今回は、「運営管理 ~R5-25 まちづくり三法(10)大規模小売店舗立地法~」について説明します。
目次
運営管理 ~令和5年度一次試験問題一覧~
令和5年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
- 運営管理 ~令和5年度一次試験問題一覧~
大規模小売店舗立地法・中心市街地活性化法・都市計画法 -リンク-
本ブログにて「大規模小売店舗立地法」「中心市街地活性化法」「都市計画法」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- まちづくり三法(大規模小売店舗立地法・中心市街地活性化法・都市計画法)のまとめ
- R4-23 まちづくり三法(8)中心市街地活性化法
- R4-24 まちづくり三法(9)都市計画法
- R2-23 まちづくり三法(7)大規模小売店舗立地法
- R1-23 まちづくり三法(6)都市計画法
- H30-21 まちづくり三法(1)まちづくり三法
- H29-23 まちづくり三法(2)都市計画法
- H29-26 まちづくり三法(3)大規模小売店舗立地法
- H28-23 まちづくり三法(4)中心市街地活性化法
- H27-23 まちづくり三法(5)都市計画法
まちづくり三法
「まちづくり三法」は、市街地の郊外への拡散を抑制し、街の機能を中心市街地に集中させるコンパクトシティの考え方に基づいており、「大規模小売店舗立地法(大店立地法)」「中心市街地活性化法」「都市計画法」の3つの法律で構成されています。
まちづくり三法の背景と関係性
中小小売業の事業機会を確保することを目的として「大規模小売店舗法(大店法)」が、1973年に制定、1974年に施行されましたが、1990年代に入ってから「大規模小売店舗法(大店法)」が「トイザらス」の日本出店に対する障壁となったことをきっかけとして国際社会から批判を受けたため、1998年に「大規模小売店舗法(大店法)」が廃止され、その代わりに「大規模小売店舗立地法(大店立地法)」が1998年に制定、2000年に施行されました。
しかし、「大規模小売店舗立地法(大店立地法)」が施行されると、郊外への大規模小売店舗の出店が増加して中心市街地の衰退や空洞化が目立つようになったため、「中心市街地活性化法」と「都市計画法」を改正して、郊外に大規模小売店舗を出店できないようにしました。
大規模小売店舗立地法(大店立地法)
「大規模小売店舗立地法(大店立地法)」では、周辺地域の生活環境を保護するという観点から、建物内の店舗面積の合計が1,000㎡を超える大規模小売店舗を対象として、配慮すべき交通渋滞、騒音、廃棄物等に関する事項を定め、施設の配置や運営方法について規制しています。
中小小売業の事業機会を確保するという目的で大規模店舗の新設を禁止した「大規模小売店舗法(大店法)」に対する国際社会からの批判に対処する形で、1998年に同法を廃止しましたが、その代わりに同年に制定され、2000年に施行されたのが「大規模小売店舗立地法(大店立地法)」です。
大規模小売店舗立地法(大店立地法)
「大規模小売店舗立地法(大店立地法)」では、周辺地域の生活環境を保護するという観点から、建物内の店舗面積の合計が1,000㎡を超える大規模小売店舗を対象として、配慮すべき交通渋滞、騒音、廃棄物等に関する事項を定め、施設の配置や運営方法について規制しています。
届け出
「大規模小売店舗立地法(大店立地法)」では、「建物の設置者」が「都道府県」に対して届け出を行うことを義務付けています。「建物の設置者」とは「建物所有者」のことであり「賃借権」や「借用権」を有する者は含まれません。
「大規模小売店舗」を新設する場合、開店予定日の8ヵ月前までに届け出を提出する必要があります。
届け出の項目
「建物の設置者」が「都道府県」に提出する届け出に記載する項目を以下に示します。
- 店舗名称及び所在地
- 設置者
- 小売業者
- 新設日(変更日)
- 店舗面積の合計
- 施設の配置に関する事項
- 駐車場の台数
- 駐輪場の台数
- 荷さばき施設の面積
- 廃棄物保管施設の容量
- 施設の運営に関する事項
- 開店時刻及び閉店時刻
- 駐車場利用可能時間帯
- 駐車場の出入口の数及び位置
- 荷さばきの時間帯
「大規模小売店舗法(大店法)」では、中小小売業の事業機会を確保することを目的としていたため、届け出るべき項目は以下の通りでした。(少ないです。)
- 開店日
- 店舗面積
- 閉店時刻
- 休業日数
建物の設置者が配慮すべき基本的な事項
