今回は、「経済学・経済政策 ~H26-13-1 生産関数と限界生産性(7)限界生産物/平均生産物~」について説明します。
目次
経済学・経済政策 ~平成26年度一次試験問題一覧~
平成26年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
総生産物曲線・生産関数 -リンク-
本ブログにて「総生産物曲線」「生産関数」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- 総生産物曲線・生産関数のまとめ
- R3-12 生産関数と限界生産性(11)全要素生産性
- R2-16 生産関数と限界生産性(1)総生産物曲線/労働需要曲線
- R1-14 生産関数と限界生産性(2)総生産物曲線
- R1-20 生産関数と限界生産性(3)コブ=ダグラス型生産関数
- H28-20 生産関数と限界生産性(4)限界生産物/平均生産物
- H27-11 生産関数と限界生産性(5)新古典派の経済成長モデル
- H27-16 生産関数と限界生産性(6)コブ=ダグラス型生産関数
- H26-13-2 生産関数と限界生産性(8)労働需要曲線
- H25-11 生産関数と限界生産性(9)新古典派の経済成長モデル
- H24-18 生産関数と限界生産性(10)限界生産物/平均生産物
総生産物曲線
「総生産物曲線」とは、縦軸に「生産量(Y)」を、横軸に「生産要素の投入量」を取ったグラフに表される「生産要素の投入量と生産可能な最大産出量の関係を表す曲線(生産関数)」のことをいいます。
生産関数
「生産関数」とは、生産要素の投入量と生産可能な最大産出量の関係を表す関数のことをいいます。「生産関数」には以下のようなものがありますが、今回は「コブ=ダグラス型生産関数」について説明していきます。
- コブ=ダグラス型生産関数
- CES生産関数
- 固定係数型生産関数
コブ=ダグラス型生産関数
「コブ=ダグラス型生産関数」とは、1920年代にC・W・コブとP・H・ダグラスがアメリカ経済の実証分析を行う際に使用した生産関数であり、生産活動に投入される「生産要素」である「労働投入量(N)」と「資本投入量(K)」から「生産量(Y)」を求める関数のことをいいます。
「コブ=ダグラス型生産関数」には以下の特徴があります。
- 生産要素(労働と資本)の限界生産物(限界生産力)は逓減する( 0<α<1 / 0<β<1 )
- 規模に関する収穫一定(収穫不変)である(α+β=1)
- 1次同次関数である(α+β=1)
- 生産要素をともにN倍すると生産量もN倍となる(α+β=1)
- 代替の弾力性が1である
生産要素(労働と資本)の限界生産物(限界生産力)は逓減する
「コブ=ダグラス型生産関数」を構成する生産要素には「労働」と「資本」の2種類があります。
「コブ=ダグラス型生産関数」には「 0<α<1 / 0<β<1 」との仮定があるため「労働」と「資本」の「限界生産物(限界生産力)」は逓減します。
「労働投入量(N)」の冪指数(上付き文字の部分/●乗の部分)である「労働分配率(α)」には「 0<α<1 」との仮定があるため「労働投入量(N)」の増加に伴って「労働の限界生産物(限界生産力)」は徐々に小さくなります(逓減します)。
同様に、「資本投入量(K)」の冪指数(上付き文字の部分/●乗の部分)である「資本分配率(β)」には「 0<β<1 」との仮定があるため「資本投入量(K)」の増加に伴って「資本の限界生産物(限界生産力)」は徐々に小さくなります(逓減します)。
縦軸に「生産量(Y)」を、横軸に「労働投入量(N)」を取ったグラフに「労働」の「総生産物曲線」を描画すると、「労働分配率(α)」には「 0<α<1 」との仮定があるため「総生産物曲線」は「左上に凸の曲線」となります。
「労働の限界生産物(限界生産力)」とは「労働投入量(N)」を1単位増加したときの「生産量(Y)」の増加分のことをいいます。
「労働の限界生産物(限界生産力)」は、縦軸に「生産量(Y)」を、横軸に「労働投入量(N)」を取ったグラフに描かれた「総生産物曲線」の接線の「傾き」として表されます。
「総生産物曲線」の接線の「傾き」である「労働の限界生産物(限界生産力)」は「労働投入量(N)」の増加に伴って徐々に小さくなる(逓減する)ことが分かります。
数学的に見た場合、仮に「労働分配率(α)」が「α=1」であれば「労働投入量(N)」と「生産量(Y)」の関係を表す「生産関数」は「Y=N」となるため「生産関数」に基づき描かれる「総生産物曲線」は直線となります。
