経済学・経済政策 ~R4-14 需要・供給・弾力性の概念(1)需要の価格弾力性~

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今回は、「経済学・経済政策 ~R4-14 需要・供給・弾力性の概念(1)需要の価格弾力性~」について説明します。

 

目次

経済学・経済政策 ~令和4年度一次試験問題一覧~

令和4年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

需要の価格弾力性 -リンク-

本ブログにて「需要の価格弾力性」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。

 

 

需要の価格弾力性(ε:イプシロン)

「需要の価格弾力性」とは、財の価格が1%増減したときに需要が何%変化するかを表しており「価格の変化率」に対する「需要の変化率」として求められます。

ここで重要なのは「需要の価格弾力性」が「価格の変化量」に対する「需要の変化量」ではなく「価格の変化率」に対する「需要の変化率」として表されるということです。

「商品の価格を20円値下げしたら以前よりも200個多く売れた」と言われても、値下げ前の価格や販売数が分からないと値下げによる効果を判断できませんが、値下げ前の価格や販売数に対する変化率を用いている「需要の価格弾力性」を見れば、その効果を定量的に確認することができます。

 

需要の価格弾力性の公式

「価格の変化率」に対する「需要の変化率」として表される「需要の価格弾力性」の公式を以下に示します。

 

 

「需要の価格弾力性」の公式において「需要の変化率 ÷ 価格の変化率」の前に「-(マイナス)」が付いているということは、価格が低下(上昇)したとき需要が増加(減少)すれば「需要の価格弾力性」が「プラス」になることを表しています。

したがって、価格が低下(上昇)したとき需要が増加(減少)する「右下がりの需要曲線」では「需要の価格弾力性」が「プラス」になります。

また、「需要の価格弾力性」は「価格の変化率」に対する「需要の変化率」として求められるため、「需要の価格弾力性」が高いほど「価格」が低下(上昇)したときに「需要」が大幅に増加(減少)することを表しています。

なお、需要曲線は「垂直」であるとき「需要の価格弾力性」は「ゼロ」になります。

 

価格が低下(上昇)したとき需要が減少(増加)する「ギッフェン財(右上がりの需要曲線)」では「需要の価格弾力性」が「マイナス」となります。

 

「需要の価格弾力性」の公式を変形して導かれるもうひとつの公式を以下に示します。

変形前の公式と比較すると、価格と需要の変化率を求めなくても、グラフの傾き(需要曲線の傾きの逆数)から「需要の価格弾力性」を求めることができるというメリットがあります。

 

 

需要曲線のグラフから価格の需要弾力性の絶対値を求める方法

公式ではなく、需要曲線のグラフから「価格の需要弾力性の絶対値」を求める方法について説明していきます。

なお、ここで説明する内容は、需要曲線が「右下がりの直線」であることを前提とさせてください。(それ以外の需要曲線では確認していないので)

 

「右下がりの需要曲線」における「点E」の「価格の需要弾力性の絶対値」を求めていきます。

 

右下がりの需要曲線上の点E

 

財の価格が「点E」から「点F」まで上昇すると、需要量は「点F」から「点A」まで減少するため、「点E」は同一の需要曲線上の「点A」まで左上にシフトします。

この場合の「価格の上昇量(⊿P)」「価格(値上げ前)(P)」「需要量の減少量(⊿Q)」「需要量(値上げ前)(Q)」を以下に示します。

 

価格の値上げによる点Eのシフト

 

「需要量の減少量(⊿Q)」である「線CE」と「需要量(値上げ前)(Q)」である「線0D」は長さが同じであるため、「価格の需要弾力性の絶対値」は「線0C ÷ 線AC」として求めることができます。

 

 

これを分かりやすく表現すると以下のようになります。

 

価格の需要弾力性の絶対値(縦軸=価格)

 

数学の法則の名称は忘れましたが「右下がりの需要曲線」が比例的に減少する直線であることを前提としているため「縦軸」の「線0C」と「線AC」の比率は「横軸」の「線BD」と「線0D」においても成り立ちます

 

価格の需要弾力性の絶対値(横軸=需要)

 

需要曲線のグラフから「価格の需要弾力性の絶対値」を求める方法を確認すると、「右下がりの需要曲線」において財の価格が「縦軸の切片(A)」の「中点(A/2)」であり、需要量が「横軸の切片(B)」の「中点(B/2)」である「点E」では「需要の価格弾力性」が必ず「1」になることが分かります。

