今回は、「運営管理 ~R1-3 工場レイアウト(7)フロムツーチャート~」について説明します。
目次
運営管理 ~令和元年度一次試験問題一覧~
令和元年度の試験問題に関する解説は、以下のページを参照してください。
工場レイアウト -リンク-
本ブログにて「SLP(Systematic Layout Planning)」について説明しているページを以下に示しますのでアクセスしてみてください。
- SLP(Systematic Layout Planning)
SLP(Systematic Layout Planning)
「SLP(Systematic Layout Planning)」とは、米国のリチャード・ミューサーが提唱した工場レイアウトの計画策定に関する体系的な手順であり、製品の生産量、各工程に必要な面積、工程の相互関連性を分析して、工場レイアウトを決定していく手法のことをいいます。
工場の生産性を高めるためには、設備・工具・人・資材といった生産に関わる要素(アクティビティ)が極めて重要であり、基本的に製造工程におけるトータルの搬送距離が最短になるように工場レイアウトを計画していきます。
なお、生産する製品の種類、製品の生産量の増減、設備の更改といった環境の変化に伴い、最適な工場レイアウトも変化していくため、工場レイアウトを一度決定したら終わりではなく、定期的に確認を行い、レイアウトを見直していく必要があります。
SLPによる計画策定手順
PQ分析
「PQ分析」とは、「製品(Product)」と「生産量(Quantity)」の関係をグラフで示し、製品の生産形態から、最適な工場レイアウトを決定する分析手法です。
横軸に「製品(Product)」を、縦軸に「生産量(Quantity)」を取り、生産量の多い製品を左から順に並べて作成します。
PQ分析
「PQ分析」の結果から、製品ごとに生産形態の種類を区分して、それぞれの生産形態に最適なレイアウトを選択していきます。
生産形態 | 最適なレイアウト |
少品種大量生産 | 製品別レイアウト |
中品種中量生産 | グループ別レイアウト |
多品種少量生産 | 機能別レイアウト |
アクティビティ相互関係ダイヤグラム
「アクティビティ相互関係ダイヤグラム」とは、「物の流れ分析」と「アクティビティ相互関係図表」の分析結果に基づき、アクティビティを線図に展開し、アクティビティの順序と近接性を地理的な配置に置き換えたレイアウトのことをいいます。
「アクティビティ相互関係ダイヤグラム」では、アクティビティ間の近接性要求の強さを「線の太さ」や「線の本数」で表します。近接性の強いアクティビティ同士は極力近づけ、できるだけ線が重なり合わないようにすることが重要です。
なお、「アクティビティ相互関係ダイヤグラム」は「アクティビティ」の関係性について検討したものであり「面積(スペース)」については考慮されていません。(「面積(スペース)」は、次の手順である「面積(スペース)相互関係ダイヤグラム」で考慮される内容です。)
物の流れ分析
「物の流れ分析」では、生産工程を通じて「物」が迂回したり逆行することなく、効率的に流れていくための順序を決定する分析手法です。
「PQ分析」により区分されたグループ(生産形態や工場レイアウト)ごとに、「物の流れ分析」で使用する分析手法も異なります。
生産形態 | 最適なレイアウト | 物の流れ分析 |
少品種大量生産 | 製品別レイアウト | 単純工程分析 |
中品種中量生産 | グループ別レイアウト | 多品種工程分析 (加工経路分析) |
多品種少量生産 | 機能別レイアウト | フロムツーチャート |
単純工程分析(オペレーション・プロセスチャート)
「単純工程分析」とは、全ての「作業」と「検査(数量検査、品質検査)」の系列を表現した図表であり、系列には「運搬」と「停滞(貯蔵、滞留)」を表現しません。
原材料から製品が生産されるまでのプロセス全体を、統括的に一目で把握できるというメリットがあります。
多品種工程分析(加工経路分析)
「多品種工程分析(加工経路分析)」とは、工程(加工)経路が類似した製品や部品をグループ化するために「工程(加工)経路図」を作成して分析することをいいます。
縦軸に製品名、横軸に工程名を取り、製品ごとに工程の順番を記入した「工程(加工)経路図」に基づき、以下の基準で製品を分類してレイアウトを検討します。
工程経路 | レイアウト |
工程経路が全く同じである | 製品別レイアウト |
工程経路が同じ部分がある 一部の工程は経路が異なる |
工程経路が同じ部分は流れ作業化する。 工程経路が異なる部分は個別に作業を実施する。 |