また、「労働分配率(α)」が「α>1」であれば「総生産物曲線」は「右下に凸の曲線」となり「労働投入量(N)」の増加に伴い「限界生産物(限界生産力)」は逓増します。(例えば「α=2」であれば「生産関数」は「Y=N²」です。)
規模に関する収穫一定(収穫不変)である
「コブ=ダグラス型生産関数」には「 α+β=1 」との仮定があるため、以下の3つの特徴があります。
「コブ=ダグラス型生産関数」において、「労働投入量(N)」と「資本投入量(K)」を2倍にしたときの「生産量(Y)」を確認します。
- Y=Nα×K(1-α)
- Y=2Nα×2K(1-α) → 「労働投入量(N)」と「資本投入量(K)」を2倍にする
- Y=2(α+(1-α))×Nα×K(1-α)
- Y=21 × Nα×K(1-α) → 「2」の1乗となるため1次同次関数という
- Y=2 × Nα×K(1-α) → 「生産量(Y)」は2倍になる
「 α+β=1 」との仮定がある「コブ=ダグラス型生産関数」において「労働投入量(N)」と「資本投入量(K)」の「投入比率(N:K)」を変更せずに、それぞれの投入量を増加すると「労働分配率(α)」や「資本分配率(β)」に関係なく「生産量(Y)」は比例的に増加していきます。
このように、「生産要素の投入量」を増加したときに「生産量(Y)」が比例的に増加することを「規模に関する収穫一定(収穫不変)である」といいます。
収穫逓減/収穫一定(収穫不変)/収穫逓増
規模に関する「収穫逓減/収穫一定(収穫不変)/収穫逓増」をグラフで表すと以下の通りとなります。
生産要素
生産活動に投入される「生産要素」には「労働」と「資本」の2種類があります。
「労働」は労働者の雇用調整などによって短期であっても増減させることができますが、設備投資を伴う「資本」を増減させるには、ある程度の長い期間が必要となります。
「労働」と「資本」のどちらでも考え方は変わらないため、ここからは「労働」を例に説明します。
労働
労働者の雇用調整などによって短期であっても増減させることができる「労働投入量(労働量)」と「生産量(産出量)」の関係を確認します。
労働の限界生産物(限界生産力)
「労働の限界生産物(限界生産力)」とは「労働投入量(N)」を1単位増加したときの「生産量(Y)」の増加分のことをいいます。
「労働の限界生産物(限界生産力)」は、縦軸に「生産量(Y)」を、横軸に「労働投入量(N)」を取ったグラフに描かれた「総生産物曲線」の接線の「傾き」として表されます。
上図に示した「総生産物曲線(生産関数)」においては、「総生産物曲線」の接線の「傾き」である「労働の限界生産物(限界生産力)」は「労働投入量(N)」の増加に伴って徐々に小さくなる(逓減する)ことが分かります。
「労働投入量(N)」の増加に伴って「労働の限界生産物(限界生産力)」が必ず逓減するということではありません。
あくまで、上図に示した「総生産物曲線(生産関数)」においては、「労働投入量(N)」の増加に伴って「労働の限界生産物(限界生産力)」は逓減するということを表しています。
例えば、「令和元年度 第14問」で与えられた「総生産物曲線(生産関数)」では、「労働投入量(労働量)」を「原点O」から徐々に増加していくと「労働の限界生産物」は逓増して「点A」の手前で最大となり、その後逓減していき「点B」においてゼロとなります。「労働投入量(労働量)」をさらに増加していくと「労働の限界生産物」はマイナスとなり、そのマイナス幅は徐々に大きくなっていきます。
労働の平均生産物(平均生産力)
「労働の平均生産物(平均生産力)」とは「労働投入量(N)」1単位当たりの「生産量(Y)」のことをいい、「生産量(Y)」を「労働投入量(N)」で除することにより求めることができます。
「労働の平均生産物(平均生産力)」は、縦軸に「生産量(Y)」を、横軸に「労働投入量(N)」を取ったグラフに描かれた「総生産物曲線」上の点と原点を結んだ直線の「傾き」として表されます。
上図に示した「総生産物曲線(生産関数)」においては、「総生産物曲線」上の点と原点を結んだ直線の「傾き」である「労働の平均生産物(平均生産力)」は「労働投入量(N)」の増加に伴って徐々に小さくなる(逓減する)ことが分かります。
「労働投入量(N)」の増加に伴って「労働の平均生産物(平均生産力)」が必ず逓減するということではありません。
あくまで、上図に示した「総生産物曲線(生産関数)」においては、「労働投入量(N)」の増加に伴って「労働の平均生産物(平均生産力)」は逓減するということを表しています。
