今回は、「経済学・経済政策 ~H30-18-1 利潤最大化仮説(3)費用最小化点~」について説明します。
目次
経済学・経済政策 ~平成30年度一次試験問題一覧~
平成30年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
等費用線・等産出量曲線(等量曲線)・費用最小化点 -リンク-
本ブログにて「等費用線」「等産出量曲線(等量曲線)」「費用最小化点」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- 等費用線・等産出量曲線(等量曲線)・費用最小化点のまとめ
- R4-16-1 利潤最大化仮説(6)等費用線
- R1-15-1 利潤最大化仮説(1)等費用線
- R1-15-2 利潤最大化仮説(2)費用最小化点
- H30-18-2 利潤最大化仮説(4)費用最小化点と技術的限界代替率
- H29-15 利潤最大化仮説(5)等費用線
等費用線
「等費用線」とは、生産活動において発生する費用である「資本」と「労働」という2つの生産要素を考えた場合、縦軸に「資本投入量」を、横軸に「労働投入量」を取ったグラフで表される「総費用が等しくなる生産要素(資本と労働)の投入量の組み合わせを結んだ曲線」のことをいいます。
等費用線
等産出量曲線(等量曲線)
「等産出量曲線(等量曲線)」とは、生産活動において発生する費用である「資本」と「労働」という2つの生産要素を考えた場合、縦軸に「資本投入量」を、横軸に「労働投入量」を取ったグラフで表される「産出量が等しくなる生産要素(資本と労働)の投入量の組み合わせを結んだ曲線」のことをいいます。
「等産出量曲線(等量曲線)」では「同一の等産出量曲線(等量曲線)上においてはどの点を取っても産出量は等しい」という特徴を理解しておくことが重要です。
等産出量曲線(等量曲線)
また、「等産出量曲線(等量曲線)」は以下の図のように「3本」しかないわけではなく無数に存在しており、右上にある「等産出量曲線(等量曲線)」ほど産出量が多いという特徴も理解しておくことが重要です。
技術的限界代替率(MRTS)
「技術的限界代替率」とは、生産活動において発生する費用である「資本」と「労働」という2つの生産要素を考えた場合、縦軸に「資本投入量」を、横軸に「労働投入量」を取ったグラフで表される「産出量が一定であるという条件において、労働投入量を1単位増加したときの資本投入量の減少分」のことをいい、「等産出量曲線(等量曲線)」の接線の傾きの絶対値として表されます。
「等産出量曲線(等量曲線)」は、原点に対して凸の形状をした曲線であり、労働投入量の増加に伴い「技術的限界代替率」が徐々に減少していきます(逓減する)。
費用最小化点
「費用最小化点」とは、生産活動において発生する費用である「資本」と「労働」という2つの生産要素を考えた場合、縦軸に「資本投入量」を、横軸に「労働投入量」を取ったグラフで表される「ある産出量を生産するための総費用を最小化する生産要素(資本と労働)の投入量の組み合わせを示す点」のことをいい、「等費用線」と「等産出量曲線(等量曲線)」の接点として表されます。
費用最小化点
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成30年度 第18問】
生産においては、生産要素を効率的に投入することが重要である。下図では、等産出量曲線と等費用線を用いて、最適な生産要素の投入量を考える。
この図に基づいて、下記の設問に答えよ。
(設問1)
この図に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア 点Aと点Bは、労働と資本の投入による費用は同じであるが、生産量が異なる。
イ 点Dでは、労働と資本の投入による費用は点Bより少ないが、生産量は多くなっている。
ウ 点Fでは、点Dよりも資本の投入が少なく、労働の投入が多いので、費用が少なくてすむ。
エ 費用を一定とした場合、点Aでは、労働の投入を増加させ、資本の投入を減少させることによって、生産量が増加する余地がある。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答(設問1)
等費用線と等産出量曲線(等量曲線)に関する知識を問う問題です。
生産活動において発生する費用である「資本」と「労働」という2つの生産要素を考えた場合、「等費用線」とは「総費用が等しくなる生産要素(資本と労働)の投入量の組み合わせを結んだ曲線」のことをいい、「等産出量曲線(等量曲線)」とは「産出量が等しくなる生産要素(資本と労働)の投入量の組み合わせを結んだ曲線」のことをいいます。
「費用最小化点」とは「ある産出量を生産するための総費用を最小化する生産要素(資本と労働)の投入量の組み合わせを示す点」のことをいい、「等費用線」と「等産出量曲線(等量曲線)」の接点として表されます。
費用最小化点
(ア)不適切です。
「点A」と「点B」は、同一の等費用線上にあり、かつ同一の等産出量曲線(等量曲線)にあるため、「点A」と「点B」の総費用は同額であり、かつ産出量も同量であることを示しています。
- 総費用:点A = 点B
- 産出量:点B = 点B
したがって、点Aと点Bは、労働と資本の投入による費用は同じであり、生産量も同じであるため、選択肢の内容は不適切です。
(イ) 不適切です。
等費用線については右上にある方が総費用が高くなり、かつ等産出量曲線(等量曲線)についても右上にある方が産出量が多くなるため、「点D」の方が「点B」よりも総費用が高く、産出量が多いことを示しています。
- 総費用:点B < 点D
- 産出量:点B < 点D
したがって、点Dでは、労働と資本の投入による費用は点Bより多くなっており、生産量も多くなっているため、選択肢の内容は不適切です。
(ウ) 不適切です。
「点D」と「点F」は、同一の等費用線上にあり、かつ同一の等産出量曲線(等量曲線)にあるため、「点D」と「点F」の総費用は同額であり、かつ産出量も同量であることを示しています。
- 総費用:点D = 点F
- 産出量:点D = 点F
したがって、点Fでは、点Dよりも資本の投入が少なく、労働の投入が多くなっていますが、労働と資本の投入による総費用は同額であるため、選択肢の内容は不適切です。
(エ) 適切です。
費用が一定である同一の等費用線上において、「点A」から、労働の投入量を増加させ、資本の投入量を減少させた点である「点E」について考えていきます。
「点E」は「点A」と同一の等費用線上にあり、等産出量曲線(等量曲線)と接する費用最小化点であるため、「点A」と「点E」の総費用は同額ですが、「点E」の方が「点A」よりも産出量が多くなっています。
- 総費用:点A = 点E
- 産出量:点A < 点E
つまり、費用を一定にするという条件において、労働の投入量を増加させて、資本の投入量を減少させることにより「点A」から「点E」に近づけていけば、産出量を増加させることができます。
したがって、費用を一定とした場合、点Aでは、労働の投入を増加させ、資本の投入を減少させることによって、生産量が増加する余地があるため、選択肢の内容は適切です。
答えは(エ)です。
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