経済学・経済政策 ~H29-13 需要・供給・弾力性の概念(3)需要の価格弾力性~

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今回は、「経済学・経済政策 ~H29-13 需要・供給・弾力性の概念(3)需要の価格弾力性~」について説明します。

 

目次

経済学・経済政策 ~平成29年度一次試験問題一覧~

平成29年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

需要の価格弾力性 -リンク-

本ブログにて「需要の価格弾力性」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。

 

 

需要の価格弾力性(ε:イプシロン)

「需要の価格弾力性」とは、財の価格が1%増減したときに需要が何%変化するかを表しており「価格の変化率」に対する「需要の変化率」として求められます。

ここで重要なのは「需要の価格弾力性」が「価格の変化量」に対する「需要の変化量」ではなく「価格の変化率」に対する「需要の変化率」として表されるということです。

「商品の価格を20円値下げしたら以前よりも200個多く売れた」と言われても、値下げ前の価格や販売数が分からないと値下げによる効果を判断できませんが、値下げ前の価格や販売数に対する変化率を用いている「需要の価格弾力性」を見れば、その効果を定量的に確認することができます。

 

需要の価格弾力性と価格・売上の関係

企業としては、財の価格を変化させたときに需要がどれくらい増減するかではなく、売上がどれくらい増減するかを確認したいはずであるため、「価格の需要弾力性」と「財の価格」と「売上」の関係について確認していきます。

 

 

「需要の価格弾力性」が「1」よりも高い場合、財の価格を値下げすると、価格の値下げによる売上の減少よりも需要の増加による売上の増加の方が大きくなるため、売上が増加します。逆に、財の価格を値上げすると、価格の値上げによる売上の増加よりも需要の減少による売上の減少の方が大きくなるため、売上が減少します。

「需要の価格弾力性」が「1」よりも低い場合、財の価格を値下げすると、価格の値下げによる売上の減少の方が需要の増加による売上の増加よりも大きくなるため、売上が減少します。逆に、財の価格を値上げすると、価格の値上げによる売上の増加の方が需要の減少による売上の減少よりも大きくなるため、売上が増加します

「需要の価格弾力性」が「1」の場合、財の価格を変化させても、価格の値下げ(値上げ)と需要の増加(減少)による売上の増減が相殺されるため、売上は増減しません

 

「需要の価格弾力性」が「1」の場合、財の価格を変化させても、価格の値下げ(値上げ)と需要の増加(減少)による売上の増減が相殺されるため売上は増減しないと説明していますが、実際に計算みると、財の価格を変化させたときの売上は財の価格を変化させる前より少しだけ減少します

 

例えば、価格が「P円」で需要が「Q個」の財があるとした場合、財の価格を10%値上げして需要が10%減少した場合の売上は、以下の通り少しだけ減少します。

 

  • 売上高(値上げ前)= P × Q
  • 売上高(値上げ後)=(P × 110%)×(Q × 90%)= 0.99 × P × Q

 

 

価格を値下げした場合

価格を10%値下げした場合の「需要の価格弾力性」と売上の関係を以下に示します。

価格を値下げすると、「需要の価格弾力性」が「1」よりも低ければ売上が減少していき「需要の価格弾力性」が「1」よりも高ければ売上が増加していきます。

これは、「需要の価格弾力性」が「1」よりも高い場合は、価格の値下げによる売上の減少よりも需要の増加による売上の増加の方が大きくなるため、結果として売上が増加することを表しています。

 