例えば、「令和元年度 第14問」で与えられた「総生産物曲線(生産関数)」では、「労働投入量(労働量)」を「原点O」から徐々に増加していくと「労働の平均生産物」は「原点O」の近くで最小となり、その後増加して「点A」で最大となった後、減少していきます。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【平成26年度 第13問】
下図の形状をした生産関数について下記の設問に答えよ。ただし、ここでの生産に投入される要素は労働のみであり、その投入量はゼロより大きいものとする。
(設問1)
この図に関する説明として最も適切なものはどれか。
ア この生産関数では、限界生産物は労働の投入量が増加するほど大きくなる。
イ この生産関数では、ある労働の投入量のもとで平均生産物は限界生産物よりも大きい。
ウ この生産関数では、平均生産物は労働の投入量が増加するほど大きくなる。
エ この生産関数は、収穫一定であることを示している。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
労働の限界生産物と平均生産物に関する知識を問う問題です。
(ア) 不適切です。
「労働の限界生産物(限界生産力)」は、縦軸に「生産量(Y)」を、横軸に「労働投入量(N)」を取ったグラフに描かれた「総生産物曲線」の接線の「傾き」として表されます。
問題で与えられた「総生産物曲線(生産関数)」においては、「総生産物曲線」の接線の「傾き」である「労働の限界生産物(限界生産力)」は「労働投入量(N)」の増加に伴って徐々に小さくなる(逓減する)ことが分かります。
したがって、この生産関数では、限界生産物は労働の投入量が増加するほど大きくなるのではなく小さくなるため、選択肢の内容は不適切です。
(イ)適切です。
「労働の限界生産物(限界生産力)」は、縦軸に「生産量(Y)」を、横軸に「労働投入量(N)」を取ったグラフに描かれた「総生産物曲線」の接線の「傾き」として表されます。
「労働の平均生産物(平均生産力)」は、縦軸に「生産量(Y)」を、横軸に「労働投入量(N)」を取ったグラフに描かれた「総生産物曲線」上の点と原点を結んだ直線の「傾き」として表されます。
問題で与えられた「総生産物曲線(生産関数)」上の「点A」「点B」「点C」において「労働の限界生産力(限界生産物)」と「労働の平均生産力(平均生産物)」の大きさを比較します。
問題で与えられた「総生産物曲線(生産関数)」では「労働投入量(N)」に関わらず「労働の平均生産力(平均生産物)」の方が「労働の限界生産力(限界生産物)」よりも大きくなっていることが分かります。
原点の近くでは「労働の限界生産力(限界生産物)」と「労働の平均生産力(平均生産物)」の差は大きくありませんが、「労働投入量(N)」の増加に伴って「労働の限界生産力(限界生産物)」と「労働の平均生産力(平均生産物)」の差は大きくなっていきます。
したがって、この生産関数では、ある労働の投入量のもとで平均生産物は限界生産物よりも大きいため、選択肢の内容は適切です。
(ウ) 不適切です。
「労働の平均生産物(平均生産力)」は、縦軸に「生産量(Y)」を、横軸に「労働投入量(N)」を取ったグラフに描かれた「総生産物曲線」上の点と原点を結んだ直線の「傾き」として表されます。
問題で与えられた「総生産物曲線(生産関数)」においては、「総生産物曲線」上の点と原点を結んだ直線の「傾き」である「労働の平均生産物(平均生産力)」は「労働投入量(N)」の増加に伴って徐々に小さくなる(逓減する)ことが分かります。
したがって、この生産関数では、平均生産物は労働の投入量が増加するほど大きくなるのではなく小さくなるため、選択肢の内容は不適切です。
(エ) 不適切です。
「労働の限界生産物(限界生産力)」は、縦軸に「生産量(Y)」を、横軸に「労働投入量(N)」を取ったグラフに描かれた「総生産物曲線」の接線の「傾き」として表されます。
問題で与えられた「総生産物曲線(生産関数)」においては、「総生産物曲線」の接線の「傾き」である「労働の限界生産物(限界生産力)」は「労働投入量(N)」の増加に伴って徐々に小さくなる(逓減する)ことが分かります。
「労働投入量(N)」の増加に伴って「労働の限界生産力(限界生産物)」が逓減するため、問題で与えられた生産関数は「規模に関する収穫逓減」を示しています。
収穫逓減/収穫一定(収穫不変)/収穫逓増
規模に関する「収穫逓減/収穫一定(収穫不変)/収穫逓増」をグラフで表すと以下の通りとなります。
したがって、この生産関数は、収穫一定ではなく収穫逓減であることを示しているため、選択肢の内容は不適切です。
答えは(イ)です。
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