財務・会計 ~R3-14 資金調達方法(5)~

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今回は、「財務・会計 ~R3-14 資金調達方法(5)~」について説明します。

 

目次

財務・会計 ~令和3年度一次試験問題一覧~

令和3年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

資金調達方法 -リンク-

本ブログにて「資金調達方法」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。

 

 

資金管理の重要性と資金調達の目的

企業が経営活動を継続するにあたっては、会社を運転するための「現金(資金)」を確保することが非常に重要です。

販売するための商品や製品を生産するための材料を調達したり、事務所や工場を維持するための費用を支払ったり、従業員への給料を支払ったり、老朽化した生産設備を更改するなど、何をするにも「現金(資金)」が必要ですが、仕入債務の支払期間と売上債権の回収期間のサイクルがずれていたり、季節により収入の変動が大きい場合は、損益計算書では売上や利益が適切に計上されていても、一時的に運転資金が不足することも考えられます

資金不足により「支払遅延」や「支払不能」といった事態に陥った場合は、企業としての信用が失墜するだけでなく、最悪の場合は、倒産に追い込まれてしまいます

そのような事態に陥ることを回避するためにも「資金管理」は非常に重要であり、以下に示す目的のため、必要に応じて資金を調達しなければなりません。

 

  • 運転資金の確保
  • 設備投資資金の確保
  • 会社の信用力向上
  • 事業拡大に向けた投資資金の確保

 

資金調達方法

企業が資金を調達するには、株式を発行したり、社債を発行したり、金融機関から借り入れたり、利益を積み上げたりといった方法があります。

 

エクイティ・ファイナンス/デッド・ファイナンス

あまり聞き慣れない言葉ですが、それぞれ翻訳してみると分かりやすく、「エクイティ(equity)=株式」「デッド(debt)=債務」と和訳することができます。

以下に表を示しますが、株主資本を増加させるものなのか、負債を増加させるものなのか、という観点で違いを理解しておくのが分かりやすいと思います。

 

エクイティ・ファイナンス 株主資本の増加
(株式発行)
返済期限の定めがない資金調達 自己資本調達
デッド・ファイナンス 負債の増加
(社債発行・借入金など)
返済期限の定めがある資金調達 他人資本調達

 

資金調達方法の分類

もう一つ、試験に必要となる資金調達方法の表を以下に示します。

表の一番右側の列に記載している「自己資本調達」と「他人資本調達」の欄が、上記の「エクイティファイナンス」「デッド・ファイナンス」とリンクするので、上記の表と合わせ技で覚えると完璧です。

 

外部金融 直接金融 株式発行 長期 自己資本調達
新株予約権付社債発行 長期
社債発行 長期 他人資本調達
コマーシャルペーパー発行 短期
間接金融 金融機関からの借入
(借入金、手形借入金など)
短期
長期
他人資本調達
企業間信用 買掛金 短期 他人資本調達
支払手形 短期
内部金融 内部留保 長期 自己資本調達
減価償却費 長期

 

転換社債(転換社債型新株予約権付社債)

「転換社債」とは、新株予約権が付された形態で発行される社債のことをいい、商法改正により現在の正式名称は「転換社債型新株予約権付社債」といいます。

「転換社債(転換社債型新株予約権付社債)」は、あらかじめ定められた「転換価額」で株式に転換することができる権利を有した社債であるため、株価が「転換価額」よりも高くなれば、株式に転換して売却することにより利益を得ることができ、逆に株価が「転換価額」より低いままであれば、転換せずに「満期償還」されるまで利息を受け取りながら「社債」として保有することができます。

「転換社債(転換社債型新株予約権付社債)」は、株式に転換されるまでは「負債」として計上され、株式に転換されると「純資産」に計上されます。

 

