今回は、「運営管理 ~R1-9 日程計画(4)生産スケジューリング(フローショップ)~」について説明します。
目次
運営管理 ~令和元年度一次試験問題一覧~
令和元年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
日程計画(生産スケジューリング) -リンク-
本ブログにて「日程計画(生産スケジューリング)」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- 日程計画(生産スケジューリング)のまとめ
- R4-8 日程計画(10)生産スケジューリング(フローショップ)
- R3-11 日程計画(8)生産スケジューリング(ジョブショップ)
- H30-4 日程計画(1)生産スケジューリング(フローショップ)
生産スケジューリング
「生産スケジューリング」とは、工場で使用可能な生産設備や労働者といった限られた資源の中で、効率的な生産活動を行うために、各種工程の着手時期・終了時期・着手順序・使用設備を決定することをいいます。
「生産スケジューリング」は、生産設備の構成や配列によって、単一機械スケジューリング、フローショップスケジューリング、ジョブショップスケジューリングなどに分類されます。
単一機械スケジューリング
1台のみ配置された設備で、ジョブが一度限り処理が行われて完成するときのスケジュールのことをいいます。
フローショップスケジューリング
「フローショップ」とは「製品別レイアウト」による設備編成の1つであり、すべてのジョブの加工経路が同じ場合、この流れに沿ってそれぞれの工程を編成する方法です。
「フローショップスケジューリング」では、ジョブの待ち状態を少なくすること、設備の稼働率を上げることによって納期を短縮することが最大のポイントとなります。
ジョンソン法
「ジョンソン法」とは、2つの工程が直列に構成された「フローショップ」で複数のジョブを処理する場合に、総処理時間を最短にするジョブの投入順序を決定する手順のことをいいます。
「ジョンソン法」では、「第1工程」の処理時間が短いジョブを先頭から順番に並べ、また「第2工程」には「第2工程」の処理時間が短いジョブを最後から順番に並べていくことによって、ジョブの投入順序を決定していきます。
文章では表現しづらいので、以下に例を示します。
ジョンソン法によるジョブスケジューリングの例
「工程1(前工程)」「工程2(後工程)」が直列に構成された「フローショップ」において「製品A」「製品B」「製品C」を生産する場合に、生産開始してから全ての製品の生産を完了するまでの時間を最短にする製品の生産順序を求めていきます。
工程1 | 工程2 | |
製品A | 3時間 | 4時間 |
製品B | 2時間 | 5時間 |
製品C | 6時間 | 1時間 |
ジョンソン法による生産順序の決定
- 全てのジョブの中で処理時間が最も短いのは「製品C」の「工程2(1時間)」である。
「工程2(後工程)」の処理であるため「製品C」を「最後」に生産する。 - 「製品C」を除くジョブの中で処理時間が最も短いなのは「製品B」の「工程1(2時間)」である。
「工程1(前工程)」の処理であるため「製品B」を「最初」に生産する。 - 残った「製品A」は「2番目」に投入する。
- したがって、製品の生産順序は「製品B → 製品A → 製品C」とすることで、生産開始してから全ての製品の生産を完了するまでの時間を最短にすることができる。
最適な製品の生産順序(製品B → 製品A → 製品C)
生産開始してから全ての製品の生産を完了するまでの時間を最短にする製品の生産順序は「製品B → 製品A → 製品C」です。
「製品B → 製品A → 製品C」の場合
最適ではない製品の生産順序
それ以外の順序で製品を生産した場合、「工程2(後工程)」において「待ち時間(何も加工処理をしていない時間)」が発生します。
以下に示すガントチャートにおいて「赤色」で表現している箇所が、最適な生産順序である「製品B → 製品A → 製品C」と比較したときに処理時間を長引かせる原因となっている「待ち時間(何も加工処理をしていない時間)」を示しています。
「ジョンソン法」に詳しくなくても、以下のガントチャートを見れば、最初に「製品B」を生産することが効率的であることは、すぐに分かると思います。
「製品A → 製品B → 製品C」の場合
「製品A → 製品C → 製品B」の場合
「製品B → 製品C → 製品A」の場合
「製品C → 製品A → 製品B」の場合
「製品C → 製品B → 製品A」の場合