 

 

需要の価格弾力性の代表的な特徴

「需要の価格弾力性」の代表的な特徴を以下に2つ示します。

 

  1. 右下がりの需要曲線においては、左上に位置する点の方が需要の価格弾力性が高くなります
  2. 2つの右下がりの需要曲線の交点においては、傾きが緩やかな需要曲線の方が、傾きが急な需要曲線よりも、需要の価格弾力性が高くなります

 

1つ目の特徴

「需要の価格弾力性」には「右下がりの需要曲線においては、左上に位置する点の方が需要の価格弾力性が高くなる」という特徴があります。

これは、「需要の価格弾力性」が変化量ではなく変化率により求められるためですが、比例的に減少していく需要曲線(直線)を見たとき、左上に位置する点の方が「需要の価格弾力性」が高くなるというのは、感覚的に非常に分かりにくいので、以下の例で確認していきます。

 

「右下がりの需要曲線」において、価格が80円で需要量が200個である「点a」と、価格が40円で需要量が600個である「点b」があるとします。

 

右下がりの需要曲線の「点a」と「点b」

 

財の価格を20円値下げすると「点a」と「点b」はそれぞれ同一の需要曲線上の「点A」と「点B」にシフトして需要が200個増加します。

「点a」と「点b」の「需要の価格弾力性」は「εa=4 > εb=0.67」となるため「右下がりの需要曲線」において左上に位置する「点a」の方が右下に位置する「点b」よりも「需要の価格弾力性」が高くなることが分かります。

 

需要曲線上の「点a」と「点b」における需要の価格弾力性

 

「点a」の方が「点b」よりも「需要の価格弾力性」が高いと言われても、グラフで見るとやはり感覚的に理解できないので、表にして言葉で表してみます。

 

「点a」の需要の価格弾力性

価格を「25%」値下げすると需要が「100%」増えるため「需要の価格弾力性」は「4」である。

 

値下げ前 値下げ後 変化量 変化率 需要の価格弾力性
需要(分子) 200個 400個 200個 100% 4
価格(分母) 80円 60円 ▲20円 ▲25%

 

「右下がりの需要曲線」において左上に位置する「点a」では、分母である価格の変化率は小さく、分子である需要の変化率が大きくなるため「需要の価格弾力性」が高くなります

 

 

「点b」の需要の価格弾力性

価格を「50%」値下げすると需要が「33.3%」増えるため「需要の価格弾力性」は「0.67」である。

 

値下げ前 値下げ後 変化量 変化率 需要の価格弾力性
需要(分子) 600個 800個 200個 33.3% 0.67
価格(分母) 40円 20円 ▲20円 ▲50%

 

「右下がりの需要曲線」において右下に位置する「点b」では、分母である価格の変化率が大きく、分子である需要の変化率が小さくなるため「需要の価格弾力性」が低くなります

 

 

こうやって表にして言葉で表した方が、「右下がりの需要曲線」において左上に位置する「点a」の方が右下に位置する「点b」よりも「需要の価格弾力性」が高くなることを理解しやすいかと思います。

 

価格の需要弾力性を求めるときの価格の値下げ幅(値上げ幅)

本論から少し外れますが、「右下がりの需要曲線」において「点a」の「価格の需要弾力性」を求めるとき、価格の値下げ幅(または値上げ幅)を変えると「価格の需要弾力性」も変わるのかについて確認します。(私がよく疑問に思っていた内容を確認してみましたというレベルの内容です。)

「右下がりの需要曲線」において、価格が80円で需要量が200個である「点a」から、価格を20円値下げして需要が400個となる「点A」に変化する場合の「価格の需要弾力性」と、価格を60円値下げして需要が800個となる「点A’」に変化する場合の「価格の需要弾力性」を確認します。

 

「点a」の「需要の価格弾力性」

 

「点a」から「点A」に変化するときの「価格の需要弾力性」と「点a」から「点A’」に変化するときの「需要の価格弾力性」は、いずれも「εa=εa’=4」となるため、「点a」の「需要の価格弾力性」を求めるとき、価格の値下げ幅(または値上げ幅)を変えても「需要の価格弾力性」は変化しないことが確認できました。

 

念のため、表にして言葉で表してみます。

 