コマーシャル・ペーパー

「コマーシャル・ペーパー」とは、マーケット(オープン市場)を通じて割引形式で発行する無担保の約束手形のことをいいます。

資金調達方法としては「社債」と類似していますが、「社債」の償還期間が通常1年以上なのに対して、「コマーシャルペーパー」の償還期間は通常1年未満です。

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【令和3年度 第14問】

資金調達の形態に関する記述として、最も適切なものはどれか。

 

ア 株式分割は直接金融に分類される。
イ 減価償却は内部金融に分類される。
ウ 増資により発行した株式を、銀行が取得した場合は間接金融となる。
エ 転換社債は、株式に転換されるまでは負債に計上されるので間接金融である。

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答

資金調達に関する知識を問う問題です。

 

資金調達の分類一覧を以下に示します。

 

外部金融 直接金融 株式発行 長期 自己資本調達
新株予約権付社債発行 長期
社債発行 長期 他人資本調達
コマーシャルペーパー発行 短期
間接金融 金融機関からの借入
(借入金、手形借入金など)
短期
長期
他人資本調達
企業間信用 買掛金 短期 他人資本調達
支払手形 短期
内部金融 内部留保 長期 自己資本調達
減価償却費 長期

 

(ア) 不適切です。

「株式の分割」は、1株当たりの株価を低くして投資家が株式を購入しやすくして自社株式の流動性を高めることを目的とした政策ですが、資金調達の手段ではありません。

 

株式分割の事例

  • 株主AがB社株式を「1株当たり2千円」で「100株」保有しています。
  • つまり、株主Aは総額で「20万円」のB社株式を保有していることとなります。
  • ここで、B社が「1:5」の株式分割を実施しました。「1:5」の株式分割とは、従来の1株を5株に分割するということを意味しています。
  • その結果、株主Aが保有するB社株式は「1株当たり400円」で「500株」となりますが、総額は「20万円」となり、株式分割前と何も変わることはありません。

 

 

したがって、株式分割は直接金融ではなく、そもそも資金調達手段ではないため、選択肢の内容は不適切です

 

(イ) 適切です。

「減価償却」は「内部金融」に分類されます。

 

したがって、減価償却は内部金融に分類されるため、選択肢の内容は適切です

 

(ウ) 不適切です。

企業が資金を調達するために発行した株式を誰が取得したとしても「株式発行」は「直接金融」に分類されます。

 

したがって、増資により発行した株式を、銀行が取得した場合は間接金融となるのではなく銀行が取得した場合でも直接金融となるため、選択肢の内容は不適切です

 

(エ) 不適切です。

「転換社債」とは、新株予約権が付された形態で発行される社債のことをいい、商法改正により現在の正式名称は「転換社債型新株予約権付社債」といいます。

「転換社債(転換社債型新株予約権付社債)」は、あらかじめ定められた「転換価額」で株式に転換することができる権利を有した社債であるため、株価が「転換価額」よりも高くなれば、株式に転換して売却することにより利益を得ることができ、逆に株価が「転換価額」より低いままであれば、転換せずに「満期償還」されるまで利息を受け取りながら「社債」として保有することができます。

「転換社債(転換社債型新株予約権付社債)」は、株式に転換されるまでは「負債」として計上され、株式に転換されると「純資産」に計上されます。

「転換社債(転換社債型新株予約権付社債)」は「直接金融」に分類されます。

 

株式に転換されるまでは負債に計上される「転換社債(転換社債型新株予約権付社債)」が「エクイティ・ファイナンス(自己資本調達)」と「デッド・ファイナンス(他人資本調達)」のどちらなのか?という問いであれば判断に悩むところですが、「転換社債(転換社債型新株予約権付社債)」が「直接金融」と「間接金融」のどちらなのか?と問われているので、悩まずに「直接金融」であると判断したいところです。

 

したがって、転換社債は、株式に転換されるまでは負債に計上されますが、間接金融ではなく直接金融であるため、選択肢の内容は不適切です

 

答えは(イ)です。


 

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