経済学・経済政策 ~R4-6-2 市場均衡・不均衡(15)デフレギャップ~

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今回は、「経済学・経済政策 ~R4-6-2 市場均衡・不均衡(15)デフレギャップ~」について説明します。

 

目次

経済学・経済政策 ~令和4年度一次試験問題一覧~

令和4年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

デフレギャップ・インフレギャップ・需給ギャップ -リンク-

本ブログにて「デフレギャップ」「インフレギャップ」「需給ギャップ」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。

 

 

デフレギャップ

「デフレギャップ」とは「完全雇用GDP(潜在GDP)」における「需要量と供給量の差分(超過供給)」のことをいいます。

「完全雇用GDP(潜在GDP)」における需要量とは「完全雇用GDP(潜在GDP)」における総需要曲線上の需要量を示しており、「完全雇用GDP(潜在GDP)」における供給量とは、すべての国民が雇用された状態(非自発的失業が存在しない状態)で、全ての設備をフル稼働させた状態で提供できる最大の供給量を示しています。

 

 

「完全雇用GDP(潜在GDP)」において「超過供給」が発生するということは、現在の需要であれば、企業がすべての国民を雇用したり全ての設備をフル稼働しなくても、財(モノやサービス)を供給できるということを表しているため、雇用されない国民(失業)が発生するということになります。

「デフレギャップ」は、デフレーション(物価の持続的な下落)を引き起こす要因ともなりますが、ケインズ派の理論では「物価は一定と仮定する」という前提があるため、デフレーション(物価の持続的な下落)を引き起こす要因ではなく、失業を引き起こす要因として捉えられています。

「政府による財政政策」や「中央銀行(日本銀行)による金融政策」によって需要量を増やすことができれば「デフレギャップ」を解消して「完全雇用GDP(潜在GDP)(YF)」を実現することができます。

 

 

インフレギャップ

「インフレギャップ」とは「完全雇用GDP(潜在GDP)」における「需要と供給の差分(超過需要)」のことをいいます。

「完全雇用GDP(潜在GDP)」における需要量とは「完全雇用GDP(潜在GDP)」における総需要曲線上の需要量を示しており、「完全雇用GDP(潜在GDP)」における供給量とは、すべての国民が雇用された状態(非自発的失業が存在しない状態)で、全ての設備をフル稼働させた状態で提供できる最大の供給量を示しています。

 

 

「完全雇用GDP(潜在GDP)」において「超過需要」が発生するということは、企業がすべての国民を雇用して、かつ全ての設備をフル稼働しても需要量を賄うだけの財(モノやサービス)を供給できないということを表しています。

「完全雇用GDP(潜在GDP)」は、すべての国民が雇用された状態(非自発的失業が存在しない状態)で、全ての設備をフル稼働させた状態で提供できる最大の供給量であるため、「完全雇用GDP(潜在GDP)」よりも高い「GDP」を実現することはできません

また、「完全雇用GDP(潜在GDP)」でも、需要量を賄うだけの財(モノやサービス)を供給できないということは、既にインフレーション(物価の持続的な上昇)が発生している状態と考えられます。

ケインズ派の理論では「物価は一定と仮定する」という前提はありますが、ケインズも「インフレギャップ」はインフレーション(物価の持続的な上昇)が発生している状態であるとしています。

「政府による財政政策」や「中央銀行(日本銀行)による金融政策」によって需要量を減らすことができれば「インフレギャップ」を解消してインフレーション(物価の持続的な上昇)を抑制することができます。

 

 

需給ギャップ(GDPギャップ)

「需給ギャップ(GDPギャップ)」とは、景気や物価の動向を把握するために有効な指標であり、経済全体における「総需要(実質GDP)」と「潜在的な供給力(潜在GDP)」の差分を表した指標のことをいいます。

「総需要(実質GDP)」とは、個人消費や設備投資といった支出を積み上げた「国内総生産(GDP)」であり、「潜在的な供給力(潜在GDP)」とは、すべての国民が雇用された状態(非自発的失業が存在しない状態)で、全ての設備をフル稼働させた状態で提供できる最大の供給量です。

「需給ギャップ(GDPギャップ)」は、以下の計算式により求めることができます。

 

 

「需給ギャップ(GDPギャップ)」は、「デフレギャップ」や「インフレギャップ」との引っ掛け問題としてよく出題されますので、間違えないように注意が必要です。

「デフレギャップ」が発生している場合の「需給ギャップ(GDPギャップ)」は以下の図のようになります。

 

 

「需給ギャップ(GDPギャップ)」がマイナスとなっている場合は、「潜在的な供給力(潜在GDP)」の方が「総需要(実質GDP)」よりも多く「デフレギャップ」が発生している(超過供給)状態であり、景気が停滞しており、労働力や設備が過剰で、デフレーション(物価の持続的な下落)を引き起こしていることを表しています。

