今回は、「財務・会計 ~H25-1 伝票式会計(1)~」について説明します。
目次
財務・会計 ~平成25年度一次試験問題一覧~
平成25年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
伝票式会計/帳簿組織 -リンク-
「伝票式会計」では、「仕訳帳」を使わずに「伝票」を用いて日々の取引を記録していきます。一方で、「帳簿組織」とは、日々の取引を「仕訳帳」に記帳する管理体系です。
「伝票式会計」と「帳簿組織」は、一緒に勉強することをお薦めします。
伝票
伝票には、「入金伝票」「出金伝票」「振替伝票」「仕入伝票」「売上伝票」の5種類の伝票があり、使用する伝票の種類により「三伝票制」と「五伝票制」という2つの運用体系があります。
三伝票制
「三伝票制」では、「入金伝票」「出金伝票」「振替伝票」の合計3種類の伝票で取引を管理していきます。
入金伝票
借方は「現金」となり、貸方には伝票に記載される勘定科目が計上されます。
出金伝票
貸方は「現金」となり、借方には伝票に記載される勘定科目が計上されます。
振替伝票
伝票に、借方と貸方の勘定科目が記載されています。
五伝票制
「五伝票制」では「三伝票制」で紹介した3種類の伝票に「仕入伝票」と「売上伝票」を追加した合計5種類の伝票で取引を管理していきます。
仕入伝票
借方は「仕入」、貸方は「買掛金」となります。
ただし、伝票に「買掛金」「支払手形」などの勘定科目が記載されている場合は、貸方には伝票に記載される勘定科目が計上されます。
なお、仕入れた商品の「返品(仕入戻し)」と「値引(仕入値引)」については、「仕入伝票」に赤字で記入されます。
売上伝票
借方は「売掛金」、貸方は「売上」となります。
ただし、伝票に「売掛金」「受取手形」などの勘定科目が記載されている場合は、借方には伝票に記載される勘定科目が計上されます。
なお、販売した商品の「返品(売上戻り)」と「値引(売上値引)」は「売上伝票」に赤字で記入されます。
総勘定元帳と補助簿への転記
伝票に記載された取引内容は、企業全体の取引を管理する「総勘定元帳」と取引の多い勘定科目を管理する「補助簿」に転記していきます。
伝票から「総勘定元帳」への転記は「個別転記」する方法と「仕訳日計表/仕訳週計表/仕訳月計表」を介して合計転記する方法がありますが、「補助簿」への転記は必ず伝票から「個別転記」することとなっています。
「総勘定元帳」に「個別転記」する場合
「個別転記」とは、一つ一つの取引内容をすべて伝票から「総勘定元帳」へと転記する方法です。つまり、100円の取引が100回あれば、100回分の取引を転記していくこととなるため、取引量が増大してくると作業が非常に煩雑となってしまいます。
「総勘定元帳」に「合計転記」する場合
仕入日計表には、記入した伝票の内容を1日ごとに集計します。
また、仕訳週計表には週ごとに、仕訳月計表には月ごとに伝票の内容を集計します。
このように「仕訳日計表/仕訳週計表/仕訳月計表」に集計された取引金額を総勘定元帳の各勘定にまとめて合計転記することにより、総勘定元帳への転記を効率的に行うことができます。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成25年度 第1問】
伝票式会計は、分業による経理処理の効率化のための工夫として広く採用されている。伝票式会計に関する以下の設問に答えよ。
(設問1)
伝票式会計に関する記述として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。
a 伝票式会計を導入している場合、売上戻りは売上伝票に記入される。
b 伝票式会計を導入している場合、仕訳帳は利用されない。
c 伝票式会計を導入している場合、仕訳日計表には売上伝票と仕入伝票を集計しない。
d 伝票式会計を導入している場合、補助簿の記入は仕訳日計表を利用して行う。
[解答群]
ア aとb
イ aとc
ウ bとc
エ bとd
オ cとd
(設問2)
