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共分散・相関係数
平成29年度 第19問の相関係数について説明するために「分散→標準偏差→共分散→相関係数」と順を追って説明しています。今回は「共分散・相関係数(1)」について説明します。
「分散・標準偏差」に関する説明は、本ブログ内の以下のページを参照してください。
前提条件
「共分散・相関係数」の説明には「分散・標準偏差(2)」で使った「A社株式」と「B社株式」を引き続き使用します。A社株式とB社株式の「分散・標準偏差」は以下の通りです。
A社株式の分散・標準偏差
B社株式の分散・標準偏差
共分散・相関係数の特徴
「共分散・相関係数」とは2つの株式の相関関係を示す指標であり、3つの特徴があります。
共分散
共分散は以下の表により算出します。これもフォーマットで覚えておくこととお薦めします。
相関係数
「相関係数」とは2つのデータの相関関係を表す数値であり「ρ(ロー)」で表され、以下の計算式により算出することができます。
ここで一つ思い出してほしいことがあります。
それは、「分散・標準偏差」は必ずプラスになるということです。
つまり、共分散がプラスであれば相関係数も必ずプラスとなり、共分散がマイナスであれば相関係数も必ずマイナスとなるということです。
相関係数の数値と意味
「相関係数」は「-1 ≦ ρ ≦ 1」の範囲で推移し、その数値は以下の意味を示しています。
相関係数 | 説明 |
ρ=1 | 2つのデータは、片方のデータが変動すると他方のデータもそれに応じて完全に同じ方向に変動する。 |
0<ρ<1 | 2つのデータは、片方のデータが変動すると他方のデータもそれに応じて同じ方向に変動する。「1」に近いほど「正」の相関関係が強い。 |
ρ=0 | 2つのデータの変動には、全く関連性がない。 |
-1<ρ<0 | 2つのデータは、片方のデータが変動すると他方のデータもそれに応じて逆の方向に変動する。「-1」に近いほど「負」の相関関係が強い。 |
ρ=-1 | 2つのデータは、片方のデータが変動すると他方のデータもそれに応じて完全に逆の方向に変動する。 |
それでは、A社株式とB社株式の相関係数を計算してみます。
A社とB社の株式は景気の変動に合わせて、別の方向に動き、非常に相関関係が高いということが分かります。
試験問題
それでは、実際の問題を解いてみます。
平成28年度 第15問
次の文章を読んで、下記の設問に答えよ。
現在、3つの投資案(投資案A〜投資案C)について検討している。各投資案の収益率は、景気や為替変動などによって、パターン①〜パターン④のつのパターンになることが分かっており、パターンごとの予想収益率は以下の表のとおりである。なお、この予想収益率は投資額にかかわらず一定である。また、各パターンの生起確率はそれぞれ25 %と予想している。
(設問1)
投資案Aおよび投資案Bの予想収益率の共分散と相関係数の組み合わせとし
て最も適切なものはどれか。ア 共分散:-15 相関係数:-0.95
イ 共分散:-15 相関係数: 0.95
ウ 共分散: 15 相関係数:-0.95
エ 共分散: 15 相関係数: 0.95
(設問2)
投資案A および投資案C に関する記述として最も適切なものはどれか。
ア 投資案Aと投資案Cに半額ずつ投資する場合も、投資案Cのみに全額投資する場合も、予想収益率の分散は同じである。
イ 投資案Aの予想収益率と投資案Cの予想収益率の相関係数は2である。
ウ 投資案Cの予想収益率の期待値は64%である。
エ 投資案Cの予想収益率の標準偏差は、投資案Aの予想収益率の標準偏差の2倍である。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答(設問1)
一次試験でこんな複雑な設問が出たら時間がないのに。。。とうんざりしますね。
ただ、簡単な答えの導き方があるはずなので、それを探してみましょう。
この設問は計算する必要がありません。【共分散・相関係数の特徴】を思い出してください。
これを選択肢に当てはめてみると、選択肢(イ)と(ウ)が正解から除外されます。
投資案Aは、パターン①~パターン④になるにつれて、徐々に予想収益率が上がっていきます。逆に、投資案Bはパターン①~パターン④になるにつれて、徐々に予想収益率が下がっていきます。つまり、投資案AとBは逆の動きをしているため、「共分散・相関係数」はマイナスとなります。選択肢(エ)が正解から除外されます。
答えは(ア)です。
考え方と解答(設問2)
選択肢(イ)の除外
選択肢の中で、明らかに一つだけ最初から除外できるものがあります。
イ 投資案Aの予想収益率と投資案Cの予想収益率の相関係数は2である。
⇒ 相関係数は「-1 ≦ ρ ≦ 1」の範囲となるため、不適切です。
選択肢(ウ)の除外
次に、簡単そうな選択肢(ウ)について考えてみます。
ウ 投資案Cの予想収益率の期待値は64%である。
予想収益率は「各パターンの生起確率×予想収益率の合計」で計算されますが、表中の予想収益率を合計しても64%にしかなりません。生起確率をかけると値は必ず小さくなるため、不適切です。
選択肢(ア)の除外
これはかなり難しいです。
ア 投資案Aと投資案Cに半額ずつ投資する場合も、投資案Cのみに全額投資する場合も、予想収益率の分散は同じである。
投資案Aは、投資案Cの半分の予想収益率となっています。
つまり、投資案Aと投資案Cに半額ずつ投資した場合、予想収益率は、投資案Cのみに全額投資するよりも必ず低くなるため、分散は小さくなります。不適切です。
答えは(エ)です。
答え(エ)があっているのか、念のため計算してみます。
エ 投資案Cの予想収益率の標準偏差は、投資案Aの予想収益率の標準偏差の2倍である。
【投資案Aの標準偏差】
【投資案Cの標準偏差】
確かに、2倍になっているようです。
本番の試験で計算する時間はないかもしれませんが。
次回は「共分散→相関係数(2)」について説明します。
コメント
いつも投稿ありがとうございます。
大変丁寧でわかりやすい内容で、本当に助かっております。
既にお気づきかと思いますが念のためご連絡します。
平成28年第15問設問2
投資案A、投資案Cの標準偏差の計算式が間違っています。
いずれもパターン③の偏差が違っています。
偶然標準偏差は2倍となっていますが、正しい標準偏差は
投資案Aが4.7434…、投資案Cが9.4868…となります。
コメントをいただきましてありがとうございます。
ご指摘いただいた箇所を早速修正させていただきました。
大変失礼いたしました。
引き続き、資格とるなら.tokyoをご利用になって、お気付きの点などありましたら、コメントをいただければ幸いです。