今回は、「経済学・経済政策 ~R4-13 需要曲線(2)代替財・補完財~」について説明します。
目次
経済学・経済政策 ~令和4年度一次試験問題一覧~
令和4年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
需要曲線
「需要曲線」とは、財市場において決定される財の価格と需要者(消費者)が消費してもよいと考える数量(需要量)の関係を表す曲線のことをいいます。
需要曲線(D)
代替財
「代替財」とは、2つの財の関係性に起因して、片方の財の価格が値上がりして需要量が減少すると、もう片方の財の需要量が増加するような財のことをいいます。
2つの財の代替関係が100%である場合は「完全代替財」といい、代替関係が100%でない場合は「粗代替財」といいます。
需要曲線の変化
A財とB財が「代替財」の関係にある場合、A財の価格が上昇(下落)して需要量が減少(増加)すると、B財は価格が変化しなくても需要量が増加(減少)します。
この価格と需要量の変化を「需要曲線」で表していきます。
片方の財の価格が上昇した場合
A財とB財が「代替財」の関係にある場合、A財の価格が上昇して需要量が減少すると、B財は価格が変化しなくても需要量が増加します。
A財は、価格の上昇により需要者(消費者)が消費してもよいと考える数量(需要量)が減少するため、需要曲線上で需要者(消費者)の選択する点が左上に移動しますが、需要曲線はシフトしません。一方、B財は、価格が変化しなくても需要量が増加するため、需要曲線が右方にシフトします。
A財の価格が上昇した場合(代替財)
片方の財の価格が下落した場合
A財とB財が「代替財」の関係にある場合、A財の価格が下落して需要量が増加すると、B財は価格が変化しなくても需要量が減少します。
A財は、価格の下落により需要者(消費者)が消費してもよいと考える数量(需要量)が増加するため、需要曲線上で需要者(消費者)の選択する点が右下に移動しますが、需要曲線はシフトしません。一方、B財は、価格が変化しなくても需要量が減少するため、需要曲線が左方にシフトします。
A財の価格が下落した場合(代替財)
補完財
「補完財」とは、2つの財の関係性に起因して、片方の財の価格が値上がりして需要量が減少すると、もう片方の財の需要量も減少するような財のことをいいます。
2つの財の補完関係が100%である場合は「完全補完財」といい、補完関係が100%でない場合は「粗補完財」といいます。
需要曲線の変化
C財とD財が「補完財」の関係にある場合、C財の価格が上昇(下落)して需要量が減少(減少)すると、D財は価格が変化しなくても需要量が減少(増加)します。
この価格と需要量の変化を「需要曲線」で表していきます。
片方の財の価格が上昇した場合
C財とD財が「補完財」の関係にあるため、C財の価格が上昇して需要量が減少すると、D財は価格が変化しなくても需要量が減少します。
C財は、価格の上昇により需要者(消費者)が消費してもよいと考える数量(需要量)が減少するため、需要曲線上で需要者(消費者)の選択する点が左上に移動しますが、需要曲線はシフトしません。一方、D財は、価格が変化しなくても需要量が減少するため、需要曲線が左方にシフトします。
C財の価格が上昇した場合(補完財)
片方の財の価格が下落した場合
C財とD財が「補完財」の関係にあるため、C財の価格が下落して需要量が増加すると、D財は価格が変化しなくても需要量が増加します。
C財は、価格の下落により需要者(消費者)が消費してもよいと考える数量(需要量)が増加するため、需要曲線上で需要者(消費者)の選択する点が右下に移動しますが、需要曲線はシフトしません。一方、D財は、価格が変化しなくても需要量が増加するため、需要曲線が右方にシフトします。
C財の価格が下落した場合(補完財)
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【令和4年度 第13問】
代替財、補完財と需要曲線のシフトについて考える。ここでは図は省略するが、縦軸に価格、横軸に数量をとるものとする。2財の関係が代替財あるいは補完財であるときの需要曲線のシフトに関する記述として、最も適切な組み合わせを下記の解答群から選べ。
a A財とB財が代替財の関係にあるとき、A財の価格の下落によって、B財の需要曲線は右方にシフトする。
b C財とD財が補完財の関係にあるとき、C財の価格の下落によって、D財の需要曲線は右方にシフトする。
c A財とB財が代替財の関係にあるとき、A財の価格の上昇によって、B財の需要曲線は右方にシフトする。