「大規模小売店舗」の新設に際して、「建物の設置者」が配慮すべき基本的な事項は以下の通りです。
- 立地に伴う周辺地域の生活環境への影響に関する事前調査、予測及び適切な対応
- 説明会における地域住民への適切な説明
- 都道府県等からの意見に対する誠意ある対応
- 設置者・小売業者等による必要な措置の履行確保と責任体制の明確化
- 店舗開店後の適切な対応(必要に応じ追加的な対応策を講じる等)
大規模小売店舗の施設の配置及び運営方法に関する事項
「大規模小売店舗」の新設に際して、配慮すべき交通渋滞、騒音、廃棄物等に関する事項とそのための施設の配置や運営方法を以下に示します。
駐車需要の充足その他による大型店の周辺の地域の住民の利便及び商業その他の業務の利便の確保のために配慮すべき事項
- 駐車需要の充足等交通に係る事項
- 駐車場の必要台数の確保、位置、構造等
- 駐輪場の確保
- 自動二輪車の駐車場の確保
- 荷さばき施設の整備
- 経路の設定等(案内表示、掲示板の設置、交通整理員の配置等)
- 歩行者の通行の利便の確保等
- 廃棄物減量化及びリサイクルについての配慮
- 防災、防犯対策への協力
騒音の発生その他による大型店の周辺の地域の生活環境の悪化の防止のために配慮すべき事項
- 騒音の発生に係る事項
- 騒音発生の防止または緩和、防音対策、店舗及び施設の運営方法 (施設・設備の配置計画等の配慮、荷さばき作業等の運営方法の配慮)
- 大型店から発生する騒音全体の予測・評価方法、夜間において発生する個々の騒音の予測・評価方法
- 廃棄物に係る事項
- 保管のための施設容量の確保、保管場所の位置、構造
- 廃棄物等の運搬、処理方法
- 廃棄物等に関連する対応方策(悪臭防止のための機器設置、清掃実施等)
- 街並みづくり等への配慮等
店舗面積
「大規模小売店舗立地法(大店立地法)」では、建物内の店舗面積の合計が1,000㎡を超える大規模小売店舗を対象としていますが、店舗として使用していない以下の箇所の床面積は含まれません。
- 階段、エスカレーター、エレベーター
- 売場間通路、連絡通路
- 休憩室
- 公衆電話室
- トイレ
- 事務室
- 荷扱所
- 食堂
- 屋上 など
適用対象とする小売店舗
「大規模小売店舗立地法(大店立地法)」が適用される小売店舗に関する注意事項を以下に示します。
- 飲食店は含まない。
- 物品加工修理業は含む。
- 生協・農協は含む。(営利目的か否かは問わない)
建物の設置者に対する意見・勧告
「都道府県」は区市町村等からの意見や指針の内容に基づき、大規模小売店舗の周辺地域の生活環境を保持する観点から「建物の設置者」に対して意見を述べることができます。
また、「建物の設置者」が、この意見を適正に反映せず、周辺地域の生活環境に著しい悪影響を及ぼす事態の発生を回避することが困難であると認められるときは、「建物の設置者」に対して「勧告」を行うことができます。
さらに、正当な理由がなく、この「勧告」に従わなかったときは、その旨を公表することができます。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【令和5年度 第25問】
大規模小売店舗立地法に関する記述として、最も適切なものはどれか。
ア この法律の主な目的は、大規模小売店舗における小売業の事業活動を調整することにより、その周辺の中小小売業の事業活動の機会を適正に確保することである。
イ この法律の施行に伴い、地域商業の活性化を図ることを目的として大規模小売店舗法の規制が強化された。
ウ この法律の対象は、店舗面積が1,000m²を超える小売業を営む店舗であり、飲食店業を営む店舗は含まれない。
エ この法律の役割は、商店街が地域コミュニティの担い手として行う地域住民の生活の利便を高める試みを支援することである。
オ 大規模小売店舗を新設する場合、開店後1ヵ月以内に新設に関する届出をしなければならない。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
大規模小売店舗立地法(大店立地法)に関する知識を問う問題です。
(ア)不適切です。
「大規模小売店舗立地法(大店立地法)」では、周辺地域の生活環境を保護するという観点から、建物内の店舗面積の合計が1,000㎡を超える大規模小売店舗を対象として、配慮すべき交通渋滞、騒音、廃棄物等に関する事項を定め、施設の配置や運営方法について規制しています。
大規模小売店舗立地法
(目的)
