経済学・経済政策 ~H29-5 市場均衡・不均衡(5)需給ギャップ(GDPギャップ)~

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今回は、「経済学・経済政策 ~H29-5 市場均衡・不均衡(5)需給ギャップ(GDPギャップ)~」について説明します。

 

目次

経済学・経済政策 ~平成29年度一次試験問題一覧~

平成29年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。

 

デフレギャップ・インフレギャップ・需給ギャップ -リンク-

本ブログにて「デフレギャップ」「インフレギャップ」「需給ギャップ」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。

 

 

デフレギャップ

「デフレギャップ」とは「完全雇用GDP(潜在GDP)」における「需要量と供給量の差分(超過供給)」のことをいいます。

「完全雇用GDP(潜在GDP)」における需要量とは「完全雇用GDP(潜在GDP)」における総需要曲線上の需要量を示しており、「完全雇用GDP(潜在GDP)」における供給量とは、すべての国民が雇用された状態(非自発的失業が存在しない状態)で、全ての設備をフル稼働させた状態で提供できる最大の供給量を示しています。

 

 

「完全雇用GDP(潜在GDP)」において「超過供給」が発生するということは、現在の需要であれば、企業がすべての国民を雇用したり全ての設備をフル稼働しなくても、財(モノやサービス)を供給できるということを表しているため、雇用されない国民(失業)が発生するということになります。

「デフレギャップ」は、デフレーション(物価の持続的な下落)を引き起こす要因ともなりますが、ケインズ派の理論では「物価は一定と仮定する」という前提があるため、デフレーション(物価の持続的な下落)を引き起こす要因ではなく、失業を引き起こす要因として捉えられています。

「政府による財政政策」や「中央銀行(日本銀行)による金融政策」によって需要量を増やすことができれば「デフレギャップ」を解消して「完全雇用GDP(潜在GDP)(YF)」を実現することができます。

 

 

インフレギャップ

「インフレギャップ」とは「完全雇用GDP(潜在GDP)」における「需要と供給の差分(超過需要)」のことをいいます。

「完全雇用GDP(潜在GDP)」における需要量とは「完全雇用GDP(潜在GDP)」における総需要曲線上の需要量を示しており、「完全雇用GDP(潜在GDP)」における供給量とは、すべての国民が雇用された状態(非自発的失業が存在しない状態)で、全ての設備をフル稼働させた状態で提供できる最大の供給量を示しています。

 

 

「完全雇用GDP(潜在GDP)」において「超過需要」が発生するということは、企業がすべての国民を雇用して、かつ全ての設備をフル稼働しても需要量を賄うだけの財(モノやサービス)を供給できないということを表しています。

「完全雇用GDP(潜在GDP)」は、すべての国民が雇用された状態(非自発的失業が存在しない状態)で、全ての設備をフル稼働させた状態で提供できる最大の供給量であるため、「完全雇用GDP(潜在GDP)」よりも高い「GDP」を実現することはできません

また、「完全雇用GDP(潜在GDP)」でも、需要量を賄うだけの財(モノやサービス)を供給できないということは、既にインフレーション(物価の持続的な上昇)が発生している状態と考えられます。

ケインズ派の理論では「物価は一定と仮定する」という前提はありますが、ケインズも「インフレギャップ」はインフレーション(物価の持続的な上昇)が発生している状態であるとしています。

「政府による財政政策」や「中央銀行(日本銀行)による金融政策」によって需要量を減らすことができれば「インフレギャップ」を解消してインフレーション(物価の持続的な上昇)を抑制することができます。

 

 

需給ギャップ(GDPギャップ)

「需給ギャップ(GDPギャップ)」とは、景気や物価の動向を把握するために有効な指標であり、経済全体における「総需要(実質GDP)」と「潜在的な供給力(潜在GDP)」の差分を表した指標のことをいいます。