工程経路が全く異なる | 機能別レイアウト |
フロムツーチャート(流出流入図表)
「フロムツーチャート(流出流入図表)」とは、「機能別レイアウト」を採用している工場において、物の流れを分析するために活用される手法であり、生産ラインの「前行程(From)」と「後工程(To)」の運搬回数を定量的に表わすことで、設備・工具・人・資材といった生産に関わる要素(アクティビティ)のレイアウトが効率的に配置されているかを明確にすることができます。
「フロムツーチャート(流出流入図表)」では、縦には上から順番に、横には左から順番に工程を表示していきます。
また、「正流」は斜線の右上側に「逆流」は斜線の左下側に表示します。
アクティビティ相互関係図表
「アクティビティ相互関係図表」とは、生産に関わる様々なアクティビティの相互関連性を数値等で表して、それらのアクティビティを近くに配置した方がよいのか、離れて配置しても問題ないのかを分析するツールのことをいいます。
「アクティビティ相互関係図表」では、アクティビティ間の近接重要度を「A/E/I/O/U/X」で表示します。 近接重要度はFrom-toチャートで求めた値を基に計算されます。
面積(スペース)相互関係ダイヤグラム
「面積(スペース)相互関係ダイヤグラム」とは、「アクティビティ相互関係ダイヤグラム」に「各アクティビティに必要なスペースの情報」と「利用可能なスペースの情報」を加味したレイアウト(案)のことをいいます。
レイアウト代替案の作成
作成された「面積(スペース)相互関係ダイヤグラム」は、理想的なあるべき姿の配置ではありますが、実際にレイアウトを実現するには様々な制約条件があるため、「制約条件」や「修正条件」を加味して、現実的な複数のレイアウト(案)を作成していきます。
試験問題
それでは、実際の試験問題を解いてみます。
【令和元年度 第3問】
ある工場でA~Eの5台の機械間における運搬回数を分析した結果、次のフロムツウチャートが得られた。この表から読み取れる内容に関する記述として、最も適切なものを下記の解答群から選べ。
[解答群]
ア 機械Aから他の全ての機械に品物が移動している。
イ 逆流が一カ所発生している。
ウ 他の機械からの機械Bへの運搬回数は12である。
エ 最も運搬頻度が高いのは機械A・D間である。
中小企業診断協会Webサイト(https://www.j-smeca.jp/contents/010_c_/shikenmondai.html)
考え方と解答
「SLP」の「物の流れ分析」において活用される「フロムツーチャート(流出流入図表)」に関する知識を問う問題です。
「フロムツーチャート(流出流入図表)」とは、「機能別レイアウト」を採用している工場において、物の流れを分析するために活用される手法であり、生産ラインの「前行程(From)」と「後工程(To)」の運搬回数を定量的に表わすことで、設備・工具・人・資材といった生産に関わる要素(アクティビティ)のレイアウトが効率的に配置されているかを明確にすることができます。
「フロムツーチャート(流出流入図表)」では、縦には上から順番に、横には左から順番に工程を表示していきます。
また、「正流」は斜線の右上側に「逆流」は斜線の左下側に表示します。
(ア) 不適切です。
問題文で与えられた「フロムツウチャート(フロムツーチャート)」では、「機械A」から「機械BCD」には品物が運搬されていますが「機械E」には品物が運搬されていないため、選択肢の内容は不適切です。
(イ) 不適切です。
問題文で与えられた「フロムツウチャート(フロムツーチャート)」では、「機械D→A」と「機械E→B」の2カ所で逆流が発生しているため、選択肢の内容は不適切です。
(ウ) 不適切です。
問題文で与えられた「フロムツウチャート(フロムツーチャート)」では、「機械A(12回)」と「機械E(27回)」から「機械B」に品物が運搬されており、その合計回数は「39回」であるため、選択肢の内容は不適切です。
(エ) 適切です。
問題文で与えられた「フロムツウチャート(フロムツーチャート)」では、「機械A・D」間の運搬回数は「機械A→D(25回)」と「機械D→A(11回)」の「合計(36回)」であり、最も運搬頻度が高いため、選択肢の内容は適切です。
ちなみに、2番目に運搬頻度が高いのは「機械B・E」間であり、その運搬回数は「機械B→E(4回)」と「機械E→B(27回)」の「合計(31回)」となっています。
答えは(エ)です。
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