本日における伝票の一部が以下に示されている。売掛金勘定の本日の残高として最も適切なものを下記の解答群から選べ。なお、昨日の売掛金勘定は借方残高120,000円であった。
[解答群]
ア 40,000円
イ 90,000円
ウ 100,000円
エ 240,000円
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答(設問1)
(a) 適切です。
伝票式会計では、販売した商品の「返品(売上戻り)」と「値引(売上値引)」は「売上伝票」に赤字で記入されるため、選択肢の記述は適切です。
なお、仕入れた商品の「返品(仕入戻し)」と「値引(仕入値引)」については、「仕入伝票」に赤字で記入されます。
(b) 適切です。
伝票式会計では、「仕訳帳」を使わずに「伝票」を用いて日々の取引を記録していくため、選択肢の記述は適切です。
(c) 不適切です。
取引の発生に際して起票された伝票の内容を仕入日計表に集計した後、総勘定元帳の各勘定にまとめて合計転記することにより、総勘定元帳への転記を効率的に行うことができます。
仕訳日計表には、すべての伝票を集計するため、選択肢の記述は不適切です。
(d) 不適切です。
補助簿(補助元帳)には以下のようなものがあり、「得意先・仕入先・商品」ごとに帳簿を作成して運用していきます。たとえば、取引先Aの売掛金状況であったり、商品Bの在庫状況を確認するために使用されます。
- 売掛金元帳(得意先元帳):得意先ごとの売掛金勘定を記録
- 買掛金元帳(仕入先元帳):仕入先ごとの買掛金勘定を記録
- 商品有高帳:商品ごとの繰越商品勘定・仕入勘定を記録
たとえ、仕訳日計表を用いて合計転記している場合であっても、補助簿(補助元帳)には「伝票」から直接、個別転記していくため、選択肢の記述は不適切です。
答えは(ア)です。
考え方と解答(設問2)
各伝票で行われた取引の仕訳を行った後、売掛金勘定への転記を行い、売掛金の残高を求めていきます。
入金伝票による取引の仕訳
伝票No. | 借方 | 貸方 | ||
No.101 | 現金 | 60,000 | 売掛金 | 60,000 |
No.102 | 現金 | 70,000 | 受取手形 | 70,000 |
売上伝票の取引の仕訳
伝票No. | 借方 | 貸方 | ||
No.401 | 売掛金 | 50,000 | 売上 | 50,000 |
No.402 | 売掛金 | 70,000 | 売上 | 70,000 |
振替伝票の取引の仕訳
伝票No. | 借方 | 貸方 | ||
No.301 | 買掛金 | 40,000 | 支払手形 | 40,000 |
No.302 | 裏書手形 | 10,000 | 受取手形 | 10,000 |
No.303 | 受取手形 | 80,000 | 売掛金 | 80,000 |
売掛金勘定への転記
裏書手形
振替伝票(No.302)において登場している「裏書手形」について補足説明します。
商品販売に際して受け取った「受取手形」を満期日以前に他人に譲り渡すことを「手形の裏書き」といいます。
仮に、裏書きして譲り渡した手形(裏書手形)が不渡り(手形の支払人(発行元企業)における当座預金残高の不足等により発生する)となった場合は、当該の裏書手形を買い戻さなければならないため、手形を裏書きするときは、その手形が満期日に無事決済されるまでの間、不渡りなどの偶発債務に備えて「裏書手形勘定」で記録する必要があります。
また、裏書した手形が無事決済された場合は、計上した「裏書手形勘定」ともともと最初に受け取った「受取手形勘定」を相殺します。
商品の販売に際して受取手形を受け取った場合
借方 | 貸方 | ||
受取手形 | 10,000 | 売上 | 10,000 |
仕入の支払に裏書手形を渡した場合
借方 | 貸方 | ||
仕入 | 10,000 | 裏書手形 | 10,000 |
仕入先において裏書手形が無事決済された場合
借方 | 貸方 | ||
裏書手形 | 10,000 | 受取手形 | 10,000 |
答えは(ウ)です。
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