今回は、「運営管理 ~H29-36 輸配送管理(4)ユニットロード~」について説明します。
目次
運営管理 ~平成29年度一次試験問題一覧~
平成29年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
ユニットロード・パレチゼーション・複合一貫輸送・モーダルシフト・パレット・箱/容器 -リンク-
本ブログにて「ユニットロード」「パレチゼーション」「複合一貫輸送」「モーダルシフト」「パレット」「箱/容器」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- ユニットロード・パレチゼーション・複合一貫輸送・モーダルシフト・パレット・箱/容器のまとめ
- R4-32 輸配送管理(14)輸送手段の特徴
- R4-33 輸配送管理(15)ユニットロード
- R3-33 輸配送管理(11)輸送手段
- R3-36 輸配送管理(13)ユニットロード
- R2-36 輸配送管理(9)輸送手段
- R2-37 輸配送管理(10)ユニットロード
- R1-34 輸配送管理(7)輸送手段の特徴
- H30-33 輸配送管理(2)ユニットロード
- H29-35 輸配送管理(3)輸送手段
- H28-35 輸配送管理(6)ユニットロード
ユニットロードシステム
「ユニットロードシステム」とは、輸送する物品や包装貨物を「パレット」や「コンテナ」などでユニット化して、輸送や保管を効率化する仕組みのことをいい、「パレット」や「コンテナ」などでユニット化された貨物のことを「ユニットロード」といいます。
「パレット」を用いてユニット化することを「パレチゼーション」といい、「コンテナ」を用いてユニット化することを「コンテナリゼーション」があります。
一貫パレチゼーション
複数の物品や包装貨物を「パレット」に積載してユニット化することを「パレチゼーション」といい、複数の物品や包装貨物を同一の「パレット」に乗せたまま、出発地から到着地まで輸送・保管することを「一貫パレチゼーション」といいます。
「一貫パレチゼーション」によって、輸送や保管に関わる要員の作業費用を削減したり、荷役に関する作業時間を短縮することができます。
また、輸送工程の途中で「ユニットロード」を積み崩す必要がないため、荷物に付くキズなどを防止することもできます。
問題点
- 「一貫パレチゼーション」により「輸送効率」を向上することができますが、「パレット」を積載したときに隙間ができるなど「積載効率」や「保管効率」が悪くなります。
- 「JIS」によって、「パレット」の規格が定められてはいますが、業界ごとに別の標準規格が定められているなど、「パレット」の統一規格が普及していないため、発送元の企業と受取先の企業が異なる規格の「パレット」を利用しているケースにおいては「一貫パレチゼーション」を実現できません。
- 貨物の輸送に使用した「パレット」を到着地から回収する必要があります。また、「パレット」を回収するまでの間にも別の荷物を貨物しなければならず「パレット」を余計に準備する必要があるなど、「パレット」の「回収コスト」や「保有コスト」が高くなってしまいます。
箱/容器
通い箱(通い容器)
「通い箱(通い容器)」とは、メーカーなどの販売元から取引先に商品を輸送するためであったり、工場間において製品や半製品や原材料などの物品を輸送するために、繰り返し使用される箱(容器)のことをいい、「通函」とも呼ばれます。
一方で、段ボール箱などのように使い捨てにする物流資材のことを「ワンウェイの資材」といいます。
段ボール箱(ワンウェイの資材)は、あらゆる商品の梱包資材として使用されていますが、流通業界においても、ゼロ・エミッション(廃棄物ゼロ)の推進、リサイクル関連法への対応から、廃棄物の抑制を求める声が高まっています。
メリット
- 繰り返し使用することができる
- 汚れても洗うことができる。
- ゴミが減るため、廃棄費用が削減される。
- 耐久性・内容物保護性に優れている。
- 企業イメージが向上する。
- 環境に優しい。
デメリット
- 通い箱を保管するスペースを確保しなければならない。
- ダンボール箱などのワンウェイの資材に比べて、単価が高額である。
- 通い箱を紛失した場合、新しい通い箱を購入しなければならない。
物流クレート
「物流クレート」とは、通い箱として使われる「プラスチック容器」のことをいいます。
2005年10月に、商品の輸送に使用されるダンボールの抑制によって省資源化を実現すること、および多種多様な通い箱を統一化することによって物流の効率化を実現することを目的として、日本スーパーマーケット協会と日本チェーンストア協会が合同で「物流クレート標準化協議会」を設立しました。
「物流クレート標準化協議会」では、通い箱の種類を集約して何度も使用できる標準クレートを普及させるために、2007年4月に「物流クレート」の統一規格(食品クレート標準I型・II型)を定めています。