第一条 この法律は、大規模小売店舗の立地に関し、その周辺の地域の生活環境の保持のため、大規模小売店舗を設置する者によりその施設の配置及び運営方法について適正な配慮がなされることを確保することにより、小売業の健全な発達を図り、もって国民経済及び地域社会の健全な発展並びに国民生活の向上に寄与することを目的とする。
したがって、この法律の主な目的は、大規模小売店舗における小売業の事業活動を調整することにより、その周辺の中小小売業の事業活動の機会を適正に確保することではなく、大規模小売店舗の立地に関し、その周辺の地域の生活環境の保持のため、大規模小売店舗を設置する者によりその施設の配置及び運営方法について適正な配慮がなされることを確保することにより、小売業の健全な発達を図り、もって国民経済及び地域社会の健全な発展並びに国民生活の向上に寄与することであるため、選択肢の内容は不適切です。
(イ)不適切です。
「大規模小売店舗立地法(大店立地法)」では、周辺地域の生活環境を保護するという観点から、建物内の店舗面積の合計が1,000㎡を超える大規模小売店舗を対象として、配慮すべき交通渋滞、騒音、廃棄物等に関する事項を定め、施設の配置や運営方法について規制しています。
中小小売業の事業機会を確保するという目的で大規模店舗の新設を禁止した「大規模小売店舗法(大店法)」に対する国際社会からの批判に対処する形で、1998年に同法を廃止しましたが、その代わりに同年に制定され、2000年に施行されたのが「大規模小売店舗立地法(大店立地法)」です。
したがって、この法律の施行に伴い、地域商業の活性化を図ることを目的として大規模小売店舗法の規制が強化されたのではなく、大規模小売店舗法は廃止されたため、選択肢の内容は不適切です。
(ウ)適切です。
「大規模小売店舗立地法(大店立地法)」では、周辺地域の生活環境を保護するという観点から、建物内の店舗面積の合計が1,000㎡を超える大規模小売店舗を対象として、配慮すべき交通渋滞、騒音、廃棄物等に関する事項を定め、施設の配置や運営方法について規制しています。
店舗面積
「大規模小売店舗立地法(大店立地法)」では、建物内の店舗面積の合計が1,000㎡を超える大規模小売店舗を対象としていますが、店舗として使用していない以下の箇所の床面積は含まれません。
- 階段、エスカレーター、エレベーター
- 売場間通路、連絡通路
- 休憩室
- 公衆電話室
- トイレ
- 事務室
- 荷扱所
- 食堂
- 屋上 など
適用対象とする小売店舗
「大規模小売店舗立地法(大店立地法)」が適用される小売店舗に関する注意事項を以下に示します。
- 飲食店は含まない。
- 物品加工修理業は含む。
- 生協・農協は含む。(営利目的か否かは問わない)
したがって、この法律の対象は、店舗面積が1,000m²を超える小売業を営む店舗であり、飲食店業を営む店舗は含まれないため、選択肢の内容は適切です。
(エ)不適切です。
「大規模小売店舗立地法(大店立地法)」では、周辺地域の生活環境を保護するという観点から、建物内の店舗面積の合計が1,000㎡を超える大規模小売店舗を対象として、配慮すべき交通渋滞、騒音、廃棄物等に関する事項を定め、施設の配置や運営方法について規制しています。
また、「地域商店街活性化法」とは、商店街が「地域コミュニティの担い手」として行う地域住民の生活の利便を高める取組を支援することにより、地域と一体となったコミュニティづくりを促進し、商店街の活性化や、商店街を担う人材対策の強化を推進するための法律です。
したがって、この法律の役割は、商店街が地域コミュニティの担い手として行う地域住民の生活の利便を高める試みを支援することではなく、大規模小売店舗の立地が周辺地域の生活環境を保持しつつ適正に行われることを確保することであるため、選択肢の内容は不適切です。
(オ)不適切です。
「大規模小売店舗立地法(大店立地法)」では、「建物の設置者」が「都道府県」に対して届け出を行うことを義務付けています。「建物の設置者」とは「建物所有者」のことであり「賃借権」や「借用権」を有する者は含まれません。
「大規模小売店舗」を新設する場合、開店予定日の8ヵ月前までに届け出を提出する必要があります。
したがって、大規模小売店舗を新設する場合、開店後1カ月以内に新設に関する届出をしなければならないのではなく、開店予定日の8ヵ月前までに新設に関する届出をしなければならないため、選択肢の内容は不適切です。
答えは(ウ)です。
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