今回は、「経済学・経済政策」の「景気循環」「景気動向指数」に関する記事のまとめです。
目次
景気循環・景気動向指数 -リンク-
本ブログにて「景気循環」「景気動向指数」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- R5-6 主要経済指標(13)景気動向指数(一致系列)
- R4-8 主要経済指標(12)景気循環
- H30-3 主要経済指標(3)CI・DIによる景気判断
- H29-6 主要経済指標(5)景気動向指数(採用系列)
- H24-1 主要経済指標(10)景気動向指数(先行系列)
景気循環
「景気循環」とは、経済全体の活動水準である景気において循環的に見られる変動のことをいい、「景気変動」や「景気の波」とも呼ばれます。
景気循環の局面
「景気循環」を表現する際には、その局面を2つに分ける方法と4つに分ける方法があります。
「景気循環」の基礎となっているバーンズとミッチェルの定義では4つの局面に分ける方法が示されていますが、実経済では「回復と好況」「後退と不況」の境界を判別することは困難であるため、2つの局面に分ける方法で表されるのが一般的であり、日本の内閣府においても2つの局面に分ける方法により「景気循環」を公表しています。
2つの局面に分ける方法
2つの局面に分ける方法では、「景気循環」の周期は、景気の「谷」から「谷」までとされており、景気の局面を「拡張期(拡大期)」「後退期」で表現します。
景気循環の周期(2つの局面に分ける方法)
4つの局面に分ける方法
4つの局面に分ける方法では、「景気循環」の周期は、景気の正常な水準から出発して「山」から「谷」を経て正常な水準に戻るまでとされることが多く、景気の局面を「好況(拡張・拡大)」「後退」「不況(収縮)」「回復」で表現します。
景気循環の周期(4つの局面に分ける方法)
景気循環論
「景気循環論」とは、ある特定の要因により景気が一定の周期で恒常的かつ法則的に循環すると考える説のことをいいます。
「景気循環」は、その周期が短いものから順に「キチン循環」「ジュグラー循環」「クズネッツ循環」「コンドラチェフ循環」に分類されます。
景気循環の種類 | 周期 | 主な要因 |
キチン循環(短期波動) | 約40ヶ月 | 企業の在庫変動 |
ジュグラー循環(中期波動) | 約10年 | 企業の設備投資 |
クズネッツ循環 | 約20年 | 建設需要 |
コンドラチェフ循環(長期波動) | 約50年 | 技術革新 |
景気動向指数
「景気動向指数」は、生産や雇用など様々な経済活動において重要でかつ景気に敏感に反応する指標の動きを統合することにより、景気の現状把握及び将来予測に資するために、内閣府が毎月公表している指標のことをいいます。
「景気動向指数」には、構成される様々な指標の変動から、景気変動の大きさやテンポ(量感)を測定することを目的とした「CI(コンポジット・インデックス)」と、構成される指標のうち改善している指標の割合を算出して、経済活動の各分野への景気の波及の度合い(波及度)を測定することを目的とした「DI(ディフュージョン・インデックス)」があります。
従来、「景気動向指数」は「DI」を中心に公表されていましたが、景気変動の大きさやテンポ(量感)を把握することの重要性が高まってきた世相を受け、1984年8月からCIが参考資料として公表されるようになり、2008年4月以降は「CI」を中心に公表されるように切り替えられました。
CI(コンポジット・インデックス)
「CI(コンポジット・インデックス)」とは、景気変動の大きさやテンポ(量感)を測定することを目的とした指標のことをいいます。
一般的に、「CI一致指数」の変動と景気の転換点は概ね一致しており、「CI一致指数」が上昇しているときは景気の「拡張期(拡大期)」にあり、「CI一致指数」が低下しているときは景気の「後退期」にありますが、「CI一致指数」が単月で逆方向に振れるなど不規則な動きをすることもあるため「3ヶ月後方移動平均」や「7ヶ月後方移動平均」を組み合わせて景気の基調を判断していきます。
CIによる景気の基調判断の基準
基調判断 | 定義 | 基準 | |
①改善 | 景気拡張の可能性が高いことを示す |
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②足踏み | 景気拡張の動きが足踏み状態になっている可能性が高いことを示す。 |
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③局面変化 | 上方への局面変化 | 事後的に判定される景気の谷が、それ以前の数か月にあった可能性が高いことを示す。 |
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下方への局面変化 | 事後的に判定される景気の山が、それ以前の数か月にあった可能性が高いことを示す。 |
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④悪化 | 景気後退の可能性が高いことを示す。 |
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⑤下げ止まり | 景気後退の動きが下げ止まっている可能性が高いことを示す。 |