なお、統一規格の「食品クレート標準I型・II型」を使用する場合は、「物流クレート標準化協議会」が指定した数量管理システムを導入して、数量を管理することが義務付けられています。
容器の形状
「容器」は、縦に積み重ねたときの形状により、「ネスティング形容器」と「スタッキング形容器」に分類されます。言葉で説明すると難しいので、イメージ図を以下に示します。
ネスティング形容器
「ネスティング」とは、プログラム言語における「ネスト構造」からきていると言われており、容器の側面に上開きの傾斜がつき、落とし込みにより容器を積み上げていくことができる形状の容器であり、空の状態の容器を保管するスペースを節約することができます。
スタッキング形容器
「スタッキング」とは「積み上げる」という意味であり、容器同士を重箱式に積み重ねることができる形状の容器であり、下の容器に収容物を入れたまま上に容器を積み上げていくことができます。空の状態でも容器を保管するスペースが必要となるため、折り畳んで保管するタイプの容器もあります。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成29年度 第36問】
物流におけるユニットロードに関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 折畳み容器とは、物品を収納しないときには折り畳んでその容積を縮小できる容器のことであり、ネスティング形容器に分類される。
イ 通い容器とは、一定の企業または事業所などの間で繰り返し使用される輸送用容器のことである。
ウ パレチゼーションとは、物品をパレットに積み、パレット単位で物流を行うことであり、輸送量の増加を促す手段である。
エ 物流クレートは、小売業各社、メーカー各社が自社専用のものを使用しており、各社が共同利用できる標準化されたクレートは開発されていない。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
「ユニットロード」に関する知識を問う問題です。
(ア) 不適切です。
「容器」は、縦に積み重ねたときの形状により、「ネスティング形容器」と「スタッキング形容器」に分類されます。言葉で説明すると難しいので、イメージ図を以下に示します。
したがって、折畳み容器とは、物品を収納しないときには折り畳んでその容積を縮小できる容器のことですが、ネスティング形容器ではなくスタッキング形容器に分類されるため、選択肢の内容は不適切です。
(イ) 適切です。
「通い箱(通い容器)」とは、メーカーなどの販売元から取引先に商品を輸送するためであったり、工場間において製品や半製品や原材料などの物品を輸送するために、繰り返し使用される箱(容器)のことをいい、「通函」とも呼ばれます。
したがって、通い容器とは、一定の企業または事業所などの間で繰り返し使用される輸送用容器のことであるため、選択肢の内容は適切です。
(ウ) 不適切です。
複数の物品や包装貨物を「パレット」に積載してユニット化することを「パレチゼーション」といい、複数の物品や包装貨物を同一の「パレット」に乗せたまま、出発地から到着地まで輸送・保管することを「一貫パレチゼーション」といいます。
「一貫パレチゼーション」により「輸送効率」を向上することができますが、「パレット」を積載したときに隙間ができるなど「積載効率」や「保管効率」が悪くなります。
したがって、パレチゼーションとは、物品をパレットに積み、パレット単位で物流を行うことですが、輸送量の増加を促す手段ではなく、輸送効率を向上させるための手段であるため、選択肢の内容は不適切です。
(エ) 不適切です。
「物流クレート」とは、通い箱として使われる「プラスチック容器」のことをいいます。
2005年10月に、商品の輸送に使用されるダンボールの抑制によって省資源化を実現すること、および多種多様な通い箱を統一化することによって物流の効率化を実現することを目的として、日本スーパーマーケット協会と日本チェーンストア協会が合同で「物流クレート標準化協議会」を設立しました。
「物流クレート標準化協議会」では、通い箱の種類を集約して何度も使用できる標準クレートを普及させるために、2007年4月に「物流クレート」の統一規格(食品クレート標準I型・II型)を定めています。
したがって、選択肢には「物流クレートは、小売業各社、メーカー各社が自社専用のものを使用しており、各社が共同利用できる標準化されたクレートは開発されていない」と記述されていますが、「物流クレート」については、2005年10月に設立された「物流クレート標準化協議会」によって統一規格(食品クレート標準I型・II型)が規定されるなど、標準化に向けた取り組みが実施されているため、選択肢の内容は不適切です。
答えは(イ)です。
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