ジョブショップスケジューリング
「ジョブショップ」とは「機能別レイアウト」による設備編成の1つであり、すべてのジョブの加工経路が異なる場合に工程を編成する方法です。
「ジョブショップスケジューリング」は、「フローショップ」と比較してジョブの流れが複雑なため、最適なスケジューリングで運用することは相対的に難しいとされています。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【令和元年度 第9問】
2工程のフローショップにおけるジョブの投入順序を考える。各ジョブ各工程の加工時間が下表のように与えられたとき、生産を開始して全てのジョブの加工を完了するまでの時間(メイクスパン)を最小にする順序として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
ジョブ J1 J2 J3 第1工程 3時間 5時間 1時間 第2工程 2時間 4時間 6時間
[解答群]
ア J1 → J2 → J3
イ J1 → J3 → J2
ウ J2 → J1 → J3
エ J3 → J2 → J1
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
「フローショップ」の「ジョンソン法」に関する知識を問う問題です。
「フローショップ」で複数のジョブを実行する場合、「ジョンソン法」を用いて、生産を開始して全てのジョブの加工を完了するまでの時間(メイクスパン)を最小にするジョブの投入順序を決定していきます。
「ジョンソン法」とは、2つの工程が直列に構成された「フローショップ」で複数のジョブを処理する場合に、総処理時間を最短にするジョブの投入順序を決定する手順のことをいいます。
「ジョンソン法」では、「第1工程」の処理時間が短いジョブを先頭から順番に並べ、また「第2工程」には「第2工程」の処理時間が短いジョブを最後から順番に並べていくことによって、ジョブの投入順序を決定していきます。
文章では表現しづらいので、実際に問題を解いて手順を説明します。
- 全てのジョブの中で加工時間が最短なのは「J3」の「第1工程」である。
「第1工程(先行する工程)」の加工処理であるため「J3」を「先頭」に投入する。 - 「J3」を除くジョブの中で加工時間が最短なのは「J1」の「第2工程」である。
「第2工程(後続する工程)」の加工処理であるため「J1」を「最後」に投入する。 - 残ったジョブ「J2」は「2番目」に投入する。
- したがって、ジョブの投入順序は「J3 → J2 → J1」とする。
「J3 → J2 → J1」の順にジョブを投入した場合の「メイクスパン(生産を開始して全てのジョブの加工を完了するまでの時間)」を図示すると以下の通りです。
選択肢(エ)
上図を見ると、直感的に「無駄が少ない」と感じますが、なぜ無駄が少ないと感じるのか、またどのような場合に「メイクスパン」が長くなる原因である「無駄」が発生するのかについて、他の選択肢を例に念のため確認してみます。
メイクスパンを最小にする条件
「選択肢(エ)」の図を見れば直感的に分かりますが、メイクスパンを最小にする条件は以下の2つです。
- 第2工程の加工処理にできるだけ早く着手すること。
- 第2工程における「待ち時間(何も加工処理をしていない時間)」を少なくすること。
ジョブの投入順序に関わらず「第1工程」の加工処理は必ず隙間なく連続して実行されることになりますが、「第2工程」はジョブの投入順序により待ち時間(何も加工処理をしていない時間)が発生することがあります。
つまり、「メイクスパン」を短くするには「第2工程」の「待ち時間(無駄)」をどれだけ少なくできるかということがポイントとなります。
選択肢(ウ)
「第1工程」に「J2」を投入した場合、「第2工程」の加工処理に着手するまでに「5時間」の「待ち時間(無駄)」が発生しているため、効率的ではないことが分かります。
選択肢(ア)
「J1 → J2 → J3」の順序で投入した場合、「第2工程」で「J1」の加工処理を終了した後、次のジョブの加工処理に着手するまでに「3時間」の「待ち時間(無駄)」が発生しているため、効率的ではないことが分かります。
選択肢にないパターン
ちなみに、ジョンソン法によって求めた投入順序とは異なりますが「J3 → J1 → J2」の順にジョブを投入しても「メインスパン」を最小とすることができます。
答えは(エ)です。
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