今回は、「経済学・経済政策 ~H25-3 市場均衡・不均衡(7)デフレギャップ~」について説明します。
目次
経済学・経済政策 ~平成25年度一次試験問題一覧~
平成25年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
デフレギャップ・インフレギャップ・需給ギャップ -リンク-
本ブログにて「デフレギャップ」「インフレギャップ」「需給ギャップ」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- デフレギャップ・インフレギャップ・需給ギャップのまとめ
- R4-6-2 市場均衡・不均衡(15)デフレギャップ
- R2-5 市場均衡・不均衡(1)デフレギャップ
- H29-5 市場均衡・不均衡(5)需給ギャップ(GDPギャップ)
- H25-2 市場均衡・不均衡(6)需給ギャップ(GDPギャップ)
デフレギャップ
「デフレギャップ」とは「完全雇用GDP(潜在GDP)」における「需要量と供給量の差分(超過供給)」のことをいいます。
「完全雇用GDP(潜在GDP)」における需要量とは「完全雇用GDP(潜在GDP)」における総需要曲線上の需要量を示しており、「完全雇用GDP(潜在GDP)」における供給量とは、すべての国民が雇用された状態(非自発的失業が存在しない状態)で、全ての設備をフル稼働させた状態で提供できる最大の供給量を示しています。
「完全雇用GDP(潜在GDP)」において「超過供給」が発生するということは、現在の需要であれば、企業がすべての国民を雇用したり全ての設備をフル稼働しなくても、財(モノやサービス)を供給できるということを表しているため、雇用されない国民(失業)が発生するということになります。
「デフレギャップ」は、デフレーション(物価の持続的な下落)を引き起こす要因ともなりますが、ケインズ派の理論では「物価は一定と仮定する」という前提があるため、デフレーション(物価の持続的な下落)を引き起こす要因ではなく、失業を引き起こす要因として捉えられています。
「政府による財政政策」や「中央銀行(日本銀行)による金融政策」によって需要量を増やすことができれば「デフレギャップ」を解消して「完全雇用GDP(潜在GDP)(YF)」を実現することができます。
インフレギャップ
「インフレギャップ」とは「完全雇用GDP(潜在GDP)」における「需要と供給の差分(超過需要)」のことをいいます。
「完全雇用GDP(潜在GDP)」における需要量とは「完全雇用GDP(潜在GDP)」における総需要曲線上の需要量を示しており、「完全雇用GDP(潜在GDP)」における供給量とは、すべての国民が雇用された状態(非自発的失業が存在しない状態)で、全ての設備をフル稼働させた状態で提供できる最大の供給量を示しています。
「完全雇用GDP(潜在GDP)」において「超過需要」が発生するということは、企業がすべての国民を雇用して、かつ全ての設備をフル稼働しても需要量を賄うだけの財(モノやサービス)を供給できないということを表しています。
「完全雇用GDP(潜在GDP)」は、すべての国民が雇用された状態(非自発的失業が存在しない状態)で、全ての設備をフル稼働させた状態で提供できる最大の供給量であるため、「完全雇用GDP(潜在GDP)」よりも高い「GDP」を実現することはできません。
また、「完全雇用GDP(潜在GDP)」でも、需要量を賄うだけの財(モノやサービス)を供給できないということは、既にインフレーション(物価の持続的な上昇)が発生している状態と考えられます。
ケインズ派の理論では「物価は一定と仮定する」という前提はありますが、ケインズも「インフレギャップ」はインフレーション(物価の持続的な上昇)が発生している状態であるとしています。
「政府による財政政策」や「中央銀行(日本銀行)による金融政策」によって需要量を減らすことができれば「インフレギャップ」を解消してインフレーション(物価の持続的な上昇)を抑制することができます。
需給ギャップ(GDPギャップ)
「需給ギャップ(GDPギャップ)」とは、景気や物価の動向を把握するために有効な指標であり、経済全体における「総需要(実質GDP)」と「潜在的な供給力(潜在GDP)」の差分を表した指標のことをいいます。
「総需要(実質GDP)」とは、個人消費や設備投資といった支出を積み上げた「国内総生産(GDP)」であり、「潜在的な供給力(潜在GDP)」とは、すべての国民が雇用された状態(非自発的失業が存在しない状態)で、全ての設備をフル稼働させた状態で提供できる最大の供給量です。
