今回は、「経済学・経済政策 ~R2-13 予算制約と消費者の選択行動(1)予算制約線~」について説明します。
「キャッシュ・フロー計算書」は二次試験(事例Ⅳ)で出題される論点のため、一次試験の段階からしっかりと勉強しておいて損はありません。
目次
経済学・経済政策 ~令和2年度一次試験問題一覧~
令和2年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
予算制約線・最適消費点 -リンク-
本ブログにて「予算制約線」「最適消費点」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- 無差別曲線・予算制約線・最適消費点・代替効果と所得効果のまとめ
- R3-16 代替効果と所得効果(8)予算制約線・代替効果と所得効果
- H28-15 予算制約と消費者の選択行動(3)予算制約線と無差別曲線
- H27-14 予算制約と消費者の選択行動(4)効用最大化
- H26-15 予算制約と消費者の選択行動(5)最適消費点
- H25-19 予算制約と消費者の選択行動(6)予算制約線
予算制約線
「予算制約線」とは、社会に2つの財しか存在しないという仮定の「2財モデル」において、「X財の消費量X」と「Y財の消費量Y」のグラフで表される「予算を全て使い切った2財の消費の組み合わせを結んだ曲線」のことをいいます。
予算制約線の求め方
「予算制約線」の求め方について説明します。
X財の価格が「PX」であり、Y財の価格が「PY」である場合、X財とY財を消費するときの「総支出」は以下の式により求めることができます。
「予算制約線」とは「予算を全て使い切った2財の消費の組み合わせを結んだ曲線」であるため「予算(M)= 総支出」となる以下の条件式が成立します。
上記の式を「Y=」という形に変形した以下の式が「予算制約線」です。
したがって「予算制約線」は以下のように表すことができます。
「予算制約線」において、X財とY財を消費するときの「総支出」が予算内に収まっていることを表している「予算制約線」より左下の範囲を「入手可能領域」といいます。なお、「予算制約線」より右上の範囲は「予算オーバー」であることを示しています。
予算制約線のシフト
「予算制約線」は「X財の価格(PX)」「Y財の価格(PY)」「予算(M)」などの条件が変化するとシフトします。
X財の価格が変動する場合
X財の価格が下落する場合
「X財の価格(PX)」が下落する場合の「予算制約線」のシフトについて確認します。
「X財の消費量がゼロである場合のY財の消費量(Y軸の切片)( M ÷ PY )」は変わりませんが「Y財の消費量がゼロである場合のX財の消費量( M ÷ PX )」が大きくなり「予算制約線の傾きの絶対値( PX ÷ PY )」が小さくなるため、「予算制約線」は以下の通り右方にシフトします。
X財の価格が上昇する場合
「X財の価格(PX)」が上昇する場合の「予算制約線」のシフトについて確認します。
「X財の消費量がゼロである場合のY財の消費量(Y軸の切片)( M ÷ PY )」は変わりませんが「Y財の消費量がゼロである場合のX財の消費量( M ÷ PX )」が小さくなり「予算制約線の傾きの絶対値( PX ÷ PY )」が大きくなるため「予算制約線」は以下の通り左方にシフトします。
Y財の価格が変動する場合
Y財の価格が下落する場合
「Y財の価格(PY)」が下落する場合の「予算制約線」のシフトについて確認します。
「Y財の消費量がゼロである場合のX財の消費量( M ÷ PX )」は変わりませんが「予算制約線の傾きの絶対値( PX ÷ PY )」と「X財の消費量がゼロである場合のY財の消費量(Y軸の切片)( M ÷ PY )」が大きくなるため、「予算制約線」は以下の通り上方にシフトします。
Y財の価格が上昇する場合
「Y財の価格(PY)」が上昇する場合の「予算制約線」のシフトについて確認します。
「Y財の消費量がゼロである場合のX財の消費量( M ÷ PX )」は変わりませんが「予算制約線の傾きの絶対値( PX ÷ PY )」と「X財の消費量がゼロである場合のY財の消費量(Y軸の切片)( M ÷ PY )」が小さくなるため、「予算制約線」は以下の通り下方にシフトします。
予算が変動する場合
予算が増加する場合
「予算(M)」が増加する場合の「予算制約線」のシフトについて確認します。
「予算制約線の傾きの絶対値( PX ÷ PY )」は変わりませんが「Y財の消費量がゼロである場合のX財の消費量( M ÷ PX )」と「X財の消費量がゼロである場合のY財の消費量(Y軸の切片)( M ÷ PY )」が大きくなるため、「予算制約線」は以下の通り平行に右上方にシフトします。
予算が減少する場合
「予算(M)」が減少する場合の「予算制約線」のシフトについて確認します。