「点a」から「点A」に変化したときの需要の価格弾力性

価格を「25%」値下げすると需要が「100%」増えるため「需要の価格弾力性」は「4」である。

 

値下げ前 値下げ後 変化量 変化率 需要の価格弾力性
需要(分子) 200個 400個 200個 100% 4
価格(分母) 80円 60円 ▲20円 ▲25%

 

「点a」から「点A’」に変化したときの需要の価格弾力性

価格を「75%」値下げすると需要が「300%」増えるため「需要の価格弾力性」は「4」である。

 

値下げ前 値下げ後 変化量 変化率 需要の価格弾力性
需要(分子) 200個 800個 600個 300% 4
価格(分母) 80円 20円 ▲60円 ▲75%

 

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【令和4年度 第14問】

下図には、Q=-P+10で表される需要曲線が描かれている(Qは需要量、Pは価格)。点Aおよび点Bにおける需要の価格弾力性(絶対値)に関する記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。

 

 

[解答群]

ア 需要の価格弾力性は、点Aのとき1であり、点Bのとき1である。
イ 需要の価格弾力性は、点Aのとき1であり、点Bのとき4である。
ウ 需要の価格弾力性は、点Aのとき4であり、点Bのとき1である。
エ 需要の価格弾力性は、点Aのとき4であり、点Bのとき4である。

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答

「需要の価格弾力性」に関する知識を問う問題です。

 

「需要の価格弾力性」とは、財の価格が1%増減したときに需要が何%変化するかを表しており「価格の変化率」に対する「需要の変化率」として求められます。

「価格の変化率」に対する「需要の変化率」として表される「需要の価格弾力性」の公式を以下に示します。

 

 

「需要の価格弾力性」の代表的な特徴のひとつを以下に示します。

 

  • 右下がりの需要曲線においては、左上に位置する点の方が需要の価格弾力性が高くなります

 

この時点で、選択肢(ア)(イ)(エ)は「需要の価格弾力性」の特徴を満たしていないため、答えは「選択肢(ウ)」となりますが、「表から価格の需要弾力性を求める方法」と「公式から価格の需要弾力性を求める方法」と「需要曲線のグラフから価格の需要弾力性の絶対値を求める方法」から「価格の需要弾力性(絶対値)」を求めていきます。

 

表から価格の需要弾力性を求める方法

表により「点A」と「点B」において価格を「1」だけ低下させた場合の需要量の変化を確認して「価格の需要弾力性」を求めていきます。

 

項目 点A 点B
価格 価格(P) 8 5
価格の変化 8→7 5→4
価格の変化量(⊿P) ▲1 ▲1
価格の変化率(⊿P÷P) ▲12.5% ▲20.0%
需要量 需要量(Q) 2 5
需要量(Q)の変化 2→3 5→6
需要量の変化量(⊿Q) 1 1
需要量の変化率(⊿Q÷Q) 50% 20%
需要の価格弾力性(⊿Q÷Q)÷(⊿P÷P) 4 1

 

したがって、点Aの需要の価格弾力性は「4」であり、点Bの需要の価格弾力性は「1」であるため、答えは選択肢(ウ)となります

 

公式から価格の需要弾力性を求める方法

グラフの傾き(需要曲線の傾きの逆数)から「需要の価格弾力性」を求める公式を用いて「価格の需要弾力性」を求めていきます。

 

 

需要曲線においては縦軸が「価格(P)」ですが、問題で与えられた需要曲線は「Q=-P+10」となっているため、「P」の前にある「-1」が需要曲線の傾きの逆数を表しています。

 

需要の価格弾力性

  • 点A:-(-1)× 価格:8 ÷ 需要量:2 = 4
  • 点B:-(-1)× 価格:5 ÷ 需要量:5 = 1

 

したがって、点Aの需要の価格弾力性は「4」であり、点Bの需要の価格弾力性は「1」であるため、答えは選択肢(ウ)となります

 

需要曲線のグラフから価格の需要弾力性の絶対値を求める方法

公式ではなく、需要曲線のグラフから「価格の需要弾力性の絶対値」を求めていきます

 

 

「点A」と「点B」の「需要の価格弾力性(絶対値)」は以下の通りです。

 

 

したがって、点Aの需要の価格弾力性の絶対値は「4」であり、点Bの需要の価格弾力性の絶対値は「1」であるため、答えは選択肢(ウ)となります

 

答えは(ウ)です。


 

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