「需給ギャップ(GDPギャップ)」は、以下の計算式により求めることができます。
「需給ギャップ(GDPギャップ)」は、「デフレギャップ」や「インフレギャップ」との引っ掛け問題としてよく出題されますので、間違えないように注意が必要です。
「デフレギャップ」が発生している場合の「需給ギャップ(GDPギャップ)」は以下の図のようになります。
「需給ギャップ(GDPギャップ)」がマイナスとなっている場合は、「潜在的な供給力(潜在GDP)」の方が「総需要(実質GDP)」よりも多く「デフレギャップ」が発生している(超過供給)状態であり、景気が停滞しており、労働力や設備が過剰で、デフレーション(物価の持続的な下落)を引き起こしていることを表しています。
逆に、「需給ギャップ(GDPギャップ)」がプラスとなっている場合は、「総需要(実質GDP)」の方が「潜在的な供給力(潜在GDP)」よりも多く「インフレギャップ」が発生している(超過需要)状態であり、景気が過熱しており、労働力や設備が不足して、インフレーション(物価の持続的な上昇)を引き起こしていることを表しています。
「政府による財政政策」や「中央銀行(日本銀行)による金融政策」によって需要量を調整することにより「需給ギャップ(GDPギャップ)」を解消する必要があります。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成25年度 第3問】
いま、総需要Dは、GDPをYとするとき、D=50+0.8Yで与えられるものとする。完全雇用GDPを300としたときの説明として最も適切なものはどれか。
ア 均衡GDPは250であり、10のインフレギャップが生じている。
イ 均衡GDPは250であり、10のデフレギャップが生じている。
ウ 均衡GDPは250であり、50のデフレギャップが生じている。
エ 均衡GDPは300であり、50のインフレギャップが生じている。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
インフレギャップとデフレギャップに関する知識を問う問題です。
均衡GDP(YE)の算出
「均衡GDP(YE)」とは「供給量 = 需要量」の関係が成立するGDPのことをいいます。
問題で与えられた「供給関数(S)」と「需要関数(D)」は以下の通りです。
- 供給関数:S = Y
- 需要関数:D = 50 + 0.8 Y
「供給量=需要量(S=D)」の関係が成立する「均衡GDP(YE)」は以下の通りです。
- S = D
YE = 50 + 0.8 YE
0.2 YE = 50
YE = 250
「供給曲線」「需要曲線」「均衡GDP」の関係をグラフ(45度線図)にすると以下の図のようになります。
「均衡GDP(YE)」は「250」です。
デフレギャップ/インフレギャップの算出
「完全雇用GDP(YF)」における「供給量」と「需要量」を比較することにより「デフレギャップ」が発生しているのか「インフレギャップ」が発生しているのかを確認すると共に、その大きさ(供給量と需要量の差分)を求めていきます。
「完全雇用GDP(YF)」を300としたときの「供給量」と「需要量」は以下の通りです。
- 供給量:S = 完全雇用GDP(YF)= 300
- 需要量:D = 50 + 0.8 × 完全雇用GDP(YF)= 50 + 0.8 × 300 = 290
「完全雇用GDP(YF)」における「供給量」の方が「完全雇用GDP(YF)」における「需要量」よりも大きくなっており「超過供給(供給量 > 需要量)」となっているため「デフレギャップ」が発生していることが分かります。
また、デフレギャップの大きさは「完全雇用GDP(YF)」における「供給量(300)」と「需要量(290)」の差分である「10」となります。
「完全雇用GDP(YF)」における「供給量」と「需要量」の関係をグラフ(45度線図)にすると以下の図のようになります。
したがって、均衡GDPは250であり、10のデフレギャップが生じているため、選択肢(イ)の内容が適切です。
需給ギャップ(GDPギャップ)
選択肢(ウ)に記述されているデフレギャップの大きさ(50)は「デフレギャップ」ではなく「需給ギャップ(GDPギャップ)」の大きさを示しています。
「需給ギャップ(GDPギャップ)」は、「デフレギャップ」や「インフレギャップ」の引っ掛け問題としてよく出題されますので、間違えないように注意が必要です。
答えは(イ)です。
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