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- 上記①~⑤に該当しない場合は、前月の基調判断を踏襲する。
- 「①改善」または「②足踏み」から「④悪化」または「⑤下げ止まり」に移行する場合は、「③下方への局面変化」を経る。なお「①改善」または「②足踏み」から「③下方への局面変化」に移行した時点で、既に景気後退局面に入った可能性が高いことを暫定的に示している。
- 「④悪化」または「⑤下げ止まり」から「①改善」または「②足踏み」に移行する場合は、「③上方への局面変化」を経る。なお「④悪化」または「⑤下げ止まり」から「③上方への局面変化」に移行した時点で、既に景気拡張局面に入った可能性が高いことを暫定的に示している。
- 「①改善」または「②足踏み」となった後に「③上方への局面変化」の基準を満たした場合、および「④悪化」または「⑤下げ止まり」となった後に「③下方への局面変化」の基準を満たした場合「③局面変化」は適用しない。
- 定義の欄の「景気拡張」及び「景気後退」については、すべて暫定的なものとする。
- 正式な景気循環(景気基準日付)については「CI一致指数」の各採用系列から作られる「ヒストリカルDI」に基づき、景気動向指数研究会での議論を踏まえて、経済社会総合研究所長が設定するものである。
DI(ディフュージョン・インデックス)
「DI(ディフュージョン・インデックス)」とは、経済活動の各分野への景気の波及の度合い(波及度)を測定することを目的とした指標のことをいいます。
月々で振れはあるものの、「DI一致指数」が継続的に「50%」を上回っている場合は景気の「拡張期(拡大期)」とし、「DI一致指数」が継続的に「50%」を下回っている場合は景気の「後退期」としています。
なお、「DI」は、経済活動の各分野に対する景気拡張や景気後退の波及した度合いを示す指標であり、景気拡張や景気後退が加速していることを示す指標ではありません。
採用系列
「CI」と「DI」が採用している指標は共通であり、景気に対し先行して動く「先行指数」、ほぼ一致して動く「一致指数」、遅れて動く「遅行指数」で構成されています。
「先行指数」は「一致指数」より数か月ほど先行して動くため、景気の動きを予測する目的で利用され、「遅行指数」は「一致指数」より数か月から半年ほど遅れて動くため、事後的な確認に利用されます。
「採用系列」は、概ねひとつの山もしくは谷が経過するごとに見直しが行われるため、以下のリンクから最新の情報を参照するようにすることをお薦めします。
先行系列(11種類) ※2021年5月現在
- 最終需要財在庫率指数(逆)
- 鉱工業用生産財在庫率指数(逆)
- 新規求人数(除学卒)
- 実質機械受注(製造業)
- 新設住宅着工床面積
- 消費者態度指数(2人以上世帯)
- 日経商品指数(42種)
- マネーストック(M2)(前年同月比)
- 東証株価指数
- 投資環境指数(製造業)
- 中小企業売上げ見通しDI
一致系列(10種類) ※2021年5月現在
- 生産指数(鉱工業)
- 鉱工業用生産財出荷指数
- 耐久消費財出荷指数
- 労働投入量指数(調査産業計)
- 投資財出荷指数(除輸送機械)
- 商業販売額(小売業)(前年同月比)
- 商業販売額(卸売業)(前年同月比)
- 営業利益(全産業)
- 有効求人倍率(除学卒)
- 輸出数量指数
遅行系列(9種類) ※2021年5月現在
- 第3次産業活動指数(対事業所サービス業)
- 常用雇用指数(調査産業計)
- 実質法人企業設備投資(全産業)
- 家計消費支出(勤労者世帯、名目)(前年同月比)
- 法人税収入
- 完全失業率(逆)
- きまって支給する給与(製造業、名目)
- 消費者物価指数(生鮮食品を除く総合)(前年同月比)
- 最終需要財在庫指数
景気循環と景気動向指数(CI・DI)の関係
日本の「景気循環」は、内閣府が毎月公表している「景気動向指数(CI・DI)」の動向を見て判断されています。
景気循環とCI(コンポジット・インデックス)の関係
「CI(コンポジット・インデックス)」とは、景気変動の大きさやテンポ(量感)を測定することを目的とした指標のことをいいます。
一般的に、「CI一致指数」の変動と景気の転換点は概ね一致しており、「CI一致指数」が上昇しているときは景気の「拡張期(拡大期)」にあり、「CI一致指数」が低下しているときは景気の「後退期」にあります。
景気循環とDI(ディフュージョン・インデックス)の関係
「DI(ディフュージョン・インデックス)」とは、経済活動の各分野への景気の波及の度合い(波及度)を測定することを目的とした指標のことをいいます。
月々で振れはあるものの、「DI一致指数」が継続的に「50%」を上回っている場合は景気の「拡張期(拡大期)」とし、「DI一致指数」が継続的に「50%」を下回っている場合は景気の「後退期」としています。
また、「DI一致指数」が「100%」から「0%」に下降していく期間を「好況」とし、「DI一致指数」が「0%」から「100%」に上昇していく期間を「不況」としています。
なお、「DI一致指数」が「50%」の点を「景気転換点」といいますが、「不況(0%→100%)」の中で「50%」となる点が「谷」となり、「好況(100%→0%)」の中で「50%」となる点が「山」となります。
景気循環とDI一致指数の関係(2つの局面に分ける方法)
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