今回は、「経済学・経済政策 ~H28-20 生産関数と限界生産性(4)限界生産物/平均生産物~」について説明します。
目次
経済学・経済政策 ~平成28年度一次試験問題一覧~
平成28年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
総生産物曲線・生産関数 -リンク-
本ブログにて「総生産物曲線」「生産関数」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- 総生産物曲線・生産関数のまとめ
- R3-12 生産関数と限界生産性(11)全要素生産性
- R2-16 生産関数と限界生産性(1)総生産物曲線/労働需要曲線
- R1-14 生産関数と限界生産性(2)総生産物曲線
- R1-20 生産関数と限界生産性(3)コブ=ダグラス型生産関数
- H27-11 生産関数と限界生産性(5)新古典派の経済成長モデル
- H27-16 生産関数と限界生産性(6)コブ=ダグラス型生産関数
- H26-13-1 生産関数と限界生産性(7)限界生産物/平均生産物
- H26-13-2 生産関数と限界生産性(8)労働需要曲線
- H25-11 生産関数と限界生産性(9)新古典派の経済成長モデル
- H24-18 生産関数と限界生産性(10)限界生産物/平均生産物
総生産物曲線
「総生産物曲線」とは、縦軸に「生産量(産出量)」を、横軸に「生産要素の投入量」を取ったグラフで表される「生産要素を投入したときに産出される生産物の量を表す曲線」のことをいいます。
「生産量(産出量)」を増減させる「生産要素の投入量」には「労働投入量(労働量)」と「資本投入量(資本量)」の2種類の要素があります。
「労働投入量(労働量)」は、労働者の雇用調整などによって短期であっても増減させることができますが、設備投資を伴う「資本投入量(資本量)」の増減には、ある程度の長い期間が必要となります。
生産要素の投入量(労働投入量)
「生産量(産出量)」を増減させる「生産要素の投入量」には「労働投入量(労働量)」と「資本投入量(資本量)」の2種類の要素がありますが、労働者の雇用調整などによって短期であっても増減させることができる「労働投入量(労働量)」と「生産量(産出量)」の関係を確認していきます。
労働の限界生産物
「労働の限界生産物」とは、「労働投入量(労働量)」を1単位増加したときの「生産量(産出量)」の増加分のことをいいます。
「労働の限界生産物」は、縦軸に「生産量(産出量)」を、横軸に「労働投入量(労働量)」を取ったグラフに描かれた「総生産物曲線」の接線の「傾き」として表されます。
労働の平均生産物
「労働の平均生産物」とは、「労働投入量(労働量)」1単位当たりの「生産量(産出量)」のことをいい、「生産量(産出量)」を「労働投入量(労働量)」で除することにより求めることができます。
「労働の平均生産物」は、縦軸に「生産量(産出量)」を、横軸に「労働投入量(労働量)」を取ったグラフに描かれた「総生産物曲線」上の点と原点を結んだ直線の「傾き」として表されます。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成28年度 第20問】
いま、ある1つの投入要素のみを使って、1つの生産財を生産する企業を考える。この企業の生産活動を規定する生産関数は、下図のような形状をしているものとし、要素投入量はゼロより大きい。下図に関する記述として、最も適切なものの組み合わせを下記の解答群から選べ。なお、ある要素投入量Xに対する生産量がYであるとき、Y÷Xを「平均生産物」と呼び、ある要素投入量に対応する生産関数の接線の傾きを「限界生産物」と呼ぶこととする。
a 平均生産物の大きさは、要素投入量が増えるほど小さくなる。
b 限界生産物の大きさは、要素投入量には依存しない。
c どの要素投入量においても、平均生産物の大きさは、限界生産物の大きさよりも大きい。
d 要素投入量がある程度まで大きくなると、限界生産物の大きさは、平均生産物の大きさよりも大きくなる。
[解答群]
ア aとc
イ aとd
ウ bとc
エ bとd
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
生産要素の限界生産物と平均生産物に関する知識を問う問題です
「総生産物曲線」とは、縦軸に「生産量(産出量)」を、横軸に「生産要素の投入量」を取ったグラフで表される「生産要素を投入したときに産出される生産物の量を表す曲線」のことをいいます。
「生産量(産出量)」を増減させる「生産要素の投入量」には「労働投入量(労働量)」と「資本投入量(資本量)」の2種類の要素があります。
「労働投入量(労働量)」は、労働者の雇用調整などによって短期であっても増減させることができますが、設備投資を伴う「資本投入量(資本量)」の増減には、ある程度の長い期間が必要となります。
今回の問題では、「生産量(Y)」は、資本や労働といった具体的な要素ではなく、1つの生産要素の投入量のみに依存するとされています。
(a) 適切です。
「平均生産物」は、縦軸に「生産量(産出量)」を、横軸に「要素投入量」を取ったグラフにおいて生産関数に基づき描かれた「総生産物曲線」上の点と原点を結んだ直線の「傾き」として表されます。
以下の図に示す通り、「要素投入量」が増加するに伴って「平均生産物」は逓減していきます。
したがって、平均生産物の大きさは、要素投入量が増えるほど小さくなるため、選択肢の内容は適切です。
(b) 不適切です。
「限界生産物」は、縦軸に「生産量(産出量)」を、横軸に「要素投入量」を取ったグラフにおいて生産関数に基づき描かれた「総生産物曲線」の接線の「傾き」として表されます。
以下の図に示す通り、「要素投入量」が増加するに伴って「限界生産物」は逓減していきます。
したがって、限界生産物の大きさは、要素投入量に依存するため、選択肢の内容は不適切です。
(c) 適切です。
「平均生産物」と「限界生産物」を1つのグラフにまとめると分かりますが、今回の問題で与えられた生産関数に基づき描かれた「総生産物曲線」においては「要素投入量」に関わらず「平均生産物」の方が「限界生産物」よりも必ず大きくなります。
「総生産物曲線」の形状によっては「平均生産物」と「限界生産物」が等しくなることはあります。(ただし「限界生産物」の方が大きくなることはありません。)
「令和元年度 第14問」において出題されている「総生産物曲線」において「原点O」から「総生産物曲線」上の「点A」を通るように描かれた直線の傾きは「点A」における「労働の平均生産物」を示しており、これは「点A」における「総生産物曲線」の接線の「傾き」である「労働の限界生産物」と一致しています。
したがって、どの要素投入量においても、平均生産物の大きさは、限界生産物の大きさよりも大きいため、選択肢の内容は適切です。
(d) 不適切です。
(c)で説明した通り、今回の問題で与えられた生産関数に基づき描かれた「総生産物曲線」においては「要素投入量」に関わらず「平均生産物」の方が「限界生産物」よりも必ず大きくなります。
したがって、要素投入量がある程度まで大きくなっても、限界生産物の大きさは、平均生産物の大きさよりも大きくなることはないため、選択肢の内容は不適切です。
(a)と(c)に記述されている内容が適切であるため、答えは(ア)です。
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