今回は、「財務・会計 ~H23-5 企業結合(のれん)(3)~」について説明します。
目次
財務・会計 ~平成23年度一次試験問題一覧~
平成23年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
企業結合(のれん) -リンク-
本ブログにて「企業結合(のれん)」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
企業結合(のれん)の会計処理
企業結合(のれん)に関する会計処理は「企業結合に関する会計基準」の中で定められています。
「企業結合に関する会計基準」では、企業結合に該当する取引を以下の3種類に分類しています。
- 取得
「取得」とは、ある企業が他の企業に対する支配を獲得することをいい、共同支配企業の形成及び共通支配下の取引以外の企業結合をいう。 - 共同支配企業の形成
「共同支配企業」とは、複数の独立した企業により共同で支配される企業をいい、「共同支配企業の形成」とは、複数の独立した企業が契約等に基づき、当該共同支配企業を形成する企業結合をいう。 - 共同支配事業の取引
結合当事企業(又は事業)のすべてが、企業結合の前後で同一の株主により最終的に支配され、かつ、その支配が一時的ではない場合の企業結合をいう。親会社と子会社の合併及び子会社同士の合併は、共通支配下の取引に含まれる。
取得
「取得」とは、共同支配企業の形成及び共通支配下の取引以外の全ての企業結合と定義されているため非常に範囲が広いですが、一番イメージしやすいのは企業の買収であり、ある企業が他の企業に対する支配を獲得することをいいます。
企業を買収する場合、買収する側の企業を「取得企業」といい、買収される側の企業を「被取得企業」といいます。(厳密にはもう少し細かい定義があります。)
企業(取得企業)は買収することによって、企業そのものだけでなく、買収される側の企業(被取得企業)の信用力や技術力といった見えないブランド力を手に入れることができます。このように、見えない価値であるブランド力を金額に換算したものを「のれん」といいます。
例えば、「純資産(資産-負債)」が「100億円」の企業を「120億円」で買収した場合は、被取得企業の純資産だけではなく、金額としては現れないブランド力を「20億円」で手に入れたと考えます。この金額を「のれん」といいます。
また、「純資産(資産-負債)」が「100億円」の企業を「80億円」で買収した場合は、被取得企業の純資産を「20億円分」分割安で手に入れたと考えます。この金額を「負ののれん」といいます。
のれんの会計処理
「のれん」が生じた場合は、貸借対照表に「無形固定資産」として計上します。
「のれん」は、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法によって規則的に償却を行い、「販売費及び一般管理費」として計上します。
ただし、「のれん」の金額に重要性が乏しい場合には「のれん」が生じた事業年度の損益計算書において費用として処理することもできます。
負ののれんの会計処理
「負ののれん」は、原則として「負ののれん」が生じた事業年度の損益計算書において「特別利益」として計上します。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成23年度 第5問】
当社は1株あたり時価5万円の新株1,000株(1株の払込金額は5万円、その2分の1を資本金に組み入れる)を発行してX社を吸収合併し、同社に対する支配を獲得した。X社の合併直前の資産総額は6,000万円、負債総額は4,000万円、合併時の資産の時価は7,000万円、負債の時価は4,000万円であった。のれんの金額として最も適切なものはどれか。
ア 1,000万円
イ 2,000万円
ウ 2,500万円
エ 3,000万円
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
取得企業(当社)が「X社(被取得企業)」を吸収合併するときに計上される「のれん(または負ののれん)」の計上金額を求められています。
企業の吸収合併は、企業結合の「取得」に分類されるため、「パーチェス法」により会計処理を行います。
「パーチェス法」では、時価で評価した被取得企業の資産および負債から「純資産(資産-負債)」を算定して、その「純資産」と取得企業が支払う「取得原価(時価)」との差分から「のれん(または負ののれん)」を求めていきます。
今回の吸収合併にあたって、取得企業(当社)が「1株あたり5万円」の新株を「1,000株」発行しているため、取得価額は「1株あたり5万円 × 1,000株 = 5,000万円」です。
被取得企業である「X社」における「資産(時価)」と「負債(時価)」の差額が「3,000万円」であることから、「企業価値:3,000万円」の企業を「取得価額:5,000万円」で購入したこととなり、その差額が「のれん(2,000万円)」ということになります。
問題文の中で、「新株の発行に際して払い込まれた金額の2分の1を資本金に組み入れる」といった記載がありますが、これは新株を発行した取得企業(当社)が新株発行により調達した資金のうち、どれだけを資本金に組み入れるかということを表した記述であり、X社を吸収合併する上での「のれん」の算定には関係しません。
新株発行における資本金への組み入れ額
企業が株式を発行して資金を調達する場合、資本金に計上すべき金額は「会社法」によって以下の通り定められています。
原則 | 払込金額の全額を資本金とする。 |
容認 | 払込金額の2分の1以上を資本金とし、残額は資本準備金(株式払込剰余金)とする。 |
上表の通り、株主から払い込まれたすべての資金を資本金として計上する必要はありません。
例えば、資本金が大きくなると、中小企業の優遇税制が受けられなくなるなどのデメリットがあるため、資本金ではなく資本準備金に計上するケースも考えられます。
ちなみに、資本準備金とは、会社の業績が悪化した場合に発生した欠損金の填補などに使用されます。
X社の吸収合併における取得企業(当社)の仕訳
借方 | 貸方 | ||
資産 のれん |
7,000万円 2,000万円 |
負債 資本金 資本準備金 |
4,000万円 2,500万円 2,500万円 |
答えは(イ)です。
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