今回は、「財務・会計 ~R3-15 加重平均資本コスト(WACC)(9)~」について説明します。
目次
財務・会計 ~令和3年度一次試験問題一覧~
令和3年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
加重平均資本コスト(WACC) -リンク-
本ブログにて「加重平均資本コスト(WACC)」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- R1-21 加重平均資本コスト(WACC)(8)
- H29-24 加重平均資本コスト(WACC)(1)
- H28-14 加重平均資本コスト(WACC)(2)
- H27-14 加重平均資本コスト(WACC)(3)
- H25-14 加重平均資本コスト(WACC)(4)
- H24-16 加重平均資本コスト(WACC)(5)
- H23-16 加重平均資本コスト(WACC)(6)
- H22-17-1 加重平均資本コスト(WACC)(7)
資本コスト
「資本コスト」とは、企業が存続する限り最低限発生するコストであり、企業が投資を実行するべきか判断する際に使用する重要な基準です。
投資をしても「資本コスト」以上の利益を生みだす成果が得られない限り、企業としては投資をやるべきではないと判断します。なぜなら、企業としては存続するだけで最低限発生するコスト(=資本コスト)以上の利益を生み出さないと徐々に資金が減少してしまうからです。
「資本コスト」は、「加重平均資本コスト(WACC)」により「負債コスト」と「株主資本コスト」の加重平均で算出します。
加重平均資本コスト(WACC)
「加重平均資本コスト(WACC)」は、「負債コスト(時価)」と「株主資本コスト(時価)」の加重平均で「資本コスト」を算出する方法であり、その公式は以下の通りです。
「加重平均資本コスト(WACC)」を求める問題では、以下2点のポイントがあります。
- 加重平均資本コストの計算には「株主資本コスト」と「他人資本コスト(負債)」の「時価」を使用します。
- 加重平均資本コストの計算には「税引後負債コスト」を使用します。
負債コスト
負債とは借入金です。負債(借入金)があるということは借入先に「支払利息」を支払わなくてはなりません。これが負債コストであり「支払利息 ÷ 負債総額」で算出することができます。
「支払利息 ÷ 負債総額」で算出される負債コストは「税引前負債コスト」といいますが、黒字経営の企業の場合、支払利息を払うことにより利益が減少するため、節税効果により支払う法人税が少なくなります。この節税効果を加味して「税引後負債コスト」を算出します。
自己資本コスト(株主資本コスト)
「株主資本コスト(株主の期待収益率)」は、立場の違いによっていろいろな呼び方がありますが、「自己資本コスト = 株主資本コスト = 株主の期待収益率 = 証券の期待収益率」です。
企業から見ると「株主資本コスト(自己資本コスト)」と呼ばれ、投資家から見ると「株主の期待収益率(証券の期待収益率)」と呼ばれます。
「株主資本(自己資本)」とは資本金などの純資産です。資本金を調達するために株式を発行している場合、株主に対して「配当金」を支払わなくてはなりません。これが「株主資本コスト(自己資本コスト)」です。
逆に、投資家の視点から見ると、企業の株式を購入することで「配当金」によるリターン(収益)を期待しています。これが「株主の期待収益率(証券の期待収益率)」といいます。
なお、投資家は株価の低下や企業の倒産等により投資資金を失うリスクがあるため、投資家が株式を購入したときは銀行に預けた時に受け取る利息よりも高いリターン(収益)を期待しています。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【令和3年度 第15問】
以下の資料に基づき計算した加重平均資本コストとして、最も適切なものを下記の解答群から選べ。なお、負債は社債のみで構成され、その時価は簿価と等しいものとする。
【資 料】
株価 1,200 円 発行済株式総数 50,000 株 負債簿価 4,000 万円 自己資本コスト 12 % 社債利回り 4 % 実効税率 30 %
[解答群]
ア 6.16%
イ 7.68%
ウ 8.32%
エ 8.80%
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
加重平均資本コスト(WACC)に関する知識を問う問題です。
「加重平均資本コスト(WACC)」は、「負債コスト(時価)」と「株主資本コスト(時価)」の加重平均で「資本コスト」を算出する方法であり、その公式は以下の通りです。
問題で与えられている情報に基づき「負債」と「純資産(株主資本)」の資本構造を整理すると以下の通りとなります。
「加重平均コスト(WACC)」を算出する際には、以下2点のポイントがあります。
- 「株主資本コスト(自己資本コスト)」と「負債コスト」には「時価」を使用する
- 「税引後負債コスト」を使用する
「加重平均資本コスト(WACC)」を算出するために「税引前負債コスト」を「税引後負債コスト」に変換します。
今回の問題では、「法人税率」に相当する項目として、法人の実質的な所得税負担率である「実効税率」が与えられているため、「法人税率」を「実効税率」と読み替えてください。
問題で与えられている情報に基づいた「加重平均資本コスト(WACC)」は以下の通りです。
答えは(ウ)です。
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