逆に、「需給ギャップ(GDPギャップ)」がプラスとなっている場合は、「総需要(実質GDP)」の方が「潜在的な供給力(潜在GDP)」よりも多く「インフレギャップ」が発生している(超過需要)状態であり、景気が過熱しており、労働力や設備が不足して、インフレーション(物価の持続的な上昇)を引き起こしていることを表しています。

「政府による財政政策」や「中央銀行(日本銀行)による金融政策」によって需要量を調整することにより「需給ギャップ(GDPギャップ)」を解消する必要があります。

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【令和4年度 第6問】

下図は、45度線図である。この図において、総需要はAD=C+I+G(ただし、ADは総需要、Cは消費支出、Iは投資支出、Gは政府支出)、消費関数はC=C0+cY(ただし、C0は基礎消費、cは限界消費性向(0<c<1)、YはGDP)によって表されるとする。図中におけるYFは完全雇用GDP、Y0は現実のGDPである。

この図に基づいて、下記の設問に答えよ。

 

 

(設問2)

GDPの決定に関する記述として、最も適切なものはどれか。

 

ア ADF-AD0の大きさだけの政府支出の増加によって、完全雇用GDPを実現できる。
イ ADF-AD1の大きさだけの政府支出の増加によって、完全雇用GDPを実現できる。
ウ ADF-AD2の大きさだけの政府支出の増加によって、完全雇用GDPを実現できる。
エ AD0-AD1の大きさだけの政府支出の増加によって、完全雇用GDPを実現できる。
オ AD0-AD2の大きさだけの政府支出の増加によって、完全雇用GDPを実現できる。

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答(設問2)

「デフレギャップ」に関する知識を問う問題です。

 

問題で与えられた図を見て「インフレギャップ」を想像した方もいると思いますが、「現実のGDP(Y0)」が「完全雇用GDP(YF)」よりも小さいため「デフレギャップ」を表しています。

 

「デフレギャップ」とは「完全雇用GDP(潜在GDP)」における「需要量と供給量の差分(超過供給)」のことをいいます。

「完全雇用GDP(潜在GDP)」における需要量とは「完全雇用GDP(潜在GDP)」における総需要曲線上の需要量を示しており、「完全雇用GDP(潜在GDP)」における供給量とは、すべての国民が雇用された状態(非自発的失業が存在しない状態)で、全ての設備をフル稼働させた状態で提供できる最大の供給量を示しています。

 

 

「政府による財政政策」や「中央銀行(日本銀行)による金融政策」によって需要量を増やすことができれば「デフレギャップ」を解消して「完全雇用GDP(潜在GDP)(YF)」を実現することができます。

 

 

問題で与えられた図において以下の箇所を修正した図を以下に示します。

  • 「完全雇用GDP(YF)」の「総需要曲線(AD)」を「総需要曲線(ADF)」に変更
  • 「完全雇用GDP(YF)」の「政府支出(G)」を「政府支出(GF)」に変更
  • 「総供給曲線(45度線)」と「総需要曲線(ADF)」の交点を「均衡GDP(EF)」として追加

 

 

問題で与えられた図に描かれていない「現実のGDP(Y0)」における「総需要曲線(AD0)」を追加して「デフレギャップ」を確認していきます。

「現実のGDP(Y0)」において「総供給曲線(45度線)」と交わるまで、「総需要曲線(ADF)」を平行に下方シフトして「総需要曲線(AD0)」を追加します。

また、「現実のGDP(Y0)」における「総需要曲線(AD0)」と「総供給曲線(45度線)」の交点を「均衡GDP(E0)」として追加します。

「デフレギャップ」は「完全雇用GDP(YF」における「需要量と供給量の差分(超過供給)」であるため、「完全雇用GDP(YF)」における「総供給曲線(45度線)」上の点(EF)と「総需要曲線(AD0)」上の点の差分(赤色の矢印)が「デフレギャップ」を表しています。

 

 

「総需要曲線(AD0)」と「総需要曲線(ADF)」は平行な曲線であり、X軸の「GDP」の大きさに関わらず2つの総需要曲線間の距離は同じであるため、「AD0-AD1」が「デフレギャップ」を表しているということになります。

 

 

「デフレギャップ」を解消するためには、「AD0-AD1」だけ「総需要曲線(AD0)」を上方シフトさせる必要がありますが、「総需要曲線(AD0)」と「総需要曲線(ADF)」は平行な曲線であるため、Y軸の切片である「基礎消費(C0)+ 投資支出(I)+ 政府支出(G0)」を増やすことにより「総需要曲線(AD0)」を上方にシフトさせます。

 

Y軸の切片が「基礎消費+投資支出+政府支出」となる理由については、以下のページを参照してください。

  • R4-6-1 市場均衡・不均衡(14)45度線分析・乗数効果

 

今回の問題では「政府支出」の増加により「完全雇用GDP(YF)」を実現することを前提とした選択肢となっているため、「政府支出」を増加(G0→GF)して「総需要曲線(AD0)」をデフレギャップ分(AD0-AD1)だけ上方シフトすれば「完全雇用GDP(EF)」を実現することができます。

 

 

答えは(エ)です。


 

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