「予算制約線の傾きの絶対値( PX ÷ PY )」は変わりませんが「Y財の消費量がゼロである場合のX財の消費量( M ÷ PX )」と「X財の消費量がゼロである場合のY財の消費量(Y軸の切片)( M ÷ PY )」が小さくなるため、「予算制約線」は以下の通り平行に左下方にシフトします。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【令和2年度 第13問】
家計においては、効用を最大化するために、予算制約を考えることが重要となる。この家計は、X財とY財の2財を消費しているものとする。
下図に関する記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
[解答群]
ア 予算線ABは、この家計の所得とY財の価格を一定としてX財の価格が下落すると、ADへと移動する。
イ 予算線ABは、この家計の所得を一定としてX財とY財の価格が同じ率で上昇すると、CDへと平行移動する。
ウ 予算線CDは、この家計の所得が増加すると、ABに平行移動する。
エ 予算線CDは、この家計の所得とX財の価格を一定としてY財の価格が上昇すると、CBへと移動する。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
予算制約線に関する知識を問う問題です。
「予算制約線」とは「予算を全て使い切った2財の消費の組み合わせを結んだ曲線」のことをいいます。
「予算制約線」は「X財の価格(PX)」「Y財の価格(PY)」「予算(M)」などの条件が変化するとシフトします。今回の問題では、以下の条件が変更となったときに「予算制約線」がどのようにシフトするかについて求められています。
- X財の価格が下落する場合
- X財とY財の価格が同じ率で上昇する場合
- 家計の所得(予算)が増加する場合
- Y財の価格が上昇する場合
(ア)X財の価格が下落する場合
「X財の価格(PX)」が下落する場合の「予算制約線」のシフトについて確認します。
「X財の消費量がゼロである場合のY財の消費量(Y軸の切片)( M ÷ PY )」は変わりませんが「Y財の消費量がゼロである場合のX財の消費量( M ÷ PX )」が大きくなり「予算制約線の傾きの絶対値( PX ÷ PY )」が小さくなるため、「予算制約線」は以下の通り右方にシフトします。
これを今回の問題で与えられた図に当てはめると以下の表現となります。
- 予算線ABは、この家計の所得とY財の価格を一定としてX財の価格が下落すると、ADへと移動する。
したがって、選択肢の内容は適切です。
(イ)X財とY財の価格が同じ率で上昇する場合
「予算(M)」は変わらずに「X財の価格(PX)」と「Y財の価格(PY)」が同じ率で上昇すると、「予算制約線の傾きの絶対値( PX ÷ PY )」は変わりませんが「Y財の消費量がゼロである場合のX財の消費量( M ÷ PX )」と「X財の消費量がゼロである場合のY財の消費量(Y軸の切片)( M ÷ PY )」が小さくなるため、「予算制約線」は以下の通り平行に左下方にシフトします。
つまり、「予算制約線」は「予算(M)」が減少した場合と同じ動きをします。
これを今回の問題で与えられた図に当てはめると以下の表現となります。
- 予算線CDは、この家計の所得を一定としてX財とY財の価格が同じ率で上昇すると、ABへと平行移動する。
したがって、選択肢の内容は不適切です。
(ウ)家計の所得(予算)が増加する場合
「家計の所得が増加する場合」とは「予算が増加する場合」と同じ条件を表しているため、「予算(M)」が増加する場合の「予算制約線」のシフトについて確認します。
「予算制約線の傾きの絶対値( PX ÷ PY )」は変わりませんが「Y財の消費量がゼロである場合のX財の消費量( M ÷ PX )」と「X財の消費量がゼロである場合のY財の消費量(Y軸の切片)( M ÷ PY )」が大きくなるため、「予算制約線」は以下の通り平行に右上方にシフトします。
これを今回の問題で与えられた図に当てはめると以下の表現となります。
- 予算線ABは、この家計の所得が増加すると、CDに平行移動する。
したがって、選択肢の内容は不適切です。
(エ)Y財の価格が上昇する場合
「Y財の価格(PY)」が上昇する場合の「予算制約線」のシフトについて確認します。
「Y財の消費量がゼロである場合のX財の消費量( M ÷ PX )」は変わりませんが「予算制約線の傾きの絶対値( PX ÷ PY )」と「X財の消費量がゼロである場合のY財の消費量(Y軸の切片)( M ÷ PY )」が小さくなるため、「予算制約線」は以下の通り下方にシフトします。
これを今回の問題で与えられた図に当てはめると以下の表現となります。
- 予算線CDは、この家計の所得とX財の価格を一定としてY財の価格が上昇すると、ADへと移動する。
したがって、選択肢の内容は不適切です。
答えは(ア)です。
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