「総需要(実質GDP)」とは、個人消費や設備投資といった支出を積み上げた「国内総生産(GDP)」であり、「潜在的な供給力(潜在GDP)」とは、すべての国民が雇用された状態(非自発的失業が存在しない状態)で、全ての設備をフル稼働させた状態で提供できる最大の供給量です。

「需給ギャップ(GDPギャップ)」は、以下の計算式により求めることができます。

 

 

「需給ギャップ(GDPギャップ)」は、「デフレギャップ」や「インフレギャップ」との引っ掛け問題としてよく出題されますので、間違えないように注意が必要です。

「デフレギャップ」が発生している場合の「需給ギャップ(GDPギャップ)」は以下の図のようになります。

 

 

「需給ギャップ(GDPギャップ)」がマイナスとなっている場合は、「潜在的な供給力(潜在GDP)」の方が「総需要(実質GDP)」よりも多く「デフレギャップ」が発生している(超過供給)状態であり、景気が停滞しており、労働力や設備が過剰で、デフレーション(物価の持続的な下落)を引き起こしていることを表しています。

逆に、「需給ギャップ(GDPギャップ)」がプラスとなっている場合は、「総需要(実質GDP)」の方が「潜在的な供給力(潜在GDP)」よりも多く「インフレギャップ」が発生している(超過需要)状態であり、景気が過熱しており、労働力や設備が不足して、インフレーション(物価の持続的な上昇)を引き起こしていることを表しています。

「政府による財政政策」や「中央銀行(日本銀行)による金融政策」によって需要量を調整することにより「需給ギャップ(GDPギャップ)」を解消する必要があります。

 

総需要管理政策(有効需要管理政策)

経済政策による最大の目標は「完全雇用の実現」と「物価の安定」です。

「デフレギャップ」のときに、失業率を低減するために需要を増加させる対策を講じること、「インフレギャップ」のときに、インフレーションを抑制するために需要を減少させる政策を講じることを「総需要管理政策(有効需要管理政策)」といいます。

 

スタグフレーション

「スタグフレーション(Stagflation)」とは「停滞(Stagnation)」と「インフレーション(Inflation)」の合成語です。

景気が停滞して不況に陥ると通常は需要の減少に伴い物価は下落しますが、不況であるにもかかわらず、原油など原材料価格の高騰といった様々な理由により、持続的に物価が上昇することを「スタグフレーション」といいます

「スタグフレーション」が発生すると、不況により賃金が上がらない状況であるにもかかわらず、物価が上昇するという厳しい経済状態となります。

 

リフレーション

「リフレーション」とは、日本語では「通貨再膨張」と訳され、景気循環の中で「デフレーション」からは脱却したが、本格的な「インフレーション」には至っていない状態のことをいいます。

 

ディスインフレーション

「ディスインフレーション」とは、「インフレーション」が進行する中で、金融引き締め政策などにより物価上昇ペースが鈍化する経済状態のことをいいます。

なお、物価上昇ペースが鈍化したとはいえ、物価の上昇は続いている状況を表しているため、物価が下落する状態を示す「デフレーション」とは異なります。

 

試験問題

それでは、実際の試験問題を解いてみます。

【平成29年度 第5問】

需給ギャップ(GDPギャップ)は景気や物価の動向を把握するための有効な指標であり、マクロ経済政策の判断において重要な役割を果たしている。日本では、内閣府や日本銀行などがこれを推計し、公表している。

需給ギャップに関する記述として、最も適切なものはどれか。

 

ア オークンの法則によれば、需給ギャップがプラスのとき、雇用市場は過少雇用の状態にあると考えられる。
イ 需給ギャップのプラスが拡大しているとき、物価はディスインフレーションの状態にあると考えられる。
ウ 需給ギャップのマイナスが拡大しているとき、景気は後退していると考えられる。
エ 需給ギャップは、( 潜在GDP - 実際のGDP )÷ 実際のGDP によって計算される。

