が異なる生産管理が複雑な製品を、顧客から求められた納期に合わせて、顧客から注文を受けてから生産に着手するため、「進捗管理による納期の遵守」を重要な課題として管理する必要があります。
受注生産の流れイメージ
特徴
- 「機能別レイアウト」により「汎用機械」を用いて生産を行う。
- 「納期の遵守」が重要な管理項目である。
納期管理のポイント
「受注生産」において重点的に管理すべき「納期管理」の代表的なポイントを以下に示します。
- 顧客から注文を受けた時点で、迅速に受注情報を生産計画に反映して製造部門に連携する。
- 一元的に生産統制(進捗管理、現品管理、余力管理)を徹底する。
- 各工程における進捗管理を実施する。
- 資材または製品ごとの現品管理を実施する。
- 作業員の多能工化などにより、受注量の変動に対応できる生産体制を構築する。
- 「作業の標準化・マニュアル化・教育の実施」により、生産現場の作業手順を統一化して、作業者による作業品質や時間のバラツキを無くす。
- 材料や部品などの資材を発注している外部業者の納期管理を徹底する。
受注生産(JISZ8141:2022-3204)
顧客が定めた仕様の製品を生産者が生産する形態
注釈1 見込生産を改めて、受注生産の特徴を取り込んだ生産形態にすることを受注生産化という。
見込生産
「見込生産」とは、製品の需要予測に基づき、企業が定めた仕様の製品を大量に生産する形態のことをいいます。需要予測に基づき生産した製品を在庫として管理して、顧客から注文を受けたら、在庫から製品を払い出して顧客に納品します。
「見込生産」では、企業が定めた同一仕様の製品を大量に生産する必要があるため、定められた加工順序で生産するために最適な「製品別レイアウト」で「専用機械(専用ライン)」を用いて連続的に生産します。
製品別レイアウト(フローショップ型)
「見込生産」においては、同一仕様の製品を効率的に生産することももちろん重要ではありますが、それ以上に「過剰在庫」による製品の売れ残りや、「品切れ」による売上機会の損失、顧客からの信用失墜、といった状況を回避することの方が重要であるため、「正確な需要予測に基づく生産計画により適正な在庫水準を維持すること」を重要な課題として管理する必要があります。
見込生産の流れイメージ
特徴
- 「製品別レイアウト」により「専用機械(専用ライン)」を用いて生産を行う。
- 「正確な需要予測に基づく生産計画により適正な在庫水準を維持すること」が重要な管理項目である。
見込生産(JISZ8141:2022-3203)
生産者が市場の需要を見越して企画・設計した製品を生産し、不特定な顧客を対象として市場に出荷する形態
生産形態(多品種少量生産/少品種多量生産)
「生産形態」は、製品の種類の多さやその生産量によって「多品種少量生産」と「少品種多量生産」に分類されます。
「生産形態」の種類によって、最適な設備のレイアウトや種類が異なるほか、生産活動において重視すべき管理項目も異なってきます。
多品種少量生産
「多品種少量生産」とは、種類の多い製品を少量ずつ生産する方法であり、「受注生産」の製品においてよく採用される生産形態です。
製品の種類ごとに加工順序も異なるため、「機能別レイアウト」に配置された「汎用機械」を用いて生産します。
機能別レイアウト(工程別レイアウト/ジョブショップ型)
「多品種少量生産」は、製品の生産経路が複雑であり、顧客からの注文数量や納期が多様であるため、「進捗管理による納期の遵守」を重要な課題として管理する必要があります。
特徴
- 「機能別レイアウト」により「汎用機械」を用いて生産を行う。
- 「納期の遵守」が重要な管理項目である。
少品種多量生産
「少品種多量生産」とは、種類の少ない製品を大量に生産する方法であり、「見込生産」の製品においてよく採用される生産形態です。
定められた加工順序に基づいて生産が行われるため、「製品別レイアウト」に配置された「専用機械(専用ライン)」を用いて連続的に生産します。
製品別レイアウト(フローショップ型)
「少品種多量生産」は、効率的な生産体制の確立が重要であるため、「需要予測による生産計画の策定」を重要な課題として管理する必要があります。
特徴
- 「製品別レイアウト」により「専用機械(専用ライン)」を用いて生産を行う。
- 「需要予測による生産計画の策定」が重要な管理項目である。
3S
「3S」とは、生産の合理化における基本原則であり、「単純化(Simplification)」「標準化(Standardization)」「専門化(Specialization)」の「1文字目(S)」を取って並べたもののことをいいます。
「単純化」とは、製品・材料・部品の整理や、作業工程の見直しにより、その種類を減らして簡素化することであり、「作業ミスの撲滅」「作業時間の短縮」「コストの低減」といった効果を期待することができます。
「標準化」とは、一定の基準に従って、物(資材・部品など)や方法(作業・手続きなど)を統一化することであり、「属人化した技術の横展開」「品質の安定」「作業時間の短縮」「作業者の多能工化」「コストの低減」といった効果を期待することができます。
「専門化」とは、製品・品種の限定や、作業の分担化により専業化することをであり、「専門技術力の向上」「専門優位性の確立」「競合他社との差別化」といった効果を期待することができます。
3S | 内容 |
単純化 | 製品・材料・部品の整理や、作業工程の見直しにより、その種類を減らして簡素化すること →作業ミスの撲滅、作業時間の短縮、コストの低減 |