d C財とD財が補完財の関係にあるとき、C財の価格の上昇によって、D財の需要曲線は右方にシフトする。
[解答群]
ア aとb
イ aとd
ウ bとc
エ cとd
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
「代替財・補完財」の関係にある財の価格が変動した場合の「需要曲線」のシフトに関する知識を問う問題です。
代替財
「代替財」とは、2つの財の関係性に起因して、片方の財の価格が値上がりして需要量が減少すると、もう片方の財の需要量が増加するような財のことをいいます。
2つの財の代替関係が100%である場合は「完全代替財」といい、代替関係が100%でない場合は「粗代替財」といいます。
A財とB財が「代替財」の関係にある場合、A財の価格が上昇(下落)して需要量が減少(増加)すると、B財は価格が変化しなくても需要量が増加(減少)します。
補完財
「補完財」とは、2つの財の関係性に起因して、片方の財の価格が値上がりして需要量が減少すると、もう片方の財の需要量も減少するような財のことをいいます。
2つの財の補完関係が100%である場合は「完全補完財」といい、補完関係が100%でない場合は「粗補完財」といいます。
C財とD財が「補完財」の関係にある場合、C財の価格が上昇(下落)して需要量が減少(減少)すると、D財は価格が変化しなくても需要量が減少(増加)します。
(a) 不適切です。
A財とB財が「代替財」の関係にあるため、A財の価格が下落して需要量が増加すると、B財は価格が変化しなくても需要量が減少します。
この価格と需要量の変化を「需要曲線」で表すと以下の通りです。
A財の価格が下落した場合(代替財)
A財は、価格の下落により需要者(消費者)が消費してもよいと考える数量(需要量)が増加するため、需要曲線上で需要者(消費者)の選択する点が右下に移動しますが、需要曲線はシフトしません。一方、B財は、価格が変化しなくても需要量が減少するため、需要曲線が左方にシフトします。
したがって、A財とB財が代替財の関係にあるとき、A財の価格の下落によって、B財の需要曲線は右方ではなく左方にシフトするため、選択肢の内容は不適切です。
(b) 適切です。
C財とD財が「補完財」の関係にあるため、C財の価格が下落して需要量が増加すると、D財は価格が変化しなくても需要量が増加します。
この価格と需要量の変化を「需要曲線」で表すと以下の通りです。
C財の価格が下落した場合(補完財)
C財は、価格の下落により需要者(消費者)が消費してもよいと考える数量(需要量)が増加するため、需要曲線上で需要者(消費者)の選択する点が右下に移動しますが、需要曲線はシフトしません。一方、D財は、価格が変化しなくても需要量が増加するため、需要曲線が右方にシフトします。
したがって、C財とD財が補完財の関係にあるとき、C財の価格の下落によって、D財の需要曲線は右方にシフトするため、選択肢の内容は適切です。
(c) 適切です。
A財とB財が「代替財」の関係にあるため、A財の価格が上昇して需要量が減少すると、B財は価格が変化しなくても需要量が増加します。
この価格と需要量の変化を「需要曲線」で表すと以下の通りです。
A財の価格が上昇した場合(代替財)
A財は、価格の上昇により需要者(消費者)が消費してもよいと考える数量(需要量)が減少するため、需要曲線上で需要者(消費者)の選択する点が左上に移動しますが、需要曲線はシフトしません。一方、B財は、価格が変化しなくても需要量が増加するため、需要曲線が右方にシフトします。
したがって、A財とB財が代替財の関係にあるとき、A財の価格の上昇によって、B財の需要曲線は右方にシフトするため、選択肢の内容は適切です。
(d) 不適切です。
C財とD財が「補完財」の関係にあるため、C財の価格が上昇して需要量が減少すると、D財は価格が変化しなくても需要量が減少します。
この価格と需要量の変化を「需要曲線」で表すと以下の通りです。
C財の価格が上昇した場合(補完財)
C財は、価格の上昇により需要者(消費者)が消費してもよいと考える数量(需要量)が減少するため、需要曲線上で需要者(消費者)の選択する点が左上に移動しますが、需要曲線はシフトしません。一方、D財は、価格が変化しなくても需要量が減少するため、需要曲線が左方にシフトします。
したがって、C財とD財が補完財の関係にあるとき、C財の価格の上昇によって、D財の需要曲線は右方ではなく左方にシフトするため、選択肢の内容は不適切です。
(b)と(c)に記述されている内容が適切であるため、答えは(ウ)です。
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