 

中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html

 

考え方と解答

需給ギャップに関する知識を問う問題です。

 

(ア) 不適切です。

「需給ギャップ(GDPギャップ)」がプラスとなっている場合は、「総需要(実質GDP)」の方が「潜在的な供給力(潜在GDP)」よりも多く「インフレギャップ」が発生している(超過需要)状態であり、景気が過熱しており、労働力や設備が不足して、インフレーション(物価の持続的な上昇)を引き起こしていることを表しています。

 

また、「オークンの法則」とは、1962年にアーサー=オークンが過去のデータに基づき提唱した「実質国内総生産(実質GDP)の成長率と失業率には負の相関関係がある」という経験則のことをいいます。

 

「オークンの法則」と「需給ギャップ(GDP)」の文章を1つにまとめると、「実質GDP」が成長すれば「需給ギャップ(GDP)」がプラスとなり労働力が不足するため雇用が拡大して「失業率」が減少するということになります。

つまり、「過小雇用」の状態ではなくなるということを表しています。

 

「過少雇用(不完全雇用/不完全就業)」とは、完全雇用に達していない雇用水準のことをいう。

 

したがって、オークンの法則によれば、需給ギャップがプラスのとき、雇用市場は過少雇用の状態ではなく雇用が拡大して過少雇用が改善している状態と考えられるため、選択肢の内容は不適切です

 

(イ) 不適切です。

「需給ギャップ(GDPギャップ)」がプラスとなっている場合は、「総需要(実質GDP)」の方が「潜在的な供給力(潜在GDP)」よりも多く「インフレギャップ」が発生している(超過需要)状態であり、景気が過熱しており、労働力や設備が不足して、インフレーション(物価の持続的な上昇)を引き起こしていることを表しています。

 

また、「ディスインフレーション」とは、「インフレーション」が進行する中で、金融引き締め政策などにより物価上昇ペースが鈍化する経済状態のことをいいます。なお、物価上昇ペースが鈍化したとはいえ、物価上昇は続いているため、物価が下落する状態を示す「デフレーション」とは異なります。

 

「需給ギャップ」のプラスが拡大しているときは、景気が過熱しており「インフレーション」が加速している経済状態を表していますが、「ディスインフレーション」とは、金融引き締め政策などにより「インフレーション」が抑制されている経済状態を表しているため「需給ギャップ」のプラスが縮小しているときであると考えられます。

 

したがって、需給ギャップのプラスが拡大しているとき、物価はディスインフレーションの状態ではなく、インフレーションが加速している状態にあると考えられるため、選択肢の内容は不適切です

 

(ウ) 適切です。

「需給ギャップ(GDPギャップ)」がマイナスとなっている場合は、「潜在的な供給力(潜在GDP)」の方が「総需要(実質GDP)」よりも多く「デフレギャップ」が発生している(超過供給)状態であり、景気が停滞しており、労働力や設備が過剰で、デフレーション(物価の持続的な下落)を引き起こしていることを表しています。

 

「需給ギャップ」のマイナスが拡大しているときは、景気が後退しており「デフレーション」が加速している経済状態であると考えられます。

 

したがって、需給ギャップのマイナスが拡大しているとき、景気は後退していると考えられるため、選択肢の内容は適切です

 

(エ) 不適切です。

「需給ギャップ(GDPギャップ)」とは、景気や物価の動向を把握するために有効な指標であり、経済全体における「総需要(実質GDP)」と「潜在的な供給力(潜在GDP)」の差分を表した指標のことをいいます。

「需給ギャップ(GDPギャップ)」は、以下の計算式により求めることができます。

 

 

したがって、需給ギャップは、( 潜在GDP - 実際のGDP )÷ 実際のGDP ではなく、 ( 実際のGDP - 潜在GDP )÷ 潜在GDP によって計算されるため、選択肢の内容は不適切です

 

答えは(ウ)です。


 

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