需要の価格弾力性 価格 数量 売上 売上の変化率
変化率 価格 変化率 数量
現在(値下げ前) ¥100 1,000 個 ¥100,000
0.1 ▲10% ¥90 1% 1,010 個 ¥90,900 90.9%
0.2 ▲10% ¥90 2% 1,020 個 ¥91,800 91.8%
0.3 ▲10% ¥90 3% 1,030 個 ¥92,700 92.7%
0.4 ▲10% ¥90 4% 1,040 個 ¥93,600 93.6%
0.5 ▲10% ¥90 5% 1,050 個 ¥94,500 94.5%
0.6 ▲10% ¥90 6% 1,060 個 ¥95,400 95.4%
0.7 ▲10% ¥90 7% 1,070 個 ¥96,300 96.3%
0.8 ▲10% ¥90 8% 1,080 個 ¥97,200 97.2%
0.9 ▲10% ¥90 9% 1,090 個 ¥98,100 98.1%
1.0 ▲10% ¥90 10% 1,100 個 ¥99,000 99.0%
1.1 ▲10% ¥90 11% 1,110 個 ¥99,900 99.9%
1.2 ▲10% ¥90 12% 1,120 個 ¥100,800 100.8%
1.3 ▲10% ¥90 13% 1,130 個 ¥101,700 101.7%
1.4 ▲10% ¥90 14% 1,140 個 ¥102,600 102.6%
1.5 ▲10% ¥90 15% 1,150 個 ¥103,500 103.5%
1.6 ▲10% ¥90 16% 1,160 個 ¥104,400 104.4%
1.7 ▲10% ¥90 17% 1,170 個 ¥105,300 105.3%
1.8 ▲10% ¥90 18% 1,180 個 ¥106,200 106.2%
1.9 ▲10% ¥90 19% 1,190 個 ¥107,100 107.1%
2.0 ▲10% ¥90 20% 1,200 個 ¥108,000 108.0%

 

価格を値上げした場合

価格を10%値上げした場合の「需要の価格弾力性」と売上の関係を以下に示します。

価格を値上げすると、「需要の価格弾力性」が「1」よりも低ければ売上が増加していき「需要の価格弾力性」が「1」よりも高ければ売上が減少していきます。

これは、「需要の価格弾力性」が「1」よりも低い場合は、価格の値上げによる売上の増加よりも需要の減少による売上の減少の方が小さくなるため、結果として売上が増加することを表しています。

 

需要の価格弾力性 価格 数量 売上 売上の変化率
変化率 価格 変化率 数量
現在(値上げ前) ¥100 1,000 個 ¥100,000
0.1 10% ¥110 ▲1% 990 個 ¥108,900 108.9%
0.2 10% ¥110 ▲2% 980 個 ¥107,800 107.8%
0.3 10% ¥110 ▲3% 970 個 ¥106,700 106.7%
0.4 10% ¥110 ▲4% 960 個 ¥105,600 105.6%
0.5 10% ¥110 ▲5% 950 個 ¥104,500 104.5%
0.6 10% ¥110 ▲6% 940 個 ¥103,400 103.4%
0.7 10% ¥110 ▲7% 930 個 ¥102,300 102.3%
0.8 10% ¥110 ▲8% 920 個 ¥101,200 101.2%
0.9 10% ¥110 ▲9% 910 個 ¥100,100 100.1%
1.0 10% ¥110 ▲10% 900 個 ¥99,000 99.0%
1.1 10% ¥110 ▲11% 890 個 ¥97,900 97.9%
1.2 10% ¥110 ▲12% 880 個 ¥96,800 96.8%
1.3 10% ¥110 ▲13% 870 個 ¥95,700 95.7%
1.4 10% ¥110 ▲14% 860 個 ¥94,600 94.6%
1.5 10% ¥110 ▲15% 850 個 ¥93,500 93.5%
1.6 10% ¥110 ▲16% 840 個 ¥92,400 92.4%
1.7 10% ¥110 ▲17% 830 個 ¥91,300 91.3%
1.8 10% ¥110 ▲18% 820 個 ¥90,200 90.2%
1.9 10% ¥110 ▲19% 810 個 ¥89,100 89.1%
2.0 10% ¥110 ▲20% 800 個 ¥88,000 88.0%

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【平成29年度 第13問】

需要の価格弾力性は、価格の変化によって売上額に影響を及ぼす。需要の価格弾力性と価格戦略に関する記述として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。

 

a 需要の価格弾力性が1より小さい場合、企業が価格を引き下げる戦略をとると、売上額は増加する。

b 需要の価格弾力性が1より小さい場合、企業が価格を引き上げる戦略をとると、需要が減少して、売上額も減少する。

c 需要の価格弾力性が1に等しい場合、企業が価格を変化させる戦略をとっても、売上額は変化しない。

d 需要の価格弾力性が1より大きい場合、企業が価格を引き下げる戦略をとると、売上額は増加する。

 

