今回は、「財務・会計 ~H23-20-2 配当割引モデル(3)~」について説明します。
目次
財務・会計 ~平成23年度一次試験問題一覧~
平成23年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
資本資産評価モデル(CAPM) -リンク-
本ブログにて「資本資産評価モデル(CAPM)」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- H29-20 資本資産評価モデル(CAPM)(1)
- H28-12 資本資産評価モデル(CAPM)(2)
- H27-18 資本資産評価モデル(CAPM)(3)
- H26-18 資本資産評価モデル(CAPM)(4)β値
- H26-19 配当割引モデル(2)
- H25-14 加重平均資本コスト(WACC)(4)
- H25-21 資本資産評価モデル(CAPM)(5)β値
- H23-19 資本資産評価モデル(CAPM)(6)β値
配当割引モデル -リンク-
本ブログにて「配当割引モデル」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- R3-21 配当割引モデル(4)
- H29-18/H28-16 配当割引モデル(1)
- H26-19 配当割引モデル(2)
- H26-20-3 企業価値(2)DCF法
- H24-16 加重平均資本コスト(WACC)(5)
- H22-14-1 企業価値(5)株主資本収益率
資本資産評価モデル(CAPM:Capital Asset Pricing Model)
「資本資産評価モデル(CAPM)」とは「株主資本コスト(株主の期待収益率)」を算出する方法のことをいいます。
株主資本コスト(株主の期待収益率)
「株主資本コスト(株主の期待収益率)」は、立場の違いによっていろいろな呼び方がありますが、「自己資本コスト = 株主資本コスト = 株主の期待収益率 = 証券の期待収益率」です。
企業から見ると「株主資本コスト(自己資本コスト)」と呼ばれ、投資家から見ると「株主の期待収益率(証券の期待収益率)」と呼ばれます。
「株主資本(自己資本)」とは資本金などの純資産です。資本金を調達するために株式を発行している場合、株主に対して「配当金」を支払わなくてはなりません。これが「株主資本コスト(自己資本コスト)」です。
逆に、投資家の視点から見ると、企業の株式を購入することで「配当金」によるリターン(収益)を期待しています。これが「株主の期待収益率(証券の期待収益率)」といいます。
なお、投資家は株価の低下や企業の倒産等により投資資金を失うリスクがあるため、投資家が株式を購入したときは銀行に預けた時に受け取る利息よりも高いリターン(収益)を期待しています。
CAPMによる株主資産コスト(株主の期待収益率)の算出
「株主資本コスト(株主の期待収益率)」は「資本資産評価モデル(CAPM)」を用いた以下の公式により算出することができます。
安全利子率(無リスク利子率・リスクフリーレート)
リスクを持たない資産(安全資産)により期待できる利子率です。
銀行の利子率をイメージすると分かりやすいかと。銀行に預けておけば、預金額が減ったりすることがないため安全ですが、得られる利子は少ないですよね。
分かりやすくするため銀行預金で話をしましたが、実際には長期国債の利回りが適用されます。
β値
「β値」とは、ある企業の株式の景気に対する感度を示しており、株式市場が1%変化したときに、その企業の株式から得られるリターンが何%変化するかを表す係数であるため、「β値」が大きいほど「ハイリスク・ハイリターン」であるということになります。
一般的に、景気変動の影響を受けにくい商品を扱う企業の数値は低く、金融業や最先端技術を扱う企業など景気変動の影響を受けやすい企業の数値は高くなります。
「β値」は、以下の計算式で求めることができます。
市場期待収益率
投資家が株式などの金融商品に投資することにより期待できる平均的な収益率です。
証券市場で扱っている株式全体の収益率をイメージするとわかりやすいかと。
上述していますが、投資家は株式を購入しても株価の低下や企業の倒産等により投資資金を失うリスクがあるため、銀行に預ける場合の利息(安全利子率)よりも高い収益率を期待しています。
配当割引モデル
「配当割引モデル」とは、将来支払われる配当の現在価値の合計が株式の本質的価値であるとして、「配当」と「株主の期待収益率」から「理論株価」を算出する方法のことをいいます。
「配当割引モデル」には、毎年一定の割合で配当額が成長するという仮定をおいた「定率成長配当割引モデル」と、毎年一定の配当額が支払われるという仮定をおいた「定額配当割引モデル(ゼロ成長モデル)」があります。
定率成長配当割引モデル
「定率成長配当割引モデル」とは、毎年一定の割合で配当額が成長するという仮定をおいた配当割引モデルのことをいいます。
「定率成長配当割引モデル」では、以下の公式により「理論株価」を算出します。
定額配当割引モデル(ゼロ成長モデル)
「定額配当割引モデル(ゼロ成長モデル)」とは、毎年一定の配当額が支払われるという仮定をおいた配当割引モデルのことをいいます。
「定額配当割引モデル(ゼロ成長モデル)」では、以下の公式により「理論株価」を算出します。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成23年度 第20問】
次の文章とデータに基づいて、下記の設問に答えよ。
企業評価の手法には、バランスシート上の純資産価値に着目するアプローチのほか、DCF法や収益還元方式に代表される[ A ]アプローチ、PERやPBRといった評価尺度を利用する[ B ]アプローチなどがある。以下のデータに基づいて、[ A ]アプローチの1つである配当割引モデルによって株式価値評価を行うと、株式価値は[ C ]と計算される。また、PBRは[ D ]倍と計算される。
なお、自己資本コストはCAPMによる算出する。
総資産簿価 1億円 負債 6,000万円 当期純利益 500万円 予想1株あたり配当額 30円 発行済み株式数 10万株 株価 500円 β値 2 安全利子率 2% 期待市場収益率 6%
(設問2)
文中の空欄Cに入る金額として最も適切なものはどれか。ア 300円
イ 500円
ウ 750円
エ 1,500円
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答(設問2)
CAPMにより自己資本コストを算出した後、配当割引モデルにより株式価値を求めていきます。
自己資本コスト(株主資本コスト)の算出
CAPMにより自己資本コスト(株主資本コスト)を算出します。
- 自己資本コスト = 2% + 2×( 6% - 2% )= 10%
株式価値の算出
「配当割引モデル」により株式価値を算出します。
配当金の成長率等に関する記述がないため「定額配当割引モデル(ゼロ成長モデル)」の公式を使用します。
- 株式価値(理論株価)= 30円 ÷ 10% = 300円
答えは(ア)です。
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