標準化 | 一定の基準に従って、物(資材・部品など)や方法(作業・手続きなど)を統一化すること →属人化した技術の横展開、品質の安定、作業時間の短縮、作業者の多能工化、コストの低減 |
専門化 | 製品・品種の限定や、作業の分担化により専業化すること →専門技術力の向上、専門優位性の確立、競合他社との差別化 |
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【令和3年度 第2問】
生産管理における基本的な理論および考え方を用いた施策に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 今までは顧客が定めた仕様の製品を生産していたが、今後は市場の需要を見越して企画・設計した製品を生産し、不特定な顧客を対象として市場に製品を出荷する受注生産への切り替えを検討した。
イ 生産活動を効率的に行うため、標準化、単純化、平準化の3Sの考え方を導入した。
ウ 多品種少量生産に大量生産的効果を与えるため、ベンチマーキングを実施して、多種類の部品をその形状、寸法、素材、工程などの類似性に基づいて分類した。
エ 同期化を徹底して、各工程の生産速度、稼働時間や、それに対する材料の供給時刻などをすべて一致させ、仕掛品の滞留、工程の遊休などが生じないようにした。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
生産管理における基本的な理論および考え方を用いた施策に関する知識を問う問題です。
(ア) 不適切です。
「受注生産」とは、顧客からの注文に基づき、顧客から指定された仕様に従って製品を生産する形態のことをいいます。
「見込生産」とは、製品の需要予測に基づき、企業が定めた仕様の製品を大量に生産する形態のことをいいます。需要予測に基づき生産した製品を在庫として管理して、顧客から注文を受けたら、在庫から製品を払い出して顧客に納品します。
つまり、顧客が定めた仕様の製品を生産する生産形態が「受注生産」であり、市場の需要を見越して企画・設計した製品を生産し、不特定な顧客を対象として市場に製品を出荷する生産形態が「見込生産」です。
したがって、今までは顧客が定めた仕様の製品を生産していた(受注生産)が、今後は市場の需要を見越して企画・設計した製品を生産し、不特定な顧客を対象として市場に製品を出荷する受注生産ではなく見込生産への切り替えを検討するため、選択肢の内容は不適切です。
(イ) 不適切です。
「3S」とは、生産の合理化における基本原則であり、「単純化(Simplification)」「標準化(Standardization)」「専門化(Specialization)」の「1文字目(S)」を取って並べたもののことをいいます。
3S | 内容 |
単純化 | 製品・材料・部品の整理や、作業工程の見直しにより、その種類を減らして簡素化すること →作業ミスの撲滅、作業時間の短縮、コストの低減 |
標準化 | 一定の基準に従って、物(資材・部品など)や方法(作業・手続きなど)を統一化すること →属人化した技術の横展開、品質の安定、作業時間の短縮、作業者の多能工化、コストの低減 |
専門化 | 製品・品種の限定や、作業の分担化により専業化すること →専門技術力の向上、専門優位性の確立、競合他社との差別化 |
したがって、生産活動を効率的に行うために導入する3Sの考え方は、標準化、単純化、平準化ではなく、単純化、標準化、専門化であるため、選択肢の内容は不適切です。
(ウ) 不適切です。
「多品種少量生産」とは、種類の多い製品を少量ずつ生産する方法であり、「受注生産」の製品においてよく採用される生産形態です。
「グループテクノロジー(GT)」とは「多品種少量生産」の生産性を向上させるための管理手法のことをいい、製品設計段階で、多種類の部品をその形状、寸法、素材、工程などの類似性に基づいて分類し、機械・治工具の共通化や、段取り作業や運搬といった間接作業の合理化によって、生産性の向上を実現します。
グループテクノロジー
多種類の部品をその形状、寸法、素材、工程などの類似性に基づいて分類し、多種少量生産に大量生産的効果を与える管理手法。(JISZ8141-1217)
ベンチマーキング
特定企業の優れた活動の状況を記録として残し、企業活動の一つの基準とする方法。(JISZ8141-1119)
したがって、多品種少量生産に大量生産的効果を与えるため、ベンチマーキングではなくグループテクノロジーを実施して多種類の部品をその形状、寸法、素材、工程などの類似性に基づいて分類するため、選択肢の内容は不適切です。
(エ) 適切です。
「同期化」とは、生産活動の各工程、生産速度、稼働時間、材料の供給時刻などをすべて一致させ、仕掛品の滞留、工程の遊休などが生じないようにすることをいいます。
ちなみに、「ライン生産方式」において、すべての品物の移動と加工が同期して繰り返される生産方式のことを「タクト生産方式」といいます。
同期化
生産において分業化した各工程(作業)の生産速度(作業時間や移動時間など)、稼働時間(生産開始・終了時刻など)や、それに対する材料の供給時刻などをすべて一致させ、仕掛品の滞留、工程の遊休などが生じないようにする行為。
備考ジャストインタイムと同義語として用いることがある。(JISZ8141-1212)
したがって、同期化を徹底して、各工程の生産速度、稼働時間や、それに対する材料の供給時刻などをすべて一致させ、仕掛品の滞留、工程の遊休などが生じないようにするため、選択肢の内容は適切です。
答えは(エ)です。
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