[解答群]

ア aとb
イ aとc
ウ bとd
エ cとd

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答

「需要の価格弾力性」に関する知識を問う問題です。

 

「需要の価格弾力性」とは、財の価格が1%増減したときに需要が何%変化するかを表しており「価格の変化率」に対する「需要の変化率」として求められます。

企業としては、財の価格を変化させたときに需要がどれくらい増減するかではなく、売上がどれくらい増減するかを確認したいはずであるため、「価格の需要弾力性」と「財の価格」と「売上」の関係について確認していきます。

 

 

「需要の価格弾力性」が「1」よりも高い場合、財の価格を値下げすると、価格の値下げによる売上の減少よりも需要の増加による売上の増加の方が大きくなるため、売上が増加します。逆に、財の価格を値上げすると、価格の値上げによる売上の増加よりも需要の減少による売上の減少の方が大きくなるため、売上が減少します。

「需要の価格弾力性」が「1」よりも低い場合、財の価格を値下げすると、価格の値下げによる売上の減少の方が需要の増加による売上の増加よりも大きくなるため、売上が減少します。逆に、財の価格を値上げすると、価格の値上げによる売上の増加の方が需要の減少による売上の減少よりも大きくなるため、売上が増加します

「需要の価格弾力性」が「1」の場合、財の価格を変化させても、価格の値下げ(値上げ)と需要の増加(減少)による売上の増減が相殺されるため、売上は増減しません

 

(a) 不適切です。

需要の価格弾力性が1より小さい場合、企業が価格を引き下げる戦略をとると、価格の引き下げによる売上額の減少の方が需要の増加による売上額の増加よりも大きくなるため、売上額が減少します

 

したがって、需要の価格弾力性が1より小さい場合、企業が価格を引き下げる戦略をとると、売上額は増加するのではなく減少するため、選択肢の内容は不適切です

 

(b) 不適切です。

需要の価格弾力性が1より小さい場合、企業が価格を引き上げる戦略をとると、価格の引き上げによる売上額の増加の方が需要の減少による売上額の減少よりも大きくなるため、売上額が増加します

 

したがって、選択肢には「需要の価格弾力性が1より小さい場合、企業が価格を引き上げる戦略をとると、需要が減少して、売上額も減少する。」と記述されていますが、需要の価格弾力性が1より小さい場合、企業が価格を引き上げる戦略をとると、需要が減少するが、売上は増加するため、選択肢の内容は不適切です

 

(c) 適切です。

需要の価格弾力性が1に等しい場合、企業が価格を変化させる戦略をとっても、価格の引き下げ(引き上げ)と需要の増加(減少)による売上の増減が相殺されるため、売上額は増減しません

 

したがって、需要の価格弾力性が1に等しい場合、企業が価格を変化させる戦略をとっても、売上額は変化しないため、選択肢の内容は適切です

 

「需要の価格弾力性」が「1」の場合、財の価格を変化させても、価格の値下げ(値上げ)と需要の増加(減少)による売上の増減が相殺されるため売上は増減しないと説明していますが、実際に計算みると、財の価格を変化させたときの売上は財の価格を変化させる前より少しだけ減少します

 

例えば、価格が「P円」で需要が「Q個」の財があるとした場合、財の価格を10%値上げして需要が10%減少した場合の売上は、以下の通り少しだけ減少します。

 

  • 売上高(値上げ前)= P × Q
  • 売上高(値上げ後)=(P × 110%)×(Q × 90%)= 0.99 × P × Q

 

 

(d) 適切です。

需要の価格弾力性が1より大きい場合、企業が価格を引き下げる戦略をとると、価格の引き下げによる売上額の減少よりも需要の増加による売上額の増加の方が大きくなるため、売上額が増加します

 

したがって、需要の価格弾力性が1より大きい場合、企業が価格を引き下げる戦略をとると、売上額は増加するため、選択肢の内容は適切です

 

(c)と(d)に記述されている内容が適切であるため、答えは(エ)です。


 

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