今回は、「運営管理 ~H30-2 工場レイアウト(1)設備配置~」について説明します。
目次
運営管理 ~平成30年度一次試験問題一覧~
平成30年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
工場レイアウト -リンク-
本ブログにて「工場レイアウト」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
MRP -リンク-
本ブログにて「MRP」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- R3-9 需給計画(3)資材所要量計画(MRP)
- R1-7 需給計画(2)資材所要量計画(MRP)
- H30-11 生産管理方式(1)トヨタ生産方式
- H30-13 資材調達(1)資材調達
- H28-9 需給計画(1)資材所要量計画(MRP)
工場レイアウトの種類
基本的な工場レイアウトには「固定式レイアウト」「製品別レイアウト」「機能別レイアウト(工程別レイアウト)」「グループ別レイアウト」などがあります。
生産する製品の特徴に合わせて、適切な工場レイアウトを選択することによって、生産活動を効率化させることができます。
固定式レイアウト
「固定式レイアウト」は、移動することが困難な大型製品の生産に採用されるレイアウトであり、製品が定位置にあり作業者が移動しながら加工処理を行います。
特徴
- 船舶や大型製品の製造に適している。
- 設計や工程の変更に対応しやすい。
- 製品の移動が最小限である。
- 作業者や機械工具の移動が増える。
製品別レイアウト(フローショップ型)
「製品別レイアウト」は、加工工程の流れが同一である製品の生産に採用されるレイアウトであり、作業者は定位置にいながら、流れてくる製品に対して加工処理を行います。
特徴
- 少品種多量生産に適している。
- 見込生産に適している。
- 作業を単純化することができる。
- 工程管理、進捗管理が容易である。
- 仕掛在庫が減少する。
- 生産期間を短縮することができる。
- 一部の機械が故障するとライン全体が停止する。
- 製品の加工順序の変更に対応できない。
- 万能熟練作業者の育成が難しい。
機能別レイアウト(工程別レイアウト/ジョブショップ型)
「機能別レイアウト」は、加工工程の流れが異なる製品の生産に採用されるレイアウトであり、作業者が製品と一緒に移動しながら加工処理を行います。
特徴
- 多品種少量生産に適している。
- 受注生産に適している。
- 加工経路が異なる場合に適用される。
- 設備の稼働率を上げることができる。
- 製品が変わっても設備の配置を変更する必要がない。
- 作業者の熟練の形成が容易である。
- 製品の移動経路が複雑になりやすい。
MRP(Material Requirements Planning)
「MRP」には、狭義の捉え方と広義の捉え方がありますので、それぞれについて以下に示します。
狭義のMRP
「MRP(狭義)」とは、製品の生産計画である「基準生産計画(MPS)」に基づき、製品の生産に必要な部品や資材の数量を表す「部品構成表」と部品や資材の「在庫情報」「発注残情報」「調達リードタイム」から、発注すべき部品や資材の数量と時期を表す「資材所要量計画(MRP)」を作成する仕組みこのことをいいます。
なお、「MRP(狭義)」には、生産能力の不足や調達リードタイムの長期化や在庫情報と実在庫のズレなどといった問題が発生したときに補正する機能はありません。
また、「MRP(狭義)」に「基準生産計画(MPS)」を修正する機能はないため、需要の動向にあわせて頻繁に生産計画を変更するような製品の生産には適していません。
広義のMRP
「MRP(広義)」とは、「資材所要量計画」だけではなく、管理部門が「生産計画」を策定して全工程に作業指示を行い「生産統制」まで行う仕組みのことをいいます。
「MRP(広義)」は、計画主導型の生産管理方式(プッシュ型管理方式)であり、試験においては、真逆の発想である後工程引取型の生産管理方式(プル型管理方式)である「トヨタ生産方式」「ジャスト・イン・タイム」と比較されて出題されます。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成30年度 第2問】
加工方法が多様で、需要が安定していない寿命の短い製品の多品種少量生産に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 加工品の流れが一定ではないので、機能別レイアウトを導入した。
イ 需要の動向にあわせて頻繁に生産計画を変更することが必要なので、MRPを導入した。
ウ 需要変動に対応するためには、生産量の変動で対応するより完成品在庫で対応することが効果的である。
エ スループットタイムを短くし、コストダウンを図るために専用ラインを導入することが効果的である。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
「多品種少量生産」の製品に適した生産方法に関する知識を問う問題です。
製品の特徴
今回の製品には、以下の4つの特徴があると記述されていますので、それぞれの特徴と選択肢の内容を見比べて、最も適切な選択肢を選択していきます。
- 加工方法が多様である。
- 需要が安定していない。
- 寿命が短い。
- 多品種少量生産である。
(ア) 適切です。
今回の製品は「加工方法が多様=加工品の流れが一定ではない」「多品種少量生産」という特徴を有しています。
このような製品においては、「専用ライン(製品別レイアウト)」よりも「機能別レイアウト」の方が適しているため、選択肢の内容は適切です。
(イ) 不適切です。
「MRP(狭義)」とは、製品の生産計画である「基準生産計画(MPS)」に基づき、製品の生産に必要な部品や資材の数量を表す「部品構成表」と部品や資材の「在庫情報」「発注残情報」「調達リードタイム」から、発注すべき部品や資材の数量と時期を表す「資材所要量計画(MRP)」を作成する仕組みこのことをいいます。
なお、「MRP(狭義)」には、生産能力の不足や調達リードタイムの長期化や在庫情報と実在庫のズレなどといった問題が発生したときに補正する機能はありません。
また、「MRP(狭義)」に「基準生産計画(MPS)」を修正する機能はないため、需要の動向にあわせて頻繁に生産計画を変更するような製品の生産には適していません。
今回の製品は「需要が安定していない」という特徴を有しているため「MRP」は適していません。
したがって、選択肢の内容は不適切です。
(ウ) 不適切です。
今回の製品は「需要が安定していない」という特徴を有しています。
需要が安定していない製品を「完成品在庫」で対応すると、需要が減少した場合に、製品が出荷されず、倉庫保管に関する費用が発生したり、製品の品質が劣化する可能性があります。
需要が安定していない製品において、需要変動に対応するためには、完成品在庫で対応するより生産量の変動で対応することが効果的であるため、選択肢の内容は不適切です。
(エ) 不適切です。
今回の製品は「加工方法が多様」「多品種少量生産」という特徴を有しています。
このような製品においては、「専用ライン(製品別レイアウト)」よりも「機能別レイアウト」の方が、設備の稼働率を高くすることができ、コストダウンを図ることができるため、選択肢の内容は不適切です。
